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「土屋鞄製造所 HP」より
平均5万円…高級化するランドセル、なぜ狭い市場に多数企業が殺到&注力?
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14728.html
2016.04.17 文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員 Business Journal
■少子化時代でも勢いが増すランドセル
ランドセル市場の過熱ぶりは毎年のように高まっている。10年以上前は、クリスマスや正月が最大の商戦時期だったが、5年前には秋口に、この数年は夏場に、そして今年はさらに1〜2カ月前倒しされてゴールデンウイーク(GW)の前から商戦がスタートしている。
ランドセルは、基本的には子ども向けの商品であり典型的な市場縮小型の冷えた商品であるはずだが、なぜこれほどまで熱を帯びているのだろうか。船井総研のデータによると、1990年代から2000年代にかけては平均単価が3万5,000円前後だったが、この数年で5万円前後まで跳ね上がっているようだ。
■軍隊を起源とするランドセル
今日のランドセル市場をみる前に、まずはその歴史を振り返ってみよう。日本で最初にランドセルが生まれたのは江戸時代末期。徳川幕府が洋式軍隊制度を導入するのに伴い、オランダの軍事用布製リュックサックを取り入れたのがきっかけだ。もともとはオランダ語の「ランセル」だったが、それがなまって「ランドセル」へと変化した。やがて皇族・華族の子弟の教育機関だった学習院が、1885年に馬車や人力車での通学を禁じ、学用品や弁当などを入れて通学させたことから、学用品などを入れる学童用の背嚢(はいのう=ランドセル)としての採用が始まった。
その2年後の87年、当時の内閣総理大臣であった伊藤博文が、皇太子殿下(大正天皇)の学習院初等科の入学を祝し、箱型で革製の頑丈なランドセルを特別につくらせて献上したものが、現在のランドセルの原型となり、徐々に全国の小学校へと普及するようになった。
■ランドセル市場の成功要因
一昔前のランドセルといえば、男の子は黒、女の子は赤の2色で、どの商品も似たりよったりの画一的な商品ばかりだった。それが、なぜこれほど商戦が盛り上がり、高級化が進んだのか。
この近年のランドセル市場の成功要因はいくつかある。そのひとつは、少子化と並行して進展している高齢化による「6ポケット」だ。6ポケットとは、子ども1人に対して両親・両祖父母の計6人の財布=ポケットがあるという現象であり、これにより大勢の大人が少ない孫にたくさんのお金を使う状況が生まれている。
祖父母から孫への支出は、おもちゃ、絵本、衣類などさまざまだが、6年という長い期間にわたって使用され、しかも罪悪感を持たずに買い与えられるランドセルは、これ以上ないうってつけのものだ。実際に、「ランドセル&入学準備白書(2015年)」によると、ランドセルの出資者の約7割は祖父母になっている。冒頭で、ランドセル商戦が前倒しされていることに触れたが、これはゴールデンウイーク中に、祖父母が子どもに会った際に買ってもらうことを狙っているものだ。
また、もうひとつの成功要因としては、積極的な高付加価値化と希少性の演出があげられる。昨年、三越伊勢丹では、イタリアの革職人が色染めから装飾まで手づくりしたランドセルを17万円で販売していた。老舗メーカーの土屋鞄(かばん)製造所も、創業50周年記念に合わせて、フランス・ノルマンディー地方の牛革を採用したランドセル「軽井澤」を14万円で販売した。
このような高級化路線は百貨店や専門店に限った話ではない。イオンリテールは、かぶせの部分全面に5万針もの豪華な刺しゅうをあしらったランドセルを10万円で販売。イトーヨーカ堂も、色やデザイン、装飾など約1万5,000種類から選べる「パターンオーダー」のランドセルの販売を開始した。このように、現在のランドセル市場は、特定の業態に限らず全般的に素材へのこだわりや職人の手づくり、オーダーメード等によって高級化を進め、同時に数量限定や早期の販売終了によって、多少高くても「今買わないと後で後悔するかもしれない」という心理的な状況をうまくつくり出している。
ただし、この数量限定や早期の販売終了は、高級車のフェラーリのように希少性を保つために販売制限するというよりは、実際に色染めや装飾等の各工程で求められる品質レベルが高まったことや、パターンの多様化により生産工程が複雑化したことで、注文を受けてから材料を調達し、生産するまでの時間が大幅に増えたことによる側面も大きい。
■「データ」の価値から見るランドセルの魅力
ランドセルの高級化が進んだとはいえ、それでも毎年入学する子どもの数は約100万人と限られているため、500億円前後の限られた市場には間違いない。その規模にしては、百貨店やGMS、専門メーカーなど多様なプレイヤーがこぞって必要以上に顧客獲得に注力しているように見える。その背景には、企業の側から見た場合、ランドセルには単なる1個数万円の売上以上の魅力があるからだろう。
それは、端的にいえば、顧客データだ。最近は、ランドセルを予約・注文する際に会員登録を必須にして個人情報を取得したり、ランドセルに6年間の保証サービスをつけることで個人情報を取得したりする場合が多い。また、それらをしなくても、クレジットカードの支払い等で個人を特定できれば、小学校入学前の子どもがいる親(または祖父母)であることが容易に推定できる。
それにより、ランドセルを購入した顧客に対して、文房具や体操着・上履き・学生服などのスクール用品を中心に、成功確度の高いマーケティング活動を展開するチャンスが生まれるだろう。いわば、ランドセルは、企業にとって数年間にわたってスクール用品を販売していくための「パスポート」になる。
いずれにせよ、ランドセルは孫を持つ祖父母やそれを販売する企業の双方にとって、しばらくは魅力的な商品であり続けるだろう。
(文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員)
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