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提携の基本合意を発表した後、三菱自動車の益子修会長(右)と握手する日産自動車のカルロス・ゴーン社長。満面の笑みを浮かべた表情は心中の表れか/5月12日、横浜市 (c)朝日新聞社
三菱燃費データ不正問題 背後に「ゴーン氏の策略」のにおい?〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160517-00000095-sasahi-bus_all
AERA 2016年5月23日号より抜粋
まさに「急転直下」の救済劇だった。燃費データ不正問題で窮地に陥った三菱自動車が、日産自動車の傘下で再建を図る道を選んだ。何があったのか。
壇上のカルロス・ゴーン日産自動車社長の喜色満面ぶりと、横に立つ三菱自動車の益子修会長のさえない表情が対照的だった。5月12日、日産の本社がある横浜市に三菱自側が出向いて共同記者会見が開かれた。
「筆頭株主として、三菱自動車のブランドと歴史を尊重し、大きな成長の可能性の実現をサポートしていきます」
日産が2373億円を出資、三菱自株の34%を持つ筆頭株主になる。日産株の43.4%を持つのが仏ルノー。その日産が三菱自株の3分の1を握る。つまり三菱自はルノーの「孫」会社になる。ゴーン氏はルノーの最高経営責任者(CEO)も兼務する。
「今回の三菱自の燃費データ不正疑惑が浮上した時、ゴーン社長は『真相を見極めないと分からない』と慎重な口ぶりでした。被害者のようなコメントをするほかの日産の役員とトーンが違うのでオヤッと思ったのですが、こういう展開を待っていたのでしょう」
自動車ジャーナリストの塚本潔さんは、提携劇の裏にゴーン氏の策略がにおう、と感じている。
不正が表面化したのは4月20日。三菱自がデータ不正を公表した。ことの始まりは昨年11月、日産が「このデータはおかしい」と三菱自に指摘したことだった。5カ月前から分かっていたことを、3月期決算発表を前に突如公表、「第1発見者」がわずか3週間後に事態処理に乗り出した、という展開だ。
日産は2011年6月から三菱自と提携関係にある。軽自動車を共同開発する会社を折半でつくり、同じ車を三菱自はeKワゴン、日産はデイズとして販売する。基本設計や製造は三菱自が担うこの車種でデータ偽装が明らかになった。
「黙っていれば分からなかったこと。内部で問題になっても、次のモデルから改めれば、なかったことで済む。公表すればユーザーへの補償を含め騒動になる。そこまでして表沙汰にするには何か事情があったのでは」(業界関係者)
提携を巡る両社の関係は、時を経るにつれ微妙さを増してきた。「国内100万台生産体制」を維持したい日産が、市場の4割を占める軽自動車を三菱自任せにせず、自社工場で生産したいと考え始めたからだ。しかし、小さいクルマを安くつくる技術は三菱自に一日の長がある。
5年も共同開発をしていれば、相手の内情も見えてくるもの。「データ不正」を表面化させれば、何が起こるか日産は分かっていただろう。身から出たさびとはいえ、三菱自は窮地に追い込まれた。公表までの約5カ月間、水面下でいったい何が話し合われていたのか。
ルノー・日産グループの世界販売台数は年852万台。そこに三菱自の107万台を加えれば、トヨタ自動車(1015万台)、独フォルクスワーゲン(993万台)の背中が見える。日産で17年、ルノーで11年トップの座に君臨するゴーン氏が、いよいよ2強追撃のアクセルを踏んだのは間違いない。
世界で競い合う自動車メーカーは、規模拡大でコストを下げようと躍起だ。一方、縮む市場にいまだ10社がひしめく日本。技術があって経営が弱い企業は外資に狙われる。
2兆円近い有利子負債を抱えた日産の経営が行き詰まったのが1999年。そのとき、救済の手を差し伸べたのがルノーだった。送り込まれたゴーン氏は人員削減、工場の閉鎖、赤字部門切り捨てなど徹底したコストカットで黒字を回復。「ゴーン革命」と喝采を浴びた。
15年の世界販売台数をみると、日産の542万台に対しルノーは280万台。売上高でも日産が12.1兆円、ルノーは5.7兆円。ルノーは、規模が倍近い日産から高額の配当を受け取っている。新モデルでも、共同開発と言いながら原型づくりを担うのは日産。「ルノーは日産に寄生している」という声が内部から上がるほど日産が「親孝行」する仕組みが定着した。
日産の買収で成功したルノーが、2匹目のドジョウとして狙ったのが三菱自ではないのか。(ジャーナリスト・山田厚史)
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