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東京、震災時の重大リスク浮上…土地所有区分調査の進捗率わずか2割、復興遅延必至(Business Journal)
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/172.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 01 日 00:21:20: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

東京、震災時の重大リスク浮上…土地所有区分調査の進捗率わずか2割、復興遅延必至
http://biz-journal.jp/2016/05/post_14937.html
2016.05.01 文=鷲尾香一/ジャーナリスト Business Journal


 2011年3月11日の東日本大震災から5年が経過した。被災地の復興はまだまだではあるが、それでも人々の震災の記憶は薄れかかっていた。しかし、4月14日に熊本地震が発生し、震災に対する認識を再確認させられた。被災者の方々には、心からお悔やみを申し上げたい。

 さて、震災発生後に大きな問題となるのが復興だが、この復興作業を行うにあたり意外と問題になるのが、土地の所有区分の問題だ。震災により元の状況がわからないほどに被災しているわけだから、自分の土地はどこからどこまでで、隣の土地との境界線はどこだったのかを明らかにするだけでも大変な作業だ。

 特に東日本大震災では多くが津波被害によって流され、目印もない状態になってしまったのだから、たまったものではない。そのような状況のなかで、国土交通省によると、津波被害にあった宮城県名取市は測量関係費を約1000万円も節減し、さらに復興工期が約1年短縮できた。

 一体なぜなのか。その答えは、「地籍」にある。名取市は「地籍調査」が実施済みであったため、復興への早期着手が可能となったのだ。

 人に戸籍があるように、土地にも地籍というものがある。参議院の発行する「立法と調査」の「進捗が遅れている地籍調査の現状と今後の課題」によると、地籍調査は国土調査法の定めにより、国交省が所管する国土調査の一つで、土地登記簿上での一個(一筆)ごとの土地について、その所有者、地番、地目を調査するとともに、境界の確認、面積の測量を行い、現況にあった正確な地図(地籍図)および台帳(地籍簿)を作成するもの。一方では、地図を含めた土地に関する記録は不動産登記法に基づき、登記所に管理されている。

 調査の主体は市町村で、調査時期や地域について計画を策定した上で、対象となる地域住民に対して、調査内容や必要性などについて説明会を行う。その上で、公図や登記簿などの資料を参考に隣接する土地所有者の立会いの下、一筆ごとに土地の範囲や境界を確認し、所有者が合意した土地の境界を決定、確認された境界の測量を行い、その結果をもとに正確な地図(地籍図)を作成し、土地の面積を計算する。

 これらの結果をもとにした地籍図と地籍簿は、都道府県知事の認定を受け、登記所に送られ、地籍簿をもとに登記簿を修正し、地籍図が登記所備え付けの正式な地図となる。この一連の調査は、おおむね3年程度かけて行われる。

 こうした地籍調査が行われることにより、土地取引が円滑化され、登記手続きも簡素化される。さらに公共事業では区画整理事業や用地買収などが実施される際に、時間とコストが大幅に効率化される。特に都市部の大規模再開発など地権者が多いケースでは、地籍調査が行われているといないとでは“雲泥の差”がある。一例だが、六本木ヒルズの開発では境界の調査に4年かかり、その分の追加費用は1億円に上り、工事の開始が大きく遅れた。

■地籍調査遅れる首都圏

 このように、非常に正確性が高く有用性の高い「地籍調査」だが、実は登記所に管理されている地図のうち、地籍調査に基づいた地図は全体の約54%にとどまる。それ以外は「地図に準ずる図面」として「公図」となっている。しかし、この公図はいろいろと問題があるのだ。

 公図の多くは明治初期の地租改正の際につくられた図面がもとになっている。当時は測量技術が未熟であったことや図面が短期間で作成されたことなどで、登記所にある図面の多くは境界や形状などが現地との整合性を欠いており、登記簿上の土地面積も正確でない場合がある。実は明治時代の地租改正時、課税額を小さくしようとして面積を過少申告するケースが多かったという。国土交通省によると、1970年から2011年までに行った地籍調査では、調査実施前と実施後で面積が26%増加したとしている。
 
 国土から国有林および湖沼などを除いた28万6200平方キロメートルが地籍調査の対象となるのだが、15年末の地籍調査の進捗率は約51%。総じていえるのは、北海道、東北、九州、沖縄で進捗が早く、関東、中部・東海、近畿で進捗が遅れているということ。都道府県で最も進捗率が低いのは京都の8%だが、これは災害が少なく、開発が少なかったからだろう。

 さて、東日本大震災の被災地だった岩手91%、宮城89%、福島61%は進捗率が高いほうだ。そして、今回の熊本地震の被災地である熊本79%、大分61%も同様に進捗率が高い。つまり、それだけ復興にあたっては早期に着手できるということ。

 翻って都市部は東京22%、神奈川13%、大阪10%、愛知13%という低進捗率。大都市部で震災が発生すれば、その被害が大きいことはもとより、復興にあたっての土地の権利関係の確定だけでも、相当な時間を要することになるのは想像にかたくない。それ以上に、東京の住宅密集地などでは、自分の土地が確定できないということが起きることは間違いないだろう。

(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
 

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