http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/503.html
Tweet |
三菱自動車・相川哲郎社長(中央)
三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15053.html
2016.05.12 文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表 Business Journal
4月20日、三菱自動車工業(以下、三菱自)は同社製軽自動車62万5000台について、型式認証取得時に同社が国土交通省へ提出した燃費試験データに不正があることを公表しました。対象車両の型式認証取得に際し、燃費を実際よりもよく見せるため不正なデータ操作が行われ、さらに国内法規で定められたものと異なる試験方法が採られていたことも判明しました。
これは、昨年9月に発覚した独フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制を逃れるため不正なソフトウエアをディーゼル車に搭載した不祥事と同様に、自動車業界に大きな衝撃を与えました。
■VWと三菱自の不祥事の相違点
実はVWと三菱自の不祥事は、似て非なるものです。というのは、VWの場合には、排ガス規制への違反という環境問題にまつわる不祥事であり、車のユーザーを直接欺くものではなかったのに対し、三菱自のケースは燃費データを改ざんするというもので、ユーザーを直接欺く行為でした。
これは、三菱自にとって顧客の支持を大きく失う事件です。げんに4月28日付日本経済新聞によれば、不正発覚後に国内受注が半減しているようですが、これは同社が顧客層の支持を失っていることを示すものです。
ちなみにVWの15年10〜12月の売上高は、5万3029百万ユーロで、これは前年同月の5万4740百万ユーロから3%程度の減少にとどまりました。また、16年4月時点における最近の報道によれば、16年1〜3月におけるVWの販売台数は250.8万台(前年比+0.8%)となっています(5月2日付「clicccar」記事より)。要するに、VWでは販売台数が減るどころか、若干伸びているのです
もっとも、日本では排ガス認証不正の影響から、相変わらずVWの販売は前年同月比で約3割減が続いています。しかし、VWの世界全体の販売台数は、むしろ若干増加しています。このように、VWは排ガスの不正によって世界全体における顧客層の支持喪失を招いていません。これは、不正があくまで排ガス規制の問題であり、直接ユーザーを欺く不正ではなかったからでしょう。
ところが、三菱自の場合は、燃費不正という車のユーザーのガソリン代に直結する不正が行われたこともあって、16年4月の軽販売は前年同月比44.9%減となりました。
■販売減は業績にどれだけ影響するものなのか
ここで筆者は、この販売減が三菱自の業績にどれほどの影響を及ぼすかを試算したいと思います。同社(単体)の12年度業績データを用います。同社は損益計算書の細部(とくに製造費用)については、12年度までは製造原価明細書を公表していたこともあり、直近のデータよりも、経費細目を詳しく開示していたからです。12年度の三菱自(単体)の損益計算書は下記のとおりでした。
実際に開示された損益計算書には、もう少し詳しいデータが開示されています。そのなかでも重要なのは、売上原価のなかに「他社からの製品仕入高」が「442,307百万円」、「原材料費」が「598,622百万円」、「運搬費」が「40,148百万円」含まれていることです。合計すると「1,081,077百万円」です。
これらの項目は変動費です。変動費というのは、売上高が増加すれば費用も増加し、売上高が減少すれば費用も減少するという費用の項目です。この先、三菱自では需要減による売上減少が予想されますが、これら変動費の項目は、この先の需要減によって減少することが見込まれます。ここから先のシミュレーションは、かなりざっくりとした計算となることにご留意ください。
この3つの変動費の合計は1,081,077百万円ですが、これは売上高1,383,389百万円のおよそ78%に相当します。変動費以外の項目は少し細かくなるので、あとの経費はざっくりと固定費とみなします。固定費というのは、売上の増減とは連動せずに生じる費用のことです。そうすると、上掲の損益計算書は以下のようにつくり変えることができます。
これは何を意味するかというと、三菱自は1,383,389百万円の売上を獲得しましたが、その約78%である1,081,077百万円は変動費となり、差額302,312百万円の粗利益が獲得されることを意味します。ここから、固定費ともいうべき287,541百万円の費用が差し引かれて、営業利益は14,771百万円となったことを意味します。
ところで、三菱自の直近の15年度の売上高は、1,806,047百万円でした。しかしながら、前述したように15年の損益計算書には、製造原価の材料費のデータが掲載されていません。ですから、変動費の把握ができないので、ここでは便宜的に12年度の変動費割合(78%)を用います。
また、12年度における運搬費を除く販売費及び一般管理費は104,952百万円に対し、15年度のそれは130,662百万円でしたので、固定費が25,710百万円増加していることがわかるので、これを予め組み込んで、固定費を313,251百万円(=287,541百万円+25,710百万円)としたうえで15年の損益をシミュレーションすると、下記のとおりとなります。
このシミュレーションによれば、営業利益は84,079百万円になりました。しかし、現実の三菱自の営業利益は61,641百万円でしたので、現実の業績と上記のシミュレーションには200億円ほどの誤差が生じています。
このように、概ね3割ほどの誤差が生じることを承知の上で、今回の不正発覚による「44.9%の需要減」がどれほどのインパクトをもたらすかをシミュレーションすると、下記のとおりになります。
つまり、売上高が44.9%減少すれば、粗利益も同じく減少し、215,104百万円になると予想されます。それより、固定費を差し引いて単純計算をすると、98,147百万円の赤字となります。
■巨額の営業赤字は避けられず
もちろんこれはざっくりとした見込みの計算であり、1〜3割程度の誤差は避けられません。ということは、現実の営業赤字の見込み額は、700億円〜1200億円程度ではないかと見込まれます。これは、あくまでも外部データにもとづく筆者の見込みです。現実には、三菱自ではもっと緻密な見込みが行われているはずです。とはいえ、44.9%の販売減が年間ベースで生じた場合には、巨額の営業赤字が避けられないことには変わりがないはずです。
これは大変なことです。その需要減が仮に短期間で終息するならば、三菱自の経営はそこそこの穴が開く程度で終わるでしょうが、もし中期化(3年程度)もしくは長期化(5年以上)するようであれば、企業経営自体が不可能になりかねません。
しかも、このシミュレーションは、今回の不祥事による民事訴訟等の賠償負担を織り込んでいません。あくまでも、本稿執筆時点における需要減のみを考慮した業績変動の試算です。ですから、これにつぎのような賠償負担を織り込むとすれば、さらに大きな損失が生じることが想定されます。
1.ユーザーが余分に払ったガソリン代
2.中古価格の下落による損失
3.エコカー減税返納分
4.供給先である日産自動車の車両保有者に対するガソリン差額、ディーラーの軽販売機会の喪失による損失の補償
5.部品メーカーの休業補償
野村証券は、こうしたガソリン代やエコカー減税の補償だけでも費用は計425億〜1040億円にのぼると試算しています(産経新聞)。
それほどまでにこの事件は、三菱自の屋台骨をぐらつかせるほどの大事件なのです。しかも、この不正は1991年から行われていたことがわかっています。それだけでなく、2004年には、ふそうトラックのタイヤ脱落事故捜査に端を発し、リコール隠しと「ヤミ改修」が発覚したこともありました。そういうこともあって現在、三菱自の経営は厳しい批判にさらされています。
ですから筆者は、三菱自はこのままでは必ず経営が行き詰まるとともに、けっして遠くない将来において、なにがしか大きな組織の改編を示す出来事が起きると予想しています。
たとえば、シャープが台湾・鴻海精密工業の傘下に入ったように、資金力のあるスポンサーの傘下に入り、抜本的に再スタートを切るという出来事かもしれません。あるいは会社更生法や民事再生法などの申請かもしれませんし、吸収合併かもしれません。
いずれにせよ、この事件で三菱自のこれまでの経営は完全に否定され、抜本的な組織再編を余儀なくされるに相違ありません。それほどまでに、顧客の支持を失う行為は会社を破滅に追い込むと、この事件は雄弁に物語っているのです。
(文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民108掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。