三菱グループが三菱自動車を買い戻した頃、軽自動車の商品力が大幅に低下していた。このため、ダイムラーの技術遺産を使って開発したのが、アイである。大々的に宣伝して売り出したものの、前輪駆動がほとんどを占める中、ミッドエンジンかリアエンジンが分からないレイアウトの製品であったため、横風に弱く、操縦性に癖があることから不人気になってしまった。買っていたのは、若い頃に後輪駆動車の経験のある中高年が多かった。

三菱自動車もeKワゴンの旧態化に抜本的な対策を取らねばならなくなったが、モデルチェンジするにも金がない。このため、軽自動車を増やしたい日産自動車と提携して共同開発の会社を立ち上げ、eKワゴンの後継車種の開発費を折半してもらうことになった。

日産自動車は、この時点でスズキからOEM車を供給してもらっていたが、三菱とは一歩踏み込んで開発の時点から関与することになった。金を出すからには口も出すと言う訳だ。このため、全体に「日産風」になっているような印象を受ける。

三菱、日産両社から発売されたものの、売れるのは日産ばかり。日産の方が、三菱の6倍売れていたそうだ。これは、あのリコール問題で「もう三菱はいやだ」と、顧客が離れてしまったからだろう。あれの後遺症は大きく、三菱車の下取り価格は大幅に下落した。このため、中古車になってからも値崩れしにくい日産ブランドに顧客が逸走してしまったのである。

●前回のリコール問題の時は、自社製品だけだったから何とかなったが、今度は日産自動車を巻き込んでいるので、事態はより一層深刻である。日産も高級車でトヨタや輸入車に敗北し、販売台数確保のために軽自動車に力を入れていたからね。
(註　鰐淵晴子さんを起用したセドリックの時代など、トヨタは足元にも及ばなかった。)

こんな事態になることは予想もしなかったが、ダイムラーが主張したように、軽自動車から撤退しておいた方がよかったなどと、今頃になって反省しても、もう遅いのである。

★三菱は、アイ・ミーブに代わる軽の電気自動車(eKワゴン・ベース)を開発していると言っていたが、今回の事態を受けて、どうも中止になったみたいね。