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日本銀行(撮影=編集部)
エリート日銀OB、私利私欲にまみれた金銭スキャンダルの全貌…振興銀破綻の裏で蓄財
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15218.html
2016.05.25 文=高橋篤史/ジャーナリスト Business Journal
旧日本振興銀行の経営破綻をめぐる民事訴訟で、東京地裁は5月19日、木村剛元会長(53歳)に対し5億円の損害賠償を命じる判決を下した。裁判は破綻処理に入った整理回収機構(RCC)が関与者責任を問うため2012年8月に起こしたもの。一審判決が出るまでじつに4年近くかかったが、請求額のすべてが裁判所によって認められたかたちだ。
日本銀行出身の著名金融コンサルタントだった木村元会長が率いる振興銀が、約6000億円の預金を抱え破綻したのは10年9月。日本で初めてペイオフが発動され、ごく一部ではあるものの預金者の虎の子がカットされるという前代未聞の事態となった。同行をめぐってはそれ以前から乱脈経営が指摘されており、同年6月の強制捜査を経て翌月には木村元会長ら経営幹部5人が金融庁の検査を妨害した銀行法違反の容疑で逮捕されていた。木村元会長には12年3月に懲役1年執行猶予3年の有罪判決が下っている。
当時、振興銀事件はあまりの乱脈ぶりや結果の重大性から特別背任などもっと大きな金融スキャンダルに発展するかとも思われ、実際、木村元会長の勾留期間は半年以上の長期に及んだ。しかしその後の捜査は尻すぼみとなり、結局、メールを消したことで検査を妨害したという、見方によっては形式的な微罪事件で幕を下ろしてしまった。
そうしたなか、破綻処理に入ったRCCや預金保険機構(預保)はなおも事件の解明に執念を燃やした。そして11年8月、旧SFCGからの無謀かつ巨額のローン債権買い取りをめぐり木村元会長はじめ旧経営陣らに50億円の損害賠償などを求める訴訟(第1訴訟、現在も係属中)を提起。さらに翌年8月には親密企業への杜撰な融資の責任を追及するため、今回判決が下された第2訴訟を提起するに至った。
そして、じつのところ、それら民事訴訟のほうが先の刑事手続きよりむしろ振興銀をめぐるスキャンダルの真相や本質をあぶり出すことに成功したといえるのである。第1訴訟と第2訴訟を通じて浮かび上がったのは、経営破綻直前のどさくさに紛れて行われたどす黒い融資と、それに続く木村元会長周辺の不審なカネの動きだった。
■乱脈融資
具体的にはこういうことだ。
10年3月、振興銀は親密企業の中小企業保証機構(SMEG)に対し85億円の融資を実行していた。当時、振興銀の周辺には中小企業振興ネットワークと呼ぶ親密企業数十社が存在し、振興銀とそれらの間では極めて複雑な出融資関係が幾重にも折り重なっていた。たとえば、振興銀から大量の融資を受けていたSMEGの大口融資先のひとつは、中小企業振興ネットワーク入りしていたインデックス・ホールディングスを率いた落合正美元会長(14年5月に粉飾決算事件で逮捕、公判手続き中)であり、その落合元会長は担保に差し入れていたインデックス株が将来値上がりするとの前提で株式譲渡予約契約を結びSMEGから予約保証金も受け取っていた。
SMEGに実行された85億円融資で何よりも問題だったのはその時期だ。当時、振興銀をめぐっては前年6月から始まっていた金融庁検査が佳境を迎えていた。融資の半月前にあたる2月26日、振興銀は金融庁から大口融資先のSMEGに関する確認表を交付されていたが、そこでは同社が債務超過と認定され破綻懸念先に分類すべきとされていた。さらに3月2日、振興銀本体についての確認表も交付される。そこでは同行が前年3月末でじつに561億円もの債務超過に陥っていると認定されていたのである。
すでにその時点でSMEGや振興銀の破綻状態は明らかだったわけだが、木村元会長によるワンマン経営の下、経営陣は85億円もの多額融資を急いだ。取締役会が融資を承認したのは3月1日。同月11日には極度額85億円の特殊当座借越契約を結び、翌12日、85億円の融資は実行された。10億円については担保によるカバーもなく丸裸だった。
■隠し口座に資金をプール
それだけでも異常だが、さらにおかしなことが起きていた。木村元会長が保有する振興銀株950株をSMEGに対し譲渡する話が同時並行で進んでいたのである。
木村元会長が譲渡の承諾書を提出したのは3月2日。それを受け、取締役会は同月8日に譲渡を承認している。譲渡価格は1株33万5000円。添付された前年11月30日付の株価算定書はあまりにも現実離れしたものだった。5年後に振興銀の貸出金がほぼ3倍に伸び、経常利益が4倍以上に跳ね上がるとの収益計画が前提条件だったからだ。株の譲渡が完了したのは、SMEGが振興銀から85億円の融資を受けた7日後の3月19日。その日、SMEGは木村元会長の銀行口座に3億1825万円を送金している。
前述した銀行法違反事件において、木村元会長が10年12月の保釈時に納付した保証金はわずか1000万円だ。当時、捜査当局は木村元会長がそれほど私財を蓄え込んでいないと見ていたと思われる。実際、木村元会長の生活ぶりが派手になった様子はその頃見受けられなかった。ところが、その後の預保などの調査で明らかになったのは、木村元会長がシンガポールに隠し口座を保有し資金をプールしていた事実だった。前述した振興銀株の売却代金の一部はその後、シンガポール口座に送金されていたようだ。
木村元会長が口座を開設していたのは、バンク・オブ・シンガポールだった。富裕層を相手とするプライベートバンクで、日本に支店を持たないものの当時は有力な日本人幹部がおり、出張営業で顧客を増やしていた。木村元会長がいつバンク・オブ・シンガポールと接点を持ったかは定かでないが、少なくとも10年6月頃の時点で同行の口座には少なくとも4億5000万円近くがプールされていた。それも合わせ木村元会長は少なくとも7億円近い預金を当時保有していた。
金融庁検査で破綻が必至となって以降、木村元会長の銀行口座にあったカネは目まぐるしく移動を始める。シンガポール口座にあったプール金はなぜか日本に還流し、そしてさまざまな名目で複数の先に分散されていった。具体的には次のような動きだ。
6月9日、木村元会長は実弟が保有する振興銀株1250株を譲り受け、代金1億6250万円を北陸銀行に開設された実弟名義の口座に振り込んでいる。3カ月前に950株を手放したばかりなのに、それ以上の株を取得するのだから、こんなおかしな話はない。
じつはこの時、木村元会長の実質支配企業が保有する振興銀株8150株を、中小企業振興ネットワーク傘下の2社に対し譲渡する話もあった。もし実現していれば、10億円を超す大金が木村元会長のもとに転がり込んでいたはずだ。が、この大量譲渡については社外取締役が難色を示して承認が先送りされ、その後の破綻で結局実現しなかった。
■めまぐるしい資金移動
さて、木村元会長が実弟に送金したカネの出所こそが件のシンガポール口座だった。この2日後に振興銀は警視庁の強制捜査を受けることとなる。事件捜査をよそにその後もシンガポール口座からの還流は続いた。逮捕から約1カ月後の8月20日、木村元会長は代理人を務める弘中惇一郎弁護士の預かり口座に裁判費用名目で1億円を送金。さらに勾留が続いていた11月4日にも1億8600万円を保釈準備金名目で同口座に移動させている。
もっとも6日後の11月10日、それら名目とは異なり、預かり口座のカネのうち1億2000万円は木村元会長の元妻に財産分与として送金された。じつは木村元会長が20年以上連れ添った元妻と協議離婚したのはわずか半年前、5月24日のことだ。その時交わした合意書に基づき木村元会長はすでに8000万円を支払っていたが、11月9日付で再度、合意書を交わし追加の送金を行ったのである。
たった1000万円の保釈保証金で済んだため、弘中弁護士の預かり口座には大量のカネが残っていたが、そのうち1億円は12月22日に木村元会長が楽天証券に開設した証券口座に送金され、翌11年6月8日にも5000万円が同じように送金された。
■新ビジネスの手元資金への疑問
あらためてまとめると、シンガポール口座にあったプール金は半年の間に弘中弁護士の預かり口座も経由するかたちで国内3つの先に分散された。そのうち木村元会長名義のものは1つだけだ。しかし、RCCは第1訴訟においてほかの2つの先への送金が資産を隠すための詐害行為だったと主張している。なぜ弁護士口座を経由する必要があったのかなど、確かに不自然極まりない資金移動だ。
決して他人に悟られることなく木村元会長が自らの私利私欲に取り憑かれていたことは間違いない。筆者も6年前の取材当時にはその本心を窺い知ることはできなかったが、訴訟で明らかになった数々の事実を眺めると、そのようにしか理解することができない。現在、木村元会長は都内で外国人留学生向けビジネスを手掛ける企業グループを実質的に経営している。元手となった資金をどのように用立てたのか――。これまで述べてきたことでかなりの説明がつくのではないか。
他方、木村元会長に付き従っていたほかの旧経営陣の末路は悲惨である。銀行法違反事件でともに有罪判決を受けた元社長(60歳)は12年12月に個人破産した。また、同様に側近のひとりだった元専務執行役(54歳)はRCCが提起した裁判で請求を認諾した後、13年8月にやはり個人破産している。前述とは別の元社長(60歳)は逮捕こそ免れたものの、RCCが起こした第1訴訟では被告に名を連ねることとなり、やはり今年2月に個人破産に追い込まれている。
これがいまだ知られざる振興銀事件の本質である。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト)
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