Business | 2016年 04月 4日 10:03 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 企業の物価見通し、1年後は1%割れ インフレ期待の鈍化鮮明=日銀 [東京 4日 ロイター] - 日銀が4日に発表した3月調査の日銀短観における「企業の物価見通し」によると、企業が想定する消費者物価(CPI)の前年比上昇率は、全規模・全産業の平均で1年後がプラス0.8%となり、1%を割り込んだ。3、5年後も前回12月調査から低下しており、企業のインフレ期待の鈍化が鮮明になっている。 前回12月調査と比べた低下幅は、1、3、5年後すべてが0.2%ポイント。1、3年後は3四半期連続、5年後は4四半期連続で低下しており、原油価格の下落で実際の消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)が低迷する中、企業のインフレ期待も低下基調が続いている。 1%ごとに示している選択肢別の社数構成比をみると、前回は1年後でプラス1%程度との回答が最も多かったが、今回はゼロ%程度との見方が最多。3、5年後もプラス2、3%程度との回答が減少し、ゼロ%程度との見方が増えている。 日銀は目標とする物価上昇率2%の早期実現に向け、現行のマイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利付きQQE)の継続で2017年度前半には2%に達すると見通している。そのためにはインフレ期待を含めた「物価の基調」の一段の上昇が不可欠だが、企業の物価見通しを見る限り、期待はむしろ後退している。 同時に公表した各企業の主要な製品・サービスの販売価格見通しも、現在と比べて平均で1年後に0.3%上昇(前回0.5%上昇)、3年後に1.0%上昇(同1.3%上昇)、5年後に1.3%上昇(同1.6%上昇)と、こちらもすべての期間で低下した。 (伊藤純夫 編集:内田慎一) http://jp.reuters.com/article/japan-boj-idJPKCN0X1016 ユーロ圏:2月の失業率は10.3%に低下−2011年来の低水準 Corina Ruhe 2016年4月4日 18:36 JST
ユーロ圏の失業率は2月に、2011年来の水準に低下した。経済が緩やかに成長する中で、緩慢なペースながら雇用市場の改善が続いている。 欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が4日発表した2月の域内失業率は10.3%と1月の10.4%(改定前10.3%)から低下。ブルームバーグがまとめたエコノミストの調査中央値と一致した。 ユーロ圏全体の失業率は6年以上にわたりほぼ一貫して10%を上回っているが、国ごとのばらつきは大きい。ユーロスタットによれば2月はドイツの4.3%に対しスペインは20.4%だった。 欧州中央銀行(ECB)は4月から月々の債券購入額を800億ユーロ(約10兆1400億円)に増やすことを決めた。中銀預金金利のマイナス幅拡大など景気刺激に向けた措置を講じているが、インフレ率は2%弱の目標からはほど遠く、3月のインフレ率は前月に続きマイナスだった。 原題:Euro-Area Unemployment Declines to Lowest Since 2011 in February(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-04/O53QUN6S972801 短期の株安に怯まず、運用実務型「本の虫」−高橋GPIF理事長 野沢茂樹、竹生悠子 2016年4月4日 09:11 JST 更新日時 2016年4月4日 15:18 JST
世界最強銀行2位の農林中金出身、長野県出身ながら魚に詳しい面も 短期的な流動性を気にする必要はないが、国民の意識という制約 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の新理事長に、農林中央金庫出身の高橋則広氏が就任した。山あり谷ありの金融資産の運用を実際に経験したことのある実務型の理事長の誕生だ。「本の虫」を自認し、若いころの漁業協同組合詣でのおかげで海のない長野県出身ながら魚に詳しい面もある。 高橋氏(58)は1日の就任会見で、運用資産140兆円弱を抱える公的年金基金、GPIFの理事長に起用されたことについて、「部長、役員になってからも運用の仕事が長かった」ことが背景ではないかと語った。同氏が約9カ月前まで専務理事を務めていた農林中金は、運用資産64兆円の国内有数の機関投資家。農林中金はブルームバーグ・マーケッツ誌が選ぶ「世界の最強銀行」年次ランキングで、昨年まで2年連続2位だった。 「農中時代の経験がそのまま役に立つとは思っていない」と断りながらも、GPIFでも収益の「短期的な変動は避けられない」と指摘。さまざまな資産をうまく組み合わせた分散投資で「長期的な観点に立って適切なリスク管理をすれば、相応のリターンを得られ、安全でかつ効率的な運用ができる」と自信をのぞかせた。 GPIFの初代理事長の川瀬隆弘氏と3月末付で退任した三谷隆博氏はともに元日銀理事だった。川瀬氏はリーマンショック前の世界的な信用バブル期に、国内債券中心の慎重な運用姿勢を貫いた。三谷氏は安倍晋三内閣がデフレ脱却と経済活性化を掲げる中で14年10月末に資産構成を抜本的に見直し、リスク資産増にかじを切った。 クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは、足元では株安・円高の「逆風が吹いているが、日銀のマイナス金利政策で国債利回りはマイナス圏だ。年金制度を支える意味でも、リスクを取って絶対リターンを高める方向性は間違っていない」と指摘。「巨大な金融機関の運用責任者だった高橋氏には政府サイドの期待感も強いとみられ、オルタナティブの拡大など運用の進化、深化の好機だ」と述べた。 国民の意識という制約 GPIFは、名目賃金上昇率を1.7ポイント上回る運用利回りを長期的に確保する責務を負う。現在の資産構成の目標値は、株式と債券が半々で、国内資産6割・外貨建て資産4割という分散型だ。価格変動を示す標準偏差は全体で12.8%と、全額を国内債で運用する場合の3倍弱となっている。 高橋氏は会見で「長期の利益を長期の投資で取るには、組織体も長期の運用に耐えられないといけない。ほとんどの運用機関は一発当てようと短期的な利益を追っている」と指摘。優秀な人材で2−3年だけ集中的に儲けるのは可能だが「10−20年にわたってリターンを得るには相応の人間力と組織力」が必要だと述べ、GPIFの運用は「そこを目指さないと展望が開けない」と語った。 TOPIXは安倍内閣が発足した12年12月から15年8月に付けた約8年ぶり高値まで2倍超の上昇を記録した。その後は上値の重い展開となり、今年2月には14年10月以来の安値を付けている。円相場は1ドル=84円台から15年6月に13年ぶり安値125円86銭まで下げて以降、基調を徐々に変え、3月には14年10月末以来の円高値を付けた。昨年8−9月と今年初から生じた世界的な市場の混乱は、GPIFが保有する日本株と外貨建て資産の評価額を急減させた。 GPIFの運用資産に年金特会の約2.1兆円を含めた積立金全体に占める国内債の割合は昨年末に約38%、国内株は23%、外国債券は14%、外国株式は23%だった。農林中金の昨年9月末時点の市場運用資産は、23%が国内債、44%が外債、3%が国内株、2%が外株。通貨別ではドル建てが57%、ユーロが14%、円資産は28%だ。A格以上の資産が9割超を占めた。 高橋氏は会見で、農林中金では運用の自由度は高かったが、1年程度の預金という負債側のデュレーションに対応する流動性の確保が必要だったため、実質的には銀行勘定で自由な投資はできないと説明。一方、GPIFでは負債側は短期的な流動性を気にする必要はないが、運用多様化に対する国民の意識が事実上の制約だと指摘。「運用には必ず制約がある」としながらも、「国民から信頼される組織にならなくてはならない」と話した。 情報開示が重要 米サブプライム(信用力が低い個人向け)住宅ローン問題の表面化で市場の動揺が始まっていた07年10月。農林中金は米欧の資産担保証券(ABS)の押し目買いで残高を過去最高の7兆円超まで積み上げる考えを示すなど、リスク資産の積極運用で臨んでいた。 しかし、リーマンショックなどを背景に有価証券評価損は08年9月末に1.57兆円まで膨らみ、09年3月期の連結純損益は5721億円の赤字に転落。1.9兆円の資本増強に追い込まれ、当時の理事長と運用担当の専務理事は責任を取って退任した。09−12年度の中期計画では慎重な財務運営に方針転換した。 14年度は連結純利益を4113億円計上。国債を含めた国内外の高格付け債での運用が効を奏した。リスク加重資産額に対する中核的自己資本(Tier1)比率は17.6%で、ブルームバーグ・マーケッツ誌の「世界の最強銀行」年次ランキングでは、質の高い資本の項目で5位となった。 高橋氏はこの間、増資や運用見直しなどに手腕を発揮。14年に2位に選ばれた際のインタビューでは、農林中金は金融危機を経験したことで、市場環境にとても敏感になったと説明。自己資本比率は世界でトップクラスの銀行勢をやや上回る水準に維持したいと語った。 1日の会見では、当時の運用見直しは預金の状況などを考慮して「一番良い方法でアセットミックスを考えて投資しただけだ」と謙遜する一方、それまでは農協や漁協の組合員に「運用内容をきちんと知らせていなかった」と指摘。何より一番大きいのは「組合員との信頼関係だ。信頼関係を支えるのは情報開示だ」と述べた。 「本の匂いが好き」 高橋氏は就任会見で、自身の趣味を「本屋に行くこと、本の匂いが好きだ」と述べ、店内の販促物や本の並べ方など個性豊かな書店を訪れる時が「至福の幸せ」だと語った。理事長就任で難しくなるかもしれないが「なるべくそういう時間を作りたい」と言う。3月7日付の日刊工業新聞によると、本好きになったきっかけは著名な哲学者カール・ポパー氏の「開かれた社会とその敵」で、バートランド・ラッセルなど哲学関連の本を多く読んだ。 著名投資家ジョージ・ソロス氏は著作で、言論・思想の自由や多様性、民主主義を肯定したポパー氏の「開かれた社会とその敵」を読んで、雷に打たれたような衝撃を受け、たちまち信奉者になったと告白。科学的法則の真性は完全には証明され得ず、人間は間違える可能性があると説くポパー氏の影響を受け、金融市場での成功をもたらした「再帰性」理論に至ったと言う。 日銀の黒田総裁も科学的な方法論を探求したポパー氏の影響を受けた一人だ。13年5月開催の国際コンファランスでの挨拶には、真理の探求には「試行錯誤の方法より合理的な方法はない」というポパー氏の言葉を引用。「経済学は危機の度に試行錯誤を繰り返し、新しい知見を蓄積してきた」と指摘し、国際金融システムの再建という大変な課題に「これまで繰り返してきた試行錯誤は必ずや重要な示唆を与える」と述べた。 ソロス氏や黒田総裁らと共通する哲学者から影響を受けた高橋氏は、公的年金制度の持続可能性をも左右するGPIFの資産運用で結果を求められる。1日の会見では、「年金加入者の利益に少しでも資するように受託者として頑張りたい」と言い、「短期的にはいろいろと言われるが、最終的に安全で効率的な運用をしていくことが国民の納得につながる」と語った。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-04/O527II6KLVR601
新興市場株、3月の大幅高で主なテクニカルの壁を突破−チャート Phil Kuntz 2016年4月4日 15:14 JST 3月の新興市場株は23営業日のうち17日で上昇し、指標のMSCI新興市場指数は月間ベースで2009年以来の大幅高となった。3月の終了直前には同指数が200日移動平均と、昨年高値に比べて今年の安値から38.2%回復したことを示すフィボナッチの2つのテクニカル面での主な壁を破った。だが、1日の下げで同指数はフィボナッチ水準を再び割り込んでおり、次のターゲットである1年平均を試すにはこの水準をあらためて上抜ける必要がある。 原題:Emerging-Markets Stocks’ Historic Rally Breaches Barriers: Chart(抜粋) https://assets.bwbx.io/images/ixgijfuZ53bs/v2/-1x-1.png
人気の高いVIX連動証券の取引、奏功せず−過去最大2200億円が流入 Joseph Ciolli 2016年4月4日 14:24 JST 投資家はここ6週間でVIX連動上場投資証券に資金を投入 同証券はこの期間に価値の半分を失った
https://assets.bwbx.io/images/iNydm05hCCfE/v2/-1x-1.png 株式市場で最も人気の高い証券の一角であるS&P500種株価指数のボラティリティ(変動性)連動上場投資証券(ETN)の取引は、大きく当てが外れる結果となった。 投資家はここ6週間で、シカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティ指数(VIX)に連動するETNに過去最大20億ドル(約2200億円)を投入。同ETNは株式のように売買され、相場変動が高まった時に上昇する。米株の反発を背景に、同ETNはこの期間に価値の半分を失った。 1日の売買高が通常アップル株やマイクロソフト株の2倍に上る同ETNの取引で、弱気派は繰り返し打撃を受けてきたが、3月ほど大規模に膨らむことは珍しい。市場のタイミングを計ることに伴う危険性を証明しているほか、ここ2年間の米株の回復力が最も熟練したトレーダーの不意を突いたことを示している。 インタラクティブ・ブローカーズ・グループのマーケットメーキング部門ティンバー・ヒルの株式リスクマネジャー、スティーブ・ソスニック氏は、「こうしたコンセンサス取引が特に逆張りの場合、奏功しないことが多い」と指摘した。 米株の強気相場が続く中、同ETNの取引は大幅に増えている。同ETNで最大の「iパスS&P500VIX短期先物ETN」の年初来の1日当たり平均売買高は8000万口余りと、昨年の5700万口から増加。同ETNの取引開始から2年後の2011年時点、1日当たりの平均売買高は200万口未満だった。 原題:Smart Money Flunks Out as $2 Billion of VIX Bets Come Asunder(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-04/O53EM86JTSES01
外資系金融:日本で働く従業員の6割が今年給与アップへ−調査 日向貴彦 2016年4月4日 13:16 JST 更新日時 2016年4月4日 17:33 JST
日本で業務を営む外資系金融機関の従業員の約6割で、2016年の給与(賞与を除く)が昨年より増える見通しであることが、アイルランドの人材コンサルティング会社モーガンマッキンリーが実施した調査で分かった。 調査によると、証券、銀行、運用会社など40社を超える外資系金融機関の東京オフィスで勤務する375人のうち、ボーナス以外の年間給与が前年より増えると回答した人は58%で昨年の42%から16ポイント増加した。昇給率は1−10%が全体の63%を占め、10−20%は約2割だった。 今回の調査結果は、自社の人材が競合他社や他の産業に流出することを防ぎたい外国金融機関の状況を示している。国内のメガバンクグループなどは外資系証券から積極的な起用を続けているが、傘下の主な銀行などでは4月からの給与ベースアップは見送られた。 モーガンマッキンリーで日本業務を統括するライオネル・キィデァゼス氏は、ブルームバーグの取材に「多くの外資系が優秀な人材を保持する必要性から報酬体系のベース部分を向上させる必要性があったのだろう」と分析。人材マーケットでは「若手を中心にプロフェッショナルたちが他の産業に転身する傾向が強まっており、銀行などはこれまで以上に競争にさらされるであろう」と語った。 金融から事業会社へ 昨年11月にはメリルリンチ日本証券のマネジングディレクターで調査部長だった片山栄一アナリストがパナソニックに役員として起用された。同氏はことし1月1日に新設された事業開発部でM&A(企業の合併・買収)戦略の構築や実行の支援業務を率いる。 調査ではまた、こうした給与増加見通しの中、日本経済に対する見方は明るくないことも判明した。回答者の47%が「中立」と答え、「悲観的」と「かなり悲観的」の合計は37%に上った。中国の減速など世界経済の先行き、不安定な市場環境と円高傾向が強まっていくことを理由に挙げている。 モーガンマッキンリーは日本を拠点とする外国金融機関のバンカー、セールス、トレーダー、アナリスト、ファンドマネジャー、法務、リスク管理者などを対象に1月20日から3月11日にかけて調査を実施した。 三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの国内メガバンク傘下の証券会社などでは外資からの中途採用を積極化させている。 英文記事:More Bankers See Pay Rising This Year at Foreign Firms in Japan https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-04/O535XD6S972801
World | 2016年 04月 4日 08:58 JST 関連トピックス: トップニュース トランプ氏が米国の深刻な景気後退を予想、専門家は懐疑的
[ワシントン 3日 ロイター] - 米大統領選の共和党候補指名争いで首位を走る不動産王ドナルド・トランプ氏が示した、米経済が「非常に深刻なリセッション(景気後退)」の瀬戸際にあるとの見立てに対し、エコノミストから懐疑的な意見が寄せられている。 2日付の米紙ワシントン・ポストのインタビュー記事によると、トランプ氏は、高い失業率と過大評価された株式市場の組み合わせは新たな景気後退に向かう土台を築いたとし、「米経済はバブル状態にある」と指摘。実質失業率は20%を超えているとの見方を示した。 政府統計によると、米国の失業率は2009年10月の10%をピークに現在5%前後まで低下している。ただ、働く意思がありながら職探しを断念した人などを含めたより広義の失業率は9.8%に達している。 ウニクレディト・リサーチ(ニューヨーク)の米国担当チーフエコノミスト、ハルム・バンドホルツ氏はトランプ氏の発言を受け、「米経済は少しもリセッションに向かっておらず、失業率は20%に達していない」と反論した。 一方、株式市場が過大評価されている可能性については一部のエコノミストが賛同したものの、米国を震源とするリセッションを予想する向きはほとんどなかった。 カリフォルニア州立大学のSung Won Sohn教授(経済学)は「深刻なリセッションが起こる確率は10%以下と非常に低い」とし、「もし起きる場合は、中国や欧州などの海外情勢が原因だろう」と語った。 民主党全国委員会はトランプ氏の発言を「米経済を過小評価している」と批判。 共和党全国委員会のプリーバス委員長は、3日のテレビ番組でトランプ氏の発言について問われると、「(米経済への)懸念で怒りを感じているときは後悔するような発言もある」と擁護。「各候補は異なる方法でメッセージを伝えるだろう」と語った。 委員長はまた、共和党指導部が大統領候補の指名争いにまだ名乗りを上げていない人物を支援してトランプ氏の指名獲得を阻むとの見方を否定した。 http://jp.reuters.com/article/usa-election-idJPKCN0X00YT
好調な金相場、そろそろ要注意 金相場は1-3月期に16.5%上昇した
By STEVEN RUSSOLILLO 2016 年 4 月 4 日 15:18 JST 金相場の投資家は、楽しめるうちに楽しんでおいた方が良い。好調な時期もおそらく終わりが訪れるだろう。 1-3月期に金相場は16.5%も上昇し、先週は強気な見出しが満載だった。CNBCは、四半期としては30年ぶりの上昇相場を受け、まだ上値余地があると断言した。ブルームバーグは、強気筋ですら金相場の急騰には熱狂していると伝えた。そしてウォール・ストリート・ジャーナルは、金相場に対する強気予想が増えていると報じた。 これほど誰もが金相場に熱くなっているということは、遅かれ早かれ金がその輝きを失うことを示唆している。 金相場は混乱期の安全逃避先やインフレに対するヘッジとして強くなることが多い。強気派は金が最近いつも以上に輝きを増している証拠として、世界各地でみられるマイナス金利を指摘している。 問題はこれらの論拠が、金の本源的価値に関する根本的な分析を勘案していない点にある。金には実際、本源的な価値はない。株式や債券、不動産など金融資産の多くと異なり、金は所得を生み出さない。金に価値をつけることは、事実上不可能なのだ。 少なくとも短期的には、投資家心理が相場を左右しやすい。その投資家心理は行き過ぎているように思われる。TD証券のアナリスト、マイク・ドラゴシッツ氏は、金の上場投信(ETF)に対する強気な資金流入や投機的買い持ち高形成は極端な水準に達していると指摘している。過去の例からみて、これは相場反転の兆候だ。金相場はいまや「目先調整のリスク」に直面していると言う。 四半期毎の金相場騰落率 ENLARGE 四半期毎の金相場騰落率 PHOTO: THE WALL STREET JOURNAL また、今年初めに金相場を押し上げた混乱期もほぼ終わった。1-3月期の金相場は、年初の6週間で大半の上げを演じた。当時、中国と世界経済に対する懸念が大きく高まっていた。 その後、金融市場は静まり、経済指標は好転し、4月1日に発表された楽観的な中国製造業景況調査をはじめとして海外動向も落ち着いた。金相場は、ほぼこうした改善傾向の結果として、3月の高値からすでに約4%下落している。 1-3月期の強気相場においてでさえも、金相場はまだ2011年につけた1オンス=1900ドル弱の高値よりも約35%低い。 もちろん、市場がまた混乱する可能性は排除できない。それさえなければ、金の強気相場は最終段階だ。過去5年間の大半の事例が示す通り、相場の熱が冷めるとあまりうれしい状況にはならないだろう。 関連記事 FRBの量的緩和第4弾、市場は頼りにしているか https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NJ213_TAPE04_M_20160401163029.jpg ロシアの金購入ラッシュ、ルーブル下落時の損失補う−金価格上昇で Andrey Biryukov 2016年4月4日 10:37 JST ロシア中銀は1年1カ月にわたり金購入、外貨・金準備高が回復 ロシア中銀、昨年7月に外貨購入を休止 ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は8カ月にわたって外貨購入を休止しているが、再開を急ぐ様子はない。金相場が四半期ベースでは1986年以来最大の上昇を示し、ロシア中銀は1年余り前に通貨ルーブルを救済するために出した損失のほとんどを取り戻してきている。 ルーブルが今年に入って9%上昇したことからロシア中銀が外貨購入を再開するとの見方が強まっているものの、金融当局者らは代わりに1年1カ月にわたって金を購入してきており、ロシアの外貨・金準備高は2015年1月以来初めて3800億ドル(約42兆3000億円)相当を上回った。ブルームバーグがエコノミストを対象に実施した調査によれば、ロシア中銀はルーブルがドルに対して12%余り上昇し1ドル=60ルーブルになるまで外貨購入を行わないと予想されている。 産金業界団体ワールド・ゴールド・ カウンシル(WGC)によると、ロシアなどの中銀は引き続き外貨準備の多様化を最優先事項の一つとしており、15年7−12月(下期)に金準備の積み増しを「再び活発」に実施、購入を加速させた。金価格が今年1−3月に16%上昇したことで、ロシア中銀の外貨・金準備高は目標である5000億ドル相当に近づいている。 原題:Gold Rush by Russia Makes Up for Billions Lost in Currency Rout(抜粋) https://assets.bwbx.io/images/is5hCdxI26yM/v2/-1x-1.png https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-04/O5320P6KLVR401 225兆円超えるメガファンド、サウジ脱石油戦略の突破口に−副皇太子 John Micklethwait、Glen Carey、Alaa Shahine、Matthew Martin 2016年4月4日 06:05 JST 最終的にはアップルなどの時価総額上位企業を複数買える規模に アラムコIPOは2018年実施、早ければ17年に前倒しも
サウジアラビアは石油の時代終幕に備え、世界最大の政府系ファンド(SWF)を経済の中心に据えることで原油依存からの脱却を図る。 ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(30)は5時間に及んだブルームバーグとのインタビューで、最終的に2兆ドル(約225兆円)を超える規模となるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)を原油依存脱却の糸口にする構想を語った。この戦略の一環として、国営石油のサウジアラムコ持ち株会社の株式を売却し、同社を石油大手から複合的工業企業に変身させる考えを説明した。新規株式公開(IPO)は早ければ2017年に実施、現在のところは5%未満の株式売却を計画しているという。 Mohammed Bin Salman interviewed on March 30. Mohammed Bin Salman interviewed on March 30. Source: Saudi Arabia’s Royal Court 「アラムコIPOとPIFへの株式移管によって、サウジの歳入の源は厳密には原油から投資に変わる」と副皇太子は述べた。リヤドの王宮で行われたインタビューは3月31日の午前4時に終わった。「今は投資先の多様化という選択肢が残されている。従って20年後には、サウジは石油に大きく依存する経済ではなくなる」と述べた。 サウジで石油が発見されてもうすぐ80年。サルマン国王の息子は世界最大の原油輸出国を次の時代に適した経済国家に変身させようとしている。この戦略が形になるにつれ、数十年にわたる政府からの援助に慣れている保守派層はその変化のスピードに衝撃を受けるかもしれない。 アラムコの株式売却は早くて17年、遅くとも18年に実施する計画だと副皇太子は述べた。PIFはいずれ経済における主役を担うことになり、国内外で資金を投じる方針だ。その規模は株式時価総額で世界トップのアップルとグーグルの親会社アルファベット、マイクロソフト、バークシャー・ハサウェイを買えるほどの大きさになる。 PIF理事会のヤシル・アルルマヤン事務局長によれば、同ファンドは2020年までに国外投資比率を資金の50%に引き上げる計画。現在は5%だという。 原題:Saudi Arabia Plans $2 Trillion Megafund to Dwarf All Its Rivals(抜粋) https://assets.bwbx.io/images/iEC6b._AiukU/v3/-1x-1.png https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-03/O4YPM26K50XX01 中国外為当局系ファンド、国内金融株を大量保有 中国の株価買い支えナショナルチームに新メンバーか 証券会社の株価ボードのそばでカードゲームに興じる投資家たち(3月28日)
By YIFAN XIE AND MIA LAMAR 2016 年 4 月 4 日 09:33 JST 【上海】中国の外貨管理当局が所有するファンドが同国の大手金融機関数社の株式を取得していたことが分かった。中国政府は国の機関を動員して株式市場を下支えしているが、この「ナショナルチーム」に新たなメンバーが加わったのではないかとの臆測が浮上している。 大手金融機関が最近発表した通期決算や株主変更の報告を見ると、梧桐樹投資平台(Wutongshu Investment Platform Co.)というほぼ無名の企業が複数の銀行や証券会社の主要株主一覧に繰り返し登場している。梧桐樹投資は中国国家外為管理局(SAFE)の子会社だ。 金融機関の年次報告書や当局への提出書類などによると、梧桐樹投資は2015年第4四半期に中国銀行、上海浦東発展銀行、交通銀行、中国工商銀行(ICBC)などの金融機関の株式を大量に取得した。ICBCは資産規模で中国最大の銀行。 国有の上海証券報の報道では、梧桐樹投資と子会社2社は第4四半期に270億元(約4670億円)を超える株式を取得した。こうした多額の投資を行っていることを考えると、梧桐樹投資がナショナルチームであってもおかしくはない。 SAFEは3兆ドルを超える外貨準備を管理しており、中央銀行である中国人民銀行の傘下に置かれている。SAFEにファクスでコメントを要請したが、回答はなかった。梧桐樹投資とは連絡が取れなかった。 ナショナルチームの詳細は不明だが、主力メンバーは中国証券監督管理委員会(CSRC)所有の金融機関、中国証券金融(CSFC)と、政府系ファンドの国内投資部門の中央匯金投資公司。米ゴールドマン・サックス・グループの推計によると、この2社は政府の株価支援策の一環として、昨年6月から11月までの間に合計で1兆8000億元を投じて株式を取得した。 投資家や証券会社によると、このところ、ナショナルチームの出動は減っているようだ。ただ、CSRC主席に就任したばかりの劉士余氏は先月の初会見で、政府は必要に応じて介入を継続すると述べている。 SAFE が株式市場に投資したことをめぐっては批判の声も出ている。米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは顧客向けのリポートでSAFE、中央匯金、中国証券金融について「経済や金融システムを運営し、市場を規制する3つの主要政府機関が文字通り、市場と直接の利害関係を有している」と指摘した。中央匯金は中国財政省と密接な関係にある。「多くの人がこれを市場の支援材料とみるかもしれないが、『審判』が『選手』になることを許すのは危険で、長期的には市場に損害を与える可能性がある」。 登記によると、梧桐樹投資は2014年11月に設立され、登記資本金の1億元はSAFEが拠出した。トップは人民銀行出身で国際通貨基金(IMF)の理事を務めた経歴もある何建雄氏。アジアのインフラ整備を支援する目的で2014年末に設立された中国の絲路基金(シルクロード基金)のウェブサイトによると、SAFEは梧桐樹投資を使って65億ドルを同基金に投資した。梧桐樹投資はウェブサイトを開設しておらず、電話番号も公表していない。 梧桐樹投資の英文名称もはっきりしない。交通銀行、シルクロード基金、ICBC、中国銀行の英語版の決算発表やウェブサイトには梧桐樹投資がそれぞれ、Wutongshu Investment Platform Co.、Chinese Parasol Investment Holding Company Ltd.、Sycamore Investment Platform Co.、Buttonwood Investment Platform Ltd.として掲載されている。 交通銀行が先月29日に発表した通期決算によると、梧桐樹投資は昨年末の時点で同銀の株式のおよそ1.1%を保有し、第8位の株主になっていた。 IMFが2013年に公表した何氏の経歴によると、同氏は1990年代初めから人民銀に勤務、金融自由化や人民元の国際化に向けた取り組みの最前線にいた。 関連記事 中国の規制改革促す市場の動揺 中国の金融行政、改革の始まり 【社説】中国株安、市場改革への歓迎すべき兆候 中国株安【特集】 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NJ001_0401ch_M_20160401105112.jpg
モルガンSもインフレ警戒に加わる−FOMCは「確信的にハト派」 Wes Goodman 2016年4月4日 19:38 JST
米モルガン・スタンレーは米国インフレ連動債(TIPS)が有望との考えを示した。ブラックロックとパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)、ジャナス・キャピタル・グループのビル・グロース氏に続いてインフレを警告した。 モルガン・スタンレーは、米連邦公開市場委員会(FOMC)は成長加速を目指し「確信的にハト派」だと指摘した。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は先週、利上げに慎重姿勢が必要との考えを示した。 米30年債と同年限のTIPSの利回り格差は1.8ポイントと2月の1.4ポイントから拡大し、インフレ期待の高まりを示している。 世界金利戦略責任者、マシュー・ホーンバック氏(ニューヨーク在勤)らモルガン・スタンレーのアナリストは1日のリポートで「30年物TIPSのロングを引き続き選好している」とし、「イエレン議長は現在の政策姿勢が潜在成長率より幾分速いペースの成長と労働市場の一段の改善に矛盾しないことを示唆した」と指摘した。 原題:Morgan Stanley Favors Linkers as Fed Remains ‘Decidedly Dovish’(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-04/O53UX66S972O01 米経済、雇用堅調で減速懸念を一蹴 米雇用統計では3月も就業者数の健全な伸びが明らかになった(写真は1月、ワシントンで開かれた就職説明会) PHOTO: REUTERS By ANNA LOUIE SUSSMAN 2016 年 4 月 4 日 13:12 JST 米国経済は着実な雇用の伸びや賃金の上昇、底堅い個人消費を追い風に、世界経済の減速懸念を引き続き受け流している。 多数の不安材料を抱えて年明けを迎えた米企業や消費者は、ここ数カ月にわたり金融市場や海外経済にまん延した懸念の多くを克服しているようだ。 米労働省が1日発表した3月の雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比21万5000人の増加となり、国内中心の部門のほぼ全てで伸びが見られた。別の家計調査から算出した3月の失業率は5.0%で、前月からわずかに上昇したが、労働力人口の増加が主な背景だった。 こうした雇用の伸びは、小売りや住宅、自動車などへの消費支出を原動力とする経済部門が、海外からの逆風をよそに米国の安定を保っていることを物語っている。 アムハースト・ピアポント証券のチーフエコノミスト、スティーブン・スタンレー氏は「消費者と向き合っている企業はいま、状況にかなり満足しているだろう」と指摘した。過去1年の不安定な経済環境をよそに、「雇用は間違いなく底堅い」という。 ただ、ここ数年の米経済は後退に先立ち、停滞から抜け出す兆しを繰り返し示している。そして多くの投資家やエコノミスト、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者も警戒を崩していない。先週だけでも数社が1-3月期の米国内総生産(GDP)成長率予想を下方修正した。 前週末1日はダウ工業株30種平均が前日比0.6%高となり、10年物米国債は利回りが1.793%へやや上昇(価格は下落)した。ドルはユーロと円に対して下落した。 ENLARGE 3月の米非農業部門就業者数と平均時給、部門別増減 雇用の着実な伸びが労働市場への参入を促し、3月の労働参加率は63.0%と2年ぶりの高水準に達した。この比率は昨年9月、1977年以来の低水準にあたる62.4%で底入れした。 賃金の伸びが比較的緩やかであることから、労働市場にはインフレの急騰を招かずに労働者を呼び込む余地がまだかなりあることがうかがえる。民間部門の平均時給は2月に低下したが、3月は前月比0.3%上昇して25.43ドルとなった。前年同月比では2.3%の上昇となったが、09年以来の大幅な伸びを記録した昨年12月の2.6%は下回った。 緩やかだが着実な賃金の伸びが、FRBに柔軟性を与えている。世界の経済成長や市場の混乱をめぐる懸念を背景に、FRBは今年に入って利上げを見送っている。FRBのイエレン議長は3月29日の講演で、利上げを「慎重に」進めると強調し、中国など海外要因がもたらす「継続的なリスク」に言及した。 FRBは、総合インフレ率を目標の2%に近づけられるような賃金上昇の兆しを待ち構えている。最新の統計は、FRBに4月の連邦公開市場委員会(FOMC)での行動を促せるほど強くない可能性が高いが、6月利上げの可能性はまだ残っている。 スタンレー氏は「賃金の持ち直しは今後さらに進むとみられるが、FRBにとっては前年比の伸びが新たな局面に突入しない限り、期待を高める正当な理由にはならないだろう」と話した。 それでも、労働市場の改善が続いていることは、海外経済の減速をよそに、米経済が底堅いことを強調している。 そして最も大きく打撃を受けた経済部門でも、改善の兆候が浮上している。米サプライ管理協会(ISM)が1日発表した3月の製造業景況指数は51.8となり、昨年夏以降で初めて業況の拡大を示した。新規受注、輸出、生産指数が前月から上昇した。 だが、こうした安定はすぐには雇用の伸びに転じないかもしれない。労働省の発表によると、製造業の就業者数は2月の前月比1万8000人減に続き、3月も同2万9000人減少した。 JPモルガン・チェースのエコノミスト、ジェシー・エジャートン氏は、原油価格の安定とドル安が製造業雇用の持続的な改善につながるには、あと数カ月かかるかもしれないと指摘した。 「ドルがここ数カ月のように大きく下落すれば、海外からの受注の一部は戻り始めるはずだ」と言う。 それまでは、小売りや建設、ヘルスケアなど力強い雇用の伸びが続いている部門に頼らざるを得ないだろう。3月は小売業の就業者数が4万8000人増となり、12カ月間の伸びが37万8000人に達した。低金利やガソリン安のおかげで自動車販売が高水準にとどまる中、自動車販売店の雇用が5000人増えた。 低金利は住宅な金利に敏感な部門にも追い風となり、3月は建設業の就業者数が3万7000人増加した。 関連記事 ? 米雇用統計は堅調、緩やかな利上げ路線変わらず ? 3月の米雇用統計、エコノミストはこうみる ? 米3月の非農業部門就業者数は21.5万人増、予想上回る https://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CJ657_JOBSea_16U_20160401145113.jpg FRB利上げ判断、雇用統計堅調で様子見継続が可能に 米国の労働参加率は3月に2年ぶり高水準に達した(写真はマイアミでの就職説明会)
By JUSTIN LAHART 2016 年 4 月 4 日 12:23 JST 米国の雇用市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げしても問題ないと感じるほど堅調だ。ただ、こうした最近の堅調は、FRBが時間稼ぎを続けても支障はないと十分すぎるほど安心感を抱く結果にもなりそうだ。 このため投資家は、FRBの年内利上げは多くても2回にとどまりそうだとの見方に自信を深めるはずだ。 3月も雇用の伸びは力強かった。米労働省が1日発表した3月の雇用統計によると、非農業部門就業者数は季節調整済みで前月比21万5000人増となった。これで就業者数は前年同月から280万人増えたことになる。3月の失業率は5%と、2月の4.9%からやや上昇した。ただこれは、職探しをする人が増え、失業率の計算式の分母(労働力人口)を押し上げたという良い理由からだ。 事実、労働参加率が62.9%から63%に上昇し、2年ぶりの高さとなった。これは雇用市場の強さがより多くの人々を労働力人口のプールに引き寄せていることや、失業率から示唆されるほど雇用市場は引き締まっていない可能性を裏付けている。FRBのイエレン議長は以前からこうした見方を示しており、足元では経済統計によるお墨付きを得た格好となっている。 労働参加率にどれだけの上昇余地が残っているかは定かでない。参加率は米国がリセッション(景気後退)入りした2007年12月の66%から低下しているが、少なくともその一部は、ベビーブーム世代の退職年齢到達や若年層の学修期間長期化といった構造変化が関連している。ただし、リセッション後に就職できる見込みは薄いと判断して職探しをあきらめた人が多かった、という循環的な影響も関連している。 FRBは2大責務の一つが「雇用の最大化」であるため、労働参加率が低下した構造的要因と循環的要因の境界線がどこにあるかを正確に突き止めることに関心が高い。インフレ率が2%の目標を依然として大きく下回り、「物価安定」というもう一つの責務が未達に終わっている状況では、なおさらだろう。 米就業者数の2007年以降の累計増減数(単位:百万人) ENLARGE 米就業者数の2007年以降の累計増減数(単位:百万人) PHOTO: THE WALL STREET JOURNAL ただこれは、政策金利が0.25%?0.5%と低いため、もう少し政策を引き締めても雇用市場は耐えられるとFRBは考えている、という話ではない。FRBが3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置き、4月のFOMCでも利上げを見送るとみられる理由は、海外動向の危うさを警戒しているからだ。 イエレン議長とその側近らは、より緩和的な政策(新たな資産買い入れなど)を講じるよりも利上げの方がずっと簡単だとみている節がある。だからこそ議長らは、政策金利をゆっくりと引き上げることで後に大幅な利上げを余儀なくされるリスクの方が、利上げでミスを犯すよりも危険度は小さいとみているのだ。 3月の雇用統計には、こうした評価が変わる要素は何もなかった。 関連記事 米雇用統計は堅調、緩やかな利上げ路線変わらず 3月の米雇用統計、エコノミストはこうみる 米3月の非農業部門就業者数は21.5万人増、予想上回る 米労働参加率の上昇、FRBにとって最良の筋書き 米FRB特集 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NJ005_JobsCh_M_20160401110015.jpg News | 2016年 04月 4日 11:20 JST 関連トピックス: トップニュース 3月米雇用統計:識者はこうみる [4日 ロイター] - 米労働省が発表した3月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が21万5000人増えた。時間当たり賃金もプラスに転じた。ただ、失業率は5.0%と、8年ぶりの低水準だった前月の4.9%から悪化した。
市場関係者のコメントは以下の通り。 ●ドル高材料の「賞味期限」短い <三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジスト、植野大作氏> 1日発表の米3月雇用統計は総じて悪い内容ではなかった。非農業部門雇用者数の増加ペースが予想を上回り、時間当たり賃金も増加した。失業率はやや悪化したものの、職探しを始めた人が増えたことが要因とみられる。 雇用統計が悪くなかったにもかかわらずドル/円が下がってしまったのは、長期トレンドが右肩下がりになっているからだろう。この状況では、本来ドル買いとなるはずの材料も「賞味期限」が短くなり、戻り売りに押されやすい。加えて、米大統領選挙がらみの不透明感も、しばらくドル/円の上値を抑える要因になりそうだ。 一方、下値もしっかりしている。米国経済自体は悪くなく、日本の経済政策に対する期待もある。一方的に円高に振れる展開にはなりにくいのではないか。この1カ月のドルは109─113.50円のレンジを想定している。 ●緊張感が継続、企業収益への円高影響注視 <パインブリッジ・インベストメンツ執行役員、前野達志氏> 米連邦準備理事会(FRB)の金融政策の先行きについては、判断しがたい状況がもうしばらく続きそうだ。3月の非農業部門雇用者数は20万人を超える増加となったが、時間当たり賃金の部分はあまり変わっていない。雇用が底堅いという点は評価されている気がするが、マーケットは迷っているのだろう。原油先物相場の下落も、円高の要因なのかもしれない。 円高となれば、日本の企業収益に対する影響を注視しなければならない状況が続く。先週末発表の日銀短観も、ある程度悪いと事前に分かっていたといえども、日本株の下落につながった。 ただ国内では、政策期待が下値を支える要因となる。日本株に対しては、為替や金融政策に依存する形となり、緊張感の高い相場が続くかもしれないが、米経済に利上げを乗り越えるだけの底堅さが兼ね備えられれば、ドル高/円安が進むだろう。今回の米雇用統計と日銀短観で日本株の見通しを変えたかというと、そういうわけでもない。ドル/円は115円─118円程度への円安進行を見込んでおり、年末にかけて日経平均は1万9000円程度まで上昇するとみている。 ●米経済は堅調、6月利上げの公算 <レノックス・ウエルスアドバイザーズ(ニューヨーク)の最高投資責任者(CIO)、デビッド・カーター氏> 米経済がそこそこに力強く推移していることが示された。企業利益の押し上げにつながったり、株式のようなリスク資産が上昇したりする可能性がある。 雇用者数が増加したことで、米連邦準備理事会(FRB)は疑いなく年内に利上げを実施する。6月の公算が大きい。 失業率は上昇したが、労働市場に参入する人が増えたというプラスの要因が背景にある。 ●労働市場はぜい弱、利上げ圧力緩和 <ウェルズ・ファーゴ・ファンズ(ウィスコンシン州)の首席ポートフォリオ・ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブセン氏> 強弱混交の結果となった。非農業部門雇用者数は非常に良かった。労働参加率も良好だった。一方、耐久財製造部門の雇用者数のほか、製造業労働時間などは思わしくなかった。 こうしたことは労働市場がぜい弱であることを示しており、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の懸念は続くだろう。 FRBはドルが急上昇し製造業部門がさらに痛手を受けるような事態は避けたいため、時期尚早な動きには大きなリスクが伴う。 失業率がやや上昇したことでFRBの利上げに対する圧力は緩和すると見ている。 ●4月利上げの公算小さく、下期に勢い鈍化も <ナショナル・アソシエーション・オブ・フェデラル・クレジット・ユニオンズ(NAFCU)の首席エコノミスト、カーティス・ロング氏> また堅調な内容となった。人々が労働市場に再参入するトレンドが続いている。連邦準備理事会(FRB)に関する限り、今回の統計はなんら変更を強いるものではない。4月利上げの公算は非常に小さい。年内2回以上の利上げが行われる公算は相当小さい。石油部門など一部産業が幾分弱含んでいる。製造業も引き続き悪い数字を示した。全分野がエンジンを全開させているとは言えない。完全雇用に近づきつつあるが、下期に幾分鈍化する可能性もある。 *内容を追加して再送します。 http://jp.reuters.com/article/instant-view-mar-us-jobless-idJPKCN0WY4VO?sp=true ドルの先安観強まる−新興国には追い風か ワシントンのFRB本部 ENLARGE ワシントンのFRB本部 PHOTO: KEVIN LAMARQUE/REUTERS By IRA IOSEBASHVILI 2016 年 4 月 4 日 11:41 JST 投資家らは、今年にかけてアナリストがほぼ予想していなかった傾向、つまりドル安を見据えている。 米商品先物取引委員会(CFTC)の統計によると、ヘッジファンドなど投機筋のドル買越額は2014年5月以来の低水準となっている。 主要6通貨に対するドル相場の指標であるICEドル指数は1-3月期に4.2%低下し、四半期ベースで2010年以降最低のパフォーマンスとなった。主要16通貨に対するドルの価値を示すウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のドル指数は1日、昨年6月以来の最低を記録した。 ドルがさらに下落すれば、米金融業界の大方の予想をすでに超えている株式や高リスク債券、国際商品(コモディティー)相場の反発はさらに続く可能性がある。ダウ工業株30種平均は今年最初の6週間の大幅な下げを巻き戻し、年初来で2.1%高となっている。 今年にかけては、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げと米長期金利の上昇が、金利差取引(米債券利回りの上昇で利益を得られる、ドル買い・海外資産売り)の復活を促すと広く予想されていた。 だが、利回りは大きく低下し、FRBは年内の利上げ回数予想を引き下げており、株価にとって好材料となる逆転が起きている。 サンライズ・キャピタル・パートナーズのクリストファー・スタントン氏は、ドル安とFRBのハト派姿勢は「新興国市場や商品相場、リスク資産にとって望ましい」と述べた。同氏はユーロとオーストラリアドルを押し目で買い、日和見的に米ドルを売り持ちにしているという。 14年半ばから15年半ばにかけてのドル高は、近年の市場において目覚ましい展開の一つだった。ドルの上昇で商品価格は押し下げられ、中国を含む新興国市場が痛めつけられたほか、米エネルギー部門では容赦のない再編が加速した。ドル高で多くの米企業の収益も圧迫され、バリュエーションや収益の伸びをめぐる懸念が高まった。 今後数カ月にわたりドル安が進めば、こうした状況の多くは緩和ないし解消するだろう。 だが一部のアナリストは、このドル安という解決策について、二つの面で自滅を招く恐れがあると懸念している。まず、日本銀行や欧州中央銀行(ECB)の成長支援策は、ドル安で輸出競争力が低下することにより、困難になるかもしれない。次に、FRBは中期目標の2%を超えるインフレ上昇を防ぐための政策引き締めが遅れる可能性があり、最終的には物価上昇を抑制するために速いペースでの利上げを強いられ、経済成長を損なう恐れがある。 ドイツ銀行のG10戦略責任者、アラン・ラスキン氏は、不確実性があふれる中、「投資家は足元の市場では超長期的な考え方で取引していない」と述べた。 バンクオブアメリカ・メリルリンチの為替ストラテジスト、イアン・ゴードン氏は「世界金融市場のリスクが落ち着くまで、FRBは利上げにかなり慎重になるだろう」とし、「こうした要因が影響している間、ドルは圧力を受ける」と指摘した。 上左から時計回りに、新興国債券ファンドの資金流出入、ドルの変動(緑は対ユーロ、青は対円)、WSJのドル指数 ENLARGE 上左から時計回りに、新興国債券ファンドの資金流出入、ドルの変動(緑は対ユーロ、青は対円)、WSJのドル指数 確かに、金利差取引やドル高が完全に終わるとの見方は少ない。トレーダーやアナリストらは、米経済指標の改善が続けば、利上げ期待は今年前半にも再び高まり、ドルの上昇に新たに弾みがつく可能性があると指摘した。 FRBがいずれ複数回の利上げを実施すると予想する投資家は多い。最近は欧州や日本から明るい兆候がほぼ出ていないため、ドルの下げは限られるとみる向きもある。 それでも、FRBが次に利上げする時期や、その間の金融市場の動向について、投資家の間では見解がほぼ一致していない。FRBは年内2回という利上げ予想を守るとの見方がある一方、世界経済の成長低迷が続き、FRBは17年まで利上げできないとみる人もいる。 EPFRによると、結果として新興国の債券ファンドには6週連続で資金が流入しており、期間としては14年7-9月期以降で最も長期となっている。 CFTCの統計によれば、ヘッジファンドなど投機筋による原油の買越額は15年6月以来の高水準に近い。ドルの下落を背景に、国際石油取引の指標油種であるブレント原油価格は1-3月期に6.2%上昇した。 ニューバーガー・バーマンの新興国債券チーム共同責任者、ゴーキー・アーキエタ氏は「ドルのレンジ相場は新興国通貨にとっての大きな障害を取り除く」と述べた。同氏のファンドはここ数週間でメキシコペソとチリペソの持ち高を増やしている。 「新興国市場の妙味は高まり始めている」と語った。 関連記事 1-3月期の世界金融市場、進展は限定的 米雇用統計は堅調、緩やかな利上げ路線変わらず FRB、必要なら景気刺激策はまだある=イエレン議長 米FRB特集 https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CO960_Abreas_16U_20160403145110.jpg 円相場、予測精度トップ3社は続伸予想−通貨動かす日銀の力には限界 Netty Ismail
円相場はドルに対して1−3月(第1四半期)に6.8%上昇し、2009年以来で最高の四半期パフォーマンスとなった。自国通貨の相場を押し下げる中央銀行の能力に疑問符が付いている。 最新ブルームバーグ・ランキングで円相場予想の精度が高かったジュリアス・ベア・グループ、三井住友銀行、オーストラリア・ニュージーランド銀行は、年末までに円がさらに上昇すると見込んでいる。一方、調査の中央値によれば、年末までに1ドル=119円に下落すると予想されている。ロンドン時間4日午前6時57分現在は1ドル=111円40銭。 日本銀行は1月29日にマイナス金利導入を決めたが、円は同日の1ドル=122円付近に比べ上昇している。ANZバンク・ニュージーランドのシニア通貨ストラテジスト、サム・タック氏は「日銀はこれまでに取った措置により、ドル・円相場に影響を与える能力の限界に達した。日銀が為替相場を動かす力は弱まっている」と話した。 原題:Yen’s Rally Pitting Top Forecasters Against a Bearish Consensus(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-04/O53SML6S972901 ドルの弱さは短期的か、歴史が示すドル高継続の余地−チャート Anchalee Worrachate 2016年4月4日 12:05 JST 過去数十年のドル高局面は長期化した。前回のドル高局面は1995年に始まり、2002年まで終わらなかった。こうした事実を踏まえ、ドルの今年1−3月期はここ3年余りで最悪の四半期だったが、11年に始まった今のドル高基調はまだ終わっていないとみるストラテジストもいる。 原題:Dollar’s 2016 Downturn May Prove Brief, Based on History: Chart https://assets.bwbx.io/images/i1yHiPhvToxI/v2/-1x-1.png
ゴールドマン:アジア通貨は売り時−今後1年でドル=130円予想 Justina Lee 2016年4月4日 11:59 JST 更新日時 2016年4月4日 14:00 JST
円は向こう1年でドルに対し14%下落と予測、市場の大半に比べ弱気 追加緩和で人民元と円は少なくとも08年以来の安値まで下げる公算大 ゴールドマン・サックス・グループによると、3月に月間ベースで約7年ぶりの大幅高を記録したアジア通貨は、今が売り時だ。 Goldman Sachs headquarters in New York Goldman Sachs headquarters in New York Photographer: John Taggart/Bloomberg ゴールドマンの新興市場マクロ担当チーフストラテジスト、カマクシャ・トリベディ氏(ロンドン在勤)はインタビューで、中国と日本で追加緩和が見込まれるため、人民元と円は少なくとも2008年以来の安値まで下げる可能性が高く、アジア通貨は下落に転じると予想した。同氏は昨年11月の段階で、新興市場が16年に持ち直すと正確に予測していた。 トリベディ氏は「韓国ウォンやタイ・バーツ、台湾ドル、人民元、リンギットを中心とするアジア通貨は、ショートにするには良い水準にある。アジアの新興市場通貨は、人民元相場の動きから極めて直接的な影響を受ける。これらの通貨のさらなる下落をわれわれは予想している」と説明した。 ゴールドマンは、今後1年で円相場がドルに対して14%下げ、1ドル=130円と02年以来の安値水準を付けると予測。人民元は7.6%下落し、1ドル=7元と08年5月以来の安値になると見込んでいる。 ゴールドマンの円と人民元の見通しは大半の予測に比べて弱気だ。ブルームバーグ調査の予想中央値によると、17年3月末時点の円相場は対ドルで118円、人民元はドルに対して6.7元と見込まれている。 原題:Goldman Says Sell Asia Currencies After Best Rally Since ’08 (1)(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-04/O536P36K50XV01 FX Forum | 2016年 03月 31日 17:30 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:為替の金利離れ、ドル高と円高の前兆か=亀岡裕次 大和証券 チーフ為替アナリスト [東京 31日] - ドル円が金利離れしている。米国の金利が日本に比べ相対的に上昇し、2月11日に1.63%だった日米10年国債金利差は2%近辺にまで拡大している。昨年、同金利差が2%を超えていた局面では、1ドルは120円を上回っていた。ところが、ドル円は2月11日以来、111―114円程度のレンジにとどまっている。 為替にはリスク許容度の影響もあるので、ドル円がいつも日米金利差に連動するわけではないが、リスクオンの円安圧力がかかるなかで、ここまで大きくドル円が円高・ドル安方向に金利離れするのは珍しい。 為替の金利離れは、ユーロドル相場についても言える。3月1日に1.68%だった米独10年国債金利差は足元もほぼ同じ水準で変化していない。ところが、1ユーロ=1.08ドル台から1.13ドル台へと大幅にユーロ高・ドル安が進んだ。やはり、ユーロドル相場も金利離れしているのだ。 日米金利差の動きに比べてドル円が下振れし、米独金利差の動きに比べてユーロドルが上振れしているということは、両者に共通しているのは「ドル安」である。ただし、為替が金利離れしている原因は、ドル安だけではないと考えられる。 <リスクオンでも円安が鈍いのはなぜか> クロス円は、リスク許容度に左右されやすく、通常は世界株価との連動性が高い。だが、2月以降は世界株価が顕著に上昇したにもかかわらず、ドル以外の主要通貨の対円為替を国内総生産(GDP)で加重平均して見たクロス円の上昇は明らかに鈍い。 クロス円が下落した一因には、英国の欧州連合(EU)離脱懸念によるポンド安や、その影響を受けたユーロ安がある。ただし、原因はそれだけではないだろう。 欧州通貨以外の対円為替も、世界株高の動きに比べて上昇が鈍いからだ。リスクオンでも円安が鈍いのは、日銀の量的緩和拡大やマイナス金利幅拡大の余地は小さいとの見方が円高に働いているからだろう。 2―3月にドル安が進んだ一因に原油価格の反発があるが、商品総合指数の上昇に比べてドル実効為替の下落が大きい。これは、1)米供給管理協会(ISM)非製造業指数(景況感悪化)や米雇用統計(賃金上昇鈍化)、2)ドラギ欧州中銀(ECB)総裁による利下げ打ち止め示唆の発言、3)米連邦公開市場委員会(FOMC)でのフェデラルファンド(FF)金利見通し下方修正(利上げ期待後退)などが、ドル安に作用したためとみられる。 ただし、米金利は日本や欧州に比べて上昇し、結果的に米金利や商品市況の動きに比べてドルが過剰に弱くなりすぎた。3月下旬にドル実効為替やドル円がやや反発したのは、過剰なドル安の修正圧力が一因ではないか。 <ドル円はドルよりも円に左右されやすい> 程度の差はあれ、円もドルも資金調達通貨として、その実効為替は同方向に動きやすい。2015年6月から16年2月にかけては、リスクオフの円高とドル高となった。ただし、円高がドル高を上回り、ドル円が下落した。 米金利変化とともにドルがドル円相場を主導するケースもあるが、基本的にドル円相場は「ドル」よりも「円」の動きに左右されやすい。ドル安のときは円安になりやすく、ドル円は下落しにくいが、ドル高になると円高になりやすく、ドル円は下落しやすくなる。16年2月から3月にかけては、ドル安と円安が相殺されてドル円は小動きとなった。 現在はドル安に振れたことで米国企業の予想1株利益(EPS)は上振れしつつあり、少なくとも4月までは予想利益の上方修正が株価の押し上げ要因となりやすいだろう。ただし、ドルが反発すれば、予想利益の上方修正が短期間のうちに終わる可能性がある。 また、最近は米国の経済指標が市場予想を下回るケースが減っており、ドル安や株高が進んだ3月の経済指標については、堅調となる可能性が高い。ただし、米経済指標の市場予想が改善する一方でドル高となれば、その後は経済指標が市場予想を下回るケースが増えて、リスクオフに傾きやすいだろう。 2月に原油価格の底打ちとともにドル安に転じ、米国の利上げ期待、金利、株価が上昇した。それでも世界景気が回復基調であれば、米国金利が海外諸国に比べ相対的に上昇しにくく、ドル安は続きやすい。また、景況感改善がリスクオンの株高や商品高を支え続けやすい。 しかし、今は世界景気が減速基調にあり、米国金利の相対的上昇がドル高を生みやすい。米株価と金利の上昇により金利との裁定関係からみた株価の割高感が強まっているうえにドル高となれば、景況感悪化がリスクオフの株安を招きやすい。ドル安とリスクオンは持続しにくいだろう。 ドル安を招いた原油価格反発の原因は、産油国の原油協調減産による供給過剰縮小への期待にあった。だが、その期待が実現に向かっているとは言い難い。米国の原油生産はすでに減少に転じ、世界の産油国のなかでも供給抑制が先行しているが、その米国ですら供給過剰は解消に向かっていない。 原油在庫の前年比増加ペースは鈍化しているものの、これは前年同期の在庫水準が急増したためであり、なおも在庫水準はハイペースで増加し続けている。石油製品在庫については前年比増加ペースがこれまで以上に高まっている。これでは原油価格が反落しても不思議はなく、すでに原油価格と商品総合指数には低下の兆しもある。原油安がドル高を招き、それらが再び市場をリスクオフに傾かせる可能性がある。 また、ドル高に転じると、人民元相場を通じてもリスクオフにつながりやすい。ドル安(ドル実効為替が下落)となると、中国当局が参考とする主要通貨のバスケットが対ドルで上昇し、人民元は通貨バスケットに対して下落する。実質的に人民元は割安になるので、人民元には上昇圧力がかかり対ドルで上昇しやすくなる。 逆にドル高になると、人民元は対ドルで下落しやすくなり、中国からの資本流出や株安を誘発し、中国発のリスクオフが世界に広がりやすくなる。 <2016年度の予想レンジは1ドル=104―117円> ドル安になると、米国経済へのプラス期待とともにリスクオンの円安圧力が生まれ、ドル円は底堅く推移しやすい。米利上げ期待の後退によるドル安にせよ、ドルの実効為替が下落しているうちは、世界的にリスクオフ圧力が弱い、あるいはリスクオン圧力がかかっている証拠であるから、ドル円が大幅に下落する可能性は小さいだろう。 しかし、世界経済が弱いなかでのドル安は、米金利を他国に比べ相対的に上昇させ、ドル高につながりやすい。また、原油の供給過剰が期待通りに縮小しない限り、原油価格が反落してドル高に働きやすい。そして、ドル高になると、米国経済へのマイナス効果が懸念されてリスクオフの円高圧力が生まれ、ドル円は下落しやすくなる。 米国経済が非常に強いことによるドル高なら別だが、そうではなくて米国以外の金利低下による相対的な米金利上昇や原油安を背景にドル高が進むようなら、リスクオフにつながりやすい。 つまり、ドル安(実効為替下落)によるドル円の下落は限定的となりやすい一方で、円高(実効為替上昇)によるドル円下落は大幅となりやすい。今後、ドル高がリスクオフの円高を招く引き金となってドル円の下落が進行することに注意が必要である。 ドル安ではなく円高を主因にドル円は下落基調となり、16年度のドル円相場レンジは104―117円になると予想している。 *亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yuji-kameoka-idJPKCN0WX0OC?sp=true
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