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「爆買い」分を差し引くと日本の個人消費の低迷ぶりが一段と浮き彫りになる?(撮影:尾形文繁)
消費低迷の実態がよくわかる新指標って?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160525-00119673-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 5月25日(水)20時1分配信
日銀が個人消費の動向をより正確につかむための新しい指標「消費活動指数」を開発し、このほど公表を始めました。日本経済はこのところ消費の低迷が続いていますが、既存の消費関連指標には一長一短があり、実態を全体的かつ正確に把握するうえで難点がありました。こうした状況を踏まえて日銀が約30の政府統計や業界統計を使って新指数を開発したものです。今後は景気判断や政策決定の際の有力な判断材料にする考えです。
個人消費の全体的な動きを表す統計データとしては、総務省の家計調査がよく使われます。ただ前回の本連載でも取り上げた通り、同調査の対象は約9000世帯と全国約5200万世帯の約0.02%に過ぎずサンプル数が十分ではないため、集計値のブレが大きくなりやすいという“弱点”を持っています。調査対象の家庭では日々の消費支出の内容をすべて具体的に記入するという負担の大きさなどから、回答が高齢者世帯や専業主婦世帯に偏りがちといった問題点も指摘されています。
家計調査の弱点を補う統計には、経済産業省が毎月発表する商業動態統計があります。家計調査が「買う側」、つまり需要サイドの統計であるのに対し、商業動態統計は「売る側」、つまり供給サイドの統計です。全国の百貨店、スーパー、コンビニエンスストアのほか、小規模小売店も含めた小売業と卸売業を調査対象に全国の商業の動向をほぼ網羅しています。このため、統計的なブレが小さいという長所を持っています。
ただ、これにも弱点があります。サービス業が調査対象に含まれていないことです。個人消費の中で旅行、外食、医療、通信、交通、レジャーなどサービス関連の領域は幅広く、そのウエートも増える傾向にあります。こうした動向を把握するには、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査を見る必要があります。しかし、同調査だけですべてのサービス消費を網羅することはできないため、ほかのいくつかの業界統計も個別に見なくてはなりません。
つまり、供給側のデータは分野ごとの消費の動きを示す有力な指標ではあるものの、一つの統計だけで消費全体を包括的に表すものが存在していなかったのです。逆に需要側の家計調査は消費動向を包括的に示す有力な指標ですが、精度に難点があるのは前出の通りです。
精度の面で優れており、しかも消費全体を包括的に示すことのできる指標がGDP統計の個人消費です。GDP統計は各分野の数多くの基礎統計を基に算出するものなので、この2つの要素を兼ね備えているわけです。
その一方でGDP統計には速報性に欠けるという弱点があります。四半期ごとの発表であり、速報値でも各四半期末の約1カ月半後です。たとえば、今年1〜3月期の公表は今月18日でした。1カ月後には改定値、年末には確報値と改定が続きます。つまり「個人消費に関する調査統計で、速報性があり、包括的で、精度の高いものはない」(日銀)のが実情なのです。
■ 「精度の高さ」と「包括的」という課題をクリア
そこで、日銀が開発したのが新指標「消費活動指数」です。同指数の作成には、消費の実態をより的確に表すため供給側の統計を基礎統計として使うことにしました。商業動態統計、特定サービス産業動態調査などの政府統計のほかに、新車販売台数(日本自動車販売協会連合会)、外食産業市場動向調査(日本フードサービス協会)といった業界統計を合わせて31統計から42品目(商品とサービス)の動向を集計し、それを指数化しています。
同指数の登場で「精度」と「包括的」という二つの課題がクリアされた格好です。月次データが毎月発表されるので、四半期ごとのGDPに比べると速報性という点でも優位に立っています。
最新の同指数のデータは今年3月分です。それによると、物価変動の影響を除いた実質で102.4(2010年=100、季節調整済み)と前月比0.5%低下しました。1〜3月期で見ると前期比0.1%の低下で、2015年10〜12月期の同0.4%低下に続いて2四半期連続の低下となりました。
日銀はまた、同指数を2003年1月までさかのぼって算出し公表しています。その推移を見ると、リーマンショック後は東日本大震災の影響で一時的に落ち込んだものの、趨勢としては上昇傾向をたどっていました。グラフからは、14年4月の消費増税前の駆け込み需要期を除いても意外なほど消費が伸びていたことがわかります。その後は増税によって大きく落ち込み、いまだに増税前の水準を回復していません。
消費の低迷ぶりを裏付けてはいますが、それでも家計調査の結果に比べるとややマシと言えます。最近の家計調査は前出の弱点から消費の実態以上に弱い数字になっているとの指摘があるのに対し、消費活動指数はほかの消費関連指標とほぼ整合性の取れる数字になっています。
注意すべき点もあります。同指数は小売業販売額など供給側のデータを基礎統計としているため、訪日外国人による消費、いわゆるインバウンド消費分が含まれていることです。近年のインバウンド消費の急増ぶりは周知の通りですが、正味の消費動向を把握するにはインバウンド消費分を除いて考える必要があります。一方、日本人が海外旅行に出掛け、国外で消費する分も個人消費としてカウントするのが妥当ですが、前出の各基礎統計には含まれていません。
そこで、日銀はインバウンド消費分を差し引くとともに日本人の海外での消費分を加えるため、国際収支統計で計上されている「旅行収支」を差し引いた数値も公表しています。それを見ると、ここ1〜2年は実質消費活動指数と同指数・旅行収支調整済みの差が拡大しているのが鮮明になっています。インバウンド消費が急増する一方で、日本人の海外消費が伸び悩んでいるからです。
言葉を換えれば、インバウンド消費を差し引くと個人消費の実態はもっと低迷していると見たほうがいいということになります(ただし、旅行収支調整済みの指数公表は1カ月遅れ。最新データは今年2月分)。
■ 「わかりやすさ」の点では課題も
こうしてみると、実質消費活動指数はこれまでにないタイプの経済指標として評価することができそうです。ただ、既存の基礎統計を基に作成した2次統計なので、「わかりやすさ」という点ではやや課題を残したと言えるでしょう。難点があるとはいえ、家計調査なども有力な統計であることに変わりはありません。それら複数の指標を総合的にみて判断することが必要でしょう。
同指数の内容には課題もあります。近年はインターネット関連サービスへの消費支出が増加しているうえ、新しいサービスなども生まれており、既存の調査統計では把握しきれない部分が増えています。それらをどのように取り込んでいくかについて日銀が継続的に検討していくことが必要です。
ビッグデータの活用も課題の一つです。月次どころか毎日・毎時間ごとの消費データを収集することも可能ですから、それを統計に活用すれば、統計の精度と速報性を飛躍的に高めることができるはずです。
もっとも、これらは「同指数の課題」というよりも「経済統計全体の課題」と言ったほうがいいでしょう。政府や日銀、関係機関が消費関連の統計データをさらに充実させることは重要な政策課題でもあるのです。
※岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞社に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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