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「ひとまず貯金」がいちばん損する
http://diamond.jp/articles/-/90215
2016年5月5日 野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト] ダイヤモンド・オンライン
「投資嫌い」の国民として知られる日本人。しかし、「ひとまず貯金」という投資スタイルの背後で、大きな損失が生まれていることにはほとんどの人が気づいていない。キャッシュや預金を重視する「現金至上主義」に隠されているワナとは?
年間500件以上の企業価値評価を手がけるファイナンスのプロ・野口真人氏の新著『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから紹介していこう。
■「貯金は損しない」は噴飯物
日本人は世界でもトップクラスの「投資嫌いの国民」として知られている。みなさんの中にも「元本割れが嫌だから、株式投資なんてやらない。ひとまず預金がいちばん」という人がかなりの割合を占めているのではないだろうか。
ここで確実に言えるのは「預金は損をしない」などという考え方は、ファイナンス的な観点から言えば噴飯物だということだ。
預金よりも投資効率のいいお金の遣い方は、いくらでも存在している。僕は何も「株を買え」と言っているわけではない。株のキャピタルゲインや配当金のような目に見える価値だけでなく、目に見えない価値を高める投資も無限に考えられるはずだ。預金というのは、そうしたチャンスをすべて切り捨てている意味で、「最も確実に損をする投資」だと言えるのである。
ある金融機関に勤務する営業マンからこんな話を聞いたことがある。
「昨日、投資信託のセールスで、あるおばあさんの家に行ったんだ。彼女はこれまでずっと独身で、いまちょうど70歳。学校を卒業してから市の役場で勤め上げ、ずっと慎ましい生活を続けてきたので、なんと1億円を超える貯金がある。
これと言って趣味があるわけでもなく、日中はテレビを見てのんびりしているそうだ。年金をもらいながら、ちょっとずつ預金を切り崩して生活しているので、投資信託はいらないと断られたんだけど……」
僕は彼女の人生を否定するつもりはまったくないし、当然ながら投資信託の購入をみなさんに勧めようとも思っていない。ただ、思わず考えてしまったのは、「もしも彼女にファイナンスの知恵があったとすれば、自分の人生をどのように振り返るだろうか」ということだ。
ファイナンスは人生を変える劇薬になり得る。いままさにファイナンス理論を学びつつあるあなたも、どうか心していただきたい。今後の人生の選択が、今後大きく変わってしまうかもしれないからだ。
■100万円あったら庭に埋める?
それとも預ける?
一方、預金と現金とを比べるのだとすれば、やはり預金のほうがはるかに価値は高い。これについても見ておこう。
たとえば100万円を年利0.025%の定期預金に預けたとしても、年間250円しか利息はつかない。コンビニのATMで祝日にお金を引き出したら消えてしまうような金額である。
だとしたら、わざわざ銀行に預けたりせずに、自宅の金庫にでも保管しておいたほうがずっといいのではないだろうか。わざわざお金を下ろさなくていいという意味で利便性もあるし、札束を毎日拝めるほうがうれしいという人もいるかもしれない。
あるいは、マイナンバー制度がはじまって詳細な所得を把握されると困るから、現金取引をした分は口座を通さないようにするという人も中に入るかもしれない。いわゆるタンス預金だ(もちろんこれは立派な所得隠しとして処分の対象になるのでご注意を)。
2016年1月に日銀がマイナス金利を導入した際、金庫の売上高は2.5倍になり、警備大手セコムの株価が1週間で5.3%上昇したという報道があった。これは銀行にお金を預けずに、自分で手元に持っておこうとする人がますます増えているということなのだろう。実際、日本には何十兆円レベルでタンス預金が存在していると言われている。
そうであっても、やはり社会全体にとっては、現金で置くより、銀行に預けたほうがはるかにいい。利息がつくという以外にも、まずセキュリティ面から言っても、自宅にある現金は盗まれたり火事で燃えたり間違えて捨ててしまったりする危険性がある。一方、銀行に預けておけば、そうしたリスクはまずないし、万が一銀行が潰れてしまっても、1000万円までの元本とその利息はちゃんと手元に返ってくることになっている(いわゆるペイオフという預金保護制度)。
ただし、僕がここで言いたいのはそれとは少し違う話である。
たとえば、100万円をうまく投資できないaさんは、ひとまず銀行にお金を預ける。この段階では100万円は年250円のキャッシュフローをもたらすにすぎない。
しかし、いったん銀行に預けられた100万円のうち90万円は、資金を必要としているbさんの融資に回される。融資を受けたbさんは、代金90万円をcさんに支払う。cさんは受け取った代金90万円を銀行に預ける。こうして銀行にはaさんの預金100万円とcさんの預金90万円の計190万円があることになる。
本来100万円しかないはずの預金が190万円に膨らんでいるのは不思議な感じがするが、銀行はこうして預入と貸出を通じて、お金(預金通貨)を膨らませる機能を持っている。この働きを信用創造という。日本の場合、僕たちが銀行に預けた預金は、約10倍の金額に膨らんで流通していると言われている。
預金をしても個人へのキャッシュフローは微々たるものである。しかし、預金されたお金が「稼ぐ力」を持った人・企業に貸し出されることで、経済全体として見るとキャッシュフローが増大する結果になっている。つまり、あなたの預金も誰かの価値創造に一役買っているのである。
タンス預金をしている限り、こうした効果は絶対に期待できない。つまり、文字どおり「誰のためにもならないお金」になってしまうのである。
とはいえ、これはある種の理想論であり、日本の金融機関が本当に社会全体のキャッシュフローの創造に貢献できているかというと、やや疑問が残らざるを得ない。
たとえば、上場したばかりのゆうちょ銀行は、運用資産205.5兆(2016年3月末現在)のうち、40.8%を国債購入に充てており、貸出にはたった1.2%しか回っていない。つまり、キャッシュフローを生む力のある企業に融資せずに、4割を国に貸し出しているのである。
国は国債で集めた資金で公共事業を行ったりしているが、それらの資金が将来キャッシュフローを生む投資に使われているかというと、やはり甚だ疑わしいと言わざるを得ない。
野口 真人(のぐち・まひと)
プルータス・コンサルティング代表取締役社長/
企業価値評価のスペシャリスト
1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。
2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。
これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。
また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。
著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。
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