中国の対米輸出、カリフォルニア州回避のケースが増加 中国の対米輸出でカリフォルニア州の港を経由せずに南東部に直接品物を送るケースが増えている。写真はカリフォルニア州のロングビーチ港
By ERICA E. PHILLIPS 2016 年 4 月 6 日 16:10 JST 中国の対米輸出で、長年アジアからの輸入の玄関口を担ってきたカリフォルニア州の港を経由せずに南東部に直接品物を送るケースが増えている。 ビーコン・エコノミクスの国際貿易担当エコノミスト、ジョック・オコネル氏によると、その理由は南東部で中国から部品を輸入する工場が増えていることと、サバンナ港やヒューストン港など南東部の港を経由した方が費用が安いことだ。米商務省が5日発表した2月の貿易統計によると、中国からのコンテナ輸入に占めるカリフォルニア州港湾の割合は58.6%に低下。同港湾が2014年冬に起きた労使紛争の影響から回復途上だった昨年7月以降で最低の水準となった。この割合はここ数年、60%を上回る水準で推移していた。 米西海岸の港湾では、労使紛争の影響で14年の暮れから15年の初めにかけて作業が停滞した。そのため、米国のコンテナ輸入全体におけるシェアを50%以上に保つことが難しくなっている。商務省が5日発表した2月の貿易統計によると、このシェアは49.5%と、1月の50.6%から低下した。 オコネル氏は「ここ数年、米南部の工業化が進んでいる」と語った。昨年は数社の大手自動車メーカーが南東部に工場を開設した。 同氏は「中国のサプライヤーは米国のサプライチェーンに組み込まれているため、そうした組立工場に近い港に(部品を)海路で直接輸送するようになっている」と述べた。 中国からカリフォルニア州へのコンテナ輸入(金額ベース)は13年から15年の間に約2%減少した。一方、テキサス州、サウスカロライナ州、ジョージア州の港湾への輸入は年20%以上のペースで増加した。ただ、昨年の中国からのコンテナ輸入は、カリフォルニア州が1710億ドルだったのに対し、ジョージア州は210億ドル、サウスカロライナ州とテキサス州はともに65億ドル程度だった。 今後数カ月中に予定されている二つの出来事が、そうした傾向に影響を与える可能性がある。春にはパナマ運河の拡張工事が完了し、より大型の中国船舶が米西海岸に立ち寄らずに、東部とメキシコ湾岸に行けるようになる。一方で、フランスの海運大手CMA CGMがアジアと西海岸を結ぶ定期航路に数隻の超大型船の投入を計画している。この船は一度に1万8000個のコンテナを運ぶことができるもので、カリフォルニア州港湾の貨物取扱量を押し上げるはずだ。 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MO400_0212im_M_20160211121027.jpg
News | 2016年 04月 6日 17:16 JST 関連トピックス: トップニュース 焦点:中国大手銀トップ、西側との報酬格差が一段と拡大
[北京 5日 ロイター] - 中国の大手国有銀行は世界最大級の保有資産を誇るが、経営トップの報酬は西側金融機関に比べてかなり見劣りする。しかも昨年は政府による広範な引き締め政策の一環としてさらに半分に減らされ、概ね欧米銀の初任給を下回った。西側銀のCEOとの報酬格差は一段と広がり、銀行の経営幹部職はアピール度が下がるばかりだ。 資産規模が世界最大の中国工商銀行(ICBC)(601398.SS)(1398.HK)の姜建清会長の昨年の報酬は55万元(8万5000ドル)弱。ICBCの年次報告によると、2014年の110万元から52%減った。 これは米JPモルガン・チェース(JPM.N)のジェイミー・ダイモンCEOが手にした昨年の報酬2700万ドルの0.3%にすぎない。スイスの金融大手UBS(UBSG.S)のセルジオ・エルモッティCEOの1430万スイスフラン(1480万ドル)と比べても微々たるものだ。 中国の大手銀を率いるのは通例、中央政府が指名した官僚で、大手銀トップ就任は多くの場合、将来政界でより強力なポジションに就くためのパスポートとなる。しかし報酬には上限が定められ、現状では激しく削られている。 西側と中国の金融機関トップの報酬格差は、世界金融危機後に中国の大手銀が世界ランキングで上位に入り始めたころから拡大傾向が続いている。今や資産規模で世界上位10行のうち中国が4行を占める。 中国銀の幹部報酬削減は、金融機関が逆風に見舞われている時期に重なった。各行は過去10年で最大規模に膨らんだ不良債権や、中国の景気減速に伴う事業の成長鈍化などへの対応に苦しんでいる。 かつて中国の国有企業幹部には、追加的な報酬によって安い給与を補う道があった。しかし習近平国家主席が進める汚職摘発により、こうした追加収入を得ることは難しくなった。 政府は大手国有企業全体で幹部報酬の削減を進めているが、最新の年次報告から政府が銀行に対して極めてつらく当たっている様子が読み取れる。国内大手5行の会長と行長の昨年の報酬はいずれも50%削減された。 中国建設銀行(CCB)(0939.HK)(601939.SS)の王洪章会長は前年の120万元から60万元以下に減った。中国農業銀行(601288.SS)(1288.HK)、中国銀行(601988.SS)(3988.HK)、中国交通銀行(601328.SS)(3328.HK)の大手3行の会長の報酬も14年の半分になった。 (Shu Zhang、Matthew Miller記者) http://jp.reuters.com/article/china-bank-idJPKCN0X30PM バンカー憧れのバークレイズ幹部職も今や埋まらず−危険過ぎる場所か Stephen Morris、Ambereen Choudhury 2016年4月6日 14:39 JST スタンダードチャータードのトップ管理職の誘いもバンカーは辞退か 自分が収監されかねない銀行規制に懸念を強める ロンドンに拠点を置く英銀は、かつては国際金融に携わるバンカーが最も憧れる就職先の一つだったが、今ではトップ管理職がなかなか埋まらない。与えられる役得よりも不正行為などの監督責任を問われるリスクの方が大きいという不安が背景にありそうだ。 スタンダードチャータードは、ジョン・ピース会長に代わる外部の人材を1年余り探してきたが見つかっていない。非公開情報であることを理由に複数の関係者が匿名を条件に語ったところでは、バークレイズも9カ月余り前に投資銀行部門の最高経営責任者(CEO)を退任する意向を示したトム・キング氏の後任探しを昨年から続けている。 バンカーは経営幹部として監督する部下の重大な不正行為に気付かなければ、自分が収監されかねない銀行規制に懸念を強めており、ライトタッチの緩い規制を謳歌(おうか)してきたシティー(ロンドンの金融街)は働くには危険な場所に様変わりした。法律専門家や人材あっせん業者によれば、不正に関与したバンカーの身元公表に英国の政治家が強い意欲を示していることや現金報酬の減少、容赦ない圧力にさらされる悪条件が重なり、英銀による上級幹部の採用は思うように進んでいない。 CMSキャメロン・マッケナのサイモン・モリス弁護士は「銀行のトップ管理職は、今やバンカーを辱めるスタンドプレーの政治家などの強い攻勢にさらされている。市場の不振でリターンが抑制され、監督当局のリスク回避的アプローチ強化で銀行のリスクテークが制限される結果、マネジャーの報酬がさらに抑えられている」と指摘した。 原題:U.K. Banks Struggle to Lure Talent for Top Jobs as Rules Bite(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-06/O574NM6TTDS001
バンカーの260億円に黄信号、ファイザー・アラガン合併破談か Manuel Baigorri 2016年4月6日 16:11 JST 米ファイザーによる同業アラガンとの1600億ドル(約17兆7000億円)規模の合併合意について助言したバンカーたちが受け取るはずの巨額手数料が風前のともしびとなっている。合意が破棄される見通しが濃厚となってきたためだ。 米政府が今週、企業のインバージョン(租税地変換)についての制限を強化する規則を発表したことで、合併実現が危うくなった。ファイザーは合併後の新会社をアラガンの本拠であるアイルランドのダブリンに置く計画だった。 コンサルタント会社フリーマンの最新の見積もりによれば、アドバイザーの助言手数料は両社を合わせ2億3600億ドル(約260億円)。ファイザー側が約9400万ドル、アラガンのアドバイザーが1億4200万ドルとなる。合併が破談になれば銀行が受け取れるのはその10分の1になる公算だとフリーマンが5日にコメントした。 ファイザーのアドバイザーはゴールドマン・サックス・グループとセンタービュー・パートナーズ、グッゲンハイム・パートナーズ、モーリス。アラガン側はJPモルガン・チェースとモルガン・スタンレー。 原題:Bankers Risk Losing Millions If Pfizer-Allergan Deal Dies (1)(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-06/O579SG6S972G01 欧米株式市場の「恐怖指数」、格差広がる 欧州と米国の株式市場で投資家の警戒感を示す指数の差が広がっている
By SAUMYA VAISHAMPAYAN 2016 年 4 月 6 日 15:55 JST 欧州と米国での株式市場の警戒感を示す尺度の違いが拡大している。 ユーロ圏企業50社を対象とするユーロSTOXX50種指数の予想変動率指数(VSTOXX)と、S&P500種指数の予想変動率を対象とするシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)の差(スプレッド)は、昨年夏のギリシャ債務危機中によく見られた水準程度となっている。 VSTOXXは5日に26.62まで上がった。一方、VIXは15.42となり、両指数のスプレッドは11.2となった。このスプレッドは4月1日には2月24日以来最高の12.01をつけた。 この1年にわたり、このスプレッドは7月3日に15.5まで拡大してからは、2015年中はおおむね縮小してきたが、16年の初めに6.3をつけた以降はまた拡大してきている。 スプレッド拡大の背景には、2月半ば以降のVIXの低下がある。VIXが低下したことで、数週間の株価上昇を受けた米国投資家の油断が懸念されている。米株式市場の「恐怖指数」と呼ばれることの多いVIXは、ここ数週間で長期的平均を割り込み、4月1日には終値として年初来最低の13.10をつけた。 昨年の6月から7月初めまでさかのぼると、ギリシャが国際債権団と金融支援交渉をまとめることができるか懸念され、欧州の株式は米国株よりも打撃を受け、欧米の変動率指数はスプレッドが拡大した。どちらの指数も、主要株式指数のオプション価格に基づいており、株価下落時には上昇する傾向がある。 VIXとVSTOXXのスプレッド推移 ドイツ銀行の株式デリバティブ(金融派生商品)ストラテジスト、ロッキー・フィッシュマン氏は「この動きにはユーロSTOXX50種がS&P500種よりも、絶えずしかも少なからず低迷してきたことが主な背景にある」と語った。 ユーロSTOXX50種指数はこれまで年初来12%近く下落したが、S&P500種指数は0.1%高となっている。 加えて、ギリシャ支援措置をめぐる混乱がこの夏にまた高まる可能性があり、英国が欧州連合(EU)を離脱する可能性も懸念され、米国株よりも欧州株に大きく影響するだろう。 フィッシュマン氏は「欧州に対する懸念は、いまのところ米国には実際関係していないことだ」と指摘した。 関連記事 米株のボラティリティー、上昇懸念高まる 欧州株、回復遅れる理由とは 先週の米株、FRB議長発言で史上最高値うかがう https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NK449_fearvi_G_20160405164259.jpg ECBの社債買い入れ、欧州社債市場を圧迫する恐れ JPモルガン・チェースの資料によると、ECBは現在、カバード債市場の発行残高の約28%を保有しており、年末までに半分を吸収する可能性がある(写真はフランクフルトのECB本部) By JON SINDREU AND CHRISTOPHER WHITTALL 2016 年 4 月 6 日 15:36 JST 欧州中央銀行(ECB)が社債買い入れ開始に備える中、投資家はECBがカバード債市場に及ぼした影響を危惧し注目している。 ECBは3月、ユーロ圏全体の資金調達コストを下げる取り組みの一環として4-6月期中に資産買い入れ措置の対象を非金融機関の社債に拡大すると発表した。この発表を受けた当初、社債市場は盛り上がり新規起債が相次いだ。だがここにきて、一部の投資家はECBの大量な買い入れで既に薄い市場の流動性が損なわれる可能性を懸念している。 投資家は影響がどう出るかを検討するにあたり、ECBのカバード債買い入れに注目している。カバード債は、銀行が保有する資産(通常は住宅ローン債権)を裏付けとして発行する債券を指す。 ECBがカバード債市場で大量に買い占めたため、投資家は大幅な値動きを起こさずにまとまった額の債券を取引することが難しくなっている。 ユーロ圏カバード債の出来高推移(左)とECBのカバード債保有額の推移〔単位:10億ユーロ〕 ENLARGE ユーロ圏カバード債の出来高推移(左)とECBのカバード債保有額の推移〔単位:10億ユーロ〕 社債市場の流動性はすでに低下しつつある。流動性が低いために相場の変動率は高まる可能性があり、見込みが違った場合に社債を処分することは難しくなるかもしれない。こうしたことを踏まえ、この問題は投資家にとって主なリスクとして常に指摘されてきた。 ECMアセット・マネジメントの運用担当者、クリス・テルファー氏は、「個人的に主な心配は流動性だ。ECBは社債買い入れを通じこれを悪化させている」と指摘した。テルファー氏は、ECBの買い入れを相殺するには発行額を増やす必要があると語った。 これについてECBの報道官はコメントを控えた。 ECBは2009年6月からカバード債の買い入れを開始し、14年10月に買い入れを増額した。現在、およそ2000億ユーロ(約25兆1300億円)相当のカバード債を保有している。 JPモルガン・チェースの資料によると、ECBは現在、発行残高の28%を保有していることになり、年末までに市場の半分近くを吸収する可能性がある。 流動性を測るのは難しいが、少なくとも一つの尺度としてカバード債取引の出来高が減少している。マーケットアクセス・ホールディングスによると、ユーロ圏カバード債の平均月間出来高は14年の1-3月期に133億ユーロあったが、今年の1-3月期には59億ユーロまで減った。 フィッチ・レーティングスが1月に発表した調査では、カバード債投資家の4分の3が流通市場での流動性低下に懸念を示した。 ブルーベイ・アセット・マネジメントの信用戦略責任者、デビッド・ライリー氏は、「ECBは流動性を空にして投資家を締め出した」と述べた。 ECBはユーロ圏国債市場の流動性も吸い上げた可能性があると一部の投資家は言う。ECBは昨年3月から国債を買い入れている。平均月間出来高は昨年4月以降、前年比で20%程度減少している。昨年の4月と5月にドイツ国債が急落した原因として、一部の投資家は流動性の低下を指摘した。 投資家はすでに社債市場の流動性低下を懸念している。規制の厳格化に対応して投資銀行が取引部門の規模を縮小したためだ。 ECBは社債買い入れ額を示していないが、毎月の資産買い入れの一環として実施するとしている。月次の買い入れ額は、3月のECB理事会を受けて600億ユーロから800億ユーロに増額された。 マーケットアクセスによると、今年1-3月期のユーロ圏高格付け社債の平均月間出来高は前年同期比11%減の440億ユーロとなった。 ECBが流通市場の流動性を空にしないためには、ECBの買い入れと同じくらいの速度まで企業が新規起債を増やす必要がある。 3月の政策判断を受け、社債起債額は跳ね上がった。だが、ECBがカバード債市場に及ぼした影響からみて、当初の盛り上がりは短命に終わる可能性がある。 ディールロジックによると、14年にカバード債の新規発行額は前年比13%増の490億ドルとなったが、15年には440億ドルに戻った。これは11年に記録した過去最高の1480億ドルの3分の1にも届かない(ディールロジックの資料はドル建て)。 もちろん、社債市場の流動性懸念は行き過ぎだとする投資家やアナリストもいる。ウェルズ・ファーゴのクレジットストラテジスト、ナサニエル・ローゼンバウム氏は、ECBの買い入れで資金調達コストが下がるので、ユーロ圏企業の起債は増えるだろうと指摘した。 また、シティグループのクレジットストラテジスト、ハンス・ローレンゼン氏は、ECBはカバード債市場でできたような大量の買い入れを社債市場ではできないと言う。同氏の推計によると、ECBは独自の規制により、カバード債市場では85%程度まで買い入れが可能だが、社債市場ではおよそ3分の1しか買い入れることはできない。社債市場の大半をユーロ圏以外の国々の企業が発行した債券が占めており、ECBの規制ではこうした債券は購入できないことになっている。 関連記事 ECBの社債購入決定、その影響とは 欧州企業が起債ラッシュ−ECBの社債買い入れ見越し ECB追加措置は「行き過ぎ」=バイトマン理事 https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AI088_ECBBON_9U_20160404115709.jpg 国債のマイナス利回り、新常態となるか ECBのマイナス金利導入や債券買い入れ増額が一因で、ドイツ国債利回りは急低下している(写真はECB本部ビルに投影されるユーロのマーク)
By MIN ZENG 2016 年 4 月 6 日 15:22 JST 欧州最大の経済国ドイツでは、国債価格が1週間にわたり急騰した結果、10年物の利回りがかつては考えられなかったマイナスの領域に迫っている。 トレードウェブによると、10年物のドイツ国債利回りは5日、1年ぶりの低水準となる0.08%をつけた。終値利回りとして過去最低の0.073%まであと一歩だ。 欧州中央銀行(ECB)によるマイナス金利の導入や債券買い入れの増額に、投資家のリスク回避ムード再燃が重なり、ドイツ国債利回りの急低下を招いている。 欧州国債の利回り低下により、米国の金利にも下押し圧力がかかる可能性がある。米連邦準備制度理事会(FRB)が市場に対し、年内の利上げ確率を過小評価しているかもしれないとわざわざ警告している今であってもだ。 ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「奇妙な時代に生きている」とし、「経済の教科書にマイナス利回りの説明などあっただろうか。これはニューノーマル(新たな常態)だ」と述べた。 償還年限10年未満のドイツ国債を含め、世界の国債の約4分の1がマイナス利回りで取引されている。日本銀行がマイナス金利政策を採用したことを受け、10年物の日本国債利回りは2月に史上初めてゼロを下回った。一部の欧州企業の社債でさえも最近ゼロを割り込んでいる。 5日の米国債市場では、10年物の利回りが1.727%へ低下して取引を終えた。昨年末の2.273%を大幅に下回る。10年物利回りはドイツと日本でも昨年末の水準を大きく下回っている。 米国、ドイツ、英国、日本の国債利回り低下は、長年にわたり多くの投資家や政策当局を混乱させてきた厳しい状況を映し出している。世界的な製品需要の低迷や標準以下の経済成長、低インフレといった要因が、徐々に緩和の度合いを増す金融政策に抵抗力を見せるという状況だ。 JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル債券担当最高投資責任者(CIO)、ニック・ガートサイド氏は「これが中央銀行にとって難題となっている」とした上で、「利回りが低いからといって、さらに低下しないと決まったわけではない」と述べた。 FRBの統計によると、FRBが保有する米国債は発行残高の20%近くに相当する。HSBCの統計によれば、英中銀イングランド銀行が保有する英国債の割合は3月末時点で26%、日銀が保有する日本国債の割合は30%となっている。 一方、HSBCによると、ユーロシステム(ECBとユーロ圏加盟国の中銀で構成)が保有するドイツ国債の割合は発行残高の10%相当だ。 投資家らは、ドイツ国債をめぐり民間投資家との競争が一段と加速する中、ECBの買い入れが引き続き利回りに下押し圧力を加えるだろうと指摘している。 HSBCの債券調査担当グローバルヘッド、スティーブン・メジャー氏は「世界的な超低利回りという背景は、米国債利回りの低下とつじつまが合う」と述べた。同氏は10年物米国債利回りの年末予想を1.5%としている。 関連記事 欧州の銀行と国債市場、どちらの安定を優先すべきか 国債買いに走る投資家が忘れてはならないリスクとは ドイツ国債、再び危険な道に 先進国の国債利回り、さらなる低下あり得るか https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NK396_RATES0_P_20160405152618.jpg
3月のFOMC議事録、5つの注目点 イエレンFRB議長(3月16日の記者会見)
By HARRIET TORRY 2016 年 4 月 6 日 14:38 JST 米連邦準備制度理事会(FRB)は、経済見通しが一段と冷え込む中で3月15・16日の連邦公開市場委員会(FOMC)を迎え、終了後には年内の利上げ予想を引き下げた。昨年12月に0.25%利上げして以来、FRBは政策金利を据え置いている。米東部時間6日午後2時(日本時間7日午前3時)に公表されるこの会合の議事録は、世界の成長減速や金融市場の変動、予想される金利経路に関するFRBの議論を浮き彫りにするだろう。以下に5つの注目点を挙げる。 1. 不確定要素の見通し 議事録では、見通しの不確定要素を数値化したチャートを含め、FRB当局者の最新の経済・政策経路見通しについてさらなる詳細が明らかになるだろう。特に政策当局者らが成長に対するリスクの見通しを変えているかどうかが注目だ。リスクが総じて均衡しているというのが大勢の見方なのか、それとも下振れに傾いているかに注意したい。1月と3月のFOMC後に発表した声明では見通しに対するリスクバランスをFRBがどう評価しているか述べなかったので、この点が重要になる。世界の経済・金融情勢について声明が広く警告を発したことは、こうした情勢が米国の成長やインフレに及ぼす影響に関して当局者らの意見が一致しなかった可能性を示唆している。 2. 世界情勢 今回の議事録は、世界的な景気減速をめぐるFRBの議論について手掛かりを提供するかもしれない。イエレン議長は先週の講演でこのテーマをさらに掘り下げ、当局の「政策調整を慎重に進める」姿勢を擁護した。3月のFOMC議事録では、中国経済の減速と原油価格の急落が話題になる可能性が高い。そして他国の金融政策やその為替レートへの影響も論点になり得る。3月のFOMCの数日前、欧州中央銀行(ECB)は一連の利下げと債券買い入れの増額、銀行向けの低利融資を発表した。1月には、日本銀行がデフレ対策の一環として初めてマイナス金利を導入した。 3. インフレへの対応 インフレ率はFRBが目標とする2%を4年近く下回っている。FRB当局者の3月の経済見通しでは、2017年のコアインフレの予想中央値が12月の見通しからやや低下した。コアインフレはこのところやや加速している。議事録では、金利判断の重要な要素となるインフレ見通しについてのFRB内部の議論に光があたるかもしれない。 4. 市場の動き FRBは3月、年内の利上げ幅が合計で0.5%になるとし、12月予想の1%から下方修正した。これでFRBの予想は市場に一段と近づいた。議事録では、年初の株式市場の変動が政策協議にどう影響したか、利上げペースを緩めると決定する上で資産価格の大幅な動きがどのような役割を果たしたかが垣間見えるかもしれない。 5. FOMC内の足並み カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁 ENLARGE カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁 PHOTO: ZUMA PRESS カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は、3月のFOMCで0.25%の利上げを支持し、政策判断に唯一反対票を投じた。議事録では、同総裁の判断に関する詳細や、投票権のない他の委員が総裁の見解を共有していたどうかが明らかとなる可能性がある。投資家やアナリストらは、イエレン議長が今年どの程度投票権のあるメンバーの支持を得ているかを評価したいところだろうが、議事録では個別の委員の氏名は特定されない。 関連記事 3月のFOMC、5つのポイント 3月のFOMC判断、エコノミストはこうみる https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NH563_0329fe_M_20160329101716.jpg 【FOMC政策声明】現状維持、海外動向とインフレを注視−賛成多数
|