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[真相深層]リーマン危機 かすむ教訓
オバマ政権の金融規制に司法が「待った」 「メガ保険」巻き返しの兆しも
米オバマ政権が進めてきた金融規制強化策の行方が混沌としてきた。規制に反発する米生命保険最大手が金融当局を相手取った訴訟の一審で勝訴。政府側が上訴する攻防に発展した。2008年のリーマン危機の教訓を踏まえた政策は米大統領選もからんで不透明感を増している。
「地裁判断を不服として政府は速やかに上訴する」。今月7日、米財務省が出したわずか1行の声明にルー財務長官の怒りがにじんだ。
米ワシントン連邦地裁は3月30日、保険会社メットライフに対する政府の資本規制強化を無効とする判決を出した。争点は「SIFI(シフィー)」と呼ぶ、国際的な金融システム上重要な金融機関への規制。指定されると、自己資本の大幅な積み増しを求められ、配当や自社株買いなどの株主還元策も制限される。
指定拡大に反発
SIFI指定はもともと金融危機の震源となり、公的資金の注入や米連邦準備理事会(FRB)の資金繰り支援を受けたウォール街の銀行と投資銀行(資産500億ドル以上)を標的としていた。
その後、「破綻すると幅広い経済システムにリスクを及ぼすノンバンク」にも対象を広げ、14年末にメットライフが指定された。健全経営で公的資金と無縁だった同社は反発。「(長期投資を通じて)むしろ金融市場の安定回復に貢献した」と解除を求め提訴した。
地裁判決は「規模が大きいというだけで規制強化を正当化する十分な根拠を提示していない」と指摘した。同社のスティーブン・カンダリアン最高経営責任者(CEO)は「我々の顧客や株主にとって大きな勝利だ」と宣言。市場は「金融当局に勝利した男」と同氏を称え、判決当日の株価は一時8%上昇した。
財務長官が議長を務める米金融安定監視評議会(FSOC)は同社のほかに保険2社とノンバンク1社もSIFIに指定している。判決を受け、指定解除を求める動きが強まる可能性がある。
このうちゼネラル・エレクトリック(GE)はすでに傘下のGEキャピタルの解除を申し入れた。13年の指定で「もはや金融はもうからない」(ジェフリー・イメルトCEO)と中核部門だった同社の解体をやむなく進めてきた経緯がある。
保険大手のプルデンシャル・ファイナンシャルはメットライフと同様に公的資金を受け入れていない。これまでは「当局を敵に回しても始まらない」と矛を収めていたが、ライバルの勝訴を踏まえ、指定解除要求に動くのかが注目だ。
攻防の「陰の主役」はかつての保険最大手AIGだ。金融危機を増幅する高リスクの保証業務を手掛けて破綻寸前に陥り、1820億ドルという公的資金注入を受けた。これは大手銀行への注入額を上回り最大だ。
国際規制に影響
「様々な選択肢を留保したい」。AIGのピーター・ハンコックCEOはメット勝訴を受けたコメントで言葉を選んだ。「(同社には)歴史がある」と金融危機の戦犯だった自覚があるためだ。
ただ日本事業の売却などリストラが進み、公的資金は完済済み。大株主に浮上した代表的な「もの言う投資家」カール・アイカーン氏が株価の上昇につながる指定解除の申請を促しており、経営陣は追い込まれている。
オバマ大統領は危機当時、「納税者への侮辱だ」とAIGを糾弾した。金融機関の監督強化を政権の「レガシー(遺産)」と位置づけており、AIG指定解除は受け入れられない一線。大統領選の共和党候補者選びで先行するドナルド・トランプ氏が根拠法である金融規制改革法の見直しを掲げるだけになおさらだ。
米国のドタバタは国際的な規制づくりにも響く。主要25カ国・地域による金融安定理事会(FSB)は国際展開する米欧中の保険9社を名指しして資本規制強化に動いている。メットライフやAIGなど米国勢のほか、独アリアンツや中国平安保険といった「メガ保険」が巻き返すきっかけになるかもしれない。
(編集委員 佐藤大和)
[日経新聞4月29日朝刊P.2]
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