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日本株の「一人負け」が止まらない〜この逆風のなか、個人投資家が採るべき有効な投資戦略とは?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48379
2016年04月07日(木) 安達 誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」 現代ビジネス
■日銀の追加緩和があるとすると
新年度に入っても、依然として日本株の「一人負け」が続いている。
4月に入ってからの日経平均株価は、約6%の下落となっている。ほぼ同時に円高が進行していることを考えると、日銀のマイナス金利政策に対する見方(すなわち、量的質的緩和政策の限界論。これについては、3月31日の当コラム『この「円高」局面はいつまで続くのか?〜マイナス金利は円安に働くはずなのに』を参照いただきたい)が影響している可能性が高い。
したがって、日銀の追加緩和(特に量的質的緩和政策によるマネタリーベース供給ペースの拡大)が実現しないことにはどうしようもないというのが筆者の考えである。
今後、日銀が追加緩和を実施すると考えるのであれば、株価はどこかのタイミングで底入りして上昇するという絵が描けるが、追加緩和しないとこのまま低迷を続けるというリスクもある。3月までは、半分、「期待をこめて」という側面もあったとは思うが、多くの株式市場関係者が、日経平均株価の2万円超えを予想していた。だが、その予想は早くも大きく崩れている。
今のような局面、日経平均株価に代表されるような「株価インデックス」の上昇が期待できない状況下では、多くの市場関係者が、「個別銘柄の発掘」に注力しようとする。最もわかりやすい例は、「バイオ」や「ハイテク」、最近では、「人工知能」といった投資テーマをはやして、関連銘柄を推奨するパターンであろう。
だが、そもそも3000種もある上場銘柄の中から全体の相場状況に反して、上昇していく銘柄を「発掘」するのは、プロのアナリストにとっても至難の業である。
また、昨年末の「フィンテック・ブーム」で明らかなように、わかりやすい「投資テーマ」も短期的な売買を頻繁に繰り返すような「トレーディング」のアイデアとしては有効かもしれないが、その寿命は短く、長期保有には不向きである。
一概に「投資テーマ」といっても無数にあるし、仮に、マーケットの話題となるようなテーマを見つけたとしても、話題性が高まり、新聞や雑誌、場合によってはテレビで取り上げられる頃には、株価は既に上がるところまで上がっているケースがほとんどである。
多くの人は、これらの投資テーマを新聞、雑誌等のメディアを通じて知ることになるが、そこから、その投資テーマに沿った株式を購入しても、「高値掴み」するだけである。場合によっては、大損するケースもあるので注意が必要である。そういう意味では、株式市場は、「効率的市場」ではないかと考える。
■私の株式投資論
一般的な投資理論では、株式は分散投資が望ましいとされている。特に、コーポレートガバナンスが発展途上段階にある日本では、東芝のように、かつては日本を代表するような超有名企業にも、深刻な問題が存在するケースがあるので、個別企業の一本釣りには、事前に想定することが困難な「不確実性」がつきまとう。
この「不確実性」の影響をなるべく小さくするためにも、分散投資が必要であるというのが株式投資の基本的なセオリーである。一般的には、80銘柄程度の分散投資をすれば、かなりの程度の不確実性を軽減できるとされている。
そうはいっても、資金に限界がある個人投資家が、個々人で個別銘柄を分散投資するのは困難だ。そこで、個人の分散投資を可能にするのが「株式の投資信託」である。
筆者は、個別企業を調査するアナリストではないので、個別銘柄の情報には疎く、また、いわゆるデイトレードをするような時間的余裕もないので、もし株式投資をするのであれば、投資信託を選択するだろう(ただ筆者の場合、コンプライアンスが厳しいので、現在は株式投資を行っていない)。
この場合、マクロ経済動向を手がかりに株式投資をするのであれば、適切なタイミングで単純に日経平均やTOPIXに連動する「ETF」を購入すればよいのではないかと考えている。その際、もし、かなり自信があって「買い時だ」と考えるのであれば、「レバレッジ」をかければよいと思う(レバレッジをかける場合には、レバレッジ投信を購入する他に、先物やオプションを用いることもできる)。
『私の株式投資論』的には、これで終わりとしてもよいが、もう少し、アベノミクス開始以降の日本の株式市場の特徴を考えて、今後の日本株投資のヒントにしようとするのであれば、日本株を色々なカテゴリーに分類して、カテゴリー別のパフォーマンスをみるのが有用ではないかと考える。
標準的な投資理論では、株式の投資収益率(これは個別株の投資収益率から何らかの基準で分類した「株式ポートフォリオ」の収益率までを含む)を数種類の「ファクター(決定要因)」で説明するという「ファクターモデル」のアプローチが「基本」となっている。
その中で、最も単純、かつ代表的なものとしては、株式の投資収益率をマーケットリターン(例えば、TOPIXや日経平均株価といった株式インデックスの収益率)との関係からみるCAPM(資本資産価格モデル)がある。
簡単にいってしまえば、例えば、CAPMを用いると、TOPIXが1%上昇した場合、分析対象となる各株式(及び株式ポートフォリオ)の投資収益率がどの程度になるかが予想できる。したがって、将来のTOPIXの予想ができれば、CAPMを用いてTOPIXを上回るパフォーマンスを得られる銘柄なり、ポートフォリオ(投資信託)なりを選択できることになる。この指標は、β(ベータ)といわれ、株価チャート集などにも掲載されている。
当然、投資収益率を決めるファクターが1つだけのCAPMでは不十分だということで、ファクターの数を増やしたモデルが多く開発されている(有名なのは、Fama-Frenchの「3ファクターモデル」であるが、最近は「5ファクターモデル」にまで拡張しているようだ)。
この「ファクターモデル」が便利なのは、個別銘柄の株価さえも、限定された数個の「ファクター」を考えるだけで予想できてしまえる点だ。しかも、ファクターは共通なので、いちいち個別銘柄の企業業績などを調べる必要がない。
例えば、米国のヘッジファンドのAQRのアナリストは、ニューヨーク大学の教授らと2013年に、「Buffet's Alpha」という論文を発表したが、その内容は、個別銘柄の選別で大成功を収めたことで有名な「カリスマ投資家」であるウォーレン・バフェット氏の株式投資のポートフォリオが、いくつかの簡単な「ファクター」によって再現可能である、というものだった。
もちろん、これらのファクター分析は完全ではないが、この手の定量分析のノウハウがあり、そこに信頼を置くのであれば、アナリストの伝統的な企業調査の手法とは比べ物にならないほど低コストであることは間違いない。
■日本株に最も有効な投資戦略は?
そこで、アベノミクスが本格的に始まった2013年以降の日本株をいくつかのファクターで分類し、その傾向をみた。具体的には、「時価総額」「営業利益率」「投資率」の3つで分類した。これらは、基本的には、シカゴ大学教授で2013年ノーベル経済学賞受賞者でもあるユージン・ファーマ氏のモデルのファクターである。
全上場銘柄をそれぞれのファクターに基づいて5分位に分け、それぞれの株価パフォーマンスを2013年1月を起点とした累積投資収益率でみたのが図表1〜3だ。
この図表1〜3の結果からいえることは、次のようなものだった。
1) 大型株のパフォーマンスが突出して悪い
2) 営業利益率が高い銘柄群のパフォーマンスがよい
3) 投資率が高い、すなわち、積極的に投資を行っている企業の銘柄群のパフォーマンスがよい
だが、この図表には欠点がある。各銘柄群(ポートフォリオ)の収益率の変動性(ボラティリティ)を全く考慮していない点である。
そこで、図表4で、上から順に、先の図表1〜3に相当する銘柄群の基本統計量を示した(ついでに為替レート変化率、日本のマネタリーベース変化率、世界の鉱工業生産指数でみた世界景気との相関係数も掲載した)。
「SR」とは、「シャープレシオ」の略であり、当該銘柄群(ポートフォリオ)の投資収益率からマーケット全体の投資収益率を控除し、それを当該銘柄群(ポートフォリオ)の標準偏差(収益率のちらばり、リスクの指標)で割った値である。要するに、リスクを調整した超過収益率を指す。
このSRの値が大きければ大きいほど、リスク(収益率の変動性)を考慮しても、マーケット全体のパフォーマンスを上回る可能性が高いものであることを意味する。
このように、リスクを調整すると、各投資戦略の超過収益率はそれほど高くないことがわかる。強いてあげるならば、営業利益率の高い銘柄にフォーカスすることは有効かもしれないが……。
特に、株式市場関係者が口にすることの多い「中小型株」への投資についても、一見、リターンが大きそうにみえるが、その代償として大きな価格変動リスクを背負うことに注意が必要だろう。これは機関投資家のようなプロにとっては当り前のことかもしれないが、個人投資家には意外な盲点であろう。
また、ここでは取り上げていないが、日本株市場では、「逆張り」の投資戦略が有効であるといわれている。単純にいえば、価格が下がったところで買って、価格が上がったところで売るという戦略である。
以上のように考えると、筆者にとっては、日経平均やTOPIXに連動するETFを下落局面で少しずつ「買い下がっていく戦略」が最も有効であるように思える。
ただし、株式投資には様々なやり方があるし、資金規模によってもずいぶん異なってくる。そのため、筆者の考えはあくまでも筆者個人の見方であり、投資家の方々は、それぞれの事情に即して、ご自分で熟慮して投資を行うことを強くお勧めする。
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