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「国民健康保険 HP」より
世界的に稀な素晴らしい日本の国民皆保険、崩壊の現実味高まる…患者の自費負担増も
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14605.html
2016.04.08 文=新見正則/医学博士、医師 Business Journal
今回は保険制度についての激論です。診療報酬が2年ぶりに改定されました。診療報酬とは、保険診療に際して医療行為に支払われる金額を定めたものです。日本の国民皆保険システムにとってのもっとも大切な部分で、通常2年毎に改訂されていきます。
今回の改定では、かかりつけ医とかかりつけ薬剤師の導入が進みやすいように診療報酬の変更が行われています。また、大病院を紹介状なしで受診すると初診で5000円以上、再診で2500円以上の追加負担を患者さんに強いるシステムになります。日本の医療は素晴らしく、2014年の平均寿命は女性が86.83歳で3年連続の世界一、男性は80.50歳で4位から3位にランクアップしました。この平均寿命の世界的レベルを維持している要因は、供給される医療の質が素晴らしいという点にあります。
しかし、この医療を支える費用は約40兆円に上り、そろそろ限界を迎えています。そして高齢化社会が叫ばれるなか、今までと同じように税金や皆さんから集めた保険料で医療を支えていくことには限界が見えています。そこで、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師を導入し、重複している検査や投薬などを極力減らそうという作戦なのです。さらに医療の機能を分担するために、先端医療を行う大病院に直接受診することがないように、紹介状がない受診者には課金しようという作戦です。
■税金による補填をめぐる議論
そんな診療報酬に関して、今回はバトルが繰り広げられています。まず、“非常識君”は「今でも国の借金は1000兆円近くあるのだから、もしも医療費が足りなければどんどん社会保障費として借金を増やして、税金で補填すればよい」という考えです。
一方、“常識君”は「1970年の医療費は2.1兆円だったが、80年には10.7兆円、90年には18.4兆円、2000年には26.0兆円、そして14年には37.0兆円と増加している。このまま増加すれば、相当な額が必要になり、それを税金で補填すれば、国の借金はますます増加することは間違いない。国の信用にもかかわる」といいます。
そして“極論君”は、「医療システム自体が出来高払いになっていることが問題だ」と主張します。現状では保険診療の医療費は最大で3割負担です。それ以下、またはまったく負担がない人もいます。そして3割負担でも素晴らしい制度ですが、暦月での負担額に上限があり、通常の収入では約8万円以上は還付されます。つまり1000万円の治療を受けても、3割負担の300万円を払うのではなく、通常は月々約8万円が上限なのです。
■総量規制は必要か?
極論君はレストランにたとえて現状を以下のように説明します。
「どんな料理を食べようが3割負担が上限で、そして毎月8万円の負担も上限となれば、料理を注文するほうは少しでも美味しい料理を食べたくなる。少々満腹でも、美味しそうなものがあれば注文する。そしてオーダーを取るほうもちょっとでも美味しい料理があれば当然にそれを勧めるし、ましてや上限額を超えた場合は懐の心配が不要になるので、どんな高級シャンパンを勧めてもお客さんに嫌な顔はされない」
そして極論君は「やっぱり総量規制をやるべきだ」と続けます。それは患者サイドに保険診療でカバーできる医療費の上限を設定し、それ以上は自費でお願いしますという作戦と、または医療サイドに上限を設定し、この医療機関に公的保険からサポートできる金額はこれだけですよと決める作戦のどちらか、または両方です。
極論君は言います。
「もしレストランで顧客が7割以上を援助してもらえ、その援助額に上限が決まっていて、それ以上はすべて全額を自分で払うとなれば、顧客の注文の仕方も変わってくる。少しは今月はどのぐらい払ったのだろうという気遣いをしながら注文する。またレストラン側にも税金から補填する総額を決めれば、顧客の必要性をもっと吟味しながらオーダーを取るだろう」
常識君が援軍を出します。
「レストランに年間の補助額の上限を決めるという作戦は、イギリスのNHSという国民皆保険システムに似ています。イギリスはかかりつけ医を元気な時から決めることが必須で、そのかかりつけ医の紹介状がないと専門病院で受診できません。そんなシステムでもイギリスの平均寿命は、男性79歳、女性83歳で日本とほぼ同じです」
イギリスでは国民皆保険は維持されていますが、日本では当たり前のフリーアクセス、つまり個人の希望でどこにでもいけるというシステムが否定されています。
常識君は、「今の日本の国民皆保険、フリーアクセスの制度がこれからも続くように、不必要な医療や薬を削減する必要がある。そんなことが見え隠れする今回の診療報酬の改定だ」として、議論を結びました。
(文=新見正則/医学博士、医師)
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