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なぜスズキがここまでコンパクトカーを増やしているのか
スズキの「軽離れ」が避けられなくなった理由 もはやグローバル戦略を優先せざるを得ない
http://toyokeizai.net/articles/-/117477
2016年05月17日 森口 将之 :モビリティジャーナリスト 東洋経済
■「行儀の悪い売り方」の反省から見えてきたものは
5月10日に行われたスズキの2016年3月期決算会見では、同社の主力である4輪車部門の販売台数は前年度比でほぼ横ばいだったものの、最大市場のインドでは11.5%増加し、過去最高の130.5万台を記録したことが発表された。
質疑応答で鈴木修会長は、軽自動車が白モノ家電の二の舞になることを懸念していた。昨秋以降、「お行儀が悪い売り方」を控えているといい、今後はシェアにはあまりこだわらず、1台1台を大切に売っていく考え方にシフトしていきたいと語った。
またスズキは2019年度までの5年間における中期経営計画のひとつに掲げていた国内登録車販売10万台の目標を、16年度中に達成することも明らかにした。
そのスズキが今年に入ってから発売した新型車「イグニス」と「バレーノ」は、いずれも軽自動車ではなく、小型乗用車となっている。
スズキのバレーノ
スズキと軽自動車のシェア争いをしてきたダイハツ工業が最近発売したのも軽自動車ではなく、小型乗用車の「ブーン」(トヨタ自動車にも「パッソ」として供給)であるが、こちらは以前から存在していた車種でもあるので、納得できるところである。
しかし、スズキはイグニスとバレーノの登場によって、以前からあるスイフトを含めると、全長4m以下、排気量1〜1.5リットルのハッチバック、つまりコンパクトカーのジャンルに3車種を擁するようになった。
なぜ、ここまでスズキがコンパクトカーを増やしているのか。イグニスやバレーノの試乗会で関係者から聞いた話を総合すると、スズキは軸足を軽自動車から小型車に移しつつあるようだ。
■軸足を軽自動車から小型車にしたのか
バレーノのターボエンジン
日本で販売される新車に占める軽自動車の割合は、2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられたのに続き、昨年4月には軽自動車税が年間7200円から1万800円に増税されたことで、シェアが落ちている。
昨年度の軽自動車の販売台数は約181万台で、全自動車の約494万台に対する比率は約37%になっている。単体で見ればかなりのシェアではあるけれど、前年度は約41%、その前は約40%だったから、確実に下がっている。
消費増税前の駆け込み需要の反動が、この下落を招いていることは間違いない。さらに昨年度は、主力車種のモデルチェンジがない、いわゆる谷間の時期だった。今年度はダイハツ「ミラ」やスズキ「ワゴンR」、その後はホンダ「N-BOX」のモデルチェンジが予定されている。これら新型の登場を待って買い換えを考えるユーザーもいるはずである。
しかし近年の日本が直面している人口減少と、軽自動車比率が小さい東京への一極集中がこのまま続くなら、軽自動車の販売台数が大きく反転するとは考えにくい。
政府は現在、排気量に応じて課税している自動車税を見直す考えで、燃費・環境性能を考慮した課税が有力視されている。これが実現すれば、現在は税率が低い軽自動車が増税になるという噂もある。昨年に続き、増税による販売低迷が訪れるかもしれない。
もうひとつ、高速道路の制限速度引き上げも関係するのではないかと思っている。警察庁が3月に発表した、現在100km/hの制限速度を段階的に120km/hに引き上げる方針というニュースだ。
筆者の経験では、120km/hで長時間楽に走り続ける余裕を持つ軽自動車は少ない。その点を見越して、120km/hまで出せる小型車に乗り換える人が増えるだろう。
スズキ社内の状況もある。スズキは2008年、米国GM(ゼネラルモーターズ)の経営悪化に伴い同社との提携を解消し、翌年ドイツのVW(フォルクスワーゲン)と手を結んだが、考え方の違いから白紙撤回を申し出、昨年それが実現した。
■売り上げの3分の2近くを海外で稼いでいる
トヨタと提携の噂があるものの、現状は一匹狼だ。しかも2014年度の売上高は3兆円を超え、その3分の2近くを海外で稼いでいる。国内市場の伸びが限られている以上、生き残りのためにはグローバル展開が不可欠だ。ゆえに世界で通用する小型車に力を入れているようだ。
ではなぜ日本での価格帯が重なるイグニスとバレーノを相次いで送り出したのか。それは、クラスとマーケットが異なるからだ。
イグニスは日本と欧州がメインマーケットで、日本で作られる。バレーノはインドで8割を売る予定であり、生産もインドのマルチ・スズキ社が担当する。わが国での目標販売台数はイグニスが月間1500台、バレーノが年間6000台と大差がある。
日本未発売のセレリオ
欧州のクラス分けでは、イグニスは日本未発売のセレリオとともにAセグメントを担当し、バレーノはスイフトともどもBセグメントとなる。日本での価格が同等なのは、イグニスにはクロスオーバーという付加価値を与え、バレーノはインド生産のコストメリットを生かしたためだ。
イグニスの内装がカラフルでクオリティが高いのも、付加価値のひとつである。欧州ではSUVは同クラスのハッチバックより上級車として位置付けられており、価格設定も一段上となっている。クロスオーバーのイグニスもその線を狙った。
欧州でのテストの様子
対するバレーノは、インドでも欧州でもスイフトより上に位置付けられる。ただし全長は、4m以下なら物品税が半額になるインドの税制に配慮し、欧州におけるBセグメントの売れ筋も考え、4m弱に設定した。
1970年代の名車フロンテクーペなどのモチーフを起用し、シャープに仕上げたイグニスとは対照的に、流れるような曲線を多用したバレーノのデザインは、欧州市場でのトレンドに沿ったものだという。インドでも欧州デザインへの憧れがあるので、このテイストにしたそうだ。
■乗ってみた印象
2台に乗った印象をひとことで言えば、スイフトに近い。インド製のバレーノも走行実験は欧州で行っているという説明に納得した。全長やホイールベースの違いもあって、スイフトを基準とするとイグニスはキビキビ感が目立ち、逆にバレーノは穏やかな身のこなしとなる。
バレーノはインド製ということで、作りの悪さを懸念する人がいるかもしれないが、ハンガリー製のエスクード同様、気になる部分はなかった。2輪車の世界ではインド製車両が何台か輸入されており、筆者も体験して安心して走れることを確認しているので、この点は予想どおりだった。
イグニスでは国産車では初めてアップルのカープレイに対応し、バレーノではスズキの小型車で初のダウンサイジングターボを国内に初投入するなど、先進技術も積極的に採用している。価格や燃費だけで競う消耗戦を避け、マツダのデミオとは微妙に違う立ち位置で個性をアピールしようとしている。
意外に思うかもしれないが、軽自動車もまたグローバル商品である。インドではアルトやワゴンRが根強い人気を得ている。デザインや排気量など、日本のそれとは異なる点もあるが、基本設計は踏襲している。また前述のセレリオなど、軽自動車作りを生かした海外向け車種も存在する。
しかし新興国では経済成長に伴い、上級車種に目を向けるユーザーが増えている。マルチ・スズキの4月の販売実績によると、アルトやワゴンRが属するセグメントは前年同月比で減少しているのに対して、それ以上のクラスは順当に伸び、スイフトやバレーノが属するセグメントがもっとも多く売れている。
この傾向が進めば、日本以外でも軽自動車ベースの車種の需要が下がっていくことが予想できる。グローバルという目線で考えれば、スズキが小型車に力を入れるのは当然だと考えている。
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