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「外貨建て資産運用」を考えるなら、絶対に知っておきたい"基本のキ" その外貨預金、ホントにお得ですか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48441
2016年04月15日(金) 山崎 元「ニュースの深層」 現代ビジネス
■FXは「ギャンブル」だ
「ミセスワタナベ」とは、主にFX(外国為替証拠金取引)でポジションを持つ日本の個人投資家のことを指す、外国為替の世界の通称だ。かつて、FXで大儲けした際の脱税がニュースになり、その儲けの額で世間を大いに驚かせた一般主婦がワタナベさんだったことに起源を持つネーミングだったと記憶する。
このミセスワタナベさんたちの円売り・外貨買いのポジションが、近時の円高にも関わらず、増えていないのだという(『日本経済新聞』4月12日、電子版 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO99543070S6A410C1000000/?n_cid=TPRN0001)
彼女らは(実際にはFXは男性の方が多そうだが)、円高になると逆張り的に外貨を買って円を売る傾向が強かったのだが、ドル・円では少々前の115円〜120円といったゾーンから110円を割り込む急激な円高で損失が膨らみ、「損切り」を行うケースが増えてきて、さらに、逆張りに対して慎重になっているらしい。
損をした方が多いらしいのはお気の毒なことだが、そもそもFXは儲かる人のほうが極めて少なく、儲かるのは幸運なときだけなのだと理解すべきだ。
円高で損をする人がいれば、そのときに反対に円安で儲かる人もいるのだから、勝ち負けは半々ではないかと思う人は、ギャンブルの真理を知らない。僅かであっても、取引業者(博打だと「胴元」)が稼ぐ仕組みになっている分、普通のギャンブル参加者は結局のところ損をしやすい仕組みになっているのだ。
FXは、やってもいいが、パチンコや競馬と同様に、「ほどほど」に楽しむべき「ギャンブル」だ。決して「運用」や「稼ぎ」の手段ではない。
為替の性質やリスクに関する一般論は、多くの人が儲かっている円安の時に伝えようとしても、伝わりにくい。久しぶりに円高が進んだ今、外貨建て資産による運用の一般論を確認しておきたい。
為替のリスクは、競馬のような(ゼロサムゲーム的な)ギャンブルのリスクや、商品の将来の値段を当てるゼロサム・ゲームである商品相場のリスクと同様に、資本に対するリスクと同様に追加的な期待リターンの存在で補償されることが期待しにくい、いわば「投機のリスク」だ。
株式投資や不動産投資のように、「資本」を提供し、その資本の価格形成の際に「リスク・プレミアム」(リスクの負担を補償する追加的な期待リターン)が期待できるようなリスクの負担ではない。つまり、為替リスク(と同時に外貨の金利に投資するリスク)を取ることは、それ自体が儲けを増やす資産運用の手段ではないということだ。
■手数料率が高い商品は「常にダメ」
長期的資産形成を目指す「運用」の手段として、外貨建て資産への投資は人気を博しているし、一定の重要性がある。リスクを取ってもいいと思う方は、是非やった方がいい。
外貨建て資産の運用に関する常識で、まず、知っておくべきなのは、「通貨の違う金利(や利回り)は直接比べることができず、外貨建ての高金利を高いリターンだと評価してはいけない」ということだ。
例えば、ブラジル・レアルやオーストラリア・ドル(豪ドル)の金利は円の金利よりも高いが、これは、円で計算したときにも高い利回りが期待できるということを意味しない。
外国為替市場は、通貨の交換比率と金利を「セットで」やり取りする取引の場だ。現地通貨建てで名目上高金利の通貨の預金や債券の収益率が、低金利の通貨(たとえば日本円)に直して評価した場合、低金利での預金や債券の利回りよりも高いか・低いかは、「おおむね半々だろう」としか言いようがない。
どの通貨と金利の組み合わせがより儲かるのかは、これを巡って、為替市場のプロ同士がせめぎ合っている。一概にどの通貨(と金利)の収益が高いだろうと言うことはできない、というのが「マーケットの常識」なのだ。
しかし、外貨建て資産の見かけ上の金利が高いと、日本円で評価した場合の期待リターンも高いと誤解する「フィナンシャル・リテラシーの低い人」が多いので、これにつけ込んで、高金利通貨の外貨建ての預金・債券やこれらを組み入れた投資信託、保険などで、顧客を「釣る」のが金融ビジネス界の常道だ。
ここでハッキリ言っておくと、預金・保険・投信のいずれも、金融機関が勧めるものは実質的な手数料が高過ぎて「それだけでダメ!」と断言できるものがほとんど(99%以上!)だ。どの通貨の外貨預金も、外貨建ての保険も、毎月分配金が出るような投資信託も、いずれも一般個人のお金の運用には不適切だ。
「外貨高、円安になれば外貨預金は儲かるのではないか?」と思う人は、金融的に「情弱」(情報弱者の短縮形)である。なぜなら、同じように円安になる場合には、手数料率が安い商品の方が儲かるし(通常、外貨建てのMMFやFXの方がマシだ)、逆に円高になる場合は手数料率の高い商品はより損が大きいからだ。つまり、手数料率が高い商品は「常にダメ」なのだ。
マーケットの予想と、商品の評価(最大のポイントは手数料だ)を混同してはならないのだが、この点を金融機関も経済メディアも教えてくれない。
セールスマンは手数料ではなく、市場見通しに客の注意を惹き付けようとするし、例えば『日本経済新聞』(4月13日付、Money & Investment欄、「新社会人の外貨運用」)には、「最も初心者向きなのは外貨預金だろう」などといった、「悪い手引き」が書かれていたりもする(初心者でも損は嫌だし、お金は大切なのに)。
■外貨投資は「インフレ・ヘッジ」になるか
外貨建て資産が、将来、円で計算して必ずしも高利回りだとは言えないということが分かった人でも、「運用の目的は将来のインフレ・リスクのヘッジにある。円の価値が落ちる場合に、為替レートは円安になるだろう。インフレ・ヘッジのためには、外貨建て資産の運用がいい」と考える投資家が少なくないし、加えて、そのようにアドバイスする専門家(金融マンだけでなく、FPや経済評論家も含めて)も少なくない。
「インフレ・ヘッジ」は、「貯蓄から、投資へ」誘導して手数料を稼ぎたい金融機関にとって「老後不安」と共に有力な売り文句だし、FPなどにも人気がある。
確かに、将来、日本円の通貨価値がモノに対して下落した時に、外貨に対して円が安くなっている可能性はある。ただし、将来、外国の通貨も価値が下がっている可能性があるし、その下落率の方が大きい場合には、円を持っているよりも損をすることになる。
それでは、「インフレ・ヘッジのためにはどうしたらいいのだ?」と悩む前に、頭を柔らかくして、次の2つの質問に対する答えを考えてみて欲しい。
まず、「お金を運用した結果、インフレ率よりも儲かると困ることがありますか?」。次に、「インフレ率よりも儲けるために、非常に大きなリスク(例えば、10%くらいの確率で元本の半分以上が毀損するようなリスク)を取らなければならないとすれば、それでもリスクを取りますか?」。
常識的な答えは、「儲かりすぎて困ることはない!」と「大きすぎるリスクは取りません」だろう。
つまり、運用に当たってインフレ・ヘッジを直接気にする必要はないのだ。時々の運用で儲かって結果的にインフレに勝っていたら結構なことだし、負けていたとした場合残念ではあるが、そこまでの過程で過大なリスクを取ることは不適切だったと諦めるしかない。
厳密には、自分の所得(たとえば給料)と金融資産運用のリスク・リターンを考えた方がいい場合があるが、金融資産運用単独で常にインフレに追随するリターンを考える必要はない。チャンスがあって、リスクを取ることができるなら、インフレよりも儲けていいし、チャンスが無いなら仕方が無い。稼ぎ方や、生活の仕方で工夫するしかない。
「ずっと先の長期」のインフレ・リスクを気にして、過大なリスクを持ち続けるのが愚かであることは、リスクの内容が為替リスクであっても同じだ。「将来のインフレ・リスク」で頭が一杯になって、資産全額を外貨投資に振り向けて円高をやせ我慢するような人がいるが、これは愚かである。
■結局、何を目指したらいいのか?
お金の運用は、特定の目的のために行うべきものではなく、「その時々に、(自分にとって)適切なリスクの中で、最も効率良く」できればいいものなのだ。
なぜなら、お金の使い道は後から柔軟に決めることができるからだ。「目的」が重要なのは、運用内容にとってではなく、もっぱら貯蓄の必要性に対してだ。こちらの問題に関しては、自己コントロールのために「目的」を意識することが大いに有効な場合がある。
さて、リスクを取る余裕がある人は、外国の資産に投資することが、分散投資上望ましい。
外国投資の対象として好ましいのは、現時点では、主に外国の株式だろう。外貨預金は、前述のように明確なダメ商品だし、外国債券も、(1)円建ての利回りは高くないこと、(2)取引価格が不透明で値ざやを抜かれやすいこと、(3)為替の手数料が掛かること、に加えて、(4)先進国の債券は利回りが低下してこの先は株式との組み合わせのメリットが得にくくなっていること、などの理由から個人の対象として魅力的ではない。
また、外国株式に投資することの主目的は、外国にあるビジネスに投資することであって、為替リスクを取ることにある訳ではない。為替リスクは、むしろ制約要因であると理解しておくべきだろう。
加えて、国内株式に投資する場合に、実質的に相当の為替リスクを取っていることになる点にも注意が必要だ。近年のデータで「国内株式」と「外国株式」のリターンの相関係数を計算すると0.7に近い高い値が出る。株式をお持ちの方は、日々の株価の動きに関しても、「円安=株高、円高=株安」となるパターンには、すっかりお馴染みだろう。
運用資産のどの程度の割合を「リスク資産」に投資するかは、個々人の事情により様々だが、リスク資産の内容は「国内株式」と「外国株式」の組み合わせでいい。比率は5:5〜4:6、あるいはもう少し外国株式が高くていいかも知れない(年金運用等で機関投資家が使うリターンとリスクから計算すると、この程度の数字になる)。
具体的な商品としては、それぞれ株価指数(国内株式はTOPIX、外国株式はMSCI-KOKUSAIなど)に連動するインデックス・ファンドが手数料の安い点で優れている。リスクを取らない運用対象としては、今のところ個人向け国債の変動金利10年満期型が無難でかつ有利であり、他の運用対象を圧倒している。
将来のインフレリスクだったり、毎月の分配金だったりを強調して、外貨のリスクを取ることを謳う、投資信託、預金、保険などは、余計なリスクを取る割に期待リターンが低く、かつ手数料が分厚い、「地雷」のような商品であることがほとんどだ。大いに気を付けて欲しい。
ミセスワタナベの皆さんが、投機に疲れて、「普通の運用」をしようと思った時に、思わぬ落とし穴にはまらないように、と切に願う。
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