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ANA、JALは2期連続の最高益を確保できるか〜日本がマイナス成長に向かう中、ひとり気を吐く航空業界
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48590
2016年05月03日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■大きく業績を伸ばしそうな航空大手2社
大型連休の真っ只中とあって、内外の行楽地は多くの観光客でにぎわっている。読者の中にも、この連休中に旅に出た人は多いだろう。
そうした旺盛な旅行需要や、外国人旅行者の“爆買い”ブームに支えられ、今年度も前年度に続いて大きく業績を伸ばしそうなのが、全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD)と日本航空(JAL)の航空大手2社である。
両社の姿は、日本の実質GDPが今年1〜3月期に2期連続でマイナス成長になりかねないと取り沙汰され、2016年3月期の企業業績が4年ぶりの減益を懸念される中にあって、対照的な奮闘ぶりと言える。
しかし、本当に両社に死角はないのだろうか、航空業ならではの特色とあわせて展望してみたい。
まず、大型連休の状況だ。ここ数年、実質賃金の伸び悩みや将来への不安から財布の紐をきつく結んでいる消費者の多くが、この時期だけは余暇を謳歌する傾向が強まっている。
その結果、今回の予約商戦が好調だったのは、航空業だけではない。
■日本経済に漂う濃い陰り
例えば、新幹線。JR各社の発表によると、JR東海が前年比107%、JR東日本とJR西日本が同104%と、そろって予約を伸ばした。
原油安でガソリン価格が関東や近畿圏で7年ぶりの安値水準にあることが追い風になって、自動車で行楽に行く人も多い。高速道路は例年を上回る混雑や渋滞が予想されているという。
そこで、航空2社だ。ANAは、国内線で前年比104.0%、国際線で同112.8%の予約を獲得した。JALも国内線で同101.6%、国際線で99.2%の予約を確保した。JALの国際線のマイナスは、前年が高水準だったことに起因する。しかも、予約情報の公表は4月22日だが、その後、利用客は順調に伸びているという。
また、「今年は、間に挟まった5月2日月曜日と同6日金曜日を休めば、土、日と祭日をあわせて10連休がとれる日並びの良さが特色。(航続距離が長く運賃が高い)欧州便の利用率が高い」(JAL広報部)としている。
一方、航空大手2社を取り巻く日本経済には、濃い陰りが漂っている。
実質GDPは、昨年10〜12月期に1.1%減のマイナス成長に転落。さらに、足もとは、3月の実質消費支出が前年同月比で5.3%の減少となるなど、一段の減速を示す経済指標が多い。今年1〜3月期(5月18日に速報値発表)の実質GDPは、よくてゼロ成長、悪くするとマイナス成長に転落してもおかしくない、と懸念されている。
企業業績の減速も鮮明だ。日本経済新聞が4月28日までに決算発表をした上場企業244社(電力、金融を除く)を集計したところ、2016年1〜3月期の経常利益は2四半期連続の減益で、前年同期比20%の減少になったという。決算発表は大型連休明けに本格化するが、新興国経済の不振に資源安に伴う減損損失や米経済の減速が重なり、上場企業全体の2016年3月期通期決算が減益の公算が濃厚なのだ。
経営環境の陰りにもかかわらず、気を吐いているのが、ANAHDとJALである。両社は2016年3月期に本業の儲けを示す連結営業利益で、ANAHDが前期比49.1%増の1365億円、JALが同16.4%増の2092億円を稼ぎ出した。いずれも過去最高益を更新したのである。
昨年の大型連休の旅行需要に加えて、“爆買い”を始めとした中国・アジア方面からの訪日外国人の急増や、同時テロの影響で不審だったパリ便を除く欧州へのビジネス客の需要拡大で売上高が伸びたことが、好調な収益の原動力となった。また、歴史的な原油安によって燃料代を中心にコストが大きく下がり、採算の改善も実現した。
■2期連続の最高益更新を見込むが…
航空2社は、業績の好調が今2017年3月期も続くと強気の算盤を弾いている。
4月28日の決算発表時に示した2017年3月期見通しによると、ANAHDは営業利益が前期比6.3%増の1450億円と2期連続の過去最高益更新を見込んでいる。
強気の背景には、今回の大型連休で消費者が示した旺盛な旅行需要のほか、活発なビジネス客需要や“爆買い”訪日客需要の存在である。
加えて、同社は前年度、国際線の旅客数で前年比13%増の816万人を獲得して、初めてJALを上回った。
また、国土交通省が米航空当局と羽田空港の昼間時間帯に米国路線を開設することで合意。日本側の1日5便のうち3便をANAに、2便をJALに与える方針を打ち出した。これと別に、ANAは深夜早朝時間帯にも1枠を持つため、この路線で、JALや米国勢に比べて競争を有利に運べると見込んでいる模様だ。
一方、JALも2017年3月期の営業利益を前期比3.9%減の2010億円と、過去最高となった昨年とほぼ同じ水準を維持できると踏んでいる。
だが、死角もある。
その第一は、航空業の業績は景気との比較で遅効性が強いことだ。簡単に言えば、景気が悪化した後、だいぶ遅れて業績が悪くなる傾向があるのだ。
例えば、2008年9月のリーマンショックの際、兆候は1、2期前からあり、その影響が出た業態が珍しくなかった。にもかかわらず、航空業界はなかなか変調が表れなかった。
JALの場合も、2008年3月期に698億円と当時の同社にとって最高の経常利益を稼ぎ出した。が、翌2009年3月期には821億円と記録的な経常赤字を計上。2010年1月に会社更生法を申請し、経営破綻した。このことは、景気に対する航空会社の業績の遅効性を浮き彫りにしている。
今回も、昨年夏の世界的な株式相場の急落で鮮明になった経済の減速の影響がタイムラグを持って出て来る可能性が否定できない。
第二は、両社が業績見通しの前提にしている円相場の水準だ。ANAHDが1ドル=115円、JALが1ドル=123円と、かなり円安にみていることは大きなリスクだろう。
政府・日銀は、今春上海で開かれたG20財務大臣・中央銀行総裁会議の声明や、米財務省が4月29日に公表した「半期為替報告書」で、円安誘導を慎むよう強くけん制されている。すでに4月29日のニューヨーク外国為替市場で1ドル=106円台前半の円高が記録されており、今年度は円高で推移する可能性が高まっている。
円高が進めば、ANAHDとJALにとって原油購入コストが下がるメリットがある半面、“爆買い”訪日客の足が鈍るリスクも大きい。“爆買い”ツアー客については、すでに多くが購入物品をたくさん運べる船舶での訪日にシフトしているうえ、購入物品の単価が下がっているとの話もある。
第三に、景気の減速が一段と鮮明になれば、ビジネス客の出張減らしや、消費者の行楽手控えといった事態も予想される。
■経営効率の格差の原因
個別論に触れれば、2016年3月期の実績で、JALが売上高経常利益率15.7と高い収益性を誇るのに対し、ANAHDが同じ指標で7.3%と大きく水をあけられていることは懸念材料だ。
今回、取材が経営効率の格差に及ぶと、ANAHDは、「JALが8000億円を超す巨額の債権カットなどを柱にした国策救済を受けたことが主因だ」と、数年来の主張を繰り返した。
確かに、そうした面があるのは事実だ。両社の前期決算を比較しても、ANAHDは社債と長短借入金の合計がJALの10.0倍の6802億円あり、同じく9.8倍にあたる115億円の支払利息を計上しているからだ。
約6年の歳月が経過したとはいえ、巨額の債権カットを受けたJALに比べて、ANAHDの負債が多く金利負担が重いのは、JALのような国策救済の対象になっていないことが主因だろう。
しかし、もはや、経営効率の格差の原因はそれだけとは言えない。前期、ANAHDは航空券などの販売手数料をJALの3.8倍にあたる973億円も支払っているからだ。旅行代理店に昔ながらの高い手数料を支払い続けているとすれば、販路の見直しが避けられない。
また、ANAHDはLCC(格安航空会社)業に進出してバニラ・エア、ピーチ・アビエーションなどを傘下に持つ。が、この分野で、格安運賃を武器にして当初目論んだほど新たな顧客層を開拓できておらず、既存客のシフトが多いのが実情だとすれば、グループの利益率が大きく低下しても不思議はない。経営としては、徹底的な検証が必要だろう。
死角を乗り越えて、逆風下で大手航空2社が業績好調を引き続き維持できるのか、それとも2016年3月期決算はリーマンショックという嵐の前の好調決算だった2008年3月期決算と同じようなケースになるのか。浮かれていては、両社とも足をすくわれる可能性がありそうだ。
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