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毎年150万人が還暦を迎えている。うち25%は継続雇用を希望していない〔PHOTO〕gettyimages
「一億総活躍」を恐れる人が急増中! 〜60歳過ぎたら、もう働きたくありません…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48416
2016年04月16日(土) 週刊現代 :現代ビジネス
人手不足や、年金の先行きが厳しいことは、よく分かる。60過ぎても70になっても「活躍」しろというのも、正論だ。でも、今までだって必死でやってきた。もう休ませてくれてもいいじゃないか。
■オレは必死に働いてきた
今、日本のサラリーマンを戸惑わせる、「変化」の風が吹き荒れている。
「『65歳まで定年延長』なんて、私にはいい迷惑ですよ。60歳過ぎたら、きっぱり会社とは縁を切るつもりだったのに」
こう語るのは、大手電機メーカーに勤務する58歳男性だ。都内に住むこの男性は、商品の企画・開発を担当する部署の幹部を務めている。
「ウチは定年こそ60歳ですが、最近は1年ごとに更新の嘱託契約で、65歳まで雇用延長できるようになっています。正社員じゃなくなるから、肩書きは全てチャラだし、給料も六掛け。勤務地は地方の工場などになり、しかも、今までは部下だったような若い社員が上司になるわけです。
一応、『延長するかどうかは各人の自由』ということになっていますが、社内の雰囲気は『せっかく雇ってもらえるんだから、給料が安かろうと、5年くらい恩返しと思って働け』という感じ。妻も『会社が雇ってくれるって言うのに、辞めることないじゃない』と言っています。しかし、今更そう言われても……」
高齢化高齢化と耳にタコができそうな昨今、「60歳で定年」というかつての常識は、もはや過去のものになりつつある。安倍総理は2月末の政府会議で、こう述べた。
〈65歳までの定年延長や65歳以降の雇用継続を行う企業などに対する抜本的な支援・環境整備策のパッケージを、『ニッポン一億総活躍プラン』の策定に向けて、政府を挙げて検討いただくようお願いします〉
これに呼応する動きもすでに始まった。自動車業界2位のホンダや、住宅大手の大和ハウス、外食業界2位のすかいらーくなど、「65歳定年制」を本格導入する大企業が相次いでいる。トヨタも、工場で働く社員4万人を対象に、「定年後も65歳まで同じ待遇を維持する」という新制度をスタートさせた。
確かに、「日本株式会社」そのものが斜陽にさしかかった今、少しでも多くの人間が年をとっても働いて、カネを稼ぎ、経済を回すべきだ、という理屈はよく分かる。
また、60歳を過ぎたからといって、急に体力が衰えるというわけでもない。年金だって、もう原則として65歳までは受け取れなくなったのだ。「一億総活躍」というお題目に、反論するのはなかなか難しい。
冒頭の男性のように、家族から「働けるうちはしっかり働いて、家計を支えろ」「60過ぎても雇ってもらえるなんて、このご時世に幸せだと思え」さらには「働かないと、老後のカネが足りなくなるぞ」とガミガミ言われている人も少なくない。親の介護や施設入居の費用を捻出するために、とてもじゃないが悠々自適とはいかない、という人だって多いはずだ。
しかし、である。ある時を境に線を引かれて、いきなり「ハイ、ここから後ろに並んでいる人は、もう5年働いてもらいます」と言われても、「おいおい、そりゃ聞いてないよ」と思うのが、人情というものだろう。
前出の男性が続ける。
「自分がした仕事には少なからず自信を持っていますし、真剣にやってきた、会社にも多少は貢献したと思っています。特に50を超えたあたりからは、『なんとなく惰性で過ごしていては、ダメになってしまう』『出世するにも、60歳から逆算して目標を決めなければ』と思っていました。60歳を一つの区切りとして、強く意識してきたんです。
だからこそ、今になって後出しジャンケンのように『もっと働け』と言われても、乗る気にはなれません」
■だから「延長戦」は辛いんだ
都内の食品メーカーに勤める61歳の男性も、モヤモヤした思いを抱えながら、定年後も働き続けているという。
「3年前に外資系企業との合併が決まった時、早期退職の募集があったので、私はそれに応募したんです。
もともと私が仕事一筋すぎたせいもあって、一度就職した息子が会社を辞めて、引きこもりになってしまった。もう役員になんてなれそうもなかったし、せめて今からでも家族としっかり向き合おうと思って、退社を決心したところでした」
しかし、早期退職願を提出して約2ヵ月が経った頃、突然人事に呼び出された。
「てっきり退社についての話だと思ったら、正反対でした。『合併を機に、定年を65歳にすることになったから、会社に残ってほしい』と言われたんです。『若い社員なら、次の行き先もある。でも58歳で再就職はムリだから、退社後に後悔したって手遅れになる。給料は2割減るが、ポストは変わらないから』とも」
人事は「今、この場で残るかどうか判断してくれ」と迫る。考える間もなく、押し切られる形で首を縦に振ってしまった。その夜、帰って妻に雇用延長を告げると「あらそう、仕事は続けてもらったほうが助かるわ」と、まるで他人事だった。
「結局、まだずるずると勤め続けています。
しかし、外資と合併したこともあって、やりづらいことこの上ない。仕事の流れも変わってしまったし、大事な会議には外国人の役員がやってくるから、私もヘタクソな英語で発言しなきゃならない。部下には『こいつ、この程度の英語も分からないのか』という目で見られているような気がして、つらいです。
机の引き出しには、いつでも出せるように辞表を用意しているんですが……完全にタイミングを逸してしまって、3年前に早期退職を決心した時のような踏ん切りが、なかなかつかないんです。老後の不安はないと言うと、ウソになりますし」
■「老害」になりたくないし
やるせないのは、この男性のように、60歳直前まで仕事一筋で生きてきた人ほど、65歳までの「ロスタイム」に突入したとたん、むしろ疎まれるということ。
50代後半でそれなりの責任を伴う地位にある人には、会社の側も気を遣って、それなりのポストを用意する。その気遣いが、仇になるケースもある。大手事務用品会社に勤める神奈川県の59歳男性は、「私の場合、会社にハメられたようなものです」と苦笑いした。
「55歳を過ぎた頃から、『60歳になったら辞めるんだ』と心に決めて、部下の指導や仕事の引き継ぎにも力を入れてきたつもりでした。
それが昨年、突然『新しいプロジェクトを立ち上げるから、そのリーダーをやれ』という辞令が下ったんです。ウチの会社の慣行では、58歳を過ぎたら定年まで同じ部署・同じ役職というのが普通でしたから、何のつもりだろうと思いました」
異動先は、男性を除いて全員が40歳以下の若い部署。最初は「オレが定年になるまでには、後任がやって来るんだろう」と軽く考えていたが、どうも様子がおかしい。
「半年や1年で区切りが付くような軽い仕事とは思えない。それとなく役員に尋ねてみると、『向こう5年はやってほしい』というようなことを言われました。そんなの話が違う、と思いましたよ。
私が責任者ですから、辞めるとも言いづらい。しかし、来年60歳を超えたら、1年ごとに契約をやり直さなくちゃいけなくなるし、給料も半分になって、残業代もなし。
会社は『残業しなくていいから』と言っていますが、部下が残っている手前、私だけさっさと帰るわけにもいかないでしょう。定年になっても、まだサービス残業しろってことですよ」
周囲に年の近い社員はいない。「ゆとり世代」の若手とも日々向き合わねばならないのは、正直言ってやりづらい。不本意な人事なのだから仕方がない、この状況はオレのせいじゃないんだ—と自分に言い聞かせるが、どうしても脳裏には「老害」の二文字がよぎる。
「最近は部下も慣れてきて、私の意見をなかなか聞いてくれなくなっているような気がするんです。仕方ないと分かっていても、ストレスは溜まります。若い人の言うことも一理あるな、と思うことは多いので、私が無理にリーダーを続けなくてもいいと思うのですが……会社の狙いが、いまいち掴みきれません」
■もう解放してくれ!
月並みな表現だが、少なからぬサラリーマンが、定年後の「第二の人生」を楽しみにしている。今回、体験談を寄せた人たちも、「うまくいくかどうかは分からないけれど、会社を辞めたら、退職金を元手に妻と店をやる約束だった」「地方に移り住んで、畑でもやろうと思っていた」と口を揃える。
これまでは、それでいいはずだった。だが今となっては、「悠々自適の老後」など、時代が許さない。「60過ぎたら、もう働きたくない」—と願うことは、まるで「罪」であるかのような空気が、この国を覆ってしまった。
そんな空気に流されるようにして、つらい日々を送っている人もいる。茨城県に住む60歳の元エンジニアの男性は、せっかく58歳で早期退職をしたにもかかわらず、現在、諸々の事情から職を探しているという。
「私は転職を2回しているし、最後に勤めた会社でも子会社へ出向させられたりしたので、多少早めに辞めたところで、そんなに退職金も変わらない。ちょうど父親が認知症になってしまって、そちらの介護が大変になってきたので、早期退職を決心したんです。
しかし、昨年の夏に今度は母ががんになってしまった。首が回らなくなったというほどではありませんが、足りると思っていた老後の資金に、黄信号が灯りました」
幸いにしてがんは治癒したが、男性の妻は「これからが不安になってきたから、やっぱり働かない?私もパートに出るから」と言い出した。
「ずっと家にいるとあなたまでボケるわよ、と言われたんですが、この辺は田舎ですし、ハローワークに行っても清掃員や建物・公園の管理人といった求人がメインです。
初めて公園の管理人の面接に行った時は、失敗しました。みんなラフな格好で来ていたのに、私だけスーツにネクタイで行ってしまった。どうしても、サラリーマン時代のクセが抜けなくて……不採用でした。意外と狭き門なんですね」
もちろん働けば、いくばくかのカネは得られる。だが、これまで40年近く会社に、そして世の中に尽くしてきたのに、まだ解放されないのか。まだ苦汁を舐めたり、恥をかいたりしなければならないのか。
一生懸命働いてきた。60歳になったら、もう休みたい—そう思うのは、そんなに悪いことなのだろうか。
「週刊現代」2016年4月16日号より
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