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クックパッド、創業者の「ご乱心」で空中分解が現実味…社内で退陣要求運動が先鋭化
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14891.html
2016.04.27 文=編集部 Business Journal
料理レシピサイト運営のクックパッドの“お家騒動”は、一件落着とはいかなかった。
経営方針をめぐり創業者と経営陣が対立していたクックパッドは3月24日、東京都内で定時株主総会を開いた。創業者の佐野陽光氏ら9人の取締役選任議案は可決された。佐野氏側が提案したメンバーが6人を占めた。創業者側の圧勝である。
総会後の取締役会で穐田誉輝社長が退任し、コンサルティング会社マッキンゼー出身で、2月に執行役に就いたばかりの岩田林平氏が新しい社長に就任した。
翌25日の東京株式市場でクックパッド株が一時、前日比17%安の1770円まで急落、値下がり率は東証1部でワースト1となった。
市場を驚かせたのは、続投と思われていた穐田氏の退任が総会直後の取締役会で決まったことだ。創業者の佐野氏が推す岩田氏が新社長に選ばれた。穐田氏の退任は市場関係者のみならず、クックパッド社内でも「寝耳に水」だったようで、当の穐田氏本人も同じ思いだったらしい。取締役会は佐野派が多数を占めても、社長は穐田氏が続投することで妥協が成立したと世間は見ていたからだ。
だが、これが反古になった。「退任」と発表されたが、実際は「解任」である。穐田氏を追い落とすクーデターだった。経営の混乱が続くとみて、売りが殺到したのである。
■対立が一転して手打ちに
佐野氏と穐田氏は昨秋以降、経営方針をめぐり対立してきた。穐田氏は料理レシピサイトの一本足打法ではリスクが高いとして、企業の買収などで経営の多角化を進めてきた。対する佐野氏は、本業である料理レシピサイト運営に注力するよう求めていた。佐野氏は今年1月に自身を除く全取締役の交代を提案して、抗争が火を噴いた。
2月、佐野氏と穐田氏の妥協が成立。佐野氏の提案と会社側の議案を一本化することで合意し、佐野氏の提案を採り入れた会社の人事案を公表した。佐野氏と穐田氏は取締役として残り、新たな取締役候補は2人を含めて9人。佐野氏が選んだメンバーが自身を含めて6人となるという内容で決着が図られたわけだ。
取締役会は佐野派が多数を占めるが、好業績を続けてきた穐田氏が社長として続投することで手打ちしたと、株式市場でも理解されていた。
■ルール無視に社外取締役たちが激怒
クックパッドは委員会設置会社である。社外取締役で構成される指名委員会が、経営に携わる代表執行役社長など執行役を決める。
クックパッドの取締役は7人。そのうち社内取締役は穐田氏と佐野氏の2人。社外取締役は熊坂賢次・慶應義塾大学環境情報学部教授、新宅正明・日本オラクル元社長、岩倉正和・弁護士、西村清彦・東京大学大学院経済学研究科教授、山田啓之・税理士の5人だった。
社外取締役は昨年、佐野氏から出された社長復帰の要請を棄却した。そのため佐野氏は、株主総会で役員を総取り替えとする株主提案を提出。その後、穐田氏と妥協が成立した結果、佐野氏側が多数の取締役を送り込むことに成功した。
社外取締役で構成される指名委員会で役員を決めるという委員会設置会社のルールを無視した、ボス交渉のようなやり方で役員の候補者が決まったことに社外取締役たちが激怒したのである。
■取締役会は佐野氏を執行役から解任
今回の総会で社外取締役を退任した岩倉氏は、監査報告書に「補足意見」を載せた。岩倉氏は明治の元勲・岩倉具視の末裔で、会社法の権威として知られる弁護士だ。
補足意見を要約すると、こういうことになる。取締役会は昨年、佐野氏の社長復帰の要請を棄却し、佐野氏もこれを承認した。ところが佐野氏は「当社取締役の立場を離れて、自らの株主としての立場を優先し、その有する当社の総株式の43.58%の議決権を奇貨として、株主提案及び委任状争奪戦を行うことで(取締役会の決定を)否定しようとした」と糾弾している。
指名委員会が指名した取締役候補を大株主が認めないのであれば、総会の場で会社提案を否決し、自身が推す候補者を選任する手続きが必要になる。ところが、委任状争奪戦になることを恐れた穐田氏が、取締役会の合意に反する内容で佐野氏と妥協。指名委員会の提案を無視するのは問題がある、と穐田氏の行動を槍玉に挙げた。
そして株主総会の2日前の3月22日、クックパッドの取締役会は佐野氏を海外事業を担う執行役から解任した。経営体制の刷新を求めながら新たな経営方針を示さない佐野氏は、執行役として不適任と判断したのだ。
総会で社外取締役の椅子を去ることになる人たちが、委員会設置会社としてのケジメをつける格好となったわけだ。
■少数株主は佐野氏を支持しなかった
3月24日、クックパッドは定時株主総会を開催した。会社側提案が可決されることは最初からわかっていた。筆頭株主である佐野氏の持ち株比率は43.57%、2位株主の穐田氏は14.76%で、2人合せて58.33%。否決されることはあり得ない。
焦点は、少数株主がどの程度、佐野氏に反対票を投じるかだけだった。株主総会の議決権行使助言大手、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は佐野氏の取締役選任に反対するよう推奨した。「大株主でありながら、取締役会の承認を受けた経営戦略の変更を求めたのは適切ではない」とした。
クックパッドは、コーポレートガバナンス(企業統治)において最も優れた制度とされる委員会設置会社であり、個人商店ではない。大株主といえども、このルールに従わなければならないというのだ。
株主総会の出席株主数は657人と前年を大幅に上回り過去最多。騒動勃発後、初めて公の場に姿を現した佐野氏に株主から質問が相次いだが、佐野氏は今後の経営方針を明らかにしなかった。
総会での取締役選任の賛成割合は佐野氏が85.41%、穐田氏が95.57%だった。佐野氏は少数株主の半分程度しか賛同を得られなかったことになる。
そして総会後の取締役会で穐田氏が社長を解任された。佐野氏が総会直前に旧経営陣の社外取締役から解任されたことに対するしっぺ返しなのかもしれない。新体制となった取締役会で佐野氏は執行役に選任された。
続投と思われていた穐田氏が解任されたことで社内は大混乱に陥った。穐田氏はクックパッドを去るとみられている。社内では穐田氏の代表執行役復帰と佐野氏の執行役解任を求める署名活動が始まったという。
新しい社外取締役がどのような判断を示すか。経営の混乱は長引くことになりそうだ。
【クックパッドの取締役体制】(○印は新任)
社内取締役 佐野陽光(執行役)
社内取締役 ○岩田林平(代表執行役):マッキンゼー・アンド・カンパニー出身
社内取締役 穐田誉輝(執行役)
社外取締役 ○北川徹:スターバックス コーヒー ジャパン執行役員
社外取締役 ○柳澤大輔:カヤック代表取締役CEO
社外取締役 ○出口恭子:医療法人社団色空会 お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック理事COO
社外取締役 ○藤井宏一郎:マカイラ代表取締役
社外取締役 新宅正明:日本オラクル会長
社外取締役 西村清彦:東京大学大学院経済学研究科教授
(文=編集部)
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