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三菱自動車「不正」は氷山の一角?自動車業界モラルハザードの実態 これは人命に関わる問題だ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48496
2016年04月21日(木) 井上 久男「ニュースの深層」 現代ビジネス
■再び経営危機に陥る可能性
三菱自動車は20日、同社製軽自動車4車種で燃費を実際よりもよく見せるためにデータを改ざんしていたと発表した。テスト時にタイヤなどの抵抗の数値を意図的に不正に操作することで、実際の燃費よりも10〜15%程度に上乗せしていたという。同社の相川哲郎社長が国土交通省で記者会見し、謝罪した。当面、相川社長は原因究明に注力する考えだが、いずれ社長をはじめとするトップの経営責任は免れないだろう。
対象車種は三菱「ekワゴン」「ekスペース」と、同社が日産自動車に提供している「デイズ」「デイズルークス」の4車種で、計約62万5000台。三菱と日産は合弁で軽自動車の企画会社を運営している。現在の車種は三菱が中心となって開発したものだが、次モデルでは日産が主に開発を担う。
日産が次モデル開発に当たり、現行車種の燃費を測定したところ、国土交通省への届出の値とかい離があったため、日産側からの指摘を受け、三菱が社内調査したところデータ改ざんが発覚したという。
三菱自動車の不正行為は、昨年発覚した独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題と構造が似ている。VWの場合は「ディフィート・デバイス」(無効化機能)と呼ばれる、排ガス試験時のみ有害物質である窒素酸化物(NOx)の排出が抑制される違法な制御ソフトを使い、通常走行では最大で基準値の40倍も排出していた。三菱もテストで不正を行うことで目標値をクリアして虚偽の燃費データを届けていた。
三菱自動車は過去に2回、大規模なリコール隠しを行ったことでブランドイメージは地におち、経営危機に陥った。三菱東京UFJ銀行、三菱重工業、三菱商事の3社が財務的な支援を行うことで、危機を乗り越え、危機の際に発行した優先株の処理もやっと終わったところだった。
三菱自動車は今回の不正によって、「業績への影響はどのくらい広がるのか分からない」としているが、ただでさえ不振の国内販売に追い打ちをかけ、再び経営危機に陥る可能性もある。頼みの綱である三菱重工業と三菱商事も、造船事業や資源エネルギー事業の不振などによって、以前のように自動車を支援する余力はないと見られる。
■大手メーカーエンジニアの告白
三菱自動車は名門意識が強いからか、危機感に乏しく改革のスピードも遅く、トップ同士の不協和音や、生え抜き社員と専門性を買われて中途採用されたプロ社員との確執などが外部に漏れてきていた。
また、昨年は、適切な報告を怠ったため新車開発が遅れたとして社員2人を諭旨解雇したため、「開発遅れで懲戒処分とは異例」といった声も業界内では出ていた。社内は暗く、いつもぎすぎすした雰囲気だったという。一向に改善されないこうした組織風土も不正続発の遠因ではないか。
ただ、VW、三菱自動車と排ガスや燃費のテストの不正が続いたことは、単に企業風土の問題だけの問題では片づけられないのではないか、と筆者は感じ始めている。VWの不正について取材していた際に、ある大手メーカーのエンジニアが筆者にこう語った。
「試験で高い評価を受けた自動ブレーキが搭載されている他社の車を調べたら、試験時だけ効き目がよくなる特別な制御ソフトを利用していることが分かりました」
これも構造的にはVWや三菱自動車のやったことと近いが、現状では違法行為とはならず、「メーカーのモラルの問題」とそのエンジニアは語っていた。しかし、燃費の不正と違って自動ブレーキの場合は、人命にかかわる問題である。いずれ不正を摘発する法律が今後必要になるのではないか。
VW問題の時に取材した別のエンジニアは「2008年にVWの新型セダン『ジェッタ』が米国で発売された時に、エンジン制御のシステムを解析したが、不自然な点があった。学会でほとんど新しい発表がないVWの新型エンジンがおかしいというのはエンジン屋の中では公然の秘密だった」と語った。
日本でも5年前、東京都の調査によって、いすゞ自動車がトラックのディーゼルエンジンで「ディフィート・デバイス」を使用していたことが発覚した。これを受けて3年前から国土交通省はトラックとバスについては不正ソフトの利用を禁じているが、乗用車への利用禁止は見送った。
穿った見方かもしれないが、エンジニアの中には「どこもやっているので、ばれなければいい」といった感覚を持つ人も出てくる可能性があると、筆者はその時感じた。
■お客様目線の欠如
こうした不正が起こる理由には、エンジニアの「お客様目線の欠如」もある。燃費の良さや排ガスのクリーンさといった環境技術が商品力として「武器」になり、環境技術が優れていれば税制も優遇される時代だ。
しかし、その尺度は市中を走る実走行でのデータではなく、あくまで実験時のデータであり、いわゆる「カタログ燃費」と言われるものだ。メーカーもエンジニアもカタログに載せる数値をよく見せるために、よい実験データを得ようと躍起になる。ここに不正に走る誘惑があるのではないだろうか。
ところがハイブリッドカーでも、高速道路を走るのか、渋滞道路を走るのかで実燃費は大きく違ってくる。自分が車をどのような用途で使うのか、どのような場所を走るのかをよく吟味せずに「カタログ燃費」を評価して購入している消費者もいることだろう。
そして、購入した後になって、「販売店が言っていた燃費よりも悪い」と気づく人もいるはずだ。結局、この構図はエンジニアやメーカーの自己満足や販売増のために消費者を犠牲にしているということだ。詐欺的行為と取られても仕方ないだろう。
米国では、実験と実走行のデータにかい離があるのは当然のこととして、カタログには実験データをそのまま記載できない規制がある。一定の係数をかけて実燃費に近い数値を書かなければならない。消費者の力が強い米国ならではの規制だと思うが、日本も見習っていいはずだ。
また米国の国土交通省に該当する役所では、自動車メーカーのエンジニア顔負けの博士号を持つような専門家がいて、エンジンの構造などにも精通しているため、盲目的にメーカーから提出された資料を通すことはないそうだ。自動車産業は日本の主力産業なのだから、国土交通省にもこうした専門職員がいてもいいが、日本には存在していない。
VW、三菱自動車と試験のデータ改ざんが発覚したことで、今後、カタログと実走行の数値のかい離の解消を促進するために、試験方法の見直しや世界での共通化が進む可能性がある。自動車はグローバル商品だからだ。さらに不正の取り締まりが法的に強化されるかもしれない。
これによってメーカーの環境技術への開発投資はさらに増え、世界規模で自動車メーカーの合従連衡を誘発させる引き金にもなるだろう。
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