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(回答先: 世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第172回 いわゆる『国の借金』が130兆円減った! 投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 4 月 29 日 15:27:05)
三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」第355回 日本国の正しい成長戦略
2016/04/26 (火) 11:53
本日のタイトルに含まれている「成長戦略」の「成長」とは、もちろん「経済成長」のことだ。より具体的に書いておくと、持続的にGDP(生産=需要=所得)を拡大させるという意味になる。
そもそも、政府が「成長戦略」を立てることは、適切なのか。現場のビジネスをしていない官僚や政治家に、「成長分野」とやらが判別できるのか。いや、民間にしても、最終的に「どの分野が成長する」など、事前に断言できるはずがない。
予め「この分野が成長する」ことが確定しているならば、倒産する企業は一社もなくなる。投資とは政府がやろうが、民間がやろうが、いずれにせよ失敗のリスクはあるはずだ。
などと、根源的な疑問が複数あるわけだが、それでもあえて本日は日本国の正しい成長戦略について書いてみたいと思う。
「ということは、三橋には日本のどの産業、どの分野が成長するのか分かるのか?」
と、突っ込まれそうだが、もちろん「成長する環境」になっている産業分野は分かる。別に筆者に限らず、誰でも分かるはずだ。
「成長する環境になっている分野」とは、需要に対し、供給能力が追い付いていない分野になる。当たり前の話である。
【図 インフレギャップとデフレギャップ】
20160425.png
マクロ的な書き方をすると、総需要が供給能力を上回るインフレギャップ状態になっている産業が成長する。より砕けた表現を使うと、企業の生産能力(サービスの供給能力含む)に対して「顧客が多い分野」のビジネスが伸びていく。企業で働いた経験を持つ方であれば、誰でも納得するのではないか。
逆に、供給能力が総需要を上回り、デフレギャップになっているのでは、成長のしようがない。生産される付加価値が増えていくどころか、リストラの嵐だ、
というわけで、今後の日本では需要が供給能力を上回っている分野、インフレギャップの産業が成長する。細かい話をしておくと、「需要が拡大する」必要は必ずしもないのである。
http://klug-fx.jp/mitsuhashi/2016/04/26/025695.php
第355回 日本国の正しい成長戦略(2/3)
2016/04/27 (水) 11:54
需給関係とは、所詮はバランスだ。割合として「需要>供給能力」となっているならば、立派な「成長産業候補」である。需要が増えていなかったとしても、過去に供給能力が大きく削減され、あるいは今現在も減りつつあり、「需要>供給能力」になっているならば、間違いなく「成長する環境」の産業分野に該当する。
ちなみに、成長する「環境」と書いているのは、もちろん「需要>供給能力」であったとしても、正しい施策が打たれなければ、生産される付加価値が増えていくとは限らないためだ。筆者は「成長する環境」になっている産業分野は断言できるが、その産業が成長するかどうかは、これは事前には明言できない。
ケインズではないが、将来は常に不確実なのである。不確実であったとしても、将来の豊かさのために、今、企業経営者や国家がリスクを負って投資をする。その種の「根性」を、ケインズは「アニマルスピリット」と名付けた。
筆者は「野獣の魂」と訳しているが、バブル崩壊までの日本の経営者や政治家は、このアニマルスピリットを持っていた。だからこそ、日本は経済成長を続けた。
ところが、バブル崩壊後と橋本緊縮財政以降のデフレにより、日本経営者や政治家はすっかり牙を抜かれた獣と化してしまった。将来のための投資をしない資本主義国が、経済成長できるはずがない。
筆者が言論活動を続けている目的の一つは、我が国の経営者や政治家にアニマルスピリットを取り戻してもらうことにある。
それはともかく、今後の我が国では「需要>供給能力」というインフレギャップに陥っている分野こそが、成長する可能性が高い。厳密には、
(1)インフレギャップに陥っている分野
及び、
(2)インフレギャップを埋めるための投資に関連した分野
この二つこそが、日本の成長産業(厳密には「候補」)なのである。
それでは、インフレギャップになっている分野とは、具体的にどこだろうか。簡単である。現時点で、人手不足になっている、あるいはなりつつある産業分野になる。
具体的には介護、医療、保育、農業、運送、そして、政権が公共インフラの整備というまともな政策を打てば、土木・建設の人手不足感も高まっていくことになる。(現在は、安倍政権が公共事業を民主党政権期の水準にまで引き下げたため、人手不足がある程度解消してしまったが)
要するに、現時点ではまだ「ヒト」が動かざるを得ないサービス分野こそが、成長産業なのだ。そして、これらの産業分野において、人手不足を解消するための生産性向上を実現する「技術」に関連した産業もまた、間違いなく今後の成長産業になっていく。
安倍政権は2016年4月19日の産業競争力会議で、成長戦略の分野別目標値を発表した。一部は正しいのだが、全体的には上記の「需要>供給能力」を意識しているとは言えず、それどころか産業開発会議にもぐりこんだ民間企業の経営者たち(「民間議員」ではない)のビジネスを拡大するための戦略までもが含まれていた。
安倍総理が発表した成長戦略における重点分野には「人工知能やロボットなどの先端技術」「サービス産業の生産性向上」という、
(1)インフレギャップに陥っている分野
(2)インフレギャップを埋めるための投資に関連した分野
が入っているのだが、「公共分野での民間資金活用」つまりはPFIやコンセッションまでもが含まれてしまっている。さらに、安倍総理大臣は「人材確保」を理由に、
「第四次産業革命を担う優秀な人材を海外から呼び込みたいと思います。このため、永住権取得までの在留期間を世界最短とします。『日本版高度外国人材グリーンカード』を導入します。」
と、発言した。
要するに、インフレギャップ(人手不足)に陥っているサービス分野の生産性向上にかこつけて、公共サービスの民間への切り売り(コンセッション、PFI)や外国移民拡大を狙っているとしか思えないのだ。
日本のサービスの分野の生産性向上は、日本国民の手で成し遂げられるべきだ。そうすることで、ようやく日本国民の実質賃金が上昇に向かう。
また、別に生産性向上のための技術開発投資において、「海外の優秀な人材」の力を借りることを全面的に否定する気はない。とはいえ、何故に「永住権」を与えなければならないのだろうか。意味が分からない。
第355回 日本国の正しい成長戦略(3/3)
2016/04/28 (木) 11:55
結局、現在の日本はあらゆる政策は、「一見まともに見える政策」であっても、現実には構造改革や移民政策に繋がってしまうのだ。あるいは、繋げようとする民間人や官僚、政治家が存在するという話である。
そもそも、外国人の手を借りずとも済むように「生産性の向上」が必要なのである。安倍総理の「永住権取得までの在留期間を世界最短とします」には、何ら合理性も正当性もない。
政府は「サービス業の生産性向上」という日本の課題を、構造改革や外国移民受入に結び付けるという姑息な真似はやめるべきだ。
姑息といえば、自民党の移民推進派は、移民反対論を封じ込めるために「移民の定義」を変更しようとしている。筆者が「亡国の特命員会」と呼んでいる、木村義雄参院議員が委員長を務める自民党の「労働力確保に関する特命委員会」が動き出した。
『2016年4月22日 ロイター通信「自民特命委、介護・旅館・農業で外国人受け入れ提言へ=関係者」
http://jp.reuters.com/article/ldp-foreign-worker-idJPKCN0XJ0X6
自民党の「労働力確保に関する特命委員会」は、介護、旅館、農業の分野で外国人を労働力として受け入れるよう政府に提言する。自民党関係者が22日、ロイターに明らかにした。提言では「移民政策」ではないことを明記し、入国時に日本滞在の期間を定めるとする。
来週にも特命委員会を開催し、提言の原案を議論。その結果を踏まえ、連休明けにも最終的に提言をまとめる。
取りまとめを目指している提言では、これまで様々な解釈で理解されていた「移民」という言葉について「日本入国時に滞在の期間が決まっているかどうか」という判断基準を提示。
期間を定めた受け入れ方法を採るスタンスを明確にした。ただ、滞在中に期間の更新や永住権取得の可能性も残す。
受け入れ職種については3分野に限定せず、介護、旅館、農業など労働力が必要な分野として幅を広げ、人材が必要となった分野で活用できるようにする。
これらの分野では、これまで「技能実習」という形で実質的に外国人が労働に従事していたが、あくまでも実習のためで「労働力」として受け入れられてはいなかった。今回は「正面から労働力としての外国人受け入れに取り組む」(関係者)よう提言する。数値目標は定めないが、なんらかの量的水準を「におわせるような」(同)表現を盛り込むという。
研究者や経営者など、高度人材の活用については提言の対象とせず、建設分野も技能実習制度による受け入れ拡大を含む見直し法案が国会で現在審議されているため、特命委の提言には盛り込まない。
高度人材と対照的な概念として使われていたものの、これまで定義があいまいだった「単純労働」という言葉も、今後使わないよう提言に盛り込むとしている。』
非常に姑息である。イメージが悪い「移民」という言葉について、国連人口部定義の、
「出生あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人」
ではなく、勝手に、
「日本入国時に滞在の期間が決まっていない外国人」
と定義し、
「滞在期間が定まっている外国人は移民ではない」
という強弁で乗り切り、日本を移民国家へと誘導しようとしている。しかも、滞在中の期間更新や永住権取得ができるのでは、これは実質的にも名目的にも、外国移民受入政策以外の何物でもない。
賭けてもいいがが、今回の熊本・大分地震も、移民受入に「活用」されることになる。復興のためには、人手が必要だ。だから、外国人労働者の受け入れも仕方がない、といった印象操作を、政治家やメディが仕掛けてくることになるだろう。
本当に情けない話なのだが、木村参議院をはじめ、亡国の特命委員会の委員たちの頭は「18世紀以前」のままなのだ。何しろ、経済成長は「生産者の数」の増加によって成し遂げられると、産業革命前の発想で政治をやっている。
実際、木村参議院議員は、16年3月3日に、ロイター通信に対し、
「成長を確保するには、(外国人労働者を受け入れ)労働力を増やしていく以外に方法はない」
と、語っている。まさに、産業革命前の発想だ。
モノやサービスの生産という経済活動に投じられるリソースが「土地」と「労働」のみだった産業革命前はともかく、産業革命後の「資本主義」の世界では、経済活動の大きさ(GDP)は「資本」「技術」「労働」で決定される。と言うより、労働(生産者の数)が一定だったとしても、資本や技術におカネが投じられ、生産者一人当たりの生産が増えることで経済成長するのが資本主義なのだ。
需要を満たすための供給能力は、以下の式で決定されることになる。
◆供給能力 = 生産者数 x 生産性
そして、生産者数ではなく「生産性」を高めて供給能力を引き上げ、需要を満たすことこそが「資本主義」の基本なのである。そうすることで、生産者一人当たりの生産が増え、つまりは生産者一人当たりの所得が拡大していくことになる。
すなわち、国民が豊かになっていく。
そんなことは「当たり前」の話なのだが、木村参議院を代表株とする「産業革命前の発想の反・資本主義者たち」は、人手不足の対応策として「外国人受け入れ」を提言してくる。人手不足の対応策は、生産性向上以外にはあり得ず、しかも安倍祖政権は「未来投資による生産性革命の実現」などと、それらしいことは言っておきながら、裏で猛烈な勢いで外国移民を受け入れようとしているわけだ。
この手の動きに対抗するためには、レトリックが極めて重要になる。一般の人は、
「生産年齢人口が減っていくのだから、外国人を受け入れなければならない」
といった、間違ったレトリックに、なかなか抗えない。真実は、
「生産年齢人口比率が下がり、人手不足が深刻化するならば、生産性を高める投資をすればいい。そうすることで国民は豊かになり、経済は大きく成長する。何しろ、高度成長期がそうだった」
になるわけだが、そもそも一般人のほとんどは「生産性」について正しく理解していない。生産性を上げるための資本や技術への投資こそが、「資本主義」の原点であることも知らないだろう。
逆に言えば、上記の「資本主義」の基本を国民の多くが理解することで初めて、我が国は外国移民を拒否し、生産性向上という正しい道を邁進できることになる。「資本主義」の基本を、知って欲しい
日本国は資本主義の基本に立ち返ることで、経済成長することが可能だ。人手不足下の投資こそが、経済成長をもたらす。
我が国に外国移民は必要ない。
最新の三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」
第355回 日本国の正しい成長戦略(3/3)(04/28)
第355回 日本国の正しい成長戦略(2/3)(04/27)
第355回 日本国の正しい成長戦略(1/3)(04/26)
第354回 巨大な需要から目をそらすな!(3/3)(04/21)
第354回 巨大な需要から目をそらすな!(2/3)(04/20)
第354回 巨大な需要から目をそらすな!(1/3)(04/19)
第353回 デフレ脱却に向けた三つの論点(3/3)(04/14)
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第353回 デフレ脱却に向けた三つの論点(1/3)(04/12)
第352回 反・資本主義者たち(3/3)(04/07)
三橋貴明(みつはし・たかあき)
三橋貴明(みつはし・たかあき)
1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
『崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。
http://klug-fx.jp/mitsuhashi/2016/04/28/025697.php
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