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マイナス金利の影響ー伊藤隆敏の「数字で読み解く日本経済」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160406-00011748-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 4月6日(水)16時1分配信
日本銀行が発表したマイナス金利は日本経済にどのような影響を及ぼすのか。
スイスとの違いを見るに、日本のほうが景気押し上げ効果を持ちそうだ。
日本銀行は1月29日、新たな金融緩和手段として、政策金利をマイナス0.1%にすることを発表した。マイナス金利は民間銀行が今後、新規に日銀に預ける超過準備に適用される。民間銀行が消費者や企業からの預金金利をマイナスにするのか、銀行からの住宅ローンや企業へのローンにまでマイナス金利を設定するのかは、まだわからない。
日銀はなぜ、このタイミングで追加的金融緩和に踏み切ったのだろうか。日銀は「このところ、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっている。このため、企業コンフィデンス(信用)の改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大している。日本銀行は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、2%の『物価安定の目標』に向けたモメンタムを維持するため、『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』を導入することとした」と説明している。
「功罪の予想」が交錯
インフレ率2%を達成するためには、インフレ期待を高め、賃金交渉のなかで賃金上昇を誘導し、それが製品価格上昇という形で、インフレ率押し上げにつながることが必要だ。そのため、これから春闘が始まるというときに、世界の金融市場の混乱が、株安、円高を引き起こして、国内のインフレ期待が下がり始めるということを懸念したのだろう。たしかに、日銀が独自に集計している家計の予想物価上昇率は、2013年4月のQQE(量的・質的緩和)導入で一気に高まったものの、その後、じりじりと下げ続けている。14年10月のQQE2で少し上がったが、その後また下がっている。いっぽう、生鮮食品とエネルギー製品を除いた「基調的な」物価動向は、プラス1%を超えているなど、これからも景気の回復が続いて、賃上げ、インフレのサイクルがうまく働けば、17年度前半にも2%のインフレ目標は達成可能、としている。
マイナス金利が適用されるのは、民間銀行が新規に日銀の口座(当座預金)に超過準備として預金される部分であり、すでに超過準備として日銀に預金している部分は、これまでどおりプラス0.1%が適用される。必要準備には0%が適用される。さらに、量的緩和により毎年80兆円近くが超過準備として積み増されることから、それについてのマイナス金利が負担にならないように、0%金利を適用する部分を段階的に増やしていくとして「マクロ加算残高」とよんでいる。この部分は、金融機関がマイナス金利から被る損失を見ながら、匙加減を調節することになりそうだ。
新規預金については、民間銀行は日銀に預けているだけで、損失を被る。むしろ現金を自行の金庫に入れておいたほうがいいが、これは物理的にも限界はあるし、作業負担、リスクも大きい。日銀に預けても、単に現金を寝かせておいても利益は出ない。利益を出すためには、(1)金利を下げて貸し出しを増やす、(2)外国債券や株式を購入する、(3)不動産ファンドなどに出資する、などの創意工夫が必要になる。もちろんマイナス金利政策の狙いは、そのようなお金の流れの変化にある。住宅ローン金利や企業への銀行ローン金利が低下することは、消費者や企業に歓迎され、消費や投資を押し上げる効果を持っている。
金融機関は、市場を通じて国債を日銀に売却するには、売却で得た現金を高い利回りで貸し出し、資産運用できなければ、そもそも売却しない。そのため日銀の国債買い入れ価格は上昇(利回りは低下)する。このプロセスは、イールドカーブ全体を押し下げる。
また、外債の購入者が増えれば円安になり、結果的には日本の輸出産業の業績を後押しすることになる。世界経済混乱のなかで、安全通貨の円は増価しやすいので、この効果は望ましいだろう。
注目は住宅ローン金利の下落
このようなマイナス金利の功罪の予想が交錯するなかで、「マイナス金利」発表に株式市場と為替市場は大きく反応した。発表直後は株価急騰、円安にジャンプした。1月29日の終値では、日経平均は2.8%上昇。一方、銀行株は銀行業績にはマイナスであるとして、多くの銀行株は3%近く下落。ドル円も3円ほど円安になった。その後は株安、円高に転じる。その流れが一巡すると、ふたたび、じりじりと株価上昇、円安が続き、翌週には、原油安、アメリカの株安が引き金となって、株高・円安効果も、剥げ落ちてしまった。
銀行は、企業や家計の顧客からの預金にマイナス金利をつけることはできるだろうか。預金金利がマイナスになると預金を現金で引き出して、自宅金庫に保管する人が現れるかもしれない。それも盗難リスクをともなうし、手間も面倒くさいだろう。大企業の場合には、マイナスの預金金利でもあきらめて預け続けるところが多いだろう。このあたりは、スイスやスウェーデンの経験から推測が可能だ。
ひとつだけ、スイスの経験と日本の(これからの)経験が異なる点がある。それは、スイスではマイナス金利の導入後、住宅ローン金利は上昇したというのだ。一方、日本では、マイナス金利導入後、長期金利の下落とともに、住宅ローン金利が下落している。日本のほうが景気押し上げ効果を持ちそうだ。
ちなみに、古来、金貸しによる「利子」徴収を適切ではないとする宗教上の教義、あるいは教本の解釈は多数ある。旧約聖書では、利子のついた金貸しを禁止していたという。その結果、古代カソリック教会でも利つきの金貸しを禁止していたという。あるいは、ユダヤ教では同胞には金利をつけないが、外国人(異教徒)には利子をつけて貸してもいい、という解釈もあったようだ。イスラム教では、今日にいたるまで「金利」は禁止されている。イスラム金融では、預金の代わりに出資、利子の代わりに配当、という概念を使っている。これらの教義ではマイナス金利はどう扱われるのだろうか。やはり禁止なのか、興味があるところだ。
伊藤 隆敏
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