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Amazon設立者ジェフ・ベゾス氏率いるブルー・オリジンが開発した「ニュー・シェパード」ロケット Photo by Blue Origin
Amazon設立者ジェフ・ベゾスが挑むロケットの「再使用」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160409-00090146-hbolz-bus_all
HARBOR BUSINESS Online 4月9日(土)16時21分配信
米国の宇宙ベンチャー企業「ブルー・オリジン」は4月3日(日本時間)、過去に2回宇宙まで飛行しているロケットを再使用し、3回目の飛行を行うことに成功した。
これまでに開発されたロケットの多くは、打ち上げのたびに機体を使い捨ている。しかし、それではロケットの製造費がすべて、打ち上げコストに含まれてしまうことから、ロケットは自動車や鉄道、航空機と比べ、非常に高価な乗り物となっており、宇宙旅行はおろか、小さな人工衛星をひとつ宇宙に打ち上げるだけでも、多くのお金と労力が必要となっている。
しかし近年、コストの大幅な低減を目指し、ロケットをまるで旅客機のように繰り返し飛ばせるようにする「再使用ロケット」の開発が、いくつかの企業で活発に行われている。その中でも、ブルー・オリジンは世界のトップをひた走っており、数年以内にも宇宙旅行ビジネスを始めたいと表明している。
◆Amazon設立者の宇宙ベンチャー「ブルー・オリジン」
ブルー・オリジンは2000年9月に、インターネット通販大手のAmazon.comを設立したことで知られるジェフ・ベゾス氏によって立ち上げられた。
ネット通販を手がけた次に宇宙開発、というのはかなり飛躍しているようにも思えるが、一度成功した起業家が、次に宇宙事業に乗り出すのは珍しいことではない。たとえばネット決済サービスPayPalの前身、X.comの設立者であるイーロン・マスク氏は「スペースX」という企業を作り、ロケットや宇宙船を次々と打ち上げていることは有名である。
また、ヴァージン・グループのリチャード・ブランソン氏も宇宙事業を手がけており、ホテル王として知られるロバート・ビゲロウ氏も宇宙ホテルの建造を計画している。日本でも堀江貴文氏が、かねてより宇宙事業に投資しており、現在は北海道を拠点にロケット開発を行っている。
彼らが宇宙ビジネスを志すのには、まず根底に宇宙好きということがあるのは間違いないが、おそらく最大の理由は、宇宙はまだ未開拓の分野で、今後大きな成長が見込まれていることにある。
これまで宇宙産業が頭打ちだったのは、宇宙へものを輸送する手段、つまりロケットが非常に高価だったことが大きい。しかし、最近になり安価にロケットを造り、運用する方法ができつつあり、その障壁が取り除かれる可能性が出てきた。
宇宙利用ビジネスというと、現在は衛星写真などのデータ販売や、GPSを利用したサービスなどが中心となっているが、衛星をより安価に打ち上げられるようになれば、その利用はさらに広がることになるだろう。
また宇宙旅行も潜在的に大きなニーズがあるといわれており、さらに人類が宇宙で生活する時代が来れば、その市場規模は計り知れないものになる。
もちろん、衛星の利用拡大はともかくとして、人類の宇宙進出はまだ夢物語にすぎない。しかし、今から数十年前は、インターネットがこれほどまでに生活を変えることになると、いったい何人が予測できただろうか。今、宇宙事業に賭けている人々は、そうした未来の可能性に賭けているのである。
◆まるでSF映画に出てきそうな「ニュー・シェパード」ロケット
ベゾス氏もまた、宇宙事業を始めた目的を「人類が宇宙に進出し、活動の場とするため」だと語る。そのためにはまず、気軽に宇宙に行ける、安価で安全なロケットが必要になる。ブルー・オリジンはまず、そうしたロケットの開発を始めた。
試験機による飛行を何回か行ったのち、2014年には本番機となる「ニュー・シェパード」というロケットを開発した。ニュー・シェパードは地面から垂直に打ち上げられ、一般的に宇宙とされる高度100kmまで到達することができる。その後、ロケットはそのまま垂直に落下し、SF映画に出てくるロケットのように、エンジンを逆噴射させながら地面に着陸する。そして機体の整備と推進剤(燃料と酸化剤)の補給を行った後、再び打ち上げることができる。
ニュー・シェパードの1号機は2015年4月に打ち上げられ、高度93kmまで到達したものの、着陸に失敗。その後2号機が製造され、同年11月23日には、高度100.5kmまで到達した後、地上への着陸に成功した。
今年1月には、その打ち上げに使ったものと同じ機体を再び打ち上げ、宇宙空間まで到達した後、着陸に成功。そして今回、その機体が三度飛行に成功した。
垂直に離着陸でき、さらに高度100kmの宇宙空間まで飛行した機体を再使用できるロケットは、現在のところニュー・シェパードしかなく、ロケットの「再々使用」による3回目の飛行は世界初のことである。同社では今後もさらに再使用を繰り返し、運用開始に向けたさまざまな知見を得たいとしている。
◆イーロン・マスクとの直接対決も間近
ニュー・シェパードは先端に、カプセル型の宇宙船を搭載することができるようになっている。この宇宙船は最大6人の乗客や実験装置などを積むことができ、約4分間の宇宙旅行や、無重力環境を利用した実験などを行うことができる。ベゾス氏によると、2年以内にも同ロケットを使った宇宙観光や宇宙実験をビジネスとして展開したいとしており、すでにニュー・シェパードの量産も始まっている。
ただ、ここで注意しなければならないのは、ニュー・シェパードは地上からまっすぐに上昇して宇宙の”端”に達した後、そのまままっすぐ降下することしかできない、という点である。こうした飛行のことを「サブオービタル飛行」という。
私たちが「宇宙飛行」と聞いてまず思い浮かべる、スペースシャトルや国際宇宙ステーションなどは、地球のまわりを回る「軌道」に乗っている。この軌道へ人工衛星や宇宙船を送り込む(オービタル飛行をする)ためには、サブオービタル飛行とは比べものにならないほど莫大なエネルギーが必要で、ニュー・シェパードの能力ではまったく足らない。
一方、イーロン・マスク氏率いるスペースXが開発した「ファルコン9」ロケットは、軌道へ向けて大型の人工衛星や宇宙船を飛ばすことができ、実際にこれまで22機が打ち上げられている。ファルコン9もまた、垂直離着陸と再使用ができる能力をもっているが、今のところ着陸は1度達成したものの、再使用はまだ行われていない。
つまり、ベゾス氏のニュー・シェパードは、3回の再使用に成功した点で一日の長があるが、そもそも人類の宇宙進出のために必要となる、軌道まで宇宙船を飛ばせる能力を持っていない。一方、マスク氏のファルコン9は軌道まで飛ぶ能力を持っているが、再使用にはまだ成功していない。やや強引な見方をすれば、お互い「一勝一敗」とも言えるが、正確には同じ土俵にすら立っていない。
ただ、マスク氏は今後もファルコン9の着陸試験を繰り返し、さらに早ければ今年中にも、着陸したロケットを整備し、再使用したいという展望を語っている。
一方のベゾス氏も、現在ファルコン9に近い能力をもつ大型ロケットの開発を進めており、2019年ごろに初打ち上げが行われるという。このロケットはまた、ニュー・シェパードの技術を活かし、再使用が可能なロケットになるとされる。そう遠くないうちに、マスク氏率いるスペースXと、ベゾス氏率いるブルー・オリジンが、同じ土俵の上で、ロケットの再使用回数や成功率などをめぐって切磋琢磨することになり、両者の競争はさらにおもしろいものになるだろう。
◆宇宙旅行は実現するか?
ベゾス氏やマスク氏らによって、はたして宇宙旅行は現実のものになるのだろうか。現時点では2つの予想ができる。
ひとつは、サブオービタル飛行であれば実現するだろう、ということである。サブオービタルの宇宙飛行はブルー・オリジン以外にもいくつかが運航を計画しており、そのうちのいくつかが、数年以内に実際に運用に就くことはほぼ間違いない。
ただ、サブオービタル飛行では、青い地球を眺めたり、無重力状態を体験できる時間は5分ほどしかない。また1回の飛行あたりの運賃は数千万円から数百万円と、海外旅行よりもはるかに高くなると予想されている。一生の思い出になるとはいえ、わずか5分のためにそれだけの金額を出したいかどうかは、人によってさまざまだろうが、運用が続けられる中でより安くなり、参加する人は徐々に増えていくことになろう。
もうひとつの予想は、軌道への飛行も可能にはなるだろうが、その金額は一般人には手が出せないだろうということである。
現在、ロシアの宇宙船で宇宙旅行に行こうとすると、約30億円から60億円ほどを支払わなくてはならない(それでも累計8人がすでに宇宙旅行を体験している)。スペースXが開発している「ドラゴン2」という宇宙船は、運用開始当初は約20億円ほどになるというが、それでも十分に高価である。
ドラゴン2も、それを打ち上げるロケットも再使用が可能であるため、いずれ金額は下がるだろうが、それでも億単位の金額を出さなくてはならないだろう。たとえブルー・オリジンが同じ宇宙船の軌道への打ち上げに参入したとしても、軌道まで行くためのエネルギーや、ロケットと宇宙船の再使用で節約できる金額などに大きな差は生まれにくいため、スペースXと同じぐらいの価格しか期待できない。
残念ながら、私たち一般人が海外旅行に行く感覚で宇宙に行ける時代がやってくるのは、まだ当分先のことになるのは間違いない。しかし、ベゾス氏やマスク氏らがロケットや宇宙船を打ち上げるたびに、その未来が少しずつ近づいてきていることもまた、間違いないだろう。
【参照】
・Blue Origin | Pushing the Envelope
・Blue Origin | Launch. Land. Repeat.
・Blue Origin | Blue Origin Makes Historic Rocket Landing
・Blue Origin | Our Approach to Technology
・Blue Origin | The Astronaut Experience
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。
Webサイト: http://kosmograd.info/
ハーバー・ビジネス・オンライン
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