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マンション、低層階住人が上層階&高額住戸住人の「言いなり」は許される?大規模修繕等で
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14834.html
2016.04.24 文=山下和之/住宅ジャーナリスト Business Journal
国土交通省が「マンション管理の適正化に関する指針」と「マンション標準管理規約」を改正しました。これは、マンションの管理規約の作成、実際の運用などに大きな影響を与えるものですが、今回の改正ではコミュニティ形成への積極的な取り組みや外部専門家の活用、暴力団等の排除規定などが盛り込まれています。なかでも専門家などの間で大きな話題となったのが、“議決権割合”に関する改正です。
■現状では持分割合か1世帯1票に
マンションの憲法といわれる「区分所有法」においては、それぞれの住戸の所有者の持分割合は、それぞれの有する専有部分の面積が全体の床面積の何%を占めるかによって決められることになっています。つまり、全体の床面積が2000平方メートルで、その人の専有面積が70平方メートルであれば、持分割合は「70平方メートル÷2000平方メートル」で、0.035(3.5%)です。原則的にはそれが管理組合の総会における議決権割合になります。
ただし、そうなると議決を判断する計算がたいへん煩雑になります。このため、シンプルに1世帯1票とすることも認められています。
■価値割合での議決権設定を可能に
現行では持分割合か1世帯1票ですが、今回の改正では、「新築物件における選択肢として、総会の議決権については住戸の価値割合に連動した設定も考えられる」としています。
たとえば、ひとつの新築マンションに5000万円の住戸と3億円の住戸があれば、価値割合で議決権を配分すると、3億円の住戸に住んでいる人は5000万円の住戸の人の6倍の議決権を有することになるわけです。
■都心の高額物件を中心に価格差が拡大
なぜ、こんな方向性が打ち出されたのでしょうか。
それは、最近の都心部の超高層マンションなどでは住戸の広さ、位置などによって価格差が極めて大きくなっているためです。最近、都心で分譲が始まった超高層マンションをみると、低層部の1LDKは坪単価が500万円台で価格は5000万円台からなのに対して、最上階は坪単価900万円弱で価格は4億円ほど。分譲価格をみると8倍もの差があります。これだけの差があるのだから、議決権にそれを反映させるべきだという考え方です。
■総会が富裕層に牛耳られる?
そうなると、上層階に住んでいる富裕層の管理組合総会への影響力がたいへん大きなものになります。図表1の通り、30階建てのマンションなのに価格の高い21階から30階までの高層階10階分で、マンション全体の価値のシェアがほぼ50%に達してしまうのです。
よって、上層階の人たちが反対すればなかなか議決できませんし、お金持ちの住民たちに有利な内容は通しやすくなります。
■重要な議題への決定的な影響力
マンションにとって極めて重要な問題である建て替えについては、所有者・議決権の5分の4、規約の変更や大規模修繕などについては4分の3の賛成が必要ですが、図表にあるように27階から30階までの上層階の人たちだけで5分の1を超え、26階から30階の人たちだけで4分の1に達します。つまり、わずかこれだけの人たちが大規模修繕や建て替えに反対すれば、議事が進まないことになるのです。
先の超高層マンションの例でみると、2階の50平方メートルを買った人の議決権を1とした場合、最上階の140平方メートルを買った人の議決権は、現在の主流である議決権割合では2.8倍ですが、価値割合が導入されると8.40倍に増加します。もちろん、1世帯1票の世帯割合の議決権だと1になります。
■1世帯1票は“悪平等”なのか?
何ごとにつけ分譲時に価格の高いマンションを買える人たちの発言権が強くなり、比較的価格の低い物件しか買えない人たちは、物言えぬ住人になりかねません。
庶民感覚でいえば、民主主義の原則に照らして選挙のように広さや価格などに関係なく1世帯1票にするのが平等のように思いますが、経済原理を考えればそれは行き過ぎた平等という人もいるでしょう。そんな人たちからすれば、世帯割合に基づく1世帯1票は、経済実態を無視した“悪平等”ということになるのかもしれません。
■分譲価格はほんとうに客観的な数値か
その点、持分割合に応じた議決権であれば、根拠が明らかですからある程度納得せざるを得ない面もありますが、価値割合となると絶対的な指標がありません。広さだけではなく、階数、向きのほか眺望、もっといえば最上階というプライドなど客観的に測れない要素がかなり入り込んできます。
そもそも不動産会社は市場が好調なときには明確な根拠もなく「えいや」で値上げし、景気が悪いときには値下げします。原価積み上げなどの客観的な評価は難しいのが現実です。ある意味、思惑で決定される部分もある分譲価格で議決権割合が決定されてしまうことになります。
■眺望などは不変の価値とはいえない
しかも、眺望は何年かすれば近くに同じような建物ができて変わってしまうかもしれません。実際、著者は15年ほど前に37階建ての18階に入居しましたが、当初は富士山や東京タワーが見えたのに、その後建設されたビル群によって眺望は塞がれてしまいました。
また、超高層の上層階の南向きは日差しを遮るものがなく、夏は暑過ぎて冷房費が馬鹿にならないという声も強まっています。最上階が一番という固定観念もいずれは見直されるかもしれません。
■マンション価値は分譲後に変化する
しかも、東京都心の南側の超高層マンションは、南向きより北向きの住戸のほうが都心への眺望が開けて夜景が美しい、暑苦しい南向きよりむしろ北向きのほうがいいという人もいます。
にもかかわらず、国土交通省では分譲時の価格によって価値割合を決め、基本的には変更できないとしています。
以上の内容を踏まえると、実際に価値割合の議決権を採用するマンションが出てくるのかどうか、疑問を感じざるを得ません。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)
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