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燃費試験の不正行為について会見する三菱自動車工業・相川哲郎社長
三菱自、異常な社内風土…幹部がルールも知らず高圧的言動と圧力、人事異動少なく組織縦割り
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15126.html
2016.05.18 文=溝上憲文/労働ジャーナリスト Business Journal
燃費偽装問題で揺れる三菱自動車工業が、軽自動車で提携する日産自動車の傘下に入り再生を目指すことになった。両社の資本業務提携で表向きは自動車販売で世界のトップグループの仲間入りを果たすことになるが、三菱自が“負の資産”であることに変わりはない。
三菱自の病巣は相当根深い。2000年と04年の相次ぐリコール隠しをきっかけに、外部有識者による「企業倫理委員会」の設置や新たな企業理念を制定するなど、企業風土を刷新し生まれ変わったはずであった。にもかかわらず今回の軽4車種の燃費データ改竄だけではなく、1991年から25年間にわたり燃費の不正測定を隠蔽し続けてきたことも発覚している。
隠蔽の全容は明らかにされていないが、経営トップの発言や報道などである程度知ることができる。燃費偽装の舞台は開発部門の性能実験部。ここが子会社の三菱自動車エンジニアリング(MAE)に燃費開発を委託していた。他社の燃費を念頭に目標燃費を5回繰り返し上方修正するが、実車の走行試験では目標を達成できなかった。MAEの管理職が性能実験部の管理職に相談したところ、有利な数値を抽出してデータを算出するように指示したことで改竄が行われた。
もちろん重大な不正が2人の管理職の間だけで行われたわけではない。2人を突き動かした組織的関与も疑われている。
本社の開発本部長が会議で「燃費を訴求するからには発売時に一番でなければならない。0.1キロでもオーバー達成できるよう追求を」と発言。車種の販売・生産責任者のプロダクト・エグゼクティブ(PX)も同様の発言を行い、日産との合弁会社に出向していたプロジェクトマネージャーが性能実験部とMAEの管理職に高圧的な言動で目標達成を指示するなど、上級幹部たちが相当のプレッシャーをかけていたことがわかっている。
■人事の硬直化による閉鎖的組織
目標を達成するために幹部が社員に圧力をかけることはどこの会社でもあることだが、三菱自の幹部は燃費試験のやり方やルールを知らずに発破をかけていた疑いもある。
相川哲郎社長は開発部門出身の技術者であり、開発部門の責任者を務めていた時期もある。4月26日の記者会見で「(燃費試験のやり方やルールは)私はまったく承知していない。燃費試験は実務の仕事で、担当者以外は通常は関与しない。車の開発責任者がこのことを知らないと、開発の取りまとめができないわけではない」と発言している。
燃費試験のルールを知っているのは実務の人間だけと言う。かりに幹部がルールも知らずに圧力をかけ続けていたとすれば、部下が不正を働いても見抜くことはできないし、発生するリスクは計り知れない。不正を生み出し続けることを許容するようなとんでもない組織構造である。
新聞報道によると三菱自が国交省に提出した調査結果にはプロダクト・エグゼクティブ(PX)について「高圧的言動による物言えぬ風土を醸成した」と記され、性能実験部については「人事が硬直化し、閉鎖性が強く不透明な組織だった」と書いてあるという。5月12日の記者会見で同社の益子修会長も「閉鎖的な社会のなかで仕事が行われ、『今までやってきたことをやれば間違いない』と信じ込んだ面もあるのでは。そういうところに踏み込まないと、再発は防止できない」と発言している。
実際に同社の開発部門は人事異動が少なく、10年間も同じ部署、担当のままという人も少なくないという社員の声もある。最大の原因が人事の硬直化による閉鎖的組織、ルールも知らない幹部が現場任せにして責任の所在が不明確な組織が不正を生んだとすれば、いうまでもなくそうした組織構造を放置してきた経営陣の責任は免れないだろう。
■別会社になるぐらいの改革が必要
これは、一部門の人事や組織を改めれば解決できるような簡単な問題ではない。なぜなら過去にも同じ問題点が指摘されながらも解決できていないからだ。
同社は04年のリコール隠しを受けて社内に「事業再生委員会」を設置し、国内外の社員など350人超にインタビューした「事業再生委員会の活動状況について」(04年6月29日)という報告書を出している。そのなかに「従業員インタビューの要約(生の声)」が掲載されている。
人事に関する問題点として「責任の所在があいまいで、信賞必罰を徹底できない。人事異動が少なく、適材適所が実現できない」、管理に関しては「計画が不明確、計画責任の所在が不明確」と指摘されている。また企業風土に関しては「『たこつぼ文化』のため、上を見て、発言を控える傾向あり」「危機感が希薄、社員が自立していない」と指摘している。こうした状況は今の組織そのものではないか。
さらにこういう指摘もある。組織が「縦割りで、部門が断絶。今後導入するPXについてもその位置付けの見直しや顧客意見が反映できる仕組みが不可欠」。つまり、新たに導入したPXは今回の調査で「高圧的言動による物言えぬ風土を醸成した」と指摘されるほど、逆に弊害を生んでいたことになる。
三菱自はこうした指摘を踏まえて05年1月に「三菱自動車再生計画」を発表し、さまざまな改革を実施したはずだった。だが、燃費データの隠蔽を生み出す組織の閉鎖性や責任の所在の曖昧さを生み出す企業体質は依然として変わっていなかったのである。
こうした組織風土を変えるのは容易ではない。まるで別会社になるぐらいの人材の刷新を含めた組織構造の変革や企業文化の根本的変革しかないだろう。
■日産は大ナタを振るう
今回の燃費偽装が発覚したきっかけは昨年11月、軽自動車分野で提携する日産が燃費を独自に調べて数値に開きがあると指摘したことだった。
今年2月末に筆者は日産自動車のカルロス・ゴーン社長にインタビューし、自動車メーカーの経営者の役割について質問した。ゴーン氏は役割のひとつについてこう答えている。
「自動車業界を取り巻く大きな変化として、ますます透明性が求められています。ネットもあるし、政府の規制も厳しくなっているし、お客様の期待も大きくなっています。そうしたなかで情報を隠すことが許されなくなっている。経営者はそうした変化を理解し、そのうえで会社としてどうするかを考え、勇気を持って変革する力が必要です。理解できなければ間違ったことをやるということにもなりかねません。理解して規律を重視して会社に実行させることが重要なのです」
このときにゴーン氏が三菱自の燃費偽装問題をどの程度意識していたのかはわからない。だが、同社が日産自動車の傘下に入れば組織風土の抜本改革の大ナタが振るわれることは間違いないだろう。
(文=溝上憲文/労働ジャーナリスト)
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