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東京湾岸部の高層マンション。建設ラッシュの次にくるものは…
東京五輪“後”のマンション価格まで考えていますか?
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20160417/ecn1604170830002-n1.htm
2016.04.16 本当は教えたくないマンション業界の秘密 榊淳司
よく聞かれることに「東京五輪までマンション価格は上がりますよね」というのがある。
私は、五輪が始まる前に不動産価格の下落が始まると思っているが、それよりも考えるべきは「五輪と不動産市場に何の因果関係があるのか」という基本的な構図だ。
不動産と言えども、その価格は基本的に「需要と供給の関係」で決まる。五輪開催が不動産の需給に影響があるとすれば、ホテル用地ぐらいだろう。あと、建築コストが上がることで、新築マンションの価格に上昇圧力がかかる。しかし、それは今でもそれなりに織り込まれている。
多くの人は、五輪開催がマンションの価格に影響するのが常識だと思っている。しかし、実際にはほとんど気分の問題だ。
例えば東京都江東区有明では、数多くの種目が開催される。「湾岸五輪」と呼んでいいほど。当然、五輪期間中は多くの人が有明を訪れる。また、世界中に映像が流れるはずだ。
なかには「あそこに住んでみたい」と考える人も出てくるだろう。実際に有明で物件を探す人もいるはずだ。注目されることで、ある程度の需要を引き寄せる。
だからといって有明エリアのマンションの価格が一時的にしろ2割も上がるかというと、それは疑問だ。イベントが終わると、世間の注目を集める機会はそうそうやってこない。
加えて、有明の対岸である中央区晴海の選手村跡地では、約5650戸分の住宅が供給される。有明よりも交通利便性が良い場所に、東京23区内で昨年1年間に供給された新築マンションの3分の1近い戸数が新たに出てくる。そのことだけを考えても「五輪の会場だったから」という購買行動がどれほどあるか疑わしい。
五輪も1つのイベントに過ぎず、終わってしまえば、記録と記憶に残るだけの存在。五輪によって東京の人口が一気に増えるわけでもなく、余っている住宅が減るわけでもない。不動産を巡る需要と供給の関係はほとんど変わらない。
むしろ、終わることによって一時的な宿泊者が去り、空き家と空室が目立つようになる。折しも五輪が開催される2020年から、東京都の人口が減り始めると予測されている。
不動産市場を眺める場合、五輪は開かれることよりも終わることの影響を重視すべきだ。何といっても、“その後”の東京には心理的な目標がなくなってしまう。「五輪までは」という気持ちを抱いていた人々の心にポッカリと穴が開く。
将来への期待がしぼむと、不動産を買おうとする人よりも売りたいと考える人の方が多くなる。特にここ1〜2年で日本の不動産をたくさん買った外国人にとって、五輪後の東京が、今ほど輝いて見えるだろうか。
そうでなくても人が暮らしていない住宅の数は年々増えているのだ。
4年半後、東京五輪は確実に終わる。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。
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