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マイナス金利に惑わされるな むしろ投資リスクや手数料に注意すべし
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2016.05.15 10:00 THE PAGE
マイナス金利では貯蓄がいいのか投資いいのか(写真はイメージ、提供:アフロ)
1月末に日銀が発表し、2月16日から実施されたマイナス金利政策は今までに経験したことのない金融政策です。市場においても多少の混乱はありましたし、長期国債の利回りもマイナスが定着しつつあります。
しかしながら、マイナス金利とは言っても今のところは私たちが銀行にお金を預けると損をするというわけではありません。したがって、あまり焦ったりドタバタしたりする必要はないと言っていいでしょう。今までの資産運用に対するスタイルを特に大きく変える必要はないと私は考えています。
ところが、今回の政策で預金金利や住宅ローン金利が下がったことによって、金融機関や住宅業者等の営業マンの人たちは様々な営業攻勢をかけてきているようです。
「定期預金のまま置いておくとだめですから、投資信託を買いましょう」
「住宅ローン金利が下がった今が住宅を買うチャンスです」
一見するとこのお勧めはもっともなように思えますが、じっくり考えてみると本当にそうだろうか?と思える点がいくつもあります。マイナス金利だからと言って焦って行動しないほうがいいと考える理由をお話ししたいと思います。
■焦りは禁物! すでに実質的にマイナス金利である
マイナス金利という言葉は、そのインパクトがかなり強いので「何か大変なことになるのではないか!」という印象が強いのですが、実はかなり前から実質的にはマイナス金利になっているのです。例えばATMで時間外にお金をおろすと、100〜200円の手数料がかかります。1万円おろすと1〜2%手数料がかかっているのです。現状の預金金利を考えると実質的にはすでにマイナス金利と同じことです。そこで預金金利が仮に0.02%→0.01%下がったところで、1万円について金利が1円少なくなるだけですから、ほとんど実態は変わらないと言えます。
また、かつて私たちは過去にマイナス金利を何度も経験しています。例えば戦後、表面的な金利が最も高かったのは昭和49年で、当時の1年定期預金の金利は年率7.75%という、今では驚くような金利ですが、当時の物価上昇率は年20%以上でしたから、実質金利でいえば大幅にマイナスだったのです。金利を見るときには表面金利ではなくて実質金利で見ることが大切です。
長い間、日本はデフレでした。デフレというのは物価が下がるということですから、仮に金利がゼロでも物価の下がった分、金利は実質的にプラスになっているということです。単純に表面的な金利だけで判断するのではなく、物価上昇や物価下落と合わせて考えるとどうかということを見ておく必要があります。
■金利が下がったから買うのではなく、よい対象があるから買う
また、住宅ローン金利が下がったからといって、すぐに不動産投資や住宅購入に飛びつくのは禁物です。不動産購入のような場合は、住むにせよ投資するにせよ、対象物件の価値を見極めることが第一で、金利というのはあくまでも購入手段に付随する条件の一つにすぎません。ここ数年の間に全体としてかなり不動産価格は上昇しています。それでも購入するのであれば、金利が下がったからということではなく、十分な収益性を生む良い物件があるからというふうに考えるべきでしょう。
ローン金利が下がったので借り換えをするというのはよいと思います。ただ、借り換えによって総合的に損得がどうなるのか? ということはしっかり考える必要があります。例えばローンの借り換えには、それに伴う手数料や保証料、登録免許税などの諸費用がかかります。払う金利が少なくなる以上に費用が増えたのでは何にもなりません。これはケースバイケースなので、よく調べてみることが大切です。借り換えた後で、思いがけない出費が発生することもあるので十分注意することが必要でしょう。
住宅購入やローンの借り換え自体が悪いというわけではありませんが、判断するに当たってはそれが本当に妥当なものなのか、それを今の時点でおこなうことが合理的なのか、といったことを考えるべきです。消費税が8%に上がった時でも買い急ぎの動きがありましたが、結局は増税後に大幅に値段の下がったものもたくさんあります。
■金利差よりも投資リスクや手数料に要注意
マイナス金利の影響で金利が下がったことによる利息の減少よりも投資で損失が発生するリスク、そして新たに投資することによって発生する手数料のほうがはるかに影響は大きいのです。ほんのわずかな金利の上げ下げだけで飛びつくことはやめたほうが賢明です。
マイナス金利によって金利が多少下がったとしても、そのことによって実際の金額にどれぐらい影響があるのかを考えるべきです。前述したように定期預金の金利が0.01%下がったと言っても仮に100万円の預金額であれば減る金額は100円にしか過ぎません。投資信託の場合、100万円預けると年間の手数料は安いものでも2000円ぐらいかかります。
マイナスという言葉に惑わされ、株式投資や不動産投資にあわててお金をつぎ込むことは注意すべきです。
(経済コラムニスト・大江英樹)
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