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ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(1)差別と搾取の技能実習制度と「憧れの日本」、(2,3,4,5,6)
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/388.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2016 年 5 月 08 日 22:41:06: KqrEdYmDwf7cM gsSC8YKzgqKBaYKigWo
 

http://bylines.news.yahoo.co.jp/sunainaoko/20160421-00056521/

ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(1)差別と搾取の技能実習制度と「憧れの日本」

巣内尚子  | ジャーナリスト2016年4月21日 8時29分配信

ハノイ市の若者たち。筆者撮影

「現代の奴隷」と呼ばれることさえある外国人技能実習生。日本の「外国人技能実習制度」をめぐっては、技能実習生が低賃金で就労していることに加え、人権侵害やハラスメントへのリスクにさらされるなど、数々の課題が指摘されてきた。

だが、それでも今、技能実習生として日本で働くベトナム人が増えている。技能実習生の多くを占めてきた中国出身者は最近では減少傾向にあり、これをベトナム人技能実習生が補っている格好だ。そんな技能実習生を調査し大学の卒業論文を書き上げたベトナム人の男性留学生がいる。彼はなぜ、技能実習生を調査したのか。ベトナム人留学生が技能実習生を調査するに至った背景を何回かにわけて掘り下げたい。

■「ベトナム人技能実習生に対する調査は自分の使命」

現金収入を求め農村から都市への出稼ぎ者が増加中だが、海外へ出稼ぎに行く人もいる。筆者撮影現金収入を求め農村から都市への出稼ぎ者が増加中だが、海外へ出稼ぎに行く人もいる。筆者撮影

ベトナム人技能実習生のことを調査するのは自分の使命だと思った――。

ハノイ市郊外出身のグエン・ヒュー・クイーさん(27)は、こう切り出した。

それは2016年1月、ハノイ市の中心部にあるホアンキエム湖の近くのカフェでのことだった。クイーさんは京都の龍谷大学国際文化学部の学士課程に正規入学した後、4年の課程を終えて、2015年9月に卒業したという。

そんなクイーさんが龍谷大学での卒業論文のテーマに選んだのが、日本の「外国人技能実習制度」により日本で働くベトナム人技能実習生の就労状況だった。

はきはきと話し、にこやかな表情を見せてくれるクイーさん。ときおり関西弁も出てくる流ちょうな日本語で自身について話してくれる。その日本語能力の高さと日本に関する知識の深さから、クイーさんが日本で必死に勉強をしてきたことをうかがわせる。同時に、彼の話からは、彼自身が社会に関して批判的な視点を持っていることをひしひしと感じさせる。

「どうして技能実習生を卒業論文のテーマにしたのですか」

こうたずねると、それまでにこやかだった彼の表情はすっと引き締まった。

彼はこちらをじっと見据えながら、「自分は技能実習生でした。自分が経験したことだから、これを研究して実態を明らかにしたいと、龍谷大学に入る前から決めていました。実習生の調査は自分の使命でした」と、言い切った。

■「日本の製造業の高い技術を学びたい」という強い希望

ベトナム北部の農村。技能実習生の多くは農村出身だ。筆者撮影ベトナム北部の農村。技能実習生の多くは農村出身だ。筆者撮影

クイーさんは1988年にハノイ市近郊のハタイ省(現在はハノイ市に吸収合併)に生まれた。

ベトナムでは、長きにわたった戦争の後、1975年のサイゴン陥落、翌76年の南北統一を経て現在のベトナム社会主義共和国となった。

一方、「戦後」のベトナムはカンボジア、中国との武力衝突を経験するとともに、国際的に孤立する。旧ソ連をはじめとする東側諸国との外交関係をよりどころにしつつも、西側諸国との貿易や投資関係は進展せず、国内経済は困難に陥った。

その後、1986年のベトナム共産党の第6回党大会で、市場経済の導入と対外開放を柱とする「ドイモイ(刷新)」政策が採択され、社会・経済体制の転換へと舵が切られた。現在に続く経済成長時代を迎えるのは、それ以降となる。クイーさんが生まれたのは、「戦後」ベトナムの大規模な社会変革の最中だった。

クイーさんの父親は技術者。母親は、以前は農業をしていたが、現在は主婦として家にいる。兄は医師だ。

こうしたクイーさんが技能実習生としての来日を決めたのは、高校卒業後に入学した専門学校時代の2007年のことだった。

ベトナムでは、短期大学や大学の卒業生の就職難が問題となっている。学歴を積んでもなかなか良い仕事がに就くことのできない若者が少なくない。また、以前から「起業したい」という希望があったことから、クイーさんは高校卒業後に大学には行かず専門学校に入学し、旋盤などの技術を勉強していた。

そんな学生時代のある日、在籍していた専門学校が日本への技能実習生の送り出しを手掛ける仲介会社と提携し、技能実習生として来日する学生の募集を開始した。

この情報を得たクイーさんは、「日本の製造業の高い技術を学びたい」と、技能実習生の募集に応募した。そして、面接やペーパー試験などの学内選考を通過した後、受け入れ企業の面接にも合格し、技能実習生として日本にわたることになった。

専門学校で金属加工を学んだ彼にとって、金属加工をはじめとする製造業部門の高い技術を有する日本は、技術や知識を伸ばすことのできる大きな可能性を秘めた場所に思えたのだ。

クイーさんは、「自分の学んだ分野で技能実習生の募集があったので、応募しました。技術が生かせない分野だったとしたら、技能実習生に応募しなかったでしょう」と話す。

彼は金属加工の専門性を高めるため、日本の技術に大きな希望を抱いた。日本の技術を学ぶことが自分の夢を叶え、人生を豊かにすることだと思えたのだ。両親も彼が技術を学ぶために渡日することに賛成し、笑顔で送り出してくれることになった。

■「日本の技術」への期待、喧伝される「憧れの日本」

海外に出稼ぎ者を多数送り出しているベトナム北部の農村。筆者撮影海外に出稼ぎ者を多数送り出しているベトナム北部の農村。筆者撮影

「日本の技術」への技能実習生の期待は大きい。

技能実習生の受け入れ機関を監視する役目を担っている国際研修協力機構(JITCO)は、ホームページで、「技能実習制度は、最長3年の期間において、技能実習生が雇用関係の下、日本の産業・職業上の技能等の修得・習熟をすることを内容とするもの」と説明する。また、「この制度は、技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもので、我が国の国際協力・国際貢献の重要な一翼を担って」いるとする。

一方、技能実習制度の下では、多くの技能実習生が単純労働部門で働くとともに、人権侵害にさらされる事例もあるなど、これまでに技能実習制度の「技術移転」「国際協力」という建前が有名無実化しているケースが多々指摘されてきた。

だが、ベトナムでは今も技能実習生として日本にわたる若者たちの中には、本国よりも高い収入を得るという経済的な利益だけでなく、「日本の技術」「日本の働き方」を身につけることへの期待に胸を膨らませている人も少なくない。

ベトナムでは、日本の対ベトナム政府開発援助(ODA)や日本企業の対ベトナム投資の規模が大きい上、日本製品が普及しており、日本はハイテク技術を有する「経済大国」として、ととらえられているからだ。

そして、こうした「日本の高い技術」への期待を増幅させるのが、「実習生ビジネス」を担う仲介会社(いわゆる「送り出し機関」)だ。

ベトナムでは政府の認可を得た仲介会社だけが技能実習生を送り出すことができるが、こうした仲介会社は技能実習生の候補者を集める際に「日本の技術」「日本の働き方」という文言を打ち出し、若者たちを日本での技能実習へと引き付けようとしている。

一方、送り出し地ベトナムで展開されている「実習生ビジネス」において、技能実習生は搾取にさらされている。技能実習制度においては、日本という受け入れ先国で技能実習生が搾取されるだけではなく、送り出し地においても搾取の構造が構築されていると言えるだろう。

次回は、送り出し地ベトナムにおける「実習生ビジネス」において、クイーさんがなにを経験したのかをリポートしたい。 (「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(2)」に続く)

ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(2)送り出し地の実習生ビジネスと借金による「拘束」

ハノイ市でバイクに乗る人々。出稼ぎ収入が耐久消費財の購入にまわることも。筆者撮影

数々の課題が指摘されてきた日本の「外国人技能実習制度」。この制度のもとで働くベトナム人技能実習生を調査し、大学の卒業論文を書いたのは、ベトナムから日本に留学したハノイ市郊外出身のグエン・ヒュー・クイーさん(27)だ。クイーさんはなぜ、技能実習生について卒業論文を書いたのだろうか。

前回(「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(1)差別と搾取の技能実習制度と『憧れの日本』」)は、クイーさんの来日の背景を伝えた。今回は、クイーさんが技能実習生として来日するに当たり直面したベトナムにおける「実習生ビジネス」について伝えたい。

■「実習生ビジネス」の広がりと100万円の渡航前費用

ハノイ市の若者。筆者撮影ハノイ市の若者。筆者撮影

ベトナム人が技能実習生として来日することは、そうたやすいことではない。

「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(1)差別と搾取の技能実習制度と『憧れの日本』」で書いたように、クイーさんは、当時在籍していた専門学校の学内でのペーパー試験などの選考に加え、受け入れ企業との面接にも合格する必要があった。

さらに、なによりも大きなことは、日本にわたる前に、仲介会社(いわゆる「送り出し機関」)に対して、高額の渡航前費用を支払うことが求められたことだ。

クイーさんは来日に当たり、60万円程度を仲介会社に「保証金」として預けることが要求された。銀行口座をつくり、そこに60万円程度の預金をしてから、その口座の通帳を仲介会社に預けたという。

この「保証金」は3年という契約期間を満了すれば、手元に戻ってくるもので、契約に違反すれば没収されるという預け金だ。この「保証金」を取り戻そうとすれば、何か起こっても、途中で技能実習生としての就労をやめることができなくなる。

クイーさんはさらに、渡航前訓練センターで学ぶ日本語の授業料、ビザ(査証)やパスポートの手数料、航空券、各種の必要書類の手数料として、40万円以上を仲介会社に支払った。つまりクイーさんは来日前に、まだ何も稼ぎを得ていない段階で、日本へ技能実習生としてたるため渡航前費用として計100万円程度を支払ったことになる。

ベトナムの最低賃金は2016年1月に、最低賃金が最も高いハノイ市やホーチミン市などが入る「地域1」で月350万ドン(約157米ドル、約1万7,555円)に引き上げられた。

こうしたベトナムの賃金水準から見ると、100万円という金額は非常に大きなものになり、ベトナムの人々にとって簡単に支払うことができないものであることが分かるだろう。もちろん日本の水準から見ても、100万円は高額だ。

しかも、「仕事をする」という目的を持った人、つまりお金を稼ぐ必要のある人が、これだけの金額を支払うのだ。

ベトナムでは、技能実習生として日本にわたる場合、ベトナム労働・傷病軍人・社会省(MOLISA)の認可を受けた仲介会社を通じて手続きを行うことが必要になる。

技能実習生にとって仲介会社の利用は必須な上、仲介会社はその事業活動を活発化させている。そして仲介会社が設定する高額な手数料や保証金を支払うことが一般化している。

私が、ベトナムで、日本や台湾など海外への移住労働の経験者に、「なぜ仲介会社を使うのですか」とたずねた際、「仲介会社を利用しなければ、海外に行けない」と答えた人もいた。

ベトナムでは、技能実習生としての来日をはじめの送り出しは、もはや仲介会社が重要な役割を担う「実習生ビジネス」になっているのだ。

■詐欺事件、高額の費用、「保証金」という名の足かせ

ベトナムの農村。農村から海外へ出稼ぎに出る人は少なくない。筆者撮影ベトナムの農村。農村から海外へ出稼ぎに出る人は少なくない。筆者撮影

技能実習生の多くはクイーさんのように渡航前費用として、渡航前訓練センターの授業料、ビザ、パスポート、各種手続きの手数料、航空券などの費用を仲介会社へ支払う。

渡航前費用は人によって異なるが、日本への技能実習生としての渡航の場合、100万〜150万円という高額になるケースも少なくない。

さらに、渡航費用だけ徴収して、実際には海外に送り出さない仲介会社や、仲介会社を紹介するとして手数料をだましとる仲介者もおり、こうした詐欺行為によって大金を失う人も出ている。

また、クイーさんの事例のように「保証金」が渡航前費用に含まれるケースもある。「保証金」は契約を満了して帰国すれば返金されるが、契約を満了しなかった場合、返金されない。

■借金によって工面する渡航前費用、奪われる自由

海外への出稼ぎ者を出しているベトナムの農村。人々は希望を抱き農村を出る。筆者撮影海外への出稼ぎ者を出しているベトナムの農村。人々は希望を抱き農村を出る。筆者撮影

一方、技能実習生として来日するベトナム人は、そもそもお金を稼ぐという目的を持った人たちであり、こうした大金を手元に持っていないケースがほとんどだ。

そのため、ベトナム人技能実習生の大半が借金をして、渡航前費用を工面している状況がある。私が移住労働経験者に話を聞いた中では、渡航前費用のほぼ全額を借り入れたというケースも少なくなかった。

つまり、技能実習生の多くは、ベトナムで普通に働くだけではとうてい稼ぐことが不可能な莫大な額の借金を背負った形で来日し、働くことになるのだ。

技能実習生は高額の借金につながれた形で就労することになる。

そのことは技能実習生の行動を制限することにつながるだろう。

借金があるために、就労環境や賃金をはじめとする処遇などに問題や不満があったとしても、受け入れ機関に対し、苦情や不満を訴え、状況の改善を求めることは容易ではない。

日本ではこれまでに、受け入れ機関が外国人技能実習生を「強制帰国」させるケースも発生しており、こうした中で、もしも技能実習の期間が満了するのを前に帰国させられることになれば、日本での技能実習生としての就労の中で満足に稼げないだけでなく、多額の借金が残ってしまうことになる。

そして、それだけ多額の借金をベトナムで稼ぐことが困難な中では、技能実習生とのその家族の経済状況は一気に悪化する。

こうした借金にしばられ、拘束された状況が、技能実習生の権利や自由を奪うケースもあるだろう。

借金をして来日するという、ベトナムから日本への技能実習生としての移住労働のあり方――。このことは「送り出し地」における「実習生ビジネス」をめぐる課題だが、同時に外国人技能実習制度を運用する日本にとっても関係のある問題だ。しかし、日本の政府や受け入れ機関はこの問題に対し、これまで真摯に取り組んできたことがあっただろうか。(「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(3)」に続く)

ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(3)搾取にさらされた労働と技能習得の「不可能性」

巣内尚子  | ジャーナリスト2016年4月27日 12時31分配信

ベトナムの自転車タクシー「シクロ」の運転手。ハノイ。筆者撮影

日本の「外国人技能実習制度」。アジア諸国の若者たちがこの制度を通じ、日本各地で就労し、日本の産業を支えている。だが、外国人技能実習制度をめぐっては、低賃金などの処遇の問題に加え、就労先での暴力やセクハラ、不当な「強制帰国」など数々の人権侵害が伝えられてきた。

ベトナムから日本に留学したハノイ市郊外出身のグエン・ヒュー・クイーさん(27)は、こうした技能実習制度について調査し、大学の卒業論文を書いた。

この連載の1回目(「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(1)差別と搾取の技能実習制度と『憧れの日本』」)ではクイーさんの来日の背景を、2回目「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(2)送り出し地の実習生ビジネスと借金による『拘束』」では、ベトナムにおける「実習生ビジネス」について伝えた。

3回目となる今回は、技能実習生の「技能習得」をめぐる実態と、技能実習生が低賃金労働に置かれていること、さらに「家賃」の支払いなどを求められるため思ったように稼げない状況をリポートする。

■打ち砕かれる技術習得への希望、技能実習制度を知らない?受け入れ企業

日本など海外へ出稼ぎ者を出しているベトナム北部の農村。筆者撮影日本など海外へ出稼ぎ者を出しているベトナム北部の農村。筆者撮影

「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(2)送り出し地の実習生ビジネスと借金による『拘束』」で書いたように、クイーさんは100万円に上る高額の渡航前費用を借金により工面した上で、この費用を仲介会社(いわゆる「送り出し機関」)に支払った後、来日前の日本語研修を経て、2008年3月に来日した。

クイーさんは、日本到着後は監理団体による日本語研修を京都で受け、その後、滋賀県の実習先機関(受け入れ企業)での就労をスタートした。

しかし、ほどなくしてクイーさんは受け入れ企業で予想しなかった事態に直面する。

専門学校で学んだ技術や知識を生かせると思って期待に胸を膨らませて来日したものの、受け入れ企業の工場では、彼に金属加工の技術や専門性の高い仕事を丁寧に教えてくれることはなかったからだ。

そもそも現場で働く従業員は、技能実習制度についてよく知らない様子だったという。そして、クイーさんに与えられたのはいわゆる「雑用」で、技能習得のチャンスはなく、単純労働を毎日繰り返すほかなかった。

■技術を教えることを拒否された技能実習生

日本を含む海外への出稼ぎ者を出しているベトナム北部の農村。筆者撮影日本を含む海外への出稼ぎ者を出しているベトナム北部の農村。筆者撮影

だが、こうした中でも、クイーさんは工場の日本人従業員の技術を目で追いながら、技術を「自分のものにしよう」と考えるなど、簡単には希望を捨てなかった。

クイーさんは勤務後、毎晩のように自室で日本語の勉強をするとともに、技術関連の資料を読みこんだ。

日本の高い技術を身につけたい――。

日本の技術を身につけてからでないと、帰国できない――。

そんな思いを抱くクイーさんはある時、自分で工場の機械を動かしてみようとした。

それは現場の従業員の許可を得ないままの「勝手な」行動だった。しかし、技術を身につけたいと来日したクイーさんにとっては、なんとかして技術を学びたいという切実な願いから出たものだ。

だが、この彼の行動は現場の従業員を怒らせることになり、彼は従業員から厳しく注意を受けた。

この際、クイーさんは泣きながら、「なぜ技術を教えてくれないのですか」と日本人従業員に訴えた。

しかし、返された言葉は、クイーさんをさらに打ちのめすことになる。

「おまえに技術を教えても、3年間の実習が終わったら国に帰る。おまえに教えても、うちの会社のためにはならない」

日本人社員はこう言い放ったのだという。

それまで技術の習得を期待してきたクイーさんは、この言葉を前にして身動きできなくなった。

彼は「日本の高い技術を身につける」という希望を抱き、学内での選考を通過した上で、100万円に上る高額の渡航前費用を借金してまで工面し、人生の貴重な3年間を日本ですごそうと思いながら、来日したのだった。

彼は技能実習生としての来日に、自分の人生を賭けていたのだ。

けれど、日本で技能実習生としてのクイーさんに求められていたことは、決して技術の習得ではなかった。

■残業がないということの意味、少ない賃金を補う残業

日本を含む海外への出稼ぎ者を出しているベトナム北部の農村の家。筆者撮影日本を含む海外への出稼ぎ者を出しているベトナム北部の農村の家。筆者撮影

その上、クイーさんを悩ませたのは、「思うように稼げない」という状況だった。

もともとの低賃金に加え、当時はリーマンショックの時期でもあり、職場ではほとんど残業がなかったからだ。

クイーさんもそうだが、技能実習生の多くは高額の渡航前費用を仲介会社(いわゆる「送り出し機関」)に支払って来日している。

渡航前費用は借金によって工面しているケースが多いこともあり、技能実習生の中には、「残業によってより多くの稼ぎを得たい」と考える人は少なくない。

限られた賃金しか得ることのできない技能実習生にとって、残業の持つ意味は大きいのだ。

しかし、リーマンショックの影響は大きく、クイーさんの実習先企業も残業をするほどの仕事量がなかったようだ。そのため彼は技術を習得する道を阻まれただけではなく、思ったような稼ぎを得ることもできなかった。

■手にした賃金でまず借金返済、「お金が貯まらない」

クイーさんが直面した課題は他にもあった。

彼の収入は、研修1年目には基本給9万3,000円程度で、そこから税金、保険料、「家賃」2万5,000円を引かれると、手取りは6万5,000円だけだった。この手取りから食費などを出すと残ったのは月に3〜4万円だけになる。

2年目、3年目は基本給が11万8,000円ほどで、保険料、税金、「家賃」を引くと、手取りは9万5,000円程度になった。そこから食費などの生活費を払うと、残るのは5万円程度である。

クイーさんは、基本的に自炊し、昼食も自分たちでお弁当をつくって職場に持って行くなどして支出を切り詰めていたが、手元には思ったほどのお金が残らなかった。

一方、クイーさんは渡航前費用を支払うために借金をしていたため、手元に残ったお金はまず借金返済に充てられた。

もともと限られた収入。そして借金の返済。貯金は容易ではなかった。

■「家賃」による搾取、室内でもコートが必要な老朽化した部屋

農村につながる道路。周辺で企業投資も進むが、海外就労をする人も依然多い。筆者撮影農村につながる道路。周辺で企業投資も進むが、海外就労をする人も依然多い。筆者撮影

さらに、クイーさんが支払っていた「家賃」には疑問がつきまとっていた。

クイーさんは同僚のベトナム人実習生1人と会社が用意した部屋で同居をしていた。この際、1部屋に対し「家賃」は1人2万5,000円ずつ、2人で5万円を支払っていたことになる。

ただし、会社が用意した部屋は2DKと広さこそ十分にあったものの、古く老朽化した建物だった。設備は不十分で、夏はとにかく暑く、冬はとても寒かった。

クイーさんは、電気代節約のためにクーラーは極力使わないようにしていた。少ない賃金しかないため、電気代も馬鹿にならないのだ。

また、部屋にはこたつがあったものの、途中から壊れて使用できなくなった。クイーさんたちにはものを余計な買う経済的な余裕がないため、ほとんどものがないがらんとした和室で、暑さや寒さにたえながら過ごすほかなかったのだ。

冬の寒さは特に厳しく、「外よりも部屋の中のほうが寒かった」というほどだったため、クイ―さんは室内でも常にコートを着て寒さをしのいだ。あまりに寒さに耐えかね、会社に訴え、やっとのことで電気ストーブとカーペットを支給されたが、それまでずっと我慢して過ごしていた。 

ベトナムでは日本はまだまだ経済大国として憧れの存在であり、技能実習生の募集に当たっては「日本の高い賃金」が喧伝されている。

私もベトナムにいた際、ベトナム人から「日本では月の給料は25〜30万円が普通でしょう?」と聞かれたことがあった。こうした日本の賃金や就労に関するイメージと、技能実習生の実際の日本での賃金実態や就労状況はかけ離れているとしか言いようがない。

それでも多くのベトナム人が、日本での技能実習生としての就労に自分たちの夢や希望を託そうとするのだ。

一方、外国人技能実習制度では、「国際協力」「国際貢献」のために技能実習生への技能移転を図るという建て前を掲げながらも、実際には、技能実習生の中には低賃金の単純労働部門に配置されている人が少なくなく、技能実習生が技能習得の機会を十分に与えられているとはいいがたい。

建て前と実態の間に大きなかい離が存在するのだ。

そして、日本で技能実習生が直面する技能実習の実態は、夢や希望を叶えることが生易しいものではないということを技能実習生自身に鋭く突き付ける。(「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(4)」に続く)

ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(4)気のいい普通のおじさんを変えてしまう恐ろしい制度

巣内尚子  | ジャーナリスト2016年5月2日 18時19分配信

ハノイの若者。筆者撮影

ベトナムから日本に留学したハノイ市郊外出身のグエン・ヒュー・クイーさん(27)。私がハノイで出会ったクイ―さんは技能実習生として来日して3年にわたり日本ではたらいた後に、日本の大学に入学した。そして自身の技能実習生としての経験から出てきた問題意識をもとに、日本の「外国人技能実習制度」について調査し、卒業論文を書いた。

この連載の1回目ではクイーさんの来日の背景を、2回目ではベトナムにおける「実習生ビジネス」について、そして3回目では技能実習生の「技能習得」をめぐる実態と低賃金などの搾取的な労働の在り方を伝えた。

一方、外国人技能実習制度の複雑さはそれが合法的に外国から技能実習生を受け入れる制度ながらも、この制度が運用される中で搾取や人権侵害が起きているということだ。

この半面、技能実習制度の理解を難しくするのは、技能実習生が受け入れ企業と良好な関係を構築するケースもあることだ。その上、技能実習生自身が低賃金労働や人権侵害に直面しても、それを不当なことだと認識していない場合もあり、これも技能実習制度というものが持つ意味合いを容易には咀嚼できないようにしている。

合法的な技能実習生の受け入れなのに、搾取や人権侵害があり、一方では、技能実習生と受け入れ企業とが関係を構築することもある。外国人技能実習制度は、さまざまな側面を持ち、一筋縄ではいかない制度のようだ。

4回目となる今回は日本の受け入れ企業と技能実習生との関係から、技能実習制度について考えたい。

■受け入れ先企業の社長と3年間続けた「交換日記」、”搾取”と”良好な関係”のはざまで

技能実習生など海外への移住労働者を出しているベトナム北部の省。筆者撮影技能実習生など海外への移住労働者を出しているベトナム北部の省。筆者撮影

「高い日本の技術」を身につけたいと、100万円に上る高額の渡航前費用を借金により工面し技能実習生として来日したクイーさんだったが、受け入れ企業では「雑用」をあてがわれ、技能習得への期待を打ち砕かれた。

一方、クイーさんはこうも語る。

「実習先は中小企業だったので、そもそも日本人社員も楽ではなかったのだと思います。技能実習生とはもちろん給料は違うけれど、日本人社員も残業をするなど、仕事で大変なことがあったと思います」

また、もともとこの企業が技能実習生を受け入れたのは、クイーさんともう1人の実習生が初めてのことで、技能実習生制度についても社内ではよく知られていなかったようだ。そして、日本人社員自身が、仕事に追われていたという。

日本人社員の中にはクイーさんを地域の日本語ボランティア教室に連れて行ってくれるなど、親切にしてくれた人もいた。

同時に、この会社の社長とクイーさんは、日本語学習のためもあり3年にわたり日本語で日記を交換したのだという。

社長はクイーさんのことを気にかけて、日本語のことだけではなく、自身の考えや仕事の哲学を日記に書いて教えてくれた。

社長との日記の交換は、日本での技能習得の希望を打ち砕かれてしまったクイーさんをはげますこととなった。

クイーさんのケースは、現場での仕事では、雑用を押し付けられ技術を教えてもらえない上、低賃金で働かされる半面、親切にしてくれる人もいるというように、その状況は複雑なものだったのだ。搾取され、労働現場で希望に沿わない不当な扱いを受ける一方で、一定の親密さを有する人間関係も構築していたのだ。

技能実習生の経験者からは、クイーさんが経験したような日本企業の日本人との交流も聞かれることが少なくない。

また、技能実習生の経験者と話していたとき、彼ら彼女らから「会社の人とまた会いたい」「会社があるまちを再訪したい」という発言が出たこともあった。

たしかに、海外からやってきた若者たちの面倒をみたり、親切にしたりする人もいるだろう。

さらに、ベトナム人技能実習生の受け入れ企業の中には、実習生の働きぶりにほれこみ、ベトナムに進出して、現地法人の幹部に元実習生を充てるケースも出ている。企業の中にも、技能実習生を事業を支える重要な存在としてとらえ、関係を構築したり、現地法人の幹部に登用したりする企業もあるのだ。

■ベトナム人技能実習生の比較対象はベトナムの賃金水準や就労状況

ハノイの新興地域。地域格差が広がり海外移住労働に期待を抱く人が出ている。筆者撮影ハノイの新興地域。地域格差が広がり海外移住労働に期待を抱く人が出ている。筆者撮影

この半面、「日本の会社の人に親切にされた」と話す技能実習生経験者に、就労状況や賃金について詳しく聞くと、実際には低賃金の搾取的な労働を行っていたという話がでてくることもある。

けれど、そうした状況を、彼ら彼女らは一定程度、受け入れてもいるのだ。

なぜだろうか。

これは、ベトナム人技能実習生にとっては、比較の対象になるのは、日本の賃金水準や就労状況ではなく、ベトナムの賃金水準や就労状況だからだろう。

技能実習生の賃金は、日本人労働者にとっては就労を躊躇する金額であっても、ベトナムの水準とくらべればたしかに高い。

その上、ベトナムでは労働者保護や関連法規の整備は現在でも課題となっている。出身国で、労働者保護のぜい弱性や賃金水準の低さといった課題がある中で、技能実習生としての日本での就労は場合によっては「出身国よりはよいし、まし」としてとらえられることもあるのではないだろうか。

なによりも、経済発展の最中にあるベトナムから来た技能実習生にとっては、お金を稼ぎ、家族に送金することは、家族の暮らしを支えるという重要な意味を持つ。家族のため、自分の人生のために、さまざまなことを我慢してでも、日本での就労を乗り切り、ベトナムよりも高い賃金をできるだけ多く持ち帰りたいと思うのではないだろうか。

だが「出身国よりはよいし、まし」という技能実習生としての就労を、技能実習生本人が許容したとしても、それを日本社会の側が許容してもいいのだろうか。

日本人労働者が敬遠しがちな労働部門で、日本との経済格差のあるベトナム出身者が、低賃金で、かつぜい弱な労働者保護体制のもとで働くという技能実習制度のあり方への疑問はつきない。日本の労働現場で、アジア出身の若者が搾取的な低賃金労働を担うとことが、公然と行われてしまうのはなぜだろうか。

■「よい会社」と出会えるかどうかは”運しだい”

ハノイの商業施設。地域格差が広がり海外移住労働に期待を抱く人が出ている。筆者撮影ハノイの商業施設。地域格差が広がり海外移住労働に期待を抱く人が出ている。筆者撮影

その上、受け入れ企業と技能実習生とが常に良好な関係を構築するとは言えない。

技能実習生制度では、たしかに場合によっては「人と人との交流」が生まれる可能性があり、受け入れ企業やそこで働く日本人と技能実習生との間で「個人的な関係」が構築されることもあるだろう。

しかし、技能実習制度をめぐっては、賃金水準の低さや差別的な待遇、長時間労働、賃金の未払いなど数々の課題が既に起きている。

私が聞き取りをした元技能実習生の中にも、就労先企業の日本人に暴力やセクハラを受けた人もいた。 

重要な問題は、技能実習生がどのような受け入れ企業で就労するのかは、「偶然」に左右されることが少なくないということだ。

さらに、技能実習生は受け入れ企業との間で課題があっても、別の企業に転職することができない。

そのため技能実習生が日本で搾取的な処遇に直面するのか、あるいはきちんと処遇してくれる受け入れ企業で働けるのかどうかは、「運まかせ」なのだ。

■”期間限定の低賃金労働”を許す技能実習制度、構造が生み出す搾取と人権侵害

ベトナムの北部にある農村の路地。筆者撮影ベトナムの北部にある農村の路地。筆者撮影

こうした日本の受け入れ企業と技能実習生との関係をどうみればいいのだろうか。そして、この複雑に入り組んだ外国人技能制度とはなんなのだろうか。私は技能実習生の経験者に話を聞きながら、頭を悩ませることが少なくなかった。

一方、私の疑問にこたえるヒントになりそうなのが、次の言葉だ。

「技能実習生制度は、気のいい普通のおじさんを変えてしまう恐ろしい制度」

この言葉を発したのは、技能実習生など外国人労働者の支援活動を長年にわたり行ってきた鳥井一平氏(全統一労働組合)だ。

鳥井氏は2015年6月27日に法政大学市ヶ谷キャンパスで開かれた公開研究セミナー「在留管理と共生−“偽装”移民政策を問う」(主催:移住者と連帯する全国ネットワーク=移住連)で、技能実習制度が構造的に持つ課題をふまえながら、「技能実習生を受け入れる企業の経営者は気のいい普通のおじさん。技能実習生制度は気のいい普通のおじさんを変えてしまう恐ろしい制度」だと語った。

個人それぞれの優しさや親切心があったとしても、そもそも低賃金での期間限定の労働を日本と経済格差のあるアジア出身者に担わせるという技能実習生制度の構造そのものが、技能実習生への搾取や人権侵害を招くなど、技能実習生を困難な状況におとしめるのではないだろうか。

技能実習制度の中で、人と人との交流も確かに生まれるだろう。けれど、そもそもの制度の持つ構造的な課題は受け入れ企業の「気のいい普通のおじさん」を変えるとともに、技能実習生を搾取や人権侵害のリスクにさらされやすくする。(「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(5)」に続く)

ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(5)「受け入れ企業が怖い」インタビューを拒む実習生

巣内尚子  | ジャーナリスト2016年5月4日 16時25分配信

ベトナムの家族。技能実習生の多くは故郷の家族のために仕送りする。ハノイ。筆者撮影

ベトナムのハノイ市郊外出身のグエン・ヒュー・クイーさん(27)は技能実習生として日本ではたらいた後、京都の龍谷大学に入学した。そしてクイ―さんは、自身の技能実習生としての経験から感じた問題意識をもとに、日本の「外国人技能実習制度」について調査し、卒業論文を書いたのだ。

この連載の1回目ではクイーさんの来日の背景を、2回目ではベトナムにおける「実習生ビジネス」について、そして3回目では技能実習生の「技能習得」をめぐる実態と低賃金などの搾取的な労働の在り方を伝え、4回目では日本の受け入れ企業と技能実習生との関係から技能実習制度について考察した。

5回目となる今回は、クイーさんが龍谷大学の卒業論文に向けて、技能実習生を調査する中で直面した課題について伝えたい。

■日本語ボランティア教室に通いつめる

子どもを抱くベトナムの女性。技能実習生の中には子どもを持つ既婚者もいる。筆者撮影子どもを抱くベトナムの女性。技能実習生の中には子どもを持つ既婚者もいる。筆者撮影

クイーさんは「日本の高い技術」を身につけるという大きな期待を抱き、100万円に上る高額の渡航前費用を借金により工面した上で、この費用を仲介会社(いわゆる「送り出し機関」)に支払った後、2008年3月に来日した。

だが、滋賀県の受け入れ企業で彼に与えられたのは、いわゆる「雑用」だった。

さらに、「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(3)搾取にさらされた労働と技能習得の『不可能性』」で伝えたように、クイーさんが「技術を教えてほしい」と頼んだものの、日本人社員は「おまえに技術を教えても、3年間の実習が終わったら国に帰る。おまえに教えても、うちの会社のためにはならない」と言い、技術を教えることを拒否したのだという。

クイーさんは日本人社員からの「お前に教えても会社のためにならない」との言葉を受け、技能実習生として日本の製造業の技術を身につけるということへの希望を持つことができなくなってしまった。彼が当初抱いていた希望は打ち砕かれたのだ。

だが、このまま3年の技能実習の期間をやりすごすわけにはいかない。

そう考えたクイーさんが賢明に取り組んだのは日本語の勉強だった。それまでも仕事が終わった後、毎晩、日本語を学んでいたが、技術関連の勉強をやめ、日本語の勉強に集中することにした。

仕事の後、スーパーマーケットで買い物し帰宅して、そこで夕飯を済ませてから、夜7時から24、25時まで日本語を独学で勉強した。

さらに、会社が休みとなる土日など、外出の時間がある日には、地域の日本語ボランティア教室をいくつかはしごしてまわった。

日本にはボランティアが無料で日本語を教える教室が各地にある。こうした日本語ボランティア教育は日本に暮らす外国人の日本語習得を支援している。

クイーさんは自分の自宅周辺のいくつかの日本語ボランティア教室を1日に何カ所かめぐり、そこで日本語会話の勉強をしていたのだ。

■最難関のN1を取得

ハノイで自転車に乗る子どもたち。筆者撮影ハノイで自転車に乗る子どもたち。筆者撮影

こうした毎日こつこつ勉強を続けたクイーさんは、来日から2年目の2009年に日本語能力試験(JLPT)の「N2」を取得した。

日本語能力試験(JLPT)は日本語を母語としない人の日本語能力を測定・認定するための試験で、N1〜5のレベルで能力は測定される。

N2は上から2番目のレベルで、「日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる」水準という。

その上、クイーさんはさらに勉強を継続し、2010年には最難関の「N1」に合格した。

技能実習生は就労に時間を取られるほか、日本語を学ぶ機会も不十分なため、例え日本で3年暮らしたとしても高いレベルの日本語を身につけられることのできる人は、実際にはそう多くはない。

日本語能力試験に合格したとしても、そうとう勉強した人でも「N2」が良いほうである上、これより下のレベルの「N3」を取得することも簡単ではない。働きながら外国語を学ぶことは、容易ではないのだ。

そうした中でのクイーさんの「N1」取得は快挙と言える。技能実習生を管理している管理団体はクイーさんの「N1」取得を称えるため、彼に米アップルの「アイパッド(iPad)」を贈ったという。

■龍谷大学に合格

一方、クイーさんの目標はただ単純に日本語を身につけることではなかった。彼は日本の大学への正規入学を目指していた。

ただし、大学の試験はペーパー試験に加え、面接もあった。面接では高度な日本語の会話能力が求められる。クイーさんが日本語ボランティア教室に通い詰めたのは、より多くの日本人と会話をすることにより会話能力を習得するためだったという。

こうした取り組みの甲斐もあり、その後、クイーさんは京都の龍谷大学の入試に合格したのだった。

勉強の時間をほとんどとれない技能実習生にとって、日本語を身につけることだけでもハードルが高い。さらに、日本の大学の入試を突破するのは異例といっていいだろう。クイーさんは技術を身につけるという当初の希望を果たすことはできなかったが、独学で勉強を続けることで、大学に合格を果たした。

■調査協力者がみつからない、「会社が怖い」

技能実習生など海外への移住労働者を出しているベトナム北部の農村。筆者撮影技能実習生など海外への移住労働者を出しているベトナム北部の農村。筆者撮影

こうして大学生になったクイーさんは入学前から研究テーマを決めていた。

それがベトナム人技能実習生の就労実態だった。

彼自身が経験した技能実習生として日本での就労と暮らしから、クイーさんはベトナム人技能実習生の就労実態を明らかにすることを「自分の使命」だと思ったのだ。

だが、彼の固い決意とは裏腹に、ベトナム人技能実習生の調査は思うようには進まなかった。

フェイスブックなどを使い、インタビュー協力者を募ったものの、まったく反応がなかったのだ。

日本でもお馴染みのSNSだが、ベトナムでも若者の間に急速に浸透しており、ベトナム人のフェイスブック使用は活発だ。ベトナムの若者にとってSNSはなくてはならないものになっている。

そのためフェイスブックなどに投稿すれば,あっという間に関係者に情報が広がる。しかし、クイーさんの投稿に対する反応は皆無だった。

なぜだろうか。

後で分かったことは、ベトナム人技能実習生がインタビューへの協力によって受け入れ先企業や管理団体から注意を受けたり、インタビュー協力を問題視されたりすることを恐れていたことだった。

これまでも書いたように、技能実習生の大半は、借金をして高額の渡航前費用を支払って来日している。クイーさんのように高額の保証金を仲介会社に預けているケースも多い。

借金を返済する必要がある上、保証金は契約期間を満了しなければ戻ってこない。そのため、技能実習生は日本の受け入れ企業との間でトラブルを抱えたり、最悪のケースとして「強制帰国」させられたりすることを恐れているのだ。

借金を返すだけのお金が貯まらないうちに「強制帰国」させられれば、後に残るのは借金だけだ。ベトナムの所得水準と比べ、はるかに高額の借金をベトナム国内での就労で返済することは困難だろう。

こうした中、技能実習生の中には、実習先の企業との間でのトラブルをさけようという気持ちが働くのではないだろうか。

クイーさんは、「実習生は企業を怖がっていた」と話す。

このためクイーさんは知人などのつながりを経てたどり着いたベトナム人技能実習生に対し、一人ひとり時間をかけて説得し、インタビューをお願いすることにした。

調査の目的や意図、調査を行う理由などをできるだけ丁寧に説明し、調査対象者それぞれとの関係を構築してから、インタビューを実施したという。(「ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(6)」に続く)

ベトナム人留学生はなぜ技能実習生を調査したのか(6)不当な「家賃」と巧妙化する搾取、悪化する対日感情

巣内尚子  | ジャーナリスト2016年5月7日 14時31分配信

ベトナムの若者。ベトナム人実習生は家族の期待を受け、希望を持ち来日する。筆者撮影

京都の龍谷大学に留学したベトナム・ハノイ市郊外出身のグエン・ヒュー・クイーさん(27)。

もともと技能実習生として日本で働いていたクイ―さんは、自らの能実習生としての経験から得た問題意識をもとに、日本の「外国人技能実習制度」について調査し、卒業論文を書いた。

「技能実習生を調査することは自分の使命」とするクイーさん。彼はなぜ、そうした強い思いを持ち、技能実習生を調査するに至ったのだろうか。

この連載の1回目ではクイーさんの来日の背景を、2回目ではベトナムにおける「実習生ビジネス」について、そして3回目では技能実習生の「技能習得」をめぐる実態と低賃金などの搾取的な労働の在り方を報告した。4回目では日本の受け入れ企業と技能実習生との関係から技能実習制度について考察し、5回目ではクイーさんが龍谷大学の卒業論文に向け、技能実習生を調査する中で直面した課題について伝えた。

今回の連載の最後となる6回目は、クイーさんの調査で明らかになったベトナム人技能実習生が直面している「時給制」「日給制」の働かせ方や、不当な「家賃」が徴収されるなど、技能実習生に対する搾取が巧妙化していることを伝える。同時に、技能実習生の対日感情の悪化が起きていることも報告したい。

■時給制や日給制で少ない賃金がさらに安くなる

ベトナムの若者たち。ハノイ。筆者撮影ベトナムの若者たち。ハノイ。筆者撮影

龍谷大学での卒業論文を書くために、やっとこぎつけた調査。

技能実習生としての自らの経験から、日本の「外国人技能実習制度」に疑問を持ったクイーさんは技能実習生の調査は「自分の使命」だとし、調査対象者をなかなか得られない中でも、なんとか調査を続けた。

クイーさんは2014年、アンケート調査、LINEやスカイプを使ったヒアリング調査、そして岡山県と滋賀県での実地調査を実施した。

複数の調査手法を用いることにより、総合的にベトナム人技能実習生の就労実態や日本での暮らしの状況を明らかにしたかったのだ。

実地調査では、岡山県で建設業に従事しているベトナム出身の男性技能実習生の居住地と、滋賀県で縫製業に従事しているベトナム人女性技能実習生の居住地を訪れ、実際の就労実態を探るとともに、居住状況も調べた。

その結果明らかになったのは、ベトナム人技能実習生が置かれた数々の過酷な状態だった。

クイーさんがまず驚いたのは、技能実習生の中に賃金を時給や日給で計算されている人がいたことだった。

アンケート調査では、対象となったベトナム人技能実習生38人中、給与計算方法として日給制が適用されている人が8人、時給制が適用されている人が5人いた。

就労先の企業によっては、「仕事のある日」「仕事のある時間」だけ給与を支払う時給制や日給制の賃金制度を導入しているところがあり、アルバイトのように実質労働分しか賃金が支払われていなかったのだという。

日給制や時給制の給与計算方法が導入されていたのは、就労状況が天候の影響を受けやすい農業や建設業だった。

農業部門の技能実習生の中には、時給制の契約で、土日など関係なく、雇用主に命じられた日に働いている上、天候が変わり作業が中止になると、そのぶんの給与が払われなくなるという人がいた。

受け入れ先の企業にとっては、日給制や時給制は技能実習生に支払う賃金を圧縮するなど、人件費節減に効果があるだろう。

しかし、再度述べたいが、ベトナム人技能実習生の多くは100万円を超えることさえある高額の渡航前費用を借金して工面して来日し、それを返済しながら日本で就労している。債務にしばられながら、日本で働いているのだ。

技能実習生として働く中では、まず借金を返すという目標があり、借金返済が終わってからやっと貯金をすることができるようになる。

それにもかかわらず、日給制や時給制が適用され、「仕事がない時間」が増えれば、賃金は低く抑えられることになる。技能実習生の賃金水準はもともと低いが、日給制や時給制はその低い賃金がさらに低くなるという可能性があるのだ。

一方、技能実習生は基本的に、最初の就労先から職場を変えることができない。転職できないのだ。

だが、技能実習生は、こうした時給制や日給制を我慢して受け入れることが多いのではないだろうか。

それは、会社との間で、トラブルが起きたり、あるいは最悪の場合、途中で「強制帰国」させられたりすれば、技能実習生に残るのは高額の借金だけだからだ。なんとしてでも、日本で就労を続け、借金を返し、そして生活費をできるだけ切り詰め、なんとかしてできるだけ多く貯金し、家族に仕送りしようとする技能実習生は少なくない。

途中で「強制帰国」させられれば、本国の所得水準ではとうてい返済不可能な高額の借金だけが残り、技能実習生とその家族の経済状況は破たんしてしまう。こうした背景から、ベトナム人技能実習生は、期待とは裏腹の低い賃金を受け入れ、帰国の日までひたすら我慢するということにもつながる。

■「家賃」という名前の不当搾取

ベトナムの女性と子ども。実習生の中には子どもを故郷に残し来日する人も。筆者撮影ベトナムの女性と子ども。実習生の中には子どもを故郷に残し来日する人も。筆者撮影

さらに、クイーさんが驚かされたのは、技能実習生がもともと低い賃金の中から「家賃」という形で不当な金銭を徴収されていたことだ。

例えば、岡山の技能実習生の事例では、20平方メートルの部屋に6人で暮らしており、1人当たりの「家賃」は2万円だった。6人で計12万円が20平方メートルの部屋に払われていたことになる。

大阪のケースでは、30平方メートルの部屋に5人で暮らし、「家賃」は1人当たり2万5,000円。30平方メートルの部屋に対し、5人で計12万5,000円の家賃が払われている格好だ。

そして、「家賃」が最も高額だったのは滋賀のケースで、30平方メートルの部屋に5人で暮らし、「家賃」は1人当たり3万3,500円もした。この30平方メートルの部屋に対して、5人分の「家賃」16万7,500円が徴収されていた。

また、クイーさんが実際に訪れた岡山のベトナム人技能実習生の住居は40平方メートルの室内に6人が暮らしていた。外壁の崩落が激しいなど老朽化している上、日当たりが悪いために暗く、換気も良くなかった。6人はそれでも1人当たり月2万円を「家賃」として払っている。

滋賀の縫製業で働く技能実習生の住居では11人が暮らしており、二段ベッドが詰め込まれ、プライバシーのない状況だった。

しかも、11人は1人当たり月2万8,500円を「家賃」として引かれていた。

11人分で「家賃」は月に31万3,500円にも上る。その上で、11人は割高な共益費と光熱費も支払っていたのだという。

■巧妙化する搾取と技能実習制度の構造的課題

技能実習生など海外への移住労働者を多くだしているベトナム北部の農村。筆者撮影技能実習生など海外への移住労働者を多くだしているベトナム北部の農村。筆者撮影

日給制や時給制による賃金の圧縮や、不当な「家賃」の徴収。たとえ、受け入れ企業が最低賃金を守っていたとしても、こうした仕組みが構築されることにより、技能実習生からより巧妙に搾取がなされるということだろう。

受け入れ先の企業の中には、制度の趣旨を理解し、適正に技能実習生を受け入れているところや、技能実習生を育て技術移転を図っている企業もあるだろう。

一方、繰り返えしになるが、技能実習生は転職の自由がないため、どのような企業で就労できるのかは、運まかせの要素が多いということを理解する必要がある。

さらに、各受け入れ企業の不正や不適切な技能実習生への対応も問題だが、同時に、悪質な対応をする受け入れ企業の発生を許す技能実習制度がかかえる構造自体が大きな問題と言える。

ベトナムという日本と大きな経済格差を抱えるとともに労働者保護や人権擁護が道半ばの国から、日本語もまだ十分ではない上、日本の制度や法律をよく知らない、諸権利が制限された期間限定の外国人労働者を受け入れるという制度の在り方。

そして、送り出し地では、送り出し国政府の積極的な労働者送り出し政策の下、高額の渡航前費用を徴収する仲介会社(いわゆる「送り出し機関」)の利用が、技能実習生としての来日には欠かせないという移住システムが形成されるとともに、経済的な困難や地元の賃金水準の低さ、日本への「憧れ」などから、借金をしてまで渡航前費用を工面し技能実習生として来日しようとする人が多数存在するという現状がある。

ベトナムからの技能実習生は来日後、債務にしばられつつ、働きながら借金を返済し、できるだけ貯金しようとする。当然、契約期間を満了することが借金返済と貯金には欠かせないため、受け入れ企業とのトラブルや「強制帰国」を恐れている。

このような構造の中で、ベトナム人技能実習生は受け入れ企業との非対称の権力関係の下、就労をすることになり、さまざまな搾取やハラスメントをも我慢して過ごすことが必要になるケースも出てくるだろう。その中で、巧妙化する搾取にさらされつつ、我慢して働き続けることになるのではないだろうか。

■対日感情が悪化

ベトナムの若者。日本に「憧れ」を持つ人も少なくない。ハノイ。筆者撮影ベトナムの若者。日本に「憧れ」を持つ人も少なくない。ハノイ。筆者撮影

さらにクイーさんが調査で明らかにしたのは、技能実習生の対日感情の変化だった。

クイーさんは調査協力者に対し、来日してから日本のイメージが変化したかどうかを聞いた。

その結果、来日前の日本の印象ついては「とても良かった」が63%、「まあまあ良かった」が34%で計97%にも上った。そのほか3%は無回答だったことから、来日前の日本への印象はおおむね肯定的だったと言える。

これに対し、来日後の日本への印象については「良かった」が8%、「まあまあ良かった」が50%となり、肯定的な回答をした人は58%に大きく減った。

さらに「あまりよくなかった」が37%になり、日本に対する印象が悪化したことが伺えたという。

厳しい就労環境や貧弱な居住空間、日給制や時給制などもあり低く抑えられる賃金といった事態を受け、ベトナム人技能実習生の中には日本への印象が悪化した人が出たと考えられるだろう。

外国人技能実習制度はアジア諸国への技術移転や国際協力をうたいながらも、実際には低賃金労働者を受け入れるとともに、アジア出身者を厳しい環境の中で低賃金で働かせ、結果的に技能実習生の日本への印象を悪化させているということだろうか。

■現在進行形の技能実習生制度

ベトナムの女性と子ども。ハノイ。筆者撮影ベトナムの女性と子ども。ハノイ。筆者撮影

調査によりベトナム人技能実習生の課題を把握したクイーさん。一方、技能実習生制度はいまも継続し、ベトナムなどアジア諸国出身の技能実習生たちが日本で就労を続けている。

技能実習制度は現在進行形で運営され、外国人技能実習生は今も、日本各地でさまざまな産業分野で就労し、日本の各種産業を支え、その中で、技能実習生一人ひとりはさまざまな経験をしながら、日本で働き、生活している。

「この制度をやめれば、問題を解決できる。でも、こんな良いビジネスはないと思う人がいるのでしょう」

クイーさんはこう語る。

彼が言うように、抜本的な制度改革がなければ、外国人技能実習生を取り巻くさまざまな構造的課題は容易には解決できないだろう。

同時に、技能実習生というアジア出身の若者たちを、一人ひとりの人間としてとらえ、彼ら彼女らがなにを考え、何に困っているのか、何をしたいのか、そのことへ寄り添っていくことが求められる。

外国人技能実習生は”代替可能な外国人労働者”ではないし、”顔の見えない匿名の誰か”ではない。それぞれの人生を切り開こうとする一人の個人がそこにいる。

そのことへの想像力を持つことが、日本という受け入れ国とその社会、そして、送り出し国であるベトナムのとその社会に問われている。(了)

■用語メモ

【ベトナム】

正 式名称はベトナム社会主義共和国。人口は9,000万人を超えている。首都はハノイ市。民族は最大民族のキン族(越人)が約86%を占め、ほかに53の少 数民族がいる。ベトナム政府は自国民を海外へ労働者として送り出す政策をとっており、日本はベトナム人にとって主要な就労先となっている。日本以外には台 湾、韓国、マレーシア、中東諸国などに国民を「移住労働者」として送り出している。

【外国人技能実習制度】

日本の厚生労働省はホームページで、技能実習制度の目的について「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力すること」と説明している。

一方、技能実習制度をめぐっては、外国人技能実習生が低賃金やハラスメント、人権侵害などにさらされるケースが多々報告されており、かねて より制度のあり方が問題視されてきた。これまで技能実習生は中国出身者がその多くを占めてきたが、最近では中国出身が減少傾向にあり、これに代わる形でベトナム人技能実習生が増えている。

巣内尚子ジャーナリスト

ジャーナリスト。大学在学中に三池炭鉱の記録映画のアシスタントを経験したほか、記録映画制作のため所沢高校問題を取材し、取材者としての活動を開始。大学卒業後はフランスに滞在し、「移民問題」を知る。その後、インドネシア、フィリピン、ベトナム、日本で記者やフリーランスライターとして活動し、各地の経済や社会を取材。特に東南アジア各国からの国境を超える移住労働に関心を深める。2015年3月〜2016年2月にベトナム社会科学院・家族ジェンダー研究所に客員研究員として滞在し、ベトナムからの国境を超える移住労働を研究。ベトナム人移住家事労働者やベトナム人技能実習生を対象にインタビュー調査を行う。

 

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