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トヨタの4代目プリウス(「Wikipedia」より/Turbo-myu-z)
プリウスPHVが売れない…トヨタ、環境車戦略の失敗が決定的か 営業員すら販売避ける
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14600.html
2016.04.08 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
トヨタ自動車が環境車戦略の練り直しを迫られる可能性が出てきた――。
トヨタは3月23日に米国で開幕したニューヨーク国際自動車ショーで「プリウス」のプラグインハイブリッド車(PHV)を世界初公開したが、現地では期待されるほど注目を浴びることはなかった。米国では原油安によるガソリン価格が下落していることもあって、大型SUVやフルサイズピックアップトラックが人気で、一時のエコカーブームは去っていることが背景にある。プリウスPHVの静かな公開は、トヨタの環境車戦略に暗い影を投げかけている。
2016年秋から米国、日本、欧州で市場投入する予定の新型プリウスPHVは、4代目プリウスをベースに、電気のみでの走行、電気とエンジンによるハイブリッドモードでの走行、エンジンのみでの走行というPHVシステムを搭載したモデル。新型では、電池のみで走行できるEV走行距離を現行モデルの26.4kmから60km以上と倍以上に伸ばし、米国では「プリウス・プライム」の車名で販売する予定だ。
プリウスをベースにしたPHVは誤算続きだ。トヨタが12年にプリウスPHVを市場投入した当初、世界販売目標は年間6万台だった。しかし、プリウスPHVの累計販売台数はこの3年間で、目標の3分の1以下となる約7万5000台にとどまる。
プリウスPHVが失敗した原因として、ユーザーから外観がプリウスとほぼ同じで、機能もそんなに差がないのに価格だけが高いと見られていたことや、「営業員がプリウスとの違いを理解しておらず、説明が面倒なので販売を避けている」(トヨタ系販売会社)ことなどが挙げられる。
新型車は、電気だけで走行するEV走行モードを大幅に伸ばすとともに、米国市場向けは車名も変更、プリウスと差別化することで販売を増やす戦略を描く。トヨタが米国でプリウスPHVの販売に注力するのは、カリフォルニア州の環境規制が背景にある。規制では、自動車メーカーが域内での販売台数に応じて、環境対応車を一定台数以上販売することが義務付けられており、達成できなければ罰金の支払い、または他社から二酸化炭素排出枠を購入しなければならない。
現在の規制では、トヨタの環境対応車で主力のHVは、環境対応車の一種として認められているが、17年夏以降販売するHVは環境対応車から除外され、ガソリン車と同等の扱いとなる。トヨタとしてはもともと得意のHVを筆頭に、PHVや燃料電池車(FCV)で規制をクリアすることを念頭に置いていた。HVが規制対象外となることから、プリウスPHVを全面に打ち出すしかなくなった。
■想定外の「問題」
しかし、今度は「想定外の原油安」がトヨタの思惑を打ち砕く。米国市場では、原油安によるガソリン価格の下落で、エコカーブームは過ぎ去り、燃費の悪い大型SUVやフルサイズピックアップの人気が回復している。トヨタが新型プリウスやプリウスPHVを発表しても注目度は低い。
そもそも「PHVユーザーが、家で充電する電気代より安いし手間も省けるといって、充電せずにガソリンを給油している」(自動車メーカー関係者)状況で、PHVの販売増は期待できない。
米国での販売台数が多いトヨタとしては、カリフォルニア州で環境対応車を一定以上販売して「環境面で先進的なトヨタ」の看板を守ることは至上命題だ。さらに、中国で導入される環境規制でも、HVが環境対応車から除外される可能性がある。HVとPHVを環境対応車の柱と位置づけてきたトヨタだが、FCVをまとまった台数販売するのは困難で、PHVの販売に賭けるしかないという台所事情もある。そこで、プリウスPHV販売の成否が、トヨタの環境戦略を大きく左右することになる。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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