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ココイチ廃棄カツ横流し事件、真相は闇のまま調査終了か…7割が身元不明の不気味さ
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14761.html
2016.04.19 文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト Business Journal
1月半ばに発覚した壱番屋廃棄カツ横流し事件を受けて環境省は3月14日、類似事件の再発防止策を発表した。しかし、今回の事件の全容解明が不十分なまま、つまり横流しに至った背景など、問題の全体像を把握できない状態での再発防止策は、水漏れを防げぬザル法になりかねないのではないか。
廃棄カツの横流しは、いわば正規食品への偽装の手口のひとつだ。そこで今回は、再発防止策の是非と共に「偽装の経済学」【編注1】の視点から事件の背景に迫ってみる。
■「警察等による捜査」を阻む厚い壁
環境省の再発防止策【編注2】では、まず「警察等により捜査が行われているところであり、全容が明らかとなった段階で、現行の関係法令についてどのような問題があるか、その運用も含めて、改めて検証を行い、必要に応じて、今後の対応を検討」とした。ところが、その肝心の「警察等による捜査」だが、すでに厚い壁に阻まれている面がある。
今回、産廃処理業・ダイコー(愛知県稲沢市)から横流しを受けたみのりフーズ(岐阜県羽島市)の施設では、壱番屋以外の108品目の製品も見つかった。
それはびんちょうまぐろスライス(日本生活協同組合連合会)、今川焼き(ニチレイフーズ)、おさつ甘露(ニッセン)、たけのこ土佐煮(イオン)、インスタントみそ汁(マルコメ)、フローズンヨーグルト(ミニストップ)、豚バラ蒲焼(丸大食品)、糸きりごぼう(栗木食品)、串こんにゃく(関越物産)、炭火焼鳥モモ(フードリンク)、ハチミツ(岐阜養蜂)【編注3】など、実に多彩である。
ところが、この108品目のうちダイコーが廃棄物処理を依頼されたことがわかっている、つまり身元がはっきりしているのはその3割強の35品目しかない。しかも残りのうち調査継続中なのはわずか15品目にすぎず、それ以外は岐阜県による10都道県11市への調査依頼に対して、「調査不能」「追跡困難」「流出経路不明」の回答があり、すでに調査は終了【編注4】している。
つまり、これ以上はたとえ警察でも手の出しようがなく、異例の廃棄食品横流し事件の真相はこのまま闇の中に葬り去られる可能性が高い。
■マニフェスト制度はザル法から脱却できるか
ともあれ、「今回の事案(廃棄カツ横流し事件)を未然に防げなかったことを踏まえ、現時点で対応可能な再発防止策に速やかに着手」として発表された、再発防止策について触れておく。
ポイントは3つあり、その1つが電子マニフェストの機能強化だ。もともと産業廃棄物管理票(マニフェスト)の制度は、排出事業者が自分で出した産業廃棄物について、排出から最終処分までの流れを一貫して把握・管理し、排出事業者としての処理責任を果たすための仕組みだ。
ところが今回、排出事業者の壱番屋はマニフェストによって最終処理の確認をしたが、ダイコーが「処分終了した」旨のマニフェストの虚偽報告(の疑い)をし、裏をかかれた。マニフェスト制度は事実上、いわばザル法だったことになる。
なお、マニフェストには、紙マニフェストと電子マニフェストの2種類があって、排出事業者がどちらかを選ぶ。電子マニフェストはマニフェストの記載内容を電子化し、排出業者と収集運搬業者、処分業者(中間、最終)の3者が情報処理センター【編注5】を介したネットワークでやり取りする仕組みだ。ダイコーの場合、壱番屋とは電子、それ以外では電子と紙のいずれかが使われた。
再発防止策としての電子マニフェストの機能強化とは何か。これは虚偽報告防止のために、例えば産業廃棄物の委託量と処分量が一致しないなど、記載内容に不自然な点がある場合、情報処理センターで不正の検知が可能な情報処理システムの導入などを検討するという。
■抜き打ち検査頻度高め、転売不能のかたちで廃棄
再発防止策の2つ目は、廃棄物処理業者の透明性と信頼性の強化だ。そのためにまず監視体制の強化策として、以下を挙げている。
(1)都道府県に対し、一定頻度の抜き打ちの立入検査など監視強化の取り組みを通知
(2)都道府県向けに、食品廃棄物の不正転売を防ぐ立入検査マニュアル策定の検討
再発防止策の3つ目が、以下の排出事業者対策だ。
(1)排出事業者責任の徹底のための処理状況の確認や、適正な処理料金による委託などに関するチェックリスト作成
(2)特に食品関連事業者に対しては、食品ロスの削減と共に、やむを得ず食品を廃棄する場合、商品として転売できないようにするなどの適切な処置を要請
(3)関係事業者の実態調査などをベースに、不正転売防止のためのガイドライン(農林水産省と連名)をできるだけ速やかに策定
今回の廃棄食品横流し事件では、幸いにも健康被害は表面化していないが、一歩間違えれば広範囲に食中毒などの事件を引き起こしていた危険性を否定できない。それにもかかわらず、言葉を換えれば先の108品目のうちの7割弱が身元不明という核心部分が闇のなかで、決定的な有効打を欠いたまま「しっかり! 法令の遵守」【編注6】がキャッチフレーズの電子マニフェスト機能強化などに頼らざるを得ない。
まさに薄氷を踏む思いをぬぐい去れないが、これを少しでも客観的に、つまり科学的に評価する方法はないものか。それが、「偽装の経済学」である。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)
※後編に続く
【編注1】[中嶋康博『食品の安全・品質認証制度の展開』「農業市場研究」第12巻第2号《通巻58号》2003年12月]p.22の「違反の経済学」にヒントを得て、筆者が命名
【編注2】「食品廃棄物の不適正な転売事案の再発防止のための対応について(廃棄物・リサイクル関係)」環境省、2016年3月14日
【編注3】消費者庁「廃棄食品の不正流通に対する消費者庁の対応について」2016年2月26日
【編注4】岐阜県発表資料「食品衛生上の問題が危惧される食品の流通調査について」2016年3月10日
【編注5】公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター。廃棄物処理法13条の2に基づき環境大臣が全国で1つ指定
【編注6】「電子マニフェスト導入のメリット」JWNET日本産業廃棄物処理振興センター
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