Business | 2016年 04月 6日 01:12 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 日銀が追加緩和議論の公算、デフレ圧力再燃懸念=関係筋 [東京 5日 ロイター] - 日銀は27─28日に開く金融政策決定会合で、追加金融緩和について議論する公算が大きくなってきた。複数の関係筋が明らかにした。 1月に追加緩和に踏み切ったばかりだが、世界経済の不透明な状況が続く中、企業や家計の物価観が低迷し、円高・株安基調も継続。2017年度前半としている物価目標2%の到達がさらに後ずれするリスクが高まっているためだ。 同時に設備投資や雇用は堅調に推移し、1月の追加緩和の効果がこれから実体経済に出てくると期待できるため、日銀はギリギリまで情勢を見極め、政策維持の選択肢も含め詰めの判断を下すとみられる。 日銀は1月29日、金融機関から預かる資金の一部に0.1%のマイナス金利を付与する政策を初めて導入する決断を下した。日銀内には、この効果を見極める必要があるとの声が少なくない。 だが、その中で追加緩和の議論が再浮上している背景には、1)急激な円高と賃上げの上昇鈍化で物価見通しの下方修正が避けられない、2)企業や家計の物価観を示す期待インフレ率の指標が軒並み悪化している──などの現象が目立ってきたことがある。 また、新興国経済の減速などで、足元の生産活動も低迷。需給ギャップの改善も後ずれ傾向が目立ってきた。 日銀が重視する「物価の基調」の構成要素である需給ギャップと期待インフレ率の鈍さを背景に、2017年度前半としていた物価2%の到達時期は、さらに遅れることが避けられない情勢になりつつある。 ドル/円JPY=EBSは1月会合の直後に121円台まで円安方向に動いたが、現在は110円台と10円程度円高に振れている。また、2016年度春闘のベースアップは前年比0.4%程度と15年度の0.6%を下回った。 このため機械的に試算すると、16年度、17年度の物価見通しは1月時点よりも0.3─0.4ポイント下振れる。 さらに日銀が1日公表した3月短観では、大企業製造業の業況判断が前回の昨年12月と比べて6ポイントの大幅悪化となった。4日に公表した企業の消費者物価見通しも、1、3、5年後いずれも昨年12月から0.2ポイント低下した。日銀や内閣府の集計する家計の物価見通しも下振れている。 もっとも、海外経済の不透明感や年明け以降の市場変動を受けた短観などに見られるさえない経済指標は、ある程度想定済みで、日銀内にはこうしたリスクに事前に対応して1月追加緩和に踏み切ったとの判断がある さらにマイナス金利政策が、時間とともに効果を表し、大幅な金利低下が企業の借り入れ拡大を通じて景気・物価を押し上げるとの波及ルートを想定している。その点に関連し、短観では企業の設備投資計画や雇用情勢について、底堅い状況が確認された。 物価面では、生鮮食品とエネルギーの影響を除いた消費者物価指数(日銀版コアコアCPI)が、2月に前年比1.1%と1%前後で安定して推移している。 今後プラス幅が縮小を続けるのか現時点では判断が難しく、海外経済の減速の程度と国内景気の先行きをどう見るかが、判断を左右することになりそうだ。 仮に追加緩和に踏み切る場合は、マイナス金利幅拡大よりも、資産買い入れを中心とした手段が議論となる公算が大きいとみられている。 ただ、黒田東彦総裁は5日の衆院財務金融委で、追加策で量・質・金利をどうするかは総合判断であり、事前に決めるのは難しいと述べており、追加緩和の最終的な決断とその手段に関しては、今後、本格的な議論が進むと予想される。 *見出しを修正し、カテゴリーを追加して再送します。 (竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/boj-april-polcy-idJPKCN0X21EG 2016年4-6月期金融政策:各国中銀、金融緩和が再び主流 ワシントンのFRB本部 ENLARGE ワシントンのFRB本部 PHOTO: KEVIN LAMARQUE/REUTERS By JON HILSENRATH 2016 年 4 月 5 日 09:39 JST 各国中央銀行の金融政策の潮流に変化が見られる。
再びほぼ主流の政策となっているのが金融緩和だ。主要国の中銀が正反対の方向、つまり外国為替市場や他の金融市場に不安定性をもたらす方向へ動いているように思われた2015年から変化している。 昨年は米連邦準備制度理事会(FRB)と英イングランド銀行が短期金利の引き上げへと向かう一方、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行、中国人民銀行は金融政策の緩和に向かっていた。この間で板挟みとなった新興国の中銀の多くは、最寄りで最も規模が大きい中銀に重点を置いた対応を強いられた。 FRBは結局、昨年1回だけ0.25%の利上げを実施し、2016年の利上げ回数予想を引き下げた。先物市場が織り込む4-6月期末までの利上げ確率はわずか26%で、低金利がより長期間続くことを示唆している。 ウォール・ストリート・ジャーナルがまとめた世界の中銀の四半期政策見通しによると、4-6月期に利上げへ傾くのはFRB、メキシコ銀行、トルコ中央銀行の3行のみとなっている。 これに対し、日銀や中国人民銀、インド準備銀行を含む9行は4-6月期に金融政策の緩和へ向かい、ECBや英中銀をはじめとする11行は金融政策を当面据え置くとみられている。 英中銀の変化は著しい。カーニー総裁は昨年8月、16年初めに行動する可能性が高いと指摘した。現在、カーニー総裁のカレンダーにおいて重要な日付は、欧州連合(EU)離脱の是非を問う英国民投票が行われる6月23日だ。このイベントを取り巻く不確実性から、欧州全域の中銀は身動きできなくなる恐れがある。 また、世界の金融市場の混乱に懸念を募らせているFRBも、6月14・15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げをためらう可能性がある。FRBが4月に利上げする確率は極めて低く、先物市場が織り込む確率はわずか5%となっている。 さまざまな要素が重なり合い、世界を金融緩和へ後戻りさせている。世界的な低インフレもその一つだ。例えばインドでは、2月の消費者物価指数(CPI)上昇率が5.18%となり、中銀目標の6%を下回ったため、ラジャン中銀総裁には利下げの余地が与えられている。オーストラリアも低インフレや通貨高を理由に、利下げを視野に入れている。2桁のインフレ率に悩まされてきたブラジルでさえも物価上昇は減速しており、中銀のトンビニ総裁には政策金利を据え置く機会が与えられている。 中国では、経済成長率(中央政府は2016年の目標を6.5%〜7%としている)の鈍化によって金融緩和が続き、他の多くの中銀は経済リスクへの警戒を崩さない可能性が高い。 FRBのイエレン議長は、懸念事項のリストの上位に中国を置いている。先月の講演では、「中国経済は今後数年にわたり減速するというコンセンサスがある」と述べた。 原文(英語):Global Central Banking in 2016 関連記事 2016年4-6月期金融政策:FRBの利上げペース減速、海外情勢を警戒 2016年4-6月期金融政策:ECB、政策据え置きへ 2016年4-6月期金融政策:日銀は追加緩和か−効果には疑問も 生産性伸びない米経済、早期の小幅利上げ正当化か FRB、必要なら景気刺激策はまだある=イエレン議長 2016年4-6月期の金融政策特集 通貨安競争は絶対に回避を=WSJ会見で安倍首相 インタビューに応じる安倍首相(5日、首相官邸)
By PAUL JACKSON AND PETER LANDERS 2016 年 4 月 6 日 01:09 JST 【東京】円がドルに対し約1年半ぶり水準に上昇する中、安倍晋三首相は世界各国が通貨安競争を回避しなければならないとの認識を示した。 米連邦準備制度理事会(FRB)が緩やかな利上げを示唆しているほか、世界的な金融市場の混乱を受け投資家が安全資産とみなされる円に資金を移したことから、2016年に入り円の対ドル相場は上昇が加速している。安倍首相が掲げる経済政策はほぼ円安を想定しており、こうした状況はやっかいな問題だ。 日本銀行はマイナス金利を導入し、円安につながる可能性も期待されていたようだがそうした効果は今のところ出ていない。欧州中央銀行(ECB)やアジア他国の中銀も国内景気の底上げへ向け追加緩和策を実施している。 安倍首相はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、ここ数カ月の円高傾向や人民元の下落、その他の主要通貨の不安定な動きについて、「通貨安競争は絶対避けなければならない」とし、「恣意的な為替市場への介入は慎まなければならない」との認識を示した。 関連記事 安倍首相、日米安保とTPPを強く擁護−WSJインタビュー 【寄稿】円売り介入のリスクとは 円高が止まらない理由とは アベノミクス、行き詰まりへの道 経済 日欧マイナス金利、世界経済に恩恵=IMF専務理事 ラガルドIMF専務理事はECBの追加刺激策などで景況感が支えられていると述べた(5日、フランクフルトのゲーテ大学で) By TOM FAIRLESS 2016 年 4 月 6 日 00:04 JST 【フランクフルト】国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は5日、欧州と日本が導入したマイナス金利について、世界経済への影響は「差し引きでプラス」との見方を示した。ただ中銀の非伝統的政策の副作用を注視すべきだとも述べた。 ラガルド専務理事はゲーテ大学での講演で、欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備制度理事会(FRB)の最近の政策行動を評価し、各国政府には成長を促す改革を導入し自らの役割を果たすよう呼び掛けた。 IMFとしては世界経済の見通しに関し「警戒ではなく注意している」と述べた。それでもここ半年で「成長の勢いが衰えた」とし、「中国の相対的な成長減速や商品(コモディティー)相場の下落、多くの国で予想されている金融引き締めの見通し」などが不安を増幅させていると指摘した。 またECBの3月の追加刺激策とFRBの利上げペース鈍化という「明白なシフト」で景況感が支えられているとも述べた。 そして「ECBと日銀のマイナス金利導入は、副作用を注視する必要があるが、現在の状況においては差し引きプラスだ」と話した。 2016年4-6月期の金融政策特集 ENLARGE 2016 年 4 月 6 日 09:37 JST 更新 各国中央銀行の金融政策の潮流に変化が見られる。再びほぼ主流の政策となっているのが金融緩和だ。 2016年4-6月期金融政策:各国中銀、金融緩和が再び主流に 主要国の中銀が正反対の方向、つまり外国為替市場や他の金融市場に不安定性をもたらす方向へ動いているように思われた2015年から変化している。
4-6月期金融政策:FRB、利上げペース減速
米連邦準備制度理事会(FRB)の当局者らは、年内に利上げする見通しであることに変わりはないが、世界経済の成長減速と最近の市場混乱により、利上げ幅は従来の想定よりも小さくなりそうだと述べている。
4-6月期金融政策:ECB、政策据え置きへ 欧州中央銀行(ECB)はわずか3カ月ほどの間に2回の追加緩和を実施したが、4-6月期は政策を据え置く見通しだ。ただ、3月に発表された緩和策の中の目玉とも言える措置が始動する。
4-6月期金融政策:日銀は追加緩和か−効果には疑問も 日本銀行は4-6月期も追加の金融緩和策を打ち出す必要に迫られている。景気が失速し、目標達成の難しさがあらためて浮き彫りになっているためだ。
4-6月期金融政策:中国人民銀は緩和継続へ
中国人民銀行が景気の安定を促すために金融緩和を続けねばならないことははっきりしている。問題はその方法だ。
関連特集 米FRB特集 2016年金融政策特集 http://jp.wsj.com/articles/SB12748367622113273976104581642250985717110?mod=wsj_nview_latest
「大きすぎてつぶせない」は銀行だけの問題か ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁
By JACOB M. SCHLESINGER 2016 年 4 月 6 日 12:10 JST 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は4日、大手銀行を解体する根拠を議論するために専門家を招いて開催した「大きすぎてつぶせない問題の終わり」に関する会議で主役の座を奪った。 だがこの日の朝、金融危機後におけるシステミックな(金融システム全体に波及するような)リスクをめぐる幅広い議論に新たなもっと大きな問題が加わった。保険業界が及ぼすシステミックな脅威の可能性について、国際通貨基金(IMF)が詳細に厳しい警告を発したのだ。 IMFは報告書の中で保険部門の危険性は「明らかに銀行よりもまだ低い」としつつも、「システミックなリスクへの生命保険会社の関与はここ数年で高まった」と述べた。また、巨大銀行とは異なり、巨大保険会社からの幅広い脅威に対処する規制手続きはあまり明確ではなく流動的だ。この点は先週、金融安定監視評議会(FSOC)による生命保険最大手メットライフへの「システム上重要な金融機関(SIFI)」の指定を連邦地方裁判所が無効と判断した事例で浮き彫りになった。FSOCは米政府が消費者だけでなく市場も守るために保険会社を監督させている主管機関だ。 これは、銀行はもはや「大きすぎてつぶせない」と言うようなことはないところまで規制当局は十分手を尽くしたかどうか、つまり、市場の混乱を避けるために税金を投じなくてもJPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカを破綻させることができるかについてのカシュカリ総裁の議論において、どちらかの側に立つものではない。 もっと小さく単純なことが問題なのだ。カリフォルニア州知事選に立候補したこともあるカシュカリ総裁は、すでに実施された大規模な体制を無視し、露骨とも思わせる態度で政策担当者らの間で公私にわたり怒りを買っている。連邦準備制度理事会(FRB)元副議長のドナルド・コーン氏は先週末にウォール・ストリート・ジャーナルが掲載した記事において、「彼(カシュカリ総裁)はこの手続き全体とその長所と弱点について知る必要がある」と指摘した。 規制当局はすでに、これまで以上に高い自己資本規制をかけたり事業の単純化や売却を命じたりして、最大手の銀行を抑制し、場合によっては解体さえできる基本的な手段を持っている。問題は当局がそうした権限を十分利用しているかどうかだ。今後数週間で、規制当局は金融機関への圧力を強めているかどうかを示す機会が2回ある。それは、銀行を対象にした年次「ストレステスト(健全性審査)」と、公的資金を用いずに整然とした破綻処理が可能であることを証明する「生前遺言(破綻時清算計画書)」の評価だ。 民主党の大統領候補選でも同じような見解の相違がみられる。バーニー・サンダース上院議員(バーモント州)は繰り返しカシュカリ総裁のように銀行解体に焦点をあてている。一方、ヒラリー・クリントン元国務長官は、問題はこれだけにとどまらないと応じ、規制の緩いノンバンクもシステミックなリスクとなる可能性があり、これに対する新たな規則を設けることに力点を置いている。 保険業界はIMFの報告書の背景にあるいくつかの基本的な想定に異議を唱えている。米生命保険協会は先週の声明で、「米経済にシステミックなリスクをもたらしている生命保険会社など一つもない」と述べた。だが、同業界が実際にリスク要因となっている場合、IMFが支持する銀行同様の高い自己資本水準や透明性の確保を保険会社に義務付ける権限が、米規制当局にどれだけあるかは不明だ。 関連記事 ミネアポリス連銀総裁、大手銀行規制の議論進める 「大きすぎてつぶせない」銀行批判は的外れ 「大きすぎてつぶせない」中央清算機関、当局が対策検討中 米大手銀の解体−まずやるべきこととは ギリシャ、IMF支援はもう不要=ノボトニーECB理事 ECBのノボトニー理事
By TODD BUELL 2016 年 4 月 6 日 09:29 JST 【フランクフルト】欧州中央銀行(ECB)のノボトニー理事は、ギリシャの財政状況の安定化に向けた国際通貨基金(IMF)の支援はもはや不要との見方を示した。 オーストリア中央銀行総裁でもあるノボトニー理事は、5日付のオーストリア紙ディー・プレッセのインタビュー記事で、「経済的に言えば、ギリシャの安定化にIMFはもはや必要ない。これは欧州人が自分たちで解決できる問題だ」と指摘した。 また、ECBが主要国で特に高額な紙幣の一つ、500ユーロ紙幣の廃止に傾いていることも示唆した。 決定は下されていないとしつつ、「今後発行されることはなさそうだ」と語った。「古い紙幣は引き続き支払い手段になるが、500ユーロ紙幣を新たに発行することはないかもしれない」と付け加えた。 さらに、犯罪との関連が指摘される500ユーロ紙幣の廃止をめぐる議論と、現金全般を廃止すべきかどうかという問題は区別しようと努めた。 「残念ながら、メディアには現金廃止に関する議論がある。だがこれは全くばかげている。500ユーロ紙幣の単位について話しているにすぎない。しかし個人的には(500ユーロ紙幣の)廃止を支持していない。現金に関する議論に拍車を掛けるべきではないと考えているからだ」と述べた。 ギリシャ支援の覚悟あるが大幅な改革が条件=IMF専務理事 IMFのラガルド専務理事(2月、上海)
By ANDREA THOMAS 2016 年 4 月 6 日 07:54 JST 【ベルリン】国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は5日、IMFはギリシャを支援する覚悟はあるが、それを可能とするためにギリシャは大幅な改革を実行する必要があると語った。 同専務理事はドイツのメルケル首相らとの共同記者会見で、ギリシャの進展に関する現在の議論は「明らかに必要とする状態になっていない」と述べ、「必要なことは長期の持続可能性だ。また、ギリシャにおける債務の持続可能性は民間部門の投資家にとって重要になるだろう。(投資家は)経済の観点や財政の観点、金融の観点から、この国に将来があるかを知りたいのだ」と指摘した。 そして、「われわれには支援を続ける覚悟があるが、これは最初から言っていることだ。堅固なものとなるよう大幅に改革する必要があり、持続可能になるよう大幅に強化しなければならない。(中略)そして最終的には、ギリシャの人々の利益に結びつく必要がある」と専務理事は話した。 メルケル首相は、ドイツとしては引き続きIMFが救済プログラムに参加し続けることを望んでいると強調したが、IMFが必要だとしているギリシャの債務減免には抵抗感をあらためて示した。 同首相は、ギリシャ協議はとても「妥当な経路」をたどっていると述べ、「(救済)プログラムへのIMFの参加を望んでいる。(中略)この交渉を速やかにまとめたい」と語った。だが、「債務減免を行うのはユーロ圏においては法的に可能ではないと考えている」とした。 関連記事 ギリシャ、支援策の審査遅れでIMFを名指しで非難 ギリシャの債務軽減交渉、当事者の温度差埋まるか ドイツに根付く資金洗浄、グループ解体も
中国市場から世界への影響飛び火、深刻化の恐れも 新興国からの世界への影響を考えた場合、世界第2位の経済大国かつ世界最大の貿易国である中国の重要性がとりわけ高い
By JON HILSENRATH 2016 年 4 月 6 日 12:32 JST 国際通貨基金(IMF)は4日に公表した国際金融安定性報告書(GFSR)で、先進国の金融市場のボラティリティー(変動率)が新興国市場からの飛び火で拡大する場合が増えていると断定した。 1990年代の先進国の金融市場は新興国が危機に見舞われたときに少し足を引っ張られる程度だったが、現在は平時にも影響を受ける。株式市場や外国為替市場の収益率の変動分のうち、3分の1以上が新興国の影響によるものだと考えられる。 IMFの報告は「政策担当者らはこれらの(新興)国の経済・政治動向をこれまで以上に考慮する必要があるかもしれない」と結論付けている。 新興国からの影響波及を考えた場合、世界第2位の経済大国かつ世界最大の貿易国である中国の重要性がとりわけ高い。2010年から15年までの間に中国企業向け海外融資は5倍に増え、1兆ドルを超えた。世界第3位の規模を有する中国債券市場は6兆7000億ドルに拡大し、海外の中央銀行や政府系ファンド(SWF)への門戸開放も進んでいる。 だがこれについては、IMFは中国当局の心づもり以上の政策を期待しているかもしれない。 IMFは「世界の金融システムにおける中国の役割が拡大するのに伴い、同国の経済・政策動向が世界の金融安定性に与える影響は増すだろう」とし、「従って、より広範な影響を及ぼしかねない市場の大きな反応を未然に防ぐためには、政策判断に関する明確で時宜を得た情報発信、政策目標の透明性、そして目標達成にふさわしい戦略が不可欠となろう」と指摘している。 中国人民銀行(中央銀行)は組織として独立しておらず、国務院(内閣に相当)や共産党の経済・財政政策諮問組織である中央財経領導小組の指示に従っている。中銀に対する指揮系統の実態は中国の多くの人たちにさえ不透明だ。日程や政策会合議事録の公表、記者会見の開催など、世界各国の中銀で共通に見られる慣行は行っていない。国内経済が減速し、共産党指導部が資本流出などの新たな問題に悪戦苦闘する中、人民銀行の選択肢を予測することも理解することも簡単になるどころか一層難しくなってきた。一方、習近平国家主席は厳重な取り締まりで報道機関の独立性を脅かし、国内の記者たちに共産党への忠誠を要請している。 こうしたことはどれも明確でタイムリーな情報発信にはつながらない。言い換えると、新興国市場の影響が世界に波及するという問題は消える気配はなく、むしろ悪化する可能性さえある。 関連記事 中国が世界の株式相場に及ぼす影響増す=IMF 中国政治のもろさ、経済を損なうリスク 中国債券市場の開放、国際金融地図に変化もたらす
中国「ブル」は絶滅、響く「ベア」のうなり声 成長率1〜3%という「失われた10年」に突入すると予想する声は6割に 上海・外灘(バンド)にあるウォール街の雄牛像「チャージング・ブル」のレプリカ 2016 年 4 月 6 日 11:10 JST 【上海】中国の「ブル(雄牛)=強気派」とは、同国経済が遠い未来に向かって全速力で突進していくとみていた人のことだった。 この予測はそれほど現実離れしたものではなかった。中国の年間経済成長率は2010年までは2桁に達していた。14年には世界銀行のチーフエコノミストだった林毅夫氏が、適切な組み合わせの経済改革が潤滑油となり、向こう20年は年8%のペースを維持することに自信を示した。 一方、少数派の「ベア(熊)=弱気派」は大幅な景気減速を予想し、1桁台前半から半ばへの失速もあり得るとみていた。ベアよりさらに数の少ない「パーマベア(常に悲観的なベア)」は中国経済の崩壊を予測していた。 流れはあっという間に変わった。ベアがブルに入れ替わるまでには至っていないが、その状態に近づきつつある。 米国の超党派シンクタンク、外交問題評議会(CFR)が主催したワークショップで、教育機関のエコノミスト、金融専門家、地政学ストラテジストの合わせて35人ほどが3つの中国経済の成長シナリオを提示した。中国指導部が改革に成功し、年率4〜6%の成長を遂げるという「楽観シナリオ」を選んだのは全体の31%にとどまった。一方、成長率が1〜3%という「失われた10年」に突入すると予想したのは61%。その他は、中国経済は「ハードランディング(硬着陸)」する可能性が最も高いと考えた。 もちろん、これは科学的な調査ではないが、興味深いのは中国政府が「中程度から速いペース」の成長(すなわち6.5%以上)を確保するという約束を果たせるかどうか考えた人は1人もいなかったとみられることだ。 昔ながらのブルが事実上絶滅したとするならば、習近平国家主席をトップとする中国指導部が経済改革に専念していないのではとの疑念が広がっていることが主な理由だ。 むしろ、習主席は腐敗撲滅運動や国内の反体制派の弾圧、メディアの操縦、治安当局に対するコントロール強化、南シナ海での米国との覇権争いに力を入れているように見える。 皮肉なことに、CFRのワークショップでハードランディングを予想した人たちは、楽観シナリオの最も有力な論理的根拠を持っていたかもしれない。CFRのフェロー、マイケル・レビ氏によると、彼らは経済がどん底に落ち込むことで指導部は動かざるを得なくなり、「中国は良い方向に向かう」と考えていた。 これは重要なことだ。なぜなら、ローレンス・サマーズ元米財務長官が先ごろ書いたように、中国は過去数世紀で初めて「世界経済から受けるのと同じくらい大きな影響を世界経済に与える」ようになっているからだ。サマーズ氏は、数十年にわたり驚くべき成長を遂げてきた中国経済が「平均ペースに戻る」のは避けられないとみている。つまり、中国の経済成長率は平均並みとなり、他の国々と共に2%前後で推移するという見通しだ。 中国政府は今年の経済成長率目標を6.5〜7%に設定している。昨年の成長率は6.9%と、四半世紀ぶりの低水準に沈んだが、エコノミストらはその数字について、ほぼ確実に水増しされていると指摘する。 ウォール街のヘッジファンドや国際的な金融機関、多国籍企業は、中国経済の減速に伴う世界的なコモディティー(商品)価格とエネルギー価格の急落による衝撃に耐えてきた。そして今、中国経済がさらに下振れした時(下振れした場合、ではない)に世界に及ぼす影響を見極めようとしている。 国際通貨基金(IMF)は中国の経済成長率予測を徐々に引き下げており、来年は6%に低下すると予想している。 ある意味、景気減速は喜ぶべきこととも言える。中国は、重工業と製造業がけん引する古い高度成長モデルによってもたらされる環境破壊や健康被害にもはや耐えられない。同モデルを維持するために、このまま急ピッチで企業債務を積み上げていく余裕もない。 また、エコノミストが指摘し続けているように、10兆ドル規模の世界2位の経済大国である中国は、経済成長が緩やかになっても大きな影響力がある。中国は現在、世界の経済成長の約3分の1を担っている。 だが重要な問題は、中国政府がある種の危機を引き起こして、世界経済をリセッション(景気後退)に傾けることなく、サービス業・消費主導型の成長モデルへの移行に伴う景気減速に対処できるかどうかだ。 米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は懸念を表明している1人だ。利上げペースを落とす根拠を説明した際に、特に中国の景気減速がもたらすリスクに言及した。 他の米国のシンクタンクも同様に懸念している。戦略国際問題研究所のマシュー・グッドマン氏らは、緩やかな成長が続くというのが依然として最も可能性の高いシナリオだが、「世界はもはやハードランディングのリスクを無視できない」と書いている。 また、中国で政治的緊張が高まっている中で、「最も確実なのは、中国の経済成長率は今後も期待を裏切るものになるということだ」と付け加えた。 少なくとも西側諸国では、中国経済の見通しについて悲観論が主流となっている。または、CFRのレビ氏が言うように、4〜6%の成長率なら「上出来」とされている。 ベアはようやく脚光を浴びるようになった。そして、パーマベアのうなり声のせいで、イエレン議長などの中央銀行関係者は夜も眠れずにいる。 (筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト) 関連記事 中国政治のもろさ、経済を損なうリスク 経済より政治優先、影ひそめる中国の現実主義 中国悲観論が加速、指導部への失望感で 中国の「宴」終わらず それが問題だ 【寄稿】中国に迫り来る通貨危機 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NK060_cworld_M_20160404234021.jpg 中国が世界の株式相場に及ぼす影響増す=IMF IMFは4日発表の報告書で、新興諸国が先進諸国の株式相場に及ぼす影響力は増え続けていると述べた(1月7日、中国株の下落示す電子掲示) ENLARGE IMFは4日発表の報告書で、新興諸国が先進諸国の株式相場に及ぼす影響力は増え続けていると述べた(1月7日、中国株の下落示す電子掲示) PHOTO: GETTY IMAGES By WILLIAM MAULDIN 2016 年 4 月 5 日 15:50 JST 国際通貨基金(IMF)は4日に公表した国際金融安定性報告書で、中国を中心とする主要新興国が金融市場に不安を拡大し米国など先進諸国の株式相場の下げにつながる可能性が次第に高まっていると警告を発した。 IMFの推計によると、主要新興国が先進諸国の株式相場に与える影響力は2008年の金融危機以降に28%高まった。15年の全ての国々における株式相場の動きは、80%が他の国々からの影響によるものだった。1995年には、この相関性は50%だった。 中国の金融システムは、日本など他の経済大国の銀行や金融の結びつきと比べると、米国などの経済への直接のつながりは比較的少ない。一方、中国からの輸出は米経済の比較的小さな部分を占めているにすぎず、中国経済の情勢に対する懸念が大半の米企業の見通しを暗くするはずはない。 だがIMFは、中国は同国発の経済報道や統計の発表をもとに他の国々の相場を動かす特別な力があるようだ、との見解を示した。世界経済の成長がおぼつかない中、世界第2の経済大国である中国の動向は、米実業界の出来事よりも米金融市場に影響することが多いようだ。 今回の報告書作成を担当したIMF金融資本市場部門のチーフ、ガストン・ジェロス氏は、「経済動向に関するニュースが他の市場に影響するという意味で、中国はいまのところ特異だとみている」と述べた。 先進国と新興国の市場間の影響関係は強まっているようだ。中国の大手産業が不振なときに資源(コモディティー)生産企業の株価が下がるなど、根本的なつながりを見せることがしばしばある、と報告書では指摘している。 上海総合指数が7%急落し、米国や日本、オーストラリア、韓国などの株価指数下落のきっかけとなった今年1月7日のような事例を覚えている投資家も多いはずだ。1月は中国に対する懸念から、ダウ工業株30種平均は昨年8月以降で最悪の1カ月となった。 IMFはより強い貿易の関係を認め、世界の傾向が特に新興国と先進国の間で株式相場の影響につながり、「市場の融合が高まった」としている。ジェロス氏は、「中国が新興諸国に及ぼす影響は、今後数年で高まるだろう」との見方を示した。 もう一つ新たな傾向としてIMFは、国際ミューチュアルファンドの豊富な資金動向を指摘した。こうしたファンドは新興諸国に投資できるが、相場が悪化すると世界的に投資資金を引き揚げることもある。ジェロス氏は、「ミューチュアルファンドとその衝撃に対する回復力についてもっと詳しく調べる必要がある」と述べた。 関連記事 新興国市場の回復は本物か ミューチュアルファンド、新興企業への熱意失う 中国政治のもろさ、経済を損なうリスク 新興国投資を見直す好機到来か 中国株安【特集】 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NJ592_0404im_P_20160404080628.jpg 2016年4-6月期金融政策:中国人民銀は緩和継続へ、問題はその方法 中国人民銀行(北京) By LINGLING WEI 2016 年 4 月 6 日 07:25 JST 中国人民銀行(中央銀行)が景気の安定を促すために金融緩和を続けねばならないことははっきりしている。問題はその方法だ。 3月半ばに閉幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、指導部が今年の主要経済目標を発表し、一段と強力な緩和シグナルが発せられた。2016年はマネーサプライ(M2)の伸びを13%とし、昨年目標の12%から引き上げる。広義の信用指標である社会融資総量の伸び率も13%を目指す。 人民銀行が社会融資総量を目標として用いるのは初めてで、一部のアナリストらは、雇用創出や生産性向上につながる経済部門へさらに流動性を送り込みたいという政府の願いの表れだと指摘した。社会融資総量はここ数カ月、マネーサプライほどのペースで伸びておらず、預金の一部が企業向けのローンではなく、銀行の株式・不動産投資に使われたことを示唆している。 これまでに行われた緩和策は、政策当局の意図したような成果を上げていない。複数回の利下げや銀行預金準備率の引き下げなど、昨年来の一連の政策は実体経済の支援にはほぼつながっておらず、製造業活動がいまだ精彩を欠いていることからも明らかだ。それどころか、中国の1級都市では、信用緩和の影響で不動産購入が過熱している。 人民銀行当局も、成長支援策として信用緩和に依存しないよう要求を強めている。かつて人民銀副総裁を務めた呉暁霊氏は最近のインタビューで、「金融政策の過度な利用は、最終的にインフレや資産バブルにつながる」と警告した。 当局者らはむしろ、政府が法人税を積極的に引き下げ、投資や支出を促すべきだと主張している。 それでも、独立機関ではない人民銀行は、政府が今年の目標とする6.5%〜7.0%の経済成長を達成する上で、信用緩和を続けなければならないことに気づいている。その一方、中国企業の多くは依然として資金調達コストの高さに不満を漏らしている。 財新智庫のアナリスト、鐘正生氏は、人民銀にとって大きな課題は「信用緩和を企業部門の資金調達コスト低下につなげる」ことだとし、「対象を絞った緩和に一層重点を置き、システムを過剰な信用で満たすことは避けるべきだ」と指摘した。 原文(英語):Global Central Banking in 2016 関連記事 2016年4-6月期の金融政策特集 2016年4-6月期金融政策:各国中銀、金融緩和が再び主流 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NK588_0406_0_M_20160405202028.jpg 財新の中国サービス部門PMI、3月は52.2へ上昇 雇用は悪化 [上海 6日 ロイター] - 財新/マークイットが発表した3月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は52.2と前月の51.2から上昇した。 PMIは50が景況改善と悪化の節目となる。 3月は新規事業指数が小幅上昇する一方で、雇用指数は2年半ぶりに低下した。 雇用指数は2月の51.3から48.9に低下。2013年8月以来、初めて50を下回った。 調査では、多くの企業が自主退職した従業員の補充を行っていないと回答したほか、新規事業の伸び悩みから人員を削減しているとの回答もあった。 財新智庫のチーフエコノミスト、何帆氏は「サービスセクターは好調だが、経済全体は荒波に乗っている。この状況は景気回復に向けた強固な基盤の欠如を示唆している」と指摘。「政府は、新興産業の発展促進に向け、『供給サイドの改革』を推し進める必要がある」と述べた。 製造業とサービス業を合わせた総合財新PMIは2月に50を割り込んだが、3月は51.3に上昇し、50を再び上回った。製造業の予想外の回復が寄与した。 ただ、総合PMIの雇用指数は47.6と、2009年1月以来の低水準に落ち込んだ。同指数は10カ月連続で50を下回っている。 http://jp.reuters.com/article/china-pmi-idJPKCN0X305H
中国経済が世界に突きつける難題 突然の投資減少と急激な人民元安は現実的なリスク 2016.4.5(火) Financial Times (英フィナンシャル・タイムズ紙?2016年3月30日付) 外交的には成功のAIIB、問われる中国の運営能力 中国・北京の人民大会堂にはためく中国国旗(2012年11月13日撮影)。(c)AFP/Mark RALSTON〔AFPBB News〕 ?中国が試みている経済的な移行は、中国自身のみならず世界のほかの国々にも大きな影響を及ぼす。短期的には、中国の経済活動の急減速かもしれない現象からの波及を管理することが課題になる。長期的には、中国という金融大国の世界経済への統合にいかに対処するかが課題になる。だが実際には、短期的な出来事が長期的に何が起こるかも決めることになるだろう。 ?インドがまとめた最新の「エコノミック・サーベイ」には、示唆に富んだ危機の分類法が提示されている。 ?これによれば、危機が外国にもたらす衝撃は、1)その危機はシステム上重要な国で起こっているのかどうか、2)政府の借り入れの結果なのか、それとも民間の借り入れの結果なのか、3)危機が発生した国の通貨は上昇しているのか、それとも下落しているのか、という3点によって決まる。 ?この分析と中国との間にどんな関係があるのか。その答えは、中国はシステム上重要な国であり、すでに額が大きく、なお急増する企業部門の債務に頭を悩ませている国だからだ、というものになる。この状況は、突然の投資急減と急激な人民元安につながっていくかもしれない。 ?そのような急減速があり得ないということは全くない。究極的には持続しえない企業債務の増加と、極めて高い投資率に需要が依存している状況とが重なれば、そこに生じるのは脆弱性だ。 ?経済成長率が低下して年率7%を下回るようになった以上、国内総生産(GDP)の45%を投資が占める状況は、もはや経済の理にかなわない。また、この投資の3分の2近くは民間セクターによるものだ。このため、市場の力によって痛みを伴う調整を強いられるかもしれない。 ?政府の対応は2種類考えられるだろう。1つは、西側諸国の金融危機の際に見られたような財政赤字の大幅拡大。もう1つは、より積極的な金融政策だ。しかし、為替レートの下落は、国内のデフレ圧力を打ち消す要因としても歓迎されるかもしれない。 ?北京で3月に開催された中国発展ハイレベルフォーラムで中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は、莫大な(かつ計画外の)規模に積み上げられた外貨準備高を減らすことは理にかなっていると語った。とはいえ、それにも限度があるに違いない。中国の資本勘定開放計画には逆行するものの、資本流出の規制が強化される可能性もあるだろう。 ?中国の景気は弱ってきており、金融政策と信用政策は緩和されて為替レートも下落しているが、そのような危機はまだ見られない。 ?資本流出の主たる原動力も、外貨建て債務の前倒し返済と「キャリートレード」の巻き戻しであるようだ。部分的には、これは人民元安のリスクが大きくなったとの見方がきっかけになっている。 ?だが、需要の伸びは弱まってはいるものの、腰折れしたわけではない。今のところは、まず良好だ。ただ、この話はここで終わらない。 ?世界経済は今、巨大なデフレショックを再度吸収できる状況にはない。そして、そのようなショックが中国で今後数年のうちに発生する可能性は現実にある。しかし、もっと長期的な問題も1つ浮上している。中国をグローバル金融システムにどのように統合させるのかという問題だ。 ?過去の経験を見る限り、自由化と脆弱な金融システムの開放を同時に行うと、大きな危機に至ることが多い。また、その国がシステム上重要な国である場合、そうした危機は世界規模のものになる。変動相場制が打撃を和らげてくれる可能性もあるが、たとえそうだとしても、システム上重要な国の危機は多大な影響をもたらす。 ?従って、中国が金融システムを世界に開放することは、世界全体が関心を払うべき事柄だと見なさなければならない。これについては、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が先日公表した論文で、いくつかのリスクを説明してくれている。重要なのは、証券投資資金の流入と流出がそろって激増する可能性があることだ(中国では、まだどちらもさほど多くないレベルにとどまっている)。 ?現在、資金の流出は厳しく規制されている。だが、その規模を考えてみよう。中国の2015年の総貯蓄は約5兆2000億ドルで、米国のそれは3兆4000億ドルだった。また、中国のマネーサプライ指標でカバーする範囲が最も広い「広義のマネーストック」は昨年末時点で15兆3000億ドルあり、総信用供与残高は同じく昨年末時点で約30兆ドルだった。つまり、中国は貯蓄超大国なわけだ。 ?資金流出の規制が解除されれば、資産分散と資本逃避のために総額ベースで大規模な資金流出が生じることは想像に難くない。もしそのような巨額の流出に見舞われれば、3兆2000億ドルに達する現在の外貨準備でもすぐに枯渇してしまうだろう。 ?外国の証券投資資金による中国の資産への投資需要も恐らくあるだろうが、それを現実化するのに必要な国内政策と制度改革は、普通では考えられないくらいほどハードルの高いものになりそうだ。 ?従って、中国の資本勘定自由化は、中国からの多額の資金純流出、人民元安、そして経常収支黒字の拡大をもたらす可能性は高い。投資の減少もこれに拍車をかけるだろう。 ?このような変化をどうすれば受け止められるのか、想像するのは難しい。なぜ難しいのかは、中国以外の国々の資産市場、為替レート、および経常収支にどのような打撃が及びうるかを考えればすぐ分かる。 ?3月の中国発展フォーラムで演台に上った国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、次のように的を射た発言をしていた。 ?「世界経済の統合が進めば、貿易や金融、あるいはマインドの変化を通じて影響が波及していく可能性も高まる。統合が続く中、効果的に協力することが国際金融システムを機能させる上で非常に重要になっている。これには、すべての国々が一致協力して行動することが必要だ」 ?目下、中国経済における目下のストレスと、中国を金融面で統合するという長期的な難題とに協力して対応・管理することほど重要なことはない。 ?もしどちらかで対応を誤れば、統合されたグローバル経済システムには耐えがたい圧力がもたらされる恐れがある。世界経済はまだ、西側の金融危機の余震への対応に苦慮している段階にある。世界は中国の危機への対応に完全に失敗するかもしれない。新たな金融覇権国が前回台頭したときに、世界経済は大恐慌に苦しんだ。今度はもっと上手に対応しなければならない。 By Martin Wolf http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/46511 中国のGDP伸び率低下が意味するもの 2016年04月05日(火)岡崎研究所 北京大学で金融を専門とするペティス教授が、3月3日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、中国のGDPの伸び率の低下は債務の伸びの低下を意味するので、中国経済の健全さの観点から歓迎すべきものである、と述べています。論旨は次の通り。 iStock 経済成長率と裏腹の経済的健全さ
中国のGDPの増大は、中国の信用(資金供給量)の増大との関係で考えないと意味がない。1月の社会全体の資金供給が1年前より70%増加した半面、中国政府は、2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が予想に反して低下したと発表した。 資金供給の急増とPMIの低下はもちろん関連している。中国政府がGDPを許容できる限度まで増大させようとすれば、信用を増やさなければならない。 もし中国政府が本年7%近い成長率を、信用をその倍の率で増大させることによって実現しようとすれば、それは経済的健全さが弱まっていることを意味し、長期的には成長率は低下するだろう。 中国の長期的潜在成長率はたかだか2~4%であり、仮に中国政府の目指している生産性の飛躍的上昇があったとしても、今後10年中国の成長率は2~4%であってもおかしくない。 投資家は経済活動の変化の解釈を変えなければならない。債務返済能力の伸びとの関連で、債務の伸びを注視しなければならない。GDPの伸び率の急落なしに信用の伸びを抑えることはほぼ不可能であるので、GDPの伸びの低下は歓迎されるべきである。 短期的なGDPの伸びは、経済の生産性の伸びのみならず、政府による信用の増大がもたらす追加的経済活動にも依存するので、予測は極めて難しい。しかし長期的にはGDPの伸びは、平均して生産性の向上率(それはGDPの増加率よりよほど低い)より大きくならない。 中国は信用創造能力が十分ある限り、債務を増大させることにより、長期的な潜在成長率を上回る経済活動を促進できるが、債務負担が増大すれば長期的経済成長率は低下し、信用の増大による経済活動の拡大はより効果が減る。 現状では、GDPの高い伸び率は債務負担の増大がもたらしているもので、懸念すべきである。他方GDPの増大のより急速な低下は、中国政府が再び債務管理をしていることを意味し、中国の長期的な潜在成長力につき、より楽観的になれる。 出典:Michael Pettis,‘China’s Counterintuitive Economy’(Wall Street Journal, March 3, 2016) http://www.wsj.com/articles/chinas-counterintuitive-economy-1457027368 * * * 潜在成長率2~4%で巨額の債務残高も抱える中国 中国経済が債務を大幅に膨張させながら成長してきたことは、よく知られています。その結果、2015年6月時点で、中国の民間非金融部門の債務残高は21兆ドルとなり、ユーロ圏の19兆ドルを上回り、26兆ドルの米国に次ぐ規模となっています(ちなみに日本は6.7兆ドル)。債務残高の膨張に拍車をかけたのが、4兆元(56兆円)に上るリーマンショック対策の大型景気刺激策でした。この対策は債務残高の膨張をもたらしたのみならず、鉄鋼、自動車、住宅などで大幅な供給過剰をもたらし、そのあとを受け、中国は信用の圧縮に努めているところです。 中国の長期的潜在成長率がたかだか2~4%であり、今後10年の中国の成長率は2~4%であってもおかしくない、との解説はショッキングです。 全人代で李克強首相は、2016~2020年の成長率は6.5%以上と述べています。雇用の確保という政治的にも重要な課題に対処するためには、そのくらいの成長率は必要なのでしょう。しかし、大幅な債務残高を抱えたままで、目標が達成できるかどうかは疑問です。すでに2015年の7-9月期の成長率は3%程度しかなかったとの説もあります。 論説は、GDPの伸びの急速な低下は債務の伸びの低下を意味し、債務管理の点から歓迎すべきである、と言っていますが、すでに膨大な債務を抱え、他方で深刻化する雇用問題に対処しなければならない中国経済の現状から言えば、とても歓迎すべきであるとは言えないのではないでしょうか。 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6456
FX Forum | 2016年 04月 5日 20:04 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:マンション市況は岐路、高値買いに用心=竹中正治氏 竹中正治 竹中正治龍谷大学経済学部教授 [東京 5日] - 3月22日に国土交通省が発表した公示地価によると、東京をはじめ大都市では地価が目立って上昇した。マンション価格も2012年暮れのアベノミクス始動以来、前年同月比で上昇を遂げてきた。 2020年の東京オリンピックまで堅調な推移が続くと予想する向きもあるようだが、最近数カ月は今後のマンション価格の下落を示唆する兆候が現れている。 東京都心部のマンション価格は中古、新築ともにすでに2007年のミニバブル期を超える割高水準となっている。日銀のマイナス金利導入で住宅ローン金利が少し下がったからと言って、購入に動けば長期的には高値つかみになる可能性が高い。そうした事情をご説明しよう。 <現物の不動産価格は不動産投資信託(REIT)に遅効> 筆者は1998年以来、個人投資家として東京都心部のマンションを対象に投資を続けてきた。その経験と調査を基に、アベノミクスが始まって間もない2013年4月19日の本コラム「REIT高騰に続くか、マンション投資の鉄則」で次のように述べた。 「今の局面で合理的な投資選択は、すでに著しく割高になったREITから、まだ相対的に割安に放置されている個別不動産物件にシフトすることだろう」。 3年前のことを思い出していただきたい。2012年の暮れから株価もREITも「アベノミクス相場」で一気に上昇トレンドをたどり始めた。しかし、現物の不動産市場が上がり始めたのは数カ月遅れてである。株やREITなど流動性の高い資産は先行きへの期待を織り込んで先行的に変化する一方、流動性の低い現物の不動産の動きは遅効するのだ。 中古マンション価格動向を示す「不動研住宅価格指数(東京)」(データ:一般財団法人日本不動産研究所)を見ると、底値は2012年11月であるが、13年5月になっても前年同月比はゼロ%だった。ようやく13年12月になって同6.7%となった。15年12月時点では12年11月の底値比20%、前年同月比では5.0%の上昇だ。 現物の不動産価格の変化が一般の株式やREIT価格の変化に遅効するのは下げに転じる局面でも同じだ。例えば「サブプライム危機」として2007年夏に始まった下げ相場では、東証REIT指数は同年12月には5月の高値から28.5%下落、前年同月比でも6.1%の下落となった。一方で上記の不動研住宅価格指数(東京)は同年12月時点で10月の高値から1.9%の下落にとどまり、前年同月比では6.4%の上昇だった。 2005年以降の月次データで検証すると、東証REIT指数の変化と不動研住宅価格指数(東京)の変化(前年同月比)の間には、REIT指数の6カ月から9カ月程度の先行性(価格指数の遅効性)が見られる。 <転換期に差し掛かったマンション市況> 2013年以降のマンション価格に代表される都市部での不動産価格の上昇の要因としては、1)超低金利による投資資金コストの低下、2)企業収益の好調に支えられたオフィス需要の増加と賃料上昇、3)20年東京オリンピックに向けた東京の地価上昇期待、4)15年からの相続税率引き上げに対応した富裕層の節税目的のマンション購入、5)主に台湾、香港、シンガポールなどからの「アジアマネー」による収益不動産物件の購入などが挙げられる。 しかし、マンションについては、過去3年間の価格上昇の一方で賃料の伸びは抑制されており、価格指数を賃料指数で割ったPRR(Price Rent Ratio)は、不動産ファンドが収益不動産を高値で買い漁った2007年時のピークを上回る水準まで上がってしまった(東京の中古マンションPRR推移については筆者ホームページで公開している)。つまり、かなり割高になったということだ。 PRRとは株価収益率(PER)と同じ考え方で、マンションなどの割高・割安を判断する指標だが、マンション賃料は企業収益に比べるとはるかに変動性が低いので、株価収益率よりもずっと的確に価格の割高・割安を判断することができる。 なぜ今回の局面でとりわけ賃料の上げが鈍いかと言うと、給与所得の伸びが抑制されているからだ。マンションに限らず住宅はローンで買うことが一般的なので、短期・中期にわたって所得の伸びをはるかに超えて上昇し得る。ところが、賃料は一般に月間の給与所得から払われるので、給与の伸びを大きく超えて上がり難い。その結果、PRRはマンションブーム期には上がり、不況期には下がる。 しかし、ローンで買えると言っても、賃料の上昇を上回るマンション価格の上昇には自ずと限界がある。例えば東京都内の新築のファミリータイプ・マンションは5000万円程度、中古でも4000万円程度が一般的になってきてしまった。年間可処分所得500万円の家計にとっては年収の8―10倍だ。先進国では一般にこの倍率は4―5倍が普通である。 その結果、マンションの需給は次第に供給超過に傾きつつあるようだ。相続税の節税効果が高いとして一時ブームとなった富裕層によるタワーマンションの購入が、税務当局の姿勢が厳しくなったため下火となったことも影響している。 こうした状況を示すのが下の掲載図である。青色は既述の中古マンション価格動向を示す「不動研住宅価格指数(東京)」の前年同月比の推移、赤は中古マンションの在庫件数を月間成約件数(いずれも東京)で割った在庫件数倍率である(データ:REINS TOWER)。 http://static.reuters.com/resources/media/editorial/20160405/fxforum.gif 在庫件数倍率は、分子となる月間成約件数の振れが大きいので、その12カ月移動平均(赤い破線)を示してある。在庫件数倍率が上がると(右逆メモリであることに注意)価格指数も低下し、在庫件数倍率が下がると価格指数は上がる負の相関関係があることが分かるだろう。 2006年以降の月次データで両者の関係性を計測すると、相関係数はマイナス0.88(相関係数はプラス1.0からマイナス1.0の値を取り、マイナス1.0で完全な負の比例関係となる)、決定係数は0.78と関係性は極めて高い。これは在庫件数倍率(12カ月移動平均値)の変化で価格指数の変化の78%を説明できることを意味する。 そして昨年後半から在庫件数倍率が上がり始めている(逆メモリの図で下に向かって動いている)。すなわち成約件数に比べて在庫が増え始めているのだ。この傾向が持続すれば、中古マンション価格は高い確率で下がり始め、新築マンション価格も連動して下がるだろう。 <住宅ローン金利低下による購入コスト減少は限定的> それでも日銀当座預金でのマイナス金利導入で、住宅ローン金利の低下がローンによる購入者の負担を減らすので購入が有利になると考える方もいるだろう。そこで5000万円のマンションを頭金1000万円、住宅ローン4000万円、期間20年で借りて購入した場合を想定して計算してみよう。 ローン金利1.0%では総返済額は4415万円となる。金利0.5%の下ではこれが4204万円となる。つまり0.5%の借入金利の低下で総支払額は211万円減少する。これはマンション価格の4.2%相当のコスト減だ。 一方、価格指数を見る限り、2000年以降の価格の変動は3つの山と3つの谷があり、山から谷までの変動幅は平均で17.3%である。価格が5000万円ならば865万円に相当する。0.5%のローン金利の低下よりもマンション価格の変動の方が約4倍も大きいのだ。 もちろんマンション価格は個別性も高く、指数の変化は平均的な変化を示しているだけだ。個別物件では市況次第で20%から30%変動する物件はざらにある。要するに、多少の借入金利の低下に誘われて今のマンション市況で買えば、長期的には高値つかみする可能性が高いと筆者は判断している。 <マンション価格も山高ければ谷深し> もっとも、いつからどの程度マンション価格が下がり始めるかは、今後の景気動向に依存している。この点で、筆者は昨年10月27日の本コラム「日本に灯る円高デフレ回帰の黄信号」で書いた通り、昨年の夏以降、日本の景気動向について警戒的なスタンスに転換している。 過去3年間の企業収益の大幅な改善と雇用の増加にもかかわらず、設備投資にも賃上げにも消極的な企業経営者層と、腰の引けた賃上げ要求しか掲げない労働組合の下では、実質給与所得の伸びが抑制されてしまっている。これがボトルネックとなり、超金融緩和をもってしても自律的な景気回復、マイルドインフレへの移行に対する期待は遠のくばかりだ。中国をはじめ新興国景気の失速で海外経済全般がスローダウンしていることも懸念材料だ。 ただし、それがゆえにマイナス金利に加えて、財政政策も動員した景気刺激策が検討されているようだ。来年4月の消費税率の10%引き上げも延期されるかもしれない。そうした事情次第ではマンション価格の目立った下落はもう少し先送りされる可能性もある。 加えて、マイナス金利による長期国債利回りの全面的な水没にあぶりだされるようにインカムリターンを求める資金が公募REITや私募不動産ファンドに大規模に流入し、不動産市場のバブル的なクライマックスをこれから引き起こすシナリオもあり得ないわけではない。 実際のところ、「ゆうちょ銀は2月にREIT専門の不動産投資部を新設。投資を始めるための認可取得に向けた準備を急いでいる。金融庁は申請が出れば認める方針だ」(日本経済新聞、4月2日付朝刊)と報じられている。 ゆうちょ銀行が動き出す前に、そうした動きはすでに始まっているのだろう。REIT相場は東証REIT相場指数で見ると、2015年1月に高値を付けた後、同年9月の直近の底値まで24%下落したが、日経平均が下落する状況下、底値から19%も値を回復した(4月1日引値)。 だが、そのような場合でも、給与所得と連動した賃料水準の持続的な上昇を伴わないマンション価格の高騰は、その後に到来する価格下落をより深くするだけだろう。 *竹中正治氏は龍谷大学経済学部教授。1979年東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、為替資金部次長、調査部次長、ワシントンDC駐在員事務所長、国際通貨研究所チーフエコノミストを経て、2009年4月より現職。経済学博士(京都大学)。最新著作「稼ぐ経済学 黄金の波に乗る知の技法」(光文社、2013年5月) *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。 http://jp.reuters.com/article/column-masaharu-takenaka-idJPKCN0X209H?sp=true スウェーデン、金融緩和の極限を検証する場に スウェーデンのリクスバンク By JAMES MACKINTOSH 2016 年 4 月 6 日 10:26 JST
金融危機後のスウェーデンは世界の中央銀行関係者にとって、早期利上げの影響を測る上での興味深いケーススタディーとなった。政策効果があまりに端的だったため、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が1年前、早計な利上げが経済を脅かした事例の一つとして引き合いに出したほどだ。 スウェーデンはいま、当時とは正反対の政策、すなわち緩和政策を検証する実験場へと急速に変貌しつつある。同国のリクスバンク(中央銀行)は現在、好調な景気や住宅バブルをよそにインフレ目標達成を目指して緩和政策を進めている。捨て身でインフレ目標政策にまい進している世界のハト派の中銀関係者らにとって、スウェーデンは、どこまで緩和政策を押し進めれば危険なバブルを引き起こしてしまうのかを証拠付ける極めて重要な事例となるだろう。 中銀の政策判断がかつてないほど市場に重要な影響力を持ついま、投資家もスウェーデンの動向に注意を払うべきだ。1668年に設立された世界最古の中銀であるリクスバンクの動きは、大胆なトレーダーが目先の好機をうかがい知る手掛かりとなるだけでなく、他の超ハト派の中銀の動きに乗じて利益を得る方法についての長期的指針にもなる。 量的緩和に伴いリクスバンクのバランスシートは膨張し、政策金利のマイナス幅は世界最大となった。また、今年に入って政策担当者らは、通貨クローナを下げるために市場介入する用意があることを明らかにしている。 スウェーデン経済は見たところ順調などころか、多くの指標から見る限り最良の状態にある。それにもかかわらず、リクスバンクはこうした異例な金融緩和を進めているのだ。同国の2015年10-12月期の経済成長率は4.5%で、中銀が完全雇用状態を見込む5〜7.5%に極めて近い。しかも、住宅市場はイングベス中銀総裁が発言のたびにほぼ毎回警鐘を鳴らすほど急速なペースで拡大している。 リクスバンクは他の全ての主要中銀と同じ問題を一つ抱えている。インフレ率がゼロ近辺にとどまり、中銀目標の2%に遠く及ばないことだ。 同国のある政策担当者は現状について、「高い経済成長率、低いインフレ率、マイナス金利(が併存している)とは不思議な世界だ」と表現している。 スウェーデンの経済指標(上)GDP成長率【緑:前年同期比、灰:前期比年率】(中)住宅価格指数の前年比変化率【緑:戸建て、灰:集合住宅】(下)消費者物価指数の変化率【緑:EU基準、灰:国内基準】 ENLARGE スウェーデンの経済指標(上)GDP成長率【緑:前年同期比、灰:前期比年率】(中)住宅価格指数の前年比変化率【緑:戸建て、灰:集合住宅】(下)消費者物価指数の変化率【緑:EU基準、灰:国内基準】 リクスバンクが特に心配しているのは、インフレ率が低いために消費者や企業のインフレ期待が低下し、ひいては労働者の賃金需要が減退することだ。賃金の伸びが鈍化すればインフレは頭打ちとなり、悪循環に陥る。 今年の労使賃金交渉の進捗(しんちょく)を見ると、実際のところ賃上げ率は予想を下回りそうだ。他の中銀と同様、リクスバンクも90年代以降20年余り続く日本のデフレを注視しており、デフレ回避に向けて前例のない政策の導入もいとわない姿勢を見せている。 スウェーデンの住宅市場は住宅ローンが急増する中でフロス(小さな泡)に満ちており、欧州委員会は1年前、同国の住宅価格が25〜40%過大評価されているとの推計を公表した。その後も住宅価格は所得をはるかに上回るペースで上昇しており、住宅ローンは急増し、所得に見合わない多額の借り入れを行う人たちも多い。 リクスバンクは数年前の好況時、世界の先陣を切って「流れに立ち向かった」。住宅ローンの急増を抑えるために2010年から11年までの1年余りで政策金利を0.25%から2%へ引き上げたのだ。 この一連の利上げは結局、利下げに戻るというばつの悪い結果に終わり、イエレン議長の批判の対象となったばかりか、リクスバンク自身の副総裁の1人からイエレン議長よりもはるかに厳しい非難の声を浴びることとなった。 リクスバンクは他の多くの中銀よりも不利な立場にある。英中銀イングランド銀行やFRBと違い、金融緩和の副作用を抑えたくても融資を制限する規制手段を持たないためだ。 足元では、住宅市場がバブルの様相を呈する中、リクスバンクは行動を余儀なくされるとの見方が広がっている。結局のところ、インフレ押し上げの手を緩め、引き締めに転じることはあり得る。金利が上昇してクローナ高が進めば、不動産市場のフロスはすぐに消え去り、景気は減速するだろう。 リクスバンクが利上げするかについては賛否両論あるだろうが、いずれにせよ、世界が物価低迷から一向に抜け出せない中で積極的にインフレ目標達成を目指した国がどうなるかを知りたい人にとって、スウェーデンは検証の場としてうってつけだ。 関連記事 スウェーデンのマイナス金利、見た目ほどは影響なし マイナス金利政策、効果には疑問=BIS報告 https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AI078A_STREE_16U_20160404110911.jpg ベネズエラはジンバブエ化するのか? 2016.4.6(水) The Economist
(英エコノミスト誌?2016年4月2日号) ベネズエラ、経済緊急事態を宣言 大統領「危機的状況」 ベネズエラの首都カラカスのスーパーマーケットに長蛇の列をつくって並ぶ人たち(2015年1月13日撮影、資料写真)。(c)AFP/FEDERICO PARRA〔AFPBB News〕 今日のベネズエラは15年前のジンバブエに似ている。 ?ベネズエラのスーパーに出掛けることは、モンティ・パイソンのチーズショップのコントの世界に足を踏み入れるようなものだ。 「牛乳はありますか?」と尋ねると、店員は頭(かぶり)を振る。
?砂糖は??ありません。コーヒーは??ありません。石けん??ないです。トウモロコシの粉??ないです。サラダ油??ありません。 ?じゃあ、政府が生活に欠かせないものだとみなして価格を生産コスト以下の水準に固定した商品で、置いてあるものは何かないんですか??いいえ、何もありません――。 ?この際何でもいいから「何か」を積んだトラックがやって来るかもしれないという一縷の望みにすがりながら店の外で行列を作っている庶民にとって、これは気の毒としか言いようのない話だ。 ?首都カラカスの近くの村からやって来たジェセニアさんという中年女性は、真夜中に起きてバスに乗り、スーパーの前で午前3時から並んでいるが、午前10時になってもまだ並んでいる。 「ひどい話ですよ。日なたでずっと立ちっぱなしで。朝ご飯も食べてないし、水も飲んでいません」。どうして物資の不足がこれほど深刻になっていると思うか、と尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。「行政が悪いのよ」 ?これは控えめな言い方だ。ベネズエラ政府はエッグノッグを飲み過ぎて酔っ払ったサンタクロースのような大盤振る舞いをし、農村部の住宅からコメに至るまで、あらゆるものに補助金を出している。特に原油価格が下落してからはそのお金を払えないため、紙幣をどんどん印刷している。 次へ [あわせてお読みください] ベネズエラ経済:債務返済を祈るばかり (2016.2.25 The Economist) ベネズエラを襲うハイパーインフレの恐怖 (2016.1.7 Financial Times) ベネズエラ国会選で野党大勝、最大の難関はこれから (2015.12.9 Financial Times) 原油安でベネズエラの債務返済能力に疑問符 (2015.8.20 Financial Times) ジンバブエ経済:価値のないお金 (2015.2.20 The Economist) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46520 World | 2016年 04月 6日 08:28 JST 関連トピックス: トップニュース アングル:インドにハゲタカ外資殺到、不良債権処理の大号令で [ムンバイ 5日 ロイター] - インド当局が銀行に不良債権処理の大号令をかけたことで、J・C・フラワーズやアポロ・グローバルなど、世界的なハゲタカファンドがディストレスト(破綻)資産を狙って同国に押し寄せている。 インド準備銀行(中央銀行)が銀行にバランスシートの健全化を要請した結果、不良債権額は昨年33%ほど急増して4兆ルピー(603億ドル)に達した。政府によると、ロールオーバーされた債権も含めると2倍の1200億ドル程度に上り、融資総額の11.3%を占める。 ハゲタカ外資は、やはり不良債権が急増している中国にも関心を抱いている。しかしインドと異なり、中国当局は不良債権額の増加につながる資産再評価を銀行に要請していない。 インド準備銀行のラジャン総裁は銀行に対し、来年3月までにすべての不良債権を開示し、引き当てを行うよう求めている。このため銀行は多額の不良資産を専門業者に売却し、資本を手当てする必要に迫られている。 J・C・フラワーズは最近、インドの金融サービスグループ、アンビット・ホールディングスとの合弁事業を発表、いわゆる「資産再建会社(ARC)」とディストレスト債ファンドを立ち上げる計画だ。 アンビット側の共同グループ最高経営責任者(CEO)、ラウル・グプタ氏は、中小企業に焦点を絞り、インドでの資産運用規模10億ドルを目指すと述べた。 アポロ・グローバル・マネジメントはインドの大手ICICI銀行(ICBK.NS)のプライベートエクイティ部門と提携し、8億2500万ドル規模のファンドを設立した。 アポロのシニアパートナー、ミントゥー・バーンダリ氏は「(政府と中銀は)この問題への関心と透明性を高める良い仕事をしてくれた」と述べた。 <予算が追い風> インドの銀行が不良債権を売却する場合、現在は相手がARC各社に限られている。ARCは10年前に導入された組織だが、資本が乏しくルールも不透明なため、これまでのところ小さな役割しか果たしていない。 外資の誘致を狙う政府は2月、スポンサー企業や外国人投資家が事前に承認を得なくてもARCを100%保有できるようにするなど、一連の措置を盛り込んだ予算を発表した。 カナダ年金計画投資委員会とインドのコタック・グループが最近共同で設立した5億2500万ドルのファンドのCEO、S・スリニワサン氏は「外資呼び込みに向けた前向きな変化だ」と語る。 ARC最大手であるエーデルワイスARCのマネジングディレクター、シビー・アントニー氏は、本年度中に1600億ルピー相当の不良債権購入を目指しており、最大200億ルピーの新規資本が必要になると述べた。 <忍耐強い投資> インドでは法的手続きのペースが極めて遅く、裁判所の重複といった問題もあるため、不良債権の回収率は低い。不良債権の流通市場も存在せず、投資回収(エグジット)の道のりは険しい。 政府は処理の迅速化を目指して新たな破産法の整備に着手しているが、専門家によると新法が完全施行されてインフラが整うのは2、3年先になりそうだ。 アポロのバーンダリ氏は「新たな破産法規の導入については楽観視している」としながらも、「複雑な状況に切り込む純粋な意欲を持ち、かなり忍耐強い投資家でなければ、この分野では成功を収められない」とくぎを刺した。 (Devidutta Tripathy記者) http://jp.reuters.com/article/angle-india-global-fund-idJPKCN0X209N?sp=true 国債買いに走る投資家が忘れてはならないリスクとは
By RICHARD BARLEY 2016 年 4 月 6 日 14:50 JST 過ぎたるは及ばざるがごとし。年初からドイツ国債は利回りが大きく低下し、今のところ高い収益率を記録しているが、同時にリスクも増している。 ドイツ国債の10年物利回りは5日の取引で0.1%を割り込み、2015年4月につけた過去最低の約0.05%に迫った。同利回りは年初から0.5%ほど低下しており、10年超の国債の利回りの下げ幅はこれをさらに上回る。バークレイズの指数によると、結果的にドイツ国債全体の年初来収益率は4.1%に達している。ドイツの主要株価指数であるDAX指数が足元で年初から10%余り下げていることを踏まえると、国債相場の堅調ぶりが目立つ。 だが、投資家は安心し過ぎてはいけない。利回りが低下するにつれ、投資ミスの許容範囲は大幅に縮小する。価格変動を吸収できる「のりしろ」がなくなるからだ。10年債の利回りが0.09%の場合、価格がわずか1ポイント下落しただけで約11年分の収益が吹き飛ぶ計算になる。トレードウェブのデータによれば、価格が1ポイント下がると、利回りは0.09%から0.19%へと0.1%上昇する。ちなみに0.19%は約1週間前の水準に等しい。 その上、市場や投資家は少し前のことは忘れてしまうことが多いようだが、2015年と16年の相場動向は無視できないほど似通っている。昨年、ドイツ国債は年初に利回りが大幅に低下し、4月20日時点で4.5%という今年と同じような高い収益率を実現していた。ところがその後、相場は下落に転じ、6月10日までに収益率はマイナス2.2%へ落ち込んだ。 もちろん、利回りがこのまま下がり続け、価格がさらに上昇することもあり得る。1-3月期に起きた市場の混乱は投資家を不安に陥れた。ドイツ国債の2年物利回りが直近でマイナス0.49%に沈み、日本の財務省が5日実施した10年債入札の最高落札利回りがマイナス0.064%をつけるなど、マイナスの利回りもよく見かけるようになった。 2015年と16年のドイツ国債の年初来収益率(右軸:年初からの営業日数) とはいえ、投資家はこのような低い利回りで債券を買うときには、自分が何に投資しようとしているかをよく考えるべきだ。利回りがわずかながらプラスの場合でも、その債券の満期までに他の商品から得られるはずの収益率を考慮して投資の是非を判断する必要がある。利回りがゼロの債券は事実上、現金と同じと考えて良いかもしれないが、現金と違って価格は変動する。利回りがマイナスの場合、満期まで保有すればその債券は、粉々に割らなければ中に入れたお金が取り出せない高価な貯金箱のようなものだ。 ドイツ国債を買った投資家は年初来の上昇相場で利益を得てはいるが、蒸気ローラーが進む先に落ちている小銭を拾っていることにもなりかねない。 関連記事 米国債市場、4-6月期も不安定な展開続くか 金融緩和の効果、為替より債券に注目を https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NK131_bondhe_G_20160405073123.jpg
米リスク資産、見通しが好転した理由とは ENLARGE FRBのイエレン議長 PHOTO: SUSAN WALSH/ASSOCIATED PRESS By STEVEN RUSSOLILLO 2016 年 4 月 6 日 14:06 JST 米連邦準備制度理事会(FRB)が4月26、27日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るのはほぼ確実だ。また、トレーダーが織り込む6月の利上げ確率も低い。政策金利は今年いっぱい据え置かれるとの見方さえある。 なぜだろうか。米大統領選挙の共和党候補指名争いでリードするドナルド・トランプ氏は「非常に深刻なリセッション(景気後退)」の到来を警告しているが、米国経済はここ数年よりずっと健全に見える。 雇用の伸びが安定しているだけでなく、労働参加率もようやく上向き始めた。所得は緩やかながらも増加し、インフレ率はFRBが目標とする2%に迫る。サービス業の事業活動は拡大しており、住宅需要と自動車販売も好調なようだ。最近では製造業にも明るい兆しが見られる。 ドイツ銀行のチーフ国際エコノミスト、トルステン・スロック氏は「米国内の状況は利上げを正当化している」と言う。 それでも、FRB幹部らは3月のFOMCで特に慎重な姿勢を示した。6日に公表される同会合の議事録では、この点が強調されそうだ。 その一因は世界経済の不透明さにある。これはFRBのイエレン議長が先週の講演で繰り返したことだ。総じて見ると、FRBは通常よりも海外動向に重点を置いているようだ。 例えば、イエレン議長が先週の講演で「海外情勢、ドル、中国」に言及した回数は、昨年の3回の講演よりもはるかに多かった。市場がそれほど深刻に受け止めていないシステミックなリスクが中国には存在するのかもしれない。 ENLARGE イエレン議長の講演ごとの各種キーワード発言回数【青:海外(グローバル)、薄緑:ドル、赤:中国】 THE WALL STREET JOURNAL ただ、最近の経験から分かるように、FRBの慎重姿勢は米国のリスク資産にとって好材料だ。S&P500種指数は2月の安値から12%反発し、年初来でプラス圏を回復した。原油価格も数年ぶり安値から持ち直しているが、ドルは下落している。FRBが利上げを慎重に進める姿勢を維持すれば、この傾向は続くかもしれない。 米株式市場の投資家にとって、いまは絶好の状況にある。FRBが利上げを急いでいないことは、米景気悪化への警戒感がその理由でない限り、株価を一段と押し上げる要因となる。 米経済は追加利上げを正当化しているかもしれないが、海外動向がそのプロセスを遅らせることになりそうだ。 関連記事 • 【FRBウォッチ】イエレン議長の合い言葉は「慎重」 • リスク資産の急騰、リスクオン一色にはあらず • 先週の米株、FRB議長発言で史上最高値うかがう • 米FRB特集 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NK341_tape04_M_20160405135731.jpg
Business | 2016年 04月 6日 04:27 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 世界成長なお脆弱、リスクの高まり懸念=IMF専務理事
[ベルリン 5日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は5日、世界の景気動向は回復しつつあるものの、経済成長は依然脆弱で、リスクが増大しているとの見解を示した。 ラガルド専務理事は当地でメルケル独首相らとの会談後、記者団に対し「成長や回復が進行し、危機にさらされていないことは朗報」としつつも、「成長は脆弱で弱く、差し迫ったリスクが増大しつつあることは懸念要因だ」と語った。 ギリシャ問題については、「IMFは断固として、支援を継続していく」と言明。「メルケル首相と5日、実のある話し合いを行い、われわれは支援を継続していくことを固く決意している」と語った。 そのうえで、ギリシャには長期的な持続可能性が必要で、ギリシャは民間投資家に対し、債務の持続可能性を示すことが求められると強調した。 http://jp.reuters.com/article/global-economy-imf-idJPKCN0X22GU Business | 2016年 04月 6日 01:15 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 3月米ISM非製造業総合指数、予想上回る [ニューヨーク 5日 ロイター] - 米供給管理協会(ISM)が発表した3月の非製造業総合指数(NMI)は54.5と、前月の53.4から上昇した。市場予想の54.0をわずかに上回った。 同指数は50が景況拡大、悪化の節目となる。 景気指数は59.8と、前月の57.8から上昇。市場予想の57.4を上回り、昨年10月以来の高水準となった。 雇用指数は49.7から50.3に、新規受注指数は55.5から56.7にそれぞれ上昇した。 価格指数も49.1と、前月の45.5から上昇した。 http://jp.reuters.com/article/us-mar-ism-service-idJPKCN0X220K 米貿易収支、2月は対OPEC黒字が過去最高−原油安で ENLARGE OPECと非加盟産油国は原油の増産凍結をめぐる協議を17日にカタールで開く PHOTO: HASAN JAMALI/ASSOCIATED PRESS By JEFFREY SPARSHOTT 2016 年 4 月 6 日 09:00 JST 原油安とドル高、海外諸国の経済成長低迷の影響で、米国の貿易収支は引き続き従来とは違うパターンを見せている。 輸入原油の2月の平均価格は1バレル=27.48ドルに低下し、2003年12月以来の安値となった。石油製品輸入は02年9月以降で最低の水準に落ち込んだ。米商務省国勢調査局が5日発表したデータによると、2月は石油輸出国機構(OPEC)に対する貿易黒字が過去最高に達した。 米国の原油増産や多くの海外市場の減速を背景としたエネルギーの世界的な供給過剰がOPECに深刻な影響を及ぼしてきた。ドル相場の上昇で米国の輸出品が割高となる一方、ドル高はコモディティー(国際商品)価格の下落の一因にもなっている。 当然ながら、原油の供給過多を助長してきたのはOPEC諸国の当局者らだ。OPECと非加盟の産油国は17日、カタールで会合を開き、原油価格下支えを目的とした増産凍結での合意を目指す。だが、世界の原油生産量はこれまでのところ一向に減る気配はない。 その結果、米国は過去12カ月のうち10カ月で、サウジアラビアやベネズエラ、ナイジェリアを含むOPECに対し貿易黒字を計上し、2月には黒字額が過去最高の18億ドル(約2000億円)に達した。それ以前の30年間で対OPECの貿易収支が黒字だったのはわずか2回だ。 ENLARGE 米国の対OPEC貿易収支(単位:10億ドル) このように黒字が膨らんでいるのは、OPEC経済が好調で米国製品に対する需要が過去最高水準に達しているからでは絶対にない。1〜2月の米国のOPEC向け輸出は4%増、輸入は11%減だ。 カナダ、メキシコ、ロシアなども原油安による痛手が大きい。一方、米国では、原油価格の急落により、石油製品輸入が貿易赤字全体に占める割合は10%を割っている。2011年にはこの割合は60%を超えていた。 ENLARGE 米国の対OPEC貿易の(青)輸出額と(赤)輸入額(単位:10億ドル) 関連記事 • 米貿易統計、資源相場反発の行き過ぎ示す • 原油安特集 • OPEC加盟国の一部、生産枠凍結協議に参加見送りか https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NK166_OPECDE_M_20160405100851.jpg https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NK168_OPECEX_M_20160405101432.jpg
Business | 2016年 04月 6日 01:27 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 2月米貿易赤字拡大、輸出は回復の兆し [ワシントン 5日 ロイター] - 米商務省が5日発表した2月の貿易収支の赤字額は前月比2.6%増の470億6000万ドルだった。赤字額は市場予想の462億ドルを上回った。輸入が輸出を上回って増えたことで赤字額が拡大した。米経済の弱含みが第1・四半期に続いたことを示唆する最新の兆しとなった。 前月の赤字額は当初発表の456億7700万ドルから458億8000万ドルに改定された。 インフレ調整後の貿易赤字は633億4600万ドルと、昨年3月以来の高水準だった。前月は617億7100万ドルだった。 この日の統計は、最近発表された個人消費や企業投資の指標とともに、第1・四半期の米国内総生産(GDP)が昨年第4・四半期の年率1.4%増から一段と鈍化したことを示唆した。現時点の第1・四半期のGDP予想は1.0%増を下回っている。 2月の内訳は、輸出が1.0%増の1780億7000万ドルだった。そのうちモノの輸出は1.6%増の1185億8800万ドルと昨年9月以来初めて増加した。 ドル高で米国の輸出品は割高となり、輸出の落ち込みにつながってきた。欧州や中国経済の弱含みも重しとなってきた。 しかし、ドル高は収まりつつあり、2月にみられた輸出の増加は続く可能性が高い。先週発表された製造業の3月の新規輸出受注は14年12月以来の高水準となった。 ドルは14年6月から昨年12月の間に米国の主要な貿易相手国の通貨に対して約20%値上がりしたが、今年に入ってからは貿易加重ベースで1.3%安となっている。 統計発表後の金融市場の動きは限定的だった。 食品や自動車・同部品、消費財の輸出が増えた。一方で産業資材は10年3月以来の低水準に落ち込んだ。資本財は11年11月、石油は10年9月以来の低水準だった。 欧州連合(EU)への輸出が10.2%増加した。カナダとメキシコは6.0%増だった。一方中国は2.0%減った。 輸入は1.3%減の2251億3000万ドルだった。企業が積み上がった在庫を解消していることから輸入は抑制されている。原油安と、国内のエネルギー生産の増加も輸入額を抑えている。 食品の輸入は過去最高を更新した。一方で産業資材は09年5月以来の低水準だった。石油は02年9月以来の低水準に落ち込んだ。原油の2月の平均価格は1バレル=27.48ドルと03年12月以来の安値だった。 中国からの輸入は2.7%減。輸入の落ち込みが輸出減少を上回り、政治的に問題となることが多い対中貿易赤字は前月比2.8%減の281億1200万ドルとなった。 http://jp.reuters.com/article/us-feb-trade-deficit-idJPKCN0X223A
FX Forum | 2016年 04月 5日 19:31 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:ドル103円も、均衡相場は円高加速を示唆=佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長 [東京 5日] - 3月の主要通貨のパフォーマンスを見ると、円はドルと並んで最弱通貨となった。同月は米国やエマージング諸国の株価が反発し、全体的に投資家のリスクテイク志向が強まったこともあって、資本調達通貨としてのドルと円が双方とも売られたと考えられる。
3月中のドル円相場はおおむね111―114円のレンジ内での推移を続けたが、これはドルと円の双方が弱く、差がつかなかったためである。 しかし、4月はドルと円の間に徐々に差がつき始め、円の方がドルより強くなり、ドル円相場が110円を割り込む可能性が高まってくると予想している。市場参加者の中には、4月は国内機関投資家が新規の外債投資を始めることから円安になりやすいというイメージを持っている人も多いと思うが、近年事情は変わってきている。 実際、過去5年間で見ると、4月のドル円相場は4回、円高方向に振れている。つまり、一般的なイメージとは異なり、実際は新年度に入った後に円買い圧力が増す傾向がある。 その原因の1つと考えられる動きはデータ上にも表れている。日本企業による海外留保利益の本国送金額を月別で見ると、以前は年度末の3月に大きくなる傾向があったが、過去3年間の平均では4月が最大となっている。企業が配当や自社株買いを増やすようになって、資本移動のパターンが変化してきているのかもしれない。 当社はドル円相場が年末までに103円程度まで下落すると予想している。103円としている根拠の1つは、経常収支と日米10年金利差を使ったドル円相場の予測モデルが示しているレベルが103円だからだ。 日本の経常収支は1年程度のラグ(遅れ)をもってドル円相場に影響を与える傾向がある。2015年の経常黒字は14年の2.6兆円から16.6兆円まで14兆円も拡大した。過去の経験則に従うと、15年に急増した経常黒字が16年になってジワジワと円高圧力を増してくると考えられる。 先ほど、今年はドル円が103円程度まで下落する可能性があると述べたが、それは15年の経常黒字額から再投資収益を除いた額と16年の予想日米10年国債利回り差である225ベーシスポイント(bp)を変数として用いると、当社予測モデルではそう弾き出されるからだ。ちなみに、現在の日米10年国債利回り差は185bp程度なので、現状レベルからかなり金利差が拡大しても、ドル円相場にはまだ円高余地があることを示している。 足元の水準と比べると、103円は大幅な円高のように見えてしまうが、長期的な均衡水準という観点から言えば、さほど円高とは言えないと考えている。 <1ドル=107円でも円キャリー全盛期と同等の円安水準> 為替相場の水準感を語る際、よく購買力平価という尺度が用いられる。ただし、購買力平価は多くの場合、不適切な用いられ方をしているので注意が必要だ。 購買力平価とは、異なる国において同じ製品の価格は1つであるとの前提に立って、この法則が成り立つ時の二国間の為替相場を言う。例えば、米国ではビッグマックが3ドルで、日本では300円なら、購買力平価は1ドル=100円ということになる。これを絶対的購買力平価と呼ぶ。しかし、世の中の製品はビッグマックだけではないので、本来は全ての製品についてそれぞれの価格を日米で調査・比較しなければならない。 もちろん、そのような比較を行うことはほぼ不可能なので、代替手段として、ある一時点を基準として、その後の全体のインフレ率の差を用いて購買力平価を算出する方法が一般的だ。これを相対的購買力平価と呼ぶ。 しかし、この相対的購買力平価は利用する際に注意が必要だ。なぜなら、この方法で算出された購買力平価が正しいと主張するならば、基準としたある一時点の為替レートが正しい購買力平価でなければならないからである。正しい購買力平価を算出する際に用いる基準点が、正しい購買力平価だったと仮定しなければならないのはおかしな話だ。 一般的に用いられるこの相対的購買力平価の参考にすべきポイントは、実は水準ではなく、その傾きである。つまり、二国間のインフレ率の差だ。言うまでもなく、インフレ率、つまり物価の変化率は通貨価値の変化率と同じことを意味している。物価の上昇は通貨価値の下落を意味し、物価の下落は通貨価値の上昇を意味する。つまり、二国間のインフレ率の差は二国間の通貨価値の変化率の差を表していることになる。 したがって、基準点をいつにするかで水準が大きく変わってしまう相対的購買力平価も、その傾きは基準年以降の通貨価値の変化の差を正しく表しているので、非常に重要となってくる。 そのため当社では1970年1月を基準として、生産者物価指数の上昇率の差を用いて相対的購買力平価を算出し、その傾きを維持したまま、実際のドル円相場の変動のちょうど中心を通るように並行移動させた線を、正しい購買力平価、もしくはドル円相場の均衡水準と考えている。2000年以降の実際のドル円相場の変動のちょうど中心を通る購買力平価が示唆する均衡水準は現在93円である。 基準点を07年6月、つまり円キャリートレード全盛期に、ドル円相場が124円台というピークを付けた時に設定して、同じく生産者物価指数の上昇率の差を用いて、07年6月の124円が正しい購買力平価だったとの前提で、現在の購買力平価を算出すると107円となる。07年6月から最近までの約8年半で日本の物価上昇率はゼロ%だった一方、米国では13.7%だった。つまり、この約8年半の間に、円の通貨価値は全く変わらず、ドルの通貨価値は13.7%下落したと言える。 明らかに07年6月の124円は大幅に円安水準だったと言うことができるだろうが、このように購買力平価という概念を用いて計算すると、約8年半前の1ドル=124円と同じレベルのドル円相場は現在107円程度であることが分かる。 つまり、現状から107円程度まで円高・ドル安が進んで、やっと円キャリートレード全盛期の最も円安だった水準と同程度ということになる。円高方向への調整余地はまだ大きいと見ておいた方が良いと考えられる。 *佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN0X11OJ
2016年04月05日 第203回 世界の外貨準備と為替相場〜ユーロ比率は6年連続低下【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】 国際通貨基金(IMF)が3月31日、「10−12月期の世界中央銀行の外貨準備構成」を公表しました。世界の外貨準備に占める米ドルの比率が第3四半期〜第4四半期と2四半期連続で上昇した一方、ユーロの比率が約14年ぶりの低水準に落ち込んだことがわかりました。 2015年第4四半期のドルの比率は64.06%(4兆3,600億ドル)。2014年の第4四半期は62.9%でしたので、外貨準備におけるドル比率は1年を通じても上昇しています。一方、2015年第4四半期のユーロの比率は19.91%と、前四半期の20.34%から低下。低下は8四半期連続。ユーロの比率のピークは2009年につけた28%でした。 為替チャートを見てみますと、ユーロ/ドル相場は10月15日の1.14944ドルを高値に12月3日のECB理事会まで下落トレンドが続いていました。ユーロ安、ドル高。この期間の世界の外貨準備のリバランスも為替相場に影響があったのかもしれませんね。 世界の外貨準備高はIMF発表では2014年末でおよそ1,400兆円あるとされています。最大の外貨準備高を誇るのは中国。現在、減少傾向にあるとはいえ、中国の1月末時点の外貨準備高は3兆2,300億ドル(およそ340兆円)にも上ります。各国の中央銀行が自国通貨だけでなく外貨を保有する目的は @対外債務の返済 A輸入代金の決済B通貨の安定のための介入原資、などがあります。米国と取引があれば、米ドルで支払い、返済しないといけないわけですから、外貨準備で米ドルを保有しておくということです。 この外貨準備高、通貨当局による為替市場への介入が行われることで増減します。為替市場で急激に自国通貨が高くなることで、貿易条件が著しく悪化するような局面では「自国通貨売り、外貨買い」という形での介入が行うことがありますが、自国通貨を売却して外国通貨を購入するために外貨が増えていくということです。昨今、世界的に通貨安競争の様相を呈していますが、介入という直接的な手段での通貨安誘導はしないようにとG20でも共同宣言で合意がされていますので、やりにくくなってきています。 また、外貨準備資産の目減りを防ぐために、今後上昇すると思われる資産を増やし、下落すると思われる資産を減らすという「リバランス」も行われます。そのタイミングや戦略は国によって異なりますので、正確なポートフォリオを把握するのは難しいのですが、今後欧州にリスクがありユーロが下がると考える国が多ければ、世界の外貨準備高の欧州債券、ユーロの比率は低下しますね。こうした中央銀行の外貨準備のリバランスがマーケットにも大きな影響を及ぼすのです(特に中国の外貨準備高は大きいため影響が大きいとされています)。 また保有する外貨建ての債券価格が上昇(金利は低下)した場合も、外貨準備高が増減します。預金として単純に通貨で保有していた場合は、ドル高になれば、ドルの保有比率が上がりますし、ドル安となればドルの保有比率が下がるといった具合に、価格変動によって保有比率が変わるということですね。 ユーロの保有比率は2009年をピークに下がり続けているのですが、今回の比率低下は、中央銀行によるユーロからドルへのシフトというようなリバランスではなく、単純にユーロが下落したせいで、おのずと比率が低下しただけかもしれません。しかし、マイナス金利であるユーロを保有し続けるのは外貨準備高そのものが減少するリスクでもあるため、いずれ金利が上がる米ドルにリバランスしたほうがいいと考える国が増えれば、ユーロはさらに売られるということになりますが・・・。足元では、ユーロは大変強い動きとなっていますね。為替の変動要因は外貨準備のリバランスのみに支配されているわけではないのですが、金額が大きいためマーケットへのインパクトも大きいということを覚えておきましょう。ユーロは6年連続で外準比率が下がっているという大きな流れがあることを。 コラム執筆:大橋ひろこ フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。 TwitterAccount @hirokoFR 前の記事:第73回 「米大統領選挙」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】 −2016年04月04日 http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2016/04/05.html
自民・山本氏、消費低迷「リーマン以来」 増税是非でサミット前提言 [東京 6日 ロイター] - 自民党の山本幸三衆院議員は6日、会長を務める議員連盟「アベノミクスを成功させる会」で、「消費の数字から見れば、リーマン・ショック以来の事態が起こっている」と指摘した。その上で、データを踏まえれば「消費税は増税どころか減税すべきだという風に読める」と強調した。 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)前の5月20日をめどに提言をまとめ、安倍晋三首相に提出する。 同日の会合には約30人が出席したが、増税延期派が大勢を占めた。提言では「減税」まで踏み込まない一方、再延期の方針は盛り込まれる公算が大きい。 同時に、会合では財政再建についても議論を進める方針。政府は2020年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標を掲げているが、山本氏は「PBだけに執着する必要はない」とし、債務残高対GDP比にも着目すべきとの考えを示した。 http://jp.reuters.com/article/yamamoto-tax-idJPKCN0X22VQ
2016年4月6日 宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト] 増税延期はむしろ日本経済を悪くする危機バネの活用と経済リテラシーの強化を 経済政策とは「医療」のようなものだ
?2017年4月に予定されている消費税引き上げの延期を望む声がある。しかし、それこそ、かえって日本経済をさらに悪化させる可能性が高い。財政の更なる悪化はいうまでもないが、国民の前向きかつ真面目な気持ちを弱めてしまうだろう。病気の治療と一緒で、逆に危機感を自覚し、改革への動機付けをし、さらに成長に転ずる「危機バネ」を活用することこそが、現在必要な戦略と考える。 ?筆者は経済政策の考え方は“医療”のようなものだと考えている。健康体で生活しているときには日々の生活習慣について心掛けるだけでよいが、病気になったときには治療が必要となる。苦い薬を飲み、痛い手術を受けなければならない。良薬、口に苦しなのだ。病気になったときに何も変えずに放置して生活すると、さらに病気(病巣)は悪化する。 ?日本経済が、病気で体力が落ちている状況なのは疑いの無いところであろう。しかも、現在、国民が全ての“痛み”や“苦さ”を避けたがる傾向がある。リスクを取った痛い手術などはもってのほか、というわけだ。これでは、まず病気は治らない。 日本の「病状」はかなり悪い ?日本の財政赤字は現在、ダントツの世界一である。しかも、まだまだ増えており、概数で申し上げるが当面年40〜45兆円ペースで増加する。最近の国の歳出・歳入は、歳出が95兆円(今年度予算はさらに膨れ98兆円)、税収が50兆円(同じく景気がやや回復したことから増加して55兆円)。差額の赤字分45兆円は、新発国債などで資金を集めるしかない。 ?これはたとえば月給50万円の会社員が毎月95万円使うようなものだ。しかも何年もそれを続けている。いろいろ事情はあるだろうが、通常の感覚ならば明らかにおかしいと思うのではないか。おかしいと思わない方がおかしい。自分の部下や子供だったら、きっと注意したくなるであろう。 ?財政赤字は借金である。一部に「資産があるから問題ない」と考え、問題視しない向きもある。しかし企業・個人の場合、借金が何年も続けてどんどん増えていく企業・個人はどうなのか、ということだ。たとえば銀行員であったら、追加貸出に対して不安に思うのではないか。まず、借金は返すべきなのである。 ?国家における公的債務残高GDP対比比率は、企業でいうと売上高債務比率のようなものだ。危険信号のレベルなどは異なるが、公的債務も考え方は一緒である。経済分析では他の国々と比較する手法を良く使う手法を良く使う。主要国では以下の様にダントツの赤字、その比率は債務危機があった国よりもさらに大きい。概数(2014年)であるが、1位日本250%、2位ギリシャ180%、5位イタリア130%、13位アメリカ100%、22位 イギリス90%、37位 ドイツ70%、97位中国40%……これをどう考えるか。 ?国債の海外保有比率が低いから問題ない、さらに日銀が国債を買うから問題ないという意見もある。しかし、それは違う。海外の格付け機関(会社)の格付けが、国債の継続的な大量発行によって下がってきており、現在でもシングルA格となっている。これは先進国では異例で、中国・韓国よりも下だ。国債の格付けが下がれば日本企業の格付けも下がり、さらにジャパンプレミアムが付き、海外の資金調達などで企業の負担が増してきている。今後も財政赤字が拡大し投資適格(トリプルB)を下回ってくると、日本企業の資金調達は困難になるだろう。ドルなど他国の通貨供給は日本銀行でも難しい。財政赤字の問題は、まずはここから具現化してきている。 金融緩和は「輸血」のような緊急措置 ?ならばどんな治療をすればいいのか。経済政策には短期政策と長期政策がある。短期政策は緊急時にその場をしのぐ応急処置、長期政策は経済の体質(構造)を改革することだろう。金融政策はその短期政策の最たるものだ。これを長期的に行うところがおかしいのである。 ?マネーは人の身体にたとえると血液のようなもの。アベノミクスの金融緩和はいうなれば輸血で、行えば調子が良くなる。救急医療でも、病院に担ぎ込まれるような場合、まず輸血ということは多い。一方で金融緩和には痛み止めのような効果もある。頭なり、胃なり、歯などが痛いときには痛み止めを飲む。そうすれば一時的には痛みは治まるが、これはあくまで対症療法であって悪いところ(原因)を放置するため、実際にはカラダはさらに悪化する。海外では、このような日本病に対する金融緩和の強化を、モルヒネ政策とも呼んでいるようだ。 ?モルヒネは打てば痛みが消えるが、もちろん悪いところは治さない。そのうえ時間が経つと中毒症状が出て、もっと欲しくなってくる。まともな努力ができなくなる。これは怖い。さらに資産が水ぶくれしてバブルとなり、逆に経済全体のリスクが高まる。こうした状況からの脱却を、米国が「正常化」と呼ぶのも理にかなっている。 ?薬を飲んで寝たきりのようになっている経済に対し、薬漬けはやめて、ベッドから立って歩きましょう、体力を付けましょうと治療の転換を図らなければならない。先進国である日本の経済は人口も減ってきて、かなりの産業が海外に流出し、空洞化しつつある。ある意味、このままでは老化していく経済なのである。以前のような、高度成長期に戻ることはないのだ。 その場しのぎの治療を続ければ国民の信認を傷つける ?先日の「国際金融経済分析会合」において、スティグリッツ先生やクルーグマン先生などに講演をさせた舞台回しには驚いた(費用はいくらかかったのだろう)。予想通り彼らは(そこだけがクローズアップされているが)、消費税引き上げ延期のコメントをした。このように消費増税の延期論が相次いだことなどから、先送りの観測も出ている。今のところ安倍首相は「リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、予定通り引き上げていきたい」と改めて説明している。その上で、足元の経済情勢について「現在はそうした重大な事態が発生しているとは考えていない」との認識を示した。衆議院の解散に踏み切るか否かに関しては「頭の片隅にもない。全く考えていない」と述べて否定しているが、油断はならない。 ?ここでの消費増税延期は大きな意味を持つ。国民の経済政策に対する“信認(信用)”を毀損するからだ。本来、信認こそ、企業でも人生でも、政策でも最も重要なことである。 ?逆にこの危機的な財政(借金)状況の中で、予定通り増税すれば、国民に危機感を抱いてもらうことができる。日本では「危機バネ」という言葉がある。危機感が気持ちを引き締め、新たな進歩をもたらすという意味だ。 ?安易な延期は治療の延期ということになり、国民は「大丈夫なんだ」と誤解して、病気はさらに悪化する。このままでいいんだ、と“甘い気持ち”がさらに世の中に蔓延し、将来の子どもたちの世界に負担をツケ回すことになるだけだ。しかもその負担はさらに拡大している。 ?なぜ治療を延期しようとするのか。それは「政治的配慮」と呼ばれる選挙対応が考えられる。日本では増税に抵抗感が強い。それは借金の先延ばしに過ぎないのだが、残念なことに日本では国民に評価される傾向がある。いうなれば、政権の最後の切り札かもしれない。しかも、これが衆参同時選挙になると余計に強まるだろう。 経済リテラシー教育の重要性 ?その場しのぎの治療が続いてしまう一因には、日本の有権者が持つ経済政策に対する“無責任な甘え”もあるように感じる。例えば、「年金を減らすのは良くない、しかし、増税も良くない」というものだ。 ?英国の事例を見てみよう。キャメロン首相はきちんと国民に経済・財政状況を説明し、3年で財政赤字を約4割削減し、将来について議論し付加価値税(VAT:Value Added Tax、日本の消費税に当たるもの)を引き上げた。その後の総選挙でも与党の保守党は圧勝した。国民も経済・財政を理解し、政府も努力した。英国は国民全体に経済教育がなされており、国の経済・財政状況を理解している。これこそ英国の経済的な強みといえる。日本とは逆である。 ?日本では今後、2020年までの経済成長の目標としてGDP600兆円、及び財政における基礎的収支(プライマリーバランス)の黒字化を掲げるが、それは「3%の成長率」を前提としている(しかも、それでも足りない可能性すらある)。しかし、今後5年間に3%の成長率を実現する可能性は極めて低い。そもそも、2015年の日本の成長率予測は約1%以下のレベルだ。この部分に疑問を持たない方がおかしいのである。しかも、安倍首相も日銀黒田総裁も、2018年には任期が終わる。 ?筆者は経済について考えるに当たり、人間が行うものであることから、基本的には「国の経済政策」も「企業の経営」も「人の生き方」も、ベースは“同じ考え方”であるべきと考えている。 ?改革が必要なことを認識していながら、ダラダラと先延ばしすることは、経営においても人生においても良くないことだ。しかし、こと日本という国家の経済政策に対して逆に先延ばしが求められるのは、おかしいのではないか。 ?筆者が不思議でたまらないのは、企業の経営や人の生き方では当たり前のことが、経済政策になると通用しない点だ。それは、日本の国民の経済リテラシー(知識と判断力)の問題といっても過言ではない。 ?本来ならば、過去25年間の「日本病」でダメだったのだから、よほど大胆な改革政策を実施する必要があるのはいうまでもない。ただ、その前に国民に“経済教育”をすることが重要だ。現在のように国民が全ての痛みを拒否するような状況こそ、経済改革という治療にとって問題なのである。 ?筆者は、政治の機能は本来、“分配”だと考えている。それも援助(利益)の分配よりも、負担の分配である。?政府と国民が危機感を共有し、それを利用した「危機バネ」をエネルギーとして、さらに、国民への長期的視点での「経済教育」を充実させることが、現在の日本にまず必要なことである。 ※「宿輪ゼミ」は2015年9月に、会員が“1万人”を超えました。 ※ 本連載は「宿輪ゼミ」を開催する第1・第3水曜日に合わせて、リリースされています。連載は自身の研究に基づく個人的なものであり、所属する組織とは全く関係ありません。 【著者紹介】 しゅくわ・じゅんいち ?博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。 Facebook宿輪ゼミ:https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/ 公式サイト:http://www.shukuwa.jp/ 連絡先:info@shukuwa.jp http://diamond.jp/articles/-/89148
マイナス金利が招く「財政規律の緩み」 2016年4月5日(火)上野 泰也 (写真=AP/アフロ) 日銀が1月29日に導入したマイナス金利は、収益圧迫懸念増大から銀行株の急落に結び付いたほか、消費者のマインドを「守り」に追いやるなど、負の側面がクローズアップされている。この政策は少なくとも初期段階では失敗に終わったとみる向きが、市場では多い。 日本(さらには米国や欧州)の長期金利のレンジを押し下げるという点においては確かに、日銀のマイナス金利は大きな効果を発揮している。日本の債券市場では3月下旬、40年債を含むすべての年限の国債の利回りが0.5%を下回る日が複数あった。 だが、そのことが住宅投資や設備投資の「起爆剤」になるとは、到底考えられない。もともときわめて低い水準となっていた長期金利が追加的に低下することによる刺激効果は、ごく限られたものにとどまる可能性が高い。 住宅市場では分譲マンションを中心に、庶民の手が届かないところまで高くなってしまった物件価格という強い逆風が吹いており、これはローンの月々の支払額の軽減とはグレードの違う話である。また、設備投資では、人口減・少子高齢化の進行による国内消費市場の長期的な縮小見通しに変わりがない以上、企業が国内で設備投資を本格展開するための前提条件が成り立っていない。 「景気対策の規模は10兆円ぐらいあったほうがいい」 ここでもう1つ、決して見逃してはならないマイナス金利の副作用が、最近目立っているように思う。それは、財政規律の緩みである。景気下振れリスクや、上海で開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での景気刺激に関する合意を大義名分にして、日本は財政政策を積極的に使って景気を刺激すべきだ、さらには2017年4月に先送りされている10%への消費税率引き上げを再延期すべきだという主張が、政府・与党内などで広がっている。 ロイター通信は3月11日、「政府内に景気失速懸念、一部に10兆円景気対策の声 財務省は慎重」と題した記事を配信した。記事で重要な部分は、以下の通りである。 「政府部内では、5月の伊勢志摩サミット(主要7か国首脳会議)でも世界経済動向がメーンテーマになり、財政出動の可能性をめぐって活発な議論が展開されそうだとの見通しが浮上」 「日銀のマイナス金利政策導入後、10年最長期国債(長期金利)がマイナス圏まで低下。先行きの国債利払い費用が大幅に低減出来ると試算できるようになり、安倍晋三首相の周辺では、この環境を利用して、積極的な財政出動を可能にする仕組みを作るべきだとの声も出ている」 「こうした中で政府関係者の1人は『景気対策の規模は、5兆円では意味がない。10兆円ぐらいあったほうがいい』と述べている」 「消費増税延期と大型経済対策をセットで」の声も 「別の政府関係者は『10兆円規模の大規模な景気対策が必要との私案が、安倍首相の周辺や経済官庁の官僚からも複数から浮上している』と語る」 「具体的には、何らかの給付措置や公共事業、所得税減税のほか、現行8%の消費税を引き下げる案なども効果的だとする意見が、安倍首相周辺から浮上している」 「また、最も強硬な財政出動論者からは、消費増税延期と大型の経済対策をセットにするべきだとの意見も出ている。しかし、このケースでは、最大15兆円規模の財政出動になるため、実現可能性は低いとの声が多い」 5月の伊勢志摩サミットよりも前に政府・与党が打ち出すとみられている経済対策の規模は、どうやら5兆円程度にはとどまらず、10兆円に近づく方向のようである。 上記の記事に出てくる安倍首相周辺の政府関係者の1人は、本田悦朗内閣官房参与(3月11日付でスイス大使に就任した後も、内閣官房参与を当面兼務)である可能性が高い。 時事通信が3月10日に配信したインタビュー内容から、一部を引用したい。消費増税凍結にとどまらず、消費減税の主張も展開されている。 「消費が落ち込んでいる大きな理由の一つは、来年4月に増税が控えているということがある」 「前回の増税で相当実質所得が奪われており、来年4月に増税があると消費するわけはない。最低限凍結しないといけない。来年4月に消費税増税をするのは危険だ」 「消費を喚起することも必要だが、場合によって(消費税の)減税をやってはどうか。8%の消費税を、デフレ完全脱却を達成するまでは例えば時限的に7%ぐらいに戻す、場合によっては6%、もっと極端に言えば5%に戻すとか。非常に政治的に難しいと思うが、安倍政権は国民生活を最重視しているとクリアなメッセージを出すためにも、単に来年4月に凍結するよりも効果があるのではないか」 「財務省の論理は、社会保障目的税として消費税を位置付けている。社会保障充実のためには消費税はマストだからこの二つの関係を断ち切らないといけない。そうしないと常に社会保障の歳出が人質になって消費税増税を迫られてくる」 「消費税増税を認めるか認めないか、認めなかったら社会保障は知らないぞという人質になると困る。(自民、公明、民主の)3党合意の枠組みを見直す必要があると思う」 浜田宏一内閣官房参与も、17年4月の消費増税実施への反対姿勢を明確にしている。3月15日に日本経済新聞電子版が配信したインタビューで、浜田氏は次のように述べた。 「消費税の再引き上げは見直したほうが日本経済にとって安全と思う」 3党合意は「前の船長が決めた話」 「半ばパニックが続いている時に、約束したんだからともう一度消費税を上げると不安が高じてしまう。賢いやり方とは思えない」 「日本丸はいろんな嵐が吹いているところを航海しているとすれば(民主、公明両党と消費税10%への引き上げを約束した)3党合意は前の船長が決めた話。荒波がひどくなって日本経済が難破しそうになったらやっぱりやめる方がいい」 ところが、浜田氏はこのインタビューで、「日本経済はファンダメンタルズでみる限り、なにも悪くない。アベノミクスは失敗という人がいるが、現時点でとくに危機的な状態になるとはなかなか思えない」とも述べている。発言内容には一貫性がないようにも思える。 名目GDPの250%程度という、米国やユーロ圏と比べてはるかに大きな借金の元本を抱えている日本という国が<図1>、日銀のマイナス金利導入で長期金利がさらに下がったという足元の状況変化に着目して、借金をさらに増やして財政出動で景気を刺激しようとする。 ■図1:一般政府 債務残高対GDP比(2014年推計) 日本は米国やユーロ圏と比べてはるかに大きな借金を抱えている (出所)IMF [画像のクリックで拡大表示] 筆者の見るところ、これは非合理的かつ近視眼的な政策行動であり、財政規律の弛緩、次世代へのツケ回しの上積みに他ならない。 首が回らないほど、あるいはまともに返せそうにないほど借金を抱えている世帯が、金利が低くなったからといって、借金の元本をさらに増やそうとするだろうか。また、もし浮いたお金があれば、できるだけ元本部分を返済しようとするのが最も合理的な行動だろう。 さらに、米通信社ブルームバーグが3月9日、「消費増税先送りは物価目標達成に追い風、日銀内に待望論 ─ 関係者」と題した記事を配信した。 「政府が予定している来年4月の消費税率10%への引き上げが先送りされれば、日本銀行が掲げる2%の物価目標達成には追い風になるとの見方が日銀内の一部で強まっている。事情に詳しい関係者が明らかにした」「(2015年10月に当初予定されていた)10%への引き上げ延期が2014年に決まった際には、日銀内で延期に否定的な意見が強かったのとは対照的だ」と、この記事は伝えた。 マイナス金利政策の導入によって長期金利を押し下げた当事者である日銀内で、しかも、ボスである黒田東彦総裁が財務省の出身であるにもかかわらず、17年4月の消費増税延期待望論が広がっているという話に、筆者は驚かされた。公約していた2年程度での2%の物価目標を達成できず、異次元緩和のスタートから3年経っても、消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比ゼロ%近辺にとどまっている。黒田日銀(およびその実験的で大胆な金融政策の理論的バックボーンであるリフレ派)は、かなり追い込まれている。 景気が悪くならない増税は「ないものねだり」 消費増税は、社会保障を中心とする日本の財政政策の中長期的な安定性・持続可能性を確保する目的で行われるものであって、目先の景気動向といった短期的な視点で行われるものではないというのが、筆者の理解である。 端的に言えば、消費税率を引き上げると、程度の差はあれ、景気が悪くなるのは当たり前の話である。景気が悪くならないような増税を実現しようとすること自体、「ないものねだり」ではないか。「良薬は口に苦し」という、日本のことわざを引き合いに出すこともできる。 さらに、17年4月に予定されている消費増税は、税率の上げ幅が14年4月よりも小さい2%で、しかも食料品には軽減税率が幅広く適用されることが決まっている。 むろん、中長期的な財政の持続可能性をとるか、それとも当面の景気動向を優先するかは、世代間の対立という重い側面も有しているテーマであり、最終的な判断を下すのは国民全体ということになる。 だが、あまりにも強力な日銀の金融緩和によって、債券市場の健全な価格形成機能はマヒしており、財政規律の緩みに対して「警告シグナル」を発信できなくなっている。そのことが国民の誤った判断に結び付くことにならないか。市場に身を置くエコノミストの一人として、その点を筆者は危惧している。 上野泰也のエコノミック・ソナー 景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/040100039/?ST=print
World | 2016年 04月 6日 13:11 JST 関連トピックス: トップニュース 3月英小売価格の下落率、7カ月で最小=BRC [ロンドン 6日 ロイター] - 英小売協会(BRC)は6日発表した3月の英国の店頭小売価格指数は、下落率が過去7カ月で最小だったものの、業者による値引き合戦で下落傾向は継続した。 BRCによると、小売価格は3月、前年比1.7%下落した。これは2015年8月以来最小。前月は2.0%下落だった。 3月の非食品価格は前年比2.6%下落した。前月は3.0%だった。一方、食品価格は2カ月連続で0.4%下落した。 全般的な価格の下落は「競争の激化が続き、小売り業者が値引きを進めている結果」と、BRC幹部のヘレン・ディキンソン氏は指摘した。 同氏は「消費者マインドの冷え込みが続く一方、比較的穏やかな経済環境と競争の激しい市場にあって、春の新シーズンが始まり、小売り業者は値引きとプロモーションで市場シェアを維持しようとしている」と述べた。 http://jp.reuters.com/article/british-shopprice-idJPKCN0X30A9
Business | 2016年 04月 6日 06:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス EU、英国が離脱しても対応可能=独財務相 [バーゼル(スイス) 5日 ロイター] - ドイツのショイブレ財務相は5日、英国が欧州連合(EU)を離脱したとしても、EUは対応できるとの考えを示した。同財務相はバーゼル大学で行なった講演で、EUの将来に楽観的な見通しを持っているとし、欧州が現在直面している問題は統合を進める良い機会になると指摘。 英国がEUを離脱すれば、新たなアプローチをとることになるとの考えを示した。 ショイブレ財務相はまた、欧州中央銀行(ECB)の金融政策について、ドイツを他のユーロ加盟国より不利な立場に置くものとして批判。ユーロ加盟19カ国が1つの中央銀行の下に置かれていることに問題があるとし、ドイツは他の加盟国より不利な立場に置かれていると述べた。 http://jp.reuters.com/article/germany-brexit-idJPKCN0X22Q7 【第423回】 2016年4月5日 真壁昭夫 [信州大学教授] 英国離脱が引き金を引くEU崩壊と世界経済混乱 ロンドン在住アナリストが 危惧している欧州の情勢 日本では英国の国民投票について、EU離脱を選択することはないという楽観的な見方が多いが… ?最近、ロンドン在住のアナリストの友人が東京に来た。目的は、今後の日本企業の業績見通しを企業経営者にヒアリングすることだ。
?彼は日本企業に関して、「企業業績は欧州の投資家が見ているほど悪くはないが、これから為替が円高方向に動くと厳しい」との印象を持ったようだ。恐らく、その見立ては、他の海外投資家とほぼ同じだろう。 ?それよりも気になったのは、彼の欧州情勢に関する話の内容だった。足元の情勢を考える上で最も重要なポイントは難民問題だという。シリアなどから欧州諸国に大量の難民が押し寄せているため、社会全体が不安定化している。 ?特に、フランスやベルギーなどで、過激なテロ事件が発生し、フランスやドイツをはじめ多くの国が深刻に頭を悩ませる問題になっている。 ?問題の根源には、原油安などに起因する中東地域の経済低迷や、米国の政治力低下によるロシアなどの存在感の高まりなどの要因が複雑に絡んでいる。その意味で欧州地域が抱える難民問題は、世界的な構造変化の歪みが顕在化しているとも言える。 ?歪みの一端は、世界的な政治情勢の変化にも見て取れる。ドイツでは、難民の受け入れに反対する勢力が台頭している。米国の大統領選挙の候補者選考の過程では、いずれも候補者の主な論点は米国国内に目が向いている。 ?世界経済が過剰生産能力を抱える中で、国民が自国の利益を優先する姿勢は仕方がないのだろう。しかし、目先の利益だけではなく、長い目で見た利益を目指すことを諭すのが政治の役目だろう。最近、そうした政治の機能は明らかに低下している。 6月23日、EUの将来に 重大な懸念発生の可能性 ?日本から眺めていると、6月23日に行われる英国の国民投票はどうしても対岸の火事のように見える。「最終的に英国民はEU離脱を選択することはないだろう」という、楽観的な感覚を持っている向きが多いだろう。 ?しかし、英国の事情に近い人たちに話を聞くと、国民投票の結果予想についてはあまり楽観的ではないことが分かる。むしろ、EU残留にNOの回答が出る可能性は高まっている。 ?元々、英国の国民には、EU加盟で国や通貨の主権が低下することに危惧を抱く人は多かった。英国内でも、アイルランドやスコットランドの独立に対する意識は高く、人々の“自分の国”への帰属意識はかなり強い。 ?それに加えて、最近の難民問題の発生がEU残留反対派の勢いを増すことになっている。英国内の世論調査でも、残留賛成・反対はほぼ拮抗の状況から、やや反対派が上回るとの調査もある。 ?仮に、6月の国民投票で残留派が敗れることになると、影響は小さくない。その結果によって、深刻な財政問題に悩むギリシャや一部地域の独立問題を抱えるスペインなど、EU離脱派が勢いを増しそうな国や地域は多いからだ。 ?国民投票で残留派が敗れたとしても、EUからすぐに離脱するとは限らない。英国としては、より有利な条件を引き出すことで残留することになる可能性もある。 ?ただ、経済や社会事情が異なる複数の国を束ねるEU、特に単一通貨を使うユーロ圏には、ドイツのように経済的に強い国とギリシャのように弱い国が共存する問題点がある。それを、同一の金利・為替で経済運営を行わなければならないという一種の矛盾を抱える。 ?経済状況が良いときであれば、そうした矛盾は水面下に隠すことはできるだろう。しかし、いったん、現在のように経済状況が悪くなると、その矛盾は顕在化し、国民から不満が出ることは避けられない。 英国の離脱とEU崩壊で始まる大混乱 利害調整が困難な“多極型”世界構造 ?国民からの不満が高まると、政治としても何らかの手立てを講じざるを得ない。国民の不満を放置しておいては、基本的に選挙に勝つことができず、政治家の地位も危うくなる。 ?欧州諸国の政治情勢を見ると、その兆候が見え始めている。フランスではテロ事件の発生以降、極右政党が勢いを増している。ドイツでの地方選挙の結果を見ると、メルケル首相に対する支持率に陰りが出始めている。そうした兆候は、他の欧州諸国にも見られる。 ?その意味で、6月23日の英国の国民投票は重要だ。英国民のEUに対するNOが、長い目で見ると、EU崩壊のスタートになる可能性は高い。仮に、EUの結束にひびが入ると、世界の実体経済や金融市場には大きな波が押し寄せることになる。 ?EU崩壊の可能性が高まると、まず通貨ユーロに対する信認が低下するだろう。ひょっとすると将来なくなるかもしれない通貨を、保有したいと考える投資家は少ないはずだ。ユーロの価値が不安定化すれば、中長期的に加盟国の経済にもマイナスの影響が出る可能性が高い。 ?大きな規模を誇る欧州圏経済が低迷すると、世界経済の足を引っ張ることになる。そうなると、世界的に株式市場の動きは不安定になり大きな混乱が発生する可能性が高い。それと同時に、為替市場も大きく揺れるはずだ。 ?問題は、そうしたリスクに対応できる世界的な協調体制ができるか否かだ。既に米国にはかつてのような圧倒的な発言力はない。中国が経済的に台頭し安全保障面でもその存在感を高め、ロシアもプーチン大統領の下で対米国の存在感を高めている。 ?世界の権力構造が米国一国中心型から、いくつかの極を持つ“多極型”に変質している。そうした状況下、主要国の複雑な利害調整を行うことは至難の業と言わざるを得ない。 必要不可欠な協調体制の構築 政治の内向き志向で不安を拭えず ?足元の世界経済の状況を概括すると、過去約20年間にできた三つのバブルの影響もあり、全般的に供給能力が需要を上回るデフレギャップが発生している。 ?例えば、わが国は長く続いたデフレから完全に脱却することができず、中国では鉄鋼やセメントなど在来産業分野で生産能力の過剰感が高まっている。欧州でも、デフレ圧力の高まりから消費者物価が低迷気味に推移している。 ?それに対し主要国は、積極的な金融緩和を実施して景気刺激を図っているものの、期待されたほどの効果が出ていない状況だ。今後、世界経済を下支えするために最も重要なポイントは、主要国が結束して世界的な協調体制を作ることができるか否かだ。 ?世界経済のグローバル化が進むと、一つの国にとってベストの政策が、世界レベルでの有効策になるとは限らない。特定の国が景気対策を打っても、他の国がそれを打ち消すような政策運営を行うと、全体としての効果は相殺されてしまうからだ。 ?そうした政策の協調体制を作ることは口で言うほど容易なことではない。協調体制下で実施する政策が、短期的に特定の国に痛みの効果をもたらすこともあり得る。そういう状況でも、協調体制を維持することは鍵になる。 ?痛みを伴う政策を実施するためには、政治が国民に対して理解を得なければならない。それこそ、政治のリーダーシップの真骨頂ともいうべき部分だ。 ?しかし、最近の主要国の政治を見ていると、どうしても心配になってしまう。米国の共和党のトランプ氏の言動は、まさに内向き=自国利益至上主義の様相だ。6月の英国の国民投票でEU離脱派が多数となる場合には、そうした内向きの政治がさらに勢いを増すかもしれない。 ?主要国の政治機能の内向き志向が強まると、世界の協調体制を作ることは難しくなるだろう。そうなると、世界的な供給能力過剰の状態を解消するためには、企業が淘汰されたり、自発的に設備を廃棄したりすることを待たざるを得ない。それには長い時間がかかる。そう考えると、世界経済の先行きにあまり楽観的になれない。 http://diamond.jp/articles/-/89049 【第412回】 2016年4月4日 広瀬 隆雄 ドル/円で111円の水準に注目する理由とは? ドル安の恩恵を受けて上昇する米国株、原油、ゴールド、新興国株とドルの関係について解説! <今回のポイント> 1.米国株式市場は先週も好調だった 2.ドルが2月以降反落したことが支援材料となった 3.ドル安の背景には日銀の「手詰まり感」がある 4.原油、ゴールド、新興国株などのリスク資産はドル安の恩恵で上昇 5.ドル/円の111円付近は、注目に値する 米国の株式市場は年初来プラスに 2月の底打ちはドルの反落が要因 ?先週の米国株式市場は、ダウ工業株価平均指数が+1.59%、S&P500指数が+1.81%、ナスダック総合指数が+2.95%でした。 ?米国株式市場は2月11日に底打ちした後、ほぼ一本調子に戻してきました。このためダウ工業株価平均指数とS&P500指数は4月1日の時点で年初来プラスとなっています。 ?2月に米国株式市場が底打ちしたのは、これまでずっと強かったドルの勢いが2月に入ってから弱まったことに呼応しています。 ドル安の背景には日銀、欧州中央銀行の「手詰まり感」 米国の輸出見通しはドル安で好転へ ?ドルが安くなっているひとつの理由は、マイナス金利導入後の日本に見られるように、金融緩和が景気支援どころか逆効果を招きかねないということが理解されたため、とたんに「手詰まり感」が広がったことによると思います。 ?つまり日銀の力だけではこれ以上、円安を演出することがムリになっているのです。 ?同様の「手詰まり感」は欧州中央銀行(ECB)に関してもあてはまります。 ?ドル安は米国の輸出企業を助ける働きをします。このため輸出比率の高い優良株を中心に、それらの企業の業績は今後回復に向かうと言う期待が出ています。 ?米国の株式市場がするすると戻したのは、このためです。 ドル安で原油や金などコモディティが反発 ドル/円の111円の水準を意識せよ ?原油価格はドル建てで取引されている関係で、ドル安になると原油価格は反対に強くなることが知られています。このセオリー通り、原油価格は2月の半ばから切り返しています。 ?金価格は一足先に12月に底入れし、第1四半期中は過去30年で最も大きな上昇を記録しました。 ?冒頭のグラフに見られる通り、ブラジル、メキシコなどの新興国の株式も好調でした。これらの国々はコモディティの輸出に依存しています。またドル安局面ではアメリカの投資家は海外投資、とりわけ新興国への投資に積極的になることもこれらの市場が人気化した原因だと言えるでしょう。 ?このところの世界のマーケットの動きは、このようにドルの動きで説明できる部分が大きいです。 ?そうである以上、今後もドルからは目が離せないと思います。 ?そこで重要になるのがドル/円の動きです。111円の水準はこのところの下値支持を形成しています。 ?もしドルがこの水準を割り込んでズンズン下がるのであれば、米国株、原油、ゴールド、新興国株などはもう一段高が期待出来るでしょう。 ?逆にここでドルが反発するのなら、それらのリスク・トレードは一服になると思います 2016年3月時点】 http://diamond.jp/articles/-/89035
世界のエリート層の資金運用 資料で実態明らかに 2016年04月04日(月)BBC News
ロシアのプーチン大統領周辺やアイスランドのグンロイグソン首相など、各国のエリート層が租税回避地を使って秘密裡に資金運用をする実態が、パナマの法律事務所の資料で明らかになった。 法律事務所「モサック・フォンセカ」の資料約1100万件を国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が南ドイツ新聞を通じて入手。資料には現職もしくは元国家元首72人に関連した情報が含まれている。 モサック・フォンセカは過去40年にわたって当局の戒告を受けておらず、刑事訴訟の対象になったこともないとしている。 ICIJ事務局を運営するジェラルド・ライル氏によると、入手資料はモサック・フォンセカの過去40年分の日常業務に関する情報だという。 ライル氏は、「リークされた内容は広範なため、オフショア取引に関与する人々にこれまでなかったような打撃を与えることになるだろう」と述べた。 資料には、エジプトのムバラク元大統領の家族や側近、シリアのアサド大統領やリビアで2011年まで独裁体制を敷いていたカダフィ大佐に関係する非公表のオフショア法人などが記されている。 さらに、10億ドル(約1100億円)規模のマネーロンダリング(資金洗浄)活動をロシアの銀行、バンク・ロシアが行っているとされる疑惑についても触れられている。これには、プーチン大統領に近い人物たちも関与しているという。 バンク・ロシアがどのように運営されているか分かったのは今回が初めて。同銀行は、ロシアによるクリミア併合を受けて実施された米国や欧州連合(EU)による経済制裁の対象となっている。 資金は複数のオフショア法人に送金されており、そのうち2法人は、プーチン氏の10代の頃からの友人でプーチン氏の娘マリアさんの名付け親でもあるチェロ奏者のセルゲイ・ラルドゥーギン氏が所有。資料には、同氏が不正の疑いがある取引で数億ドルの利益を上げたと記されている。 しかし、ラルドゥーギン氏所有の法人の文書によると、「本法人は主に、究極的な受益権者の身元と機密を守るために設立された」と明記している。 モサック・フォンセカの資料はさらに、アイスランドのグンロイグソン首相が、公的資金で救済された国内銀行の株式をどのように秘密裡に所有しているかを明らかにしている。 同首相はこれまでも、オフショア法人を通じて国内銀行に数百万ドル投資している事実を隠蔽しているとして非難されていた。 今回リークされた資料には、グンロイグソン首相と夫人が2007年にオフショア法人「ウィントゥリス」に投資したことが記されている。2009年に同首相が国会議員に選出された際にはこの事実を申告していなかった。その後、ウィントゥリスの持ち株50%を夫人に1ドルで売却している。 (英語記事 Panama Papers: Mossack Fonseca leak reveals elite's tax havens) http://wedge.ismedia.jp/articles/print/6491 http://www.bbc.com/news/world-35918844 提供元:http://www.bbc.com/japanese/35957243
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