倉都康行の世界金融時評 2016年度「ドル円100円割れ」の可能性FRBが利上げを断念する日2016年4月1日(金)倉都 康行 人工知能などの技術革新を組み込んでも生産性の伸びは低いまま(写真:AP/アフロ)
年初に突然のように金融市場を覆った暴風雨が去り、様々な不安要因を前にして消化不良に陥っていた投資家も、徐々に平常心を取り戻してきた。人民元相場が落ち着き、原油相場に底入れ感が出始めたことも、安心感を強めている。 だが、怪しげな中国経済から英国のEU離脱リスク、米国大統領選挙そして中東や北朝鮮を巡る地政学リスクに至るまで、市場から不透明要因が消えることはないだろう。そして米国の今後の金融政策の行方も、いま一つスッキリしない材料である。それは今年度のドル円動向にも大きく影響する筈だ。FRBには、日銀やECBと違ってまだ市場を動かす力が残っているからである。 米国の3月利上げは予想通り見送られ、今年の成長率やインフレ率が若干下方修正されるとともに、メンバーが示す年内利上げ回数予想の中央値も4回から2回へと修正された。米国経済は堅調と見る株式市場では「予想以上のハト派的内容でサプライズ」との声も上がり、為替市場では一時ドル円が110円台まで低下した。 今回の金融政策判断に大きな影響を与えたのは、世界経済と金融市場の二つのリスクである。中国をはじめとする新興国経済の失速懸念と年初来の株式市場などの急落が、FRBのメーンシナリオを狂わせてしまったことは明白だ。 だが、イエレンFRB議長は利上げ方針を堅持する姿勢を変えていない。記者会見で同議長は、設備投資の低調さや脆弱な海外経済の輸出への悪影響などにも言及しつつも、米国の内需は堅調で本年以降も潜在成長率を上回るペースでの成長は持続する、という基本認識を示している。 FOMC議事要旨にも、足許の物価上昇率には上昇の兆候が見える、と記されていた。確かに物価統計にはそうした気配も窺える。そしてFOMC終了後には利上げ推進派から慎重派に転じていたセントルイス連銀のブラード総裁が手のひらを返すように利上げ再開を示唆したのをはじめ、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁、アトランタ連銀のロックハート総裁、そしてフィラデルフィア連銀のハーカー総裁らが4月利上げを検討すべきだ、と述べるなど「ハト派ムード修正」の動きが起きている。 「ドット・プロット」に右往左往する市場 こうした発言を受けて、一時弱含んでいたドルは一転して堅調な地合いとなり、ドル円は再び上昇トレンドに向かうかもしれない、といった期待も浮上している。市場のこうした右往左往には、FOMCが2012年に導入した「ドット・プロット」と呼ばれるメンバーの政策金利見通しが悪影響を及ぼしている。 その予想金利水準の分布図に拠れば、2015年12月時点では2016年末の見通し中央値が1.375%で年間4回の利上げが示唆されていたが、2016年3月にはそれが0.875%に下がったことで「利上げ回数が2回に下方修正された」と市場は読んだ。それが「ハト派」と解釈された所以である。 だが「ドット・プロット」はFRBのコミットでもなく正確な予想でもない。その予測性は、導入以来常に裏切られており、「今年の2回利上げ」という見方ですら、ディスインフレを実感する債券市場は懐疑的である。日本の主要メディアも3月のFOMCの内容を「利上げ回数予想の減少」と伝えているが、実際には「FRBの認識が漸く金利市場の読みに接近してきた」いうのが正直な感想だ。 FRBはそもそも「政策金利動向はデータ次第」と主張しており、「ドット・プロット」を通じて金利水準の経路を予想しようとしているのではない。その図は、FOMCメンバーが抱くメーンシナリオが実現した場合に正当化される金利水準の分布であり、当局内でどれだけ意見の相違があるのかを映し出しているに過ぎないのである。 地区連銀総裁らが意識的に利上げの可能性に言及し始めたのは、FRBのメッセージが「超ハト派」と誤って捉えられたことを警戒してのことだろう。だが、あれだけリスク要因への警戒を示したFRBがいきなり今月の会合で利上げを決定するとは思えず、様々な発言がかえって市場の混乱を増幅させているように見える。 日銀に見られる幅のない対話力も問題だが、FRBのように多様過ぎる情報提供もコミュニケーション力低下の一因であり、市場の変動性を高めるだけに実体経済にとっては厄介な問題である。FRB主流派の心中は「利上げどころではなくなってきた」というのが本音なのではないだろうか。それは数日前のイエレン議長の講演の発言内容にも滲み出ている。 注目すべきはインフレ率と労働生産性 今後の米国の金融政策を読むには、ひとまず金融当局が発する「ノイズ」から離れて、実体経済のデータに目を向けた方が良さそうだ。筆者が注目する観察対象は、インフレ率と労働生産性である。 インフレ率に関しては、年初の時点では、失業率と賃金・物価の負の相関を示すフィリップス曲線は破綻した、との見方が優勢であり、市場にはディスインフレ基調がさらに強まると見られていた。失業率は5%を割ったが、賃金上昇率は2%程度に低迷したままであり、短期金利市場ではFRBが望む「好ましい物価上昇率」は当分達成出来ない、との見方が大勢であった。 だが、1月のコアPCEデフレーターが前年同月比1.7%上昇して約3年ぶりの高水準になり、2月もその水準をキープしている。2月のコアCPIは前月比0.3%上昇、前年同月比では2.3%の上昇となり、ややセンチメントが変わってきた。 インフレ期待も上昇中である。10年物の「ブレーク・イーブン・レート」で見るインフレ率期待値は2月中旬の1.2%台から現在では1.6%台へと急反発している。ニューヨーク連銀の調査による消費者の1年先のインフレ期待値も上昇に転じている。 これは本格的な物価上昇に繋がる前兆なのか、或いは一時的な要因に拠る現象なのかを見極めることは、日本経済にとって「ドット・プロット」の分析などよりよほど重要だ。極論すれば、そのポイントが米国の金融政策動向を左右し、今後ドル円は120円近辺に戻るのか、或いは100円に向けた円高基調に移行するのか、という分水嶺になる可能性がある。 短期金利市場や債券市場がFRBの利上げ見通しにさほど反応していないのは、物価指数の上昇は一時的現象と判断しているからだ。ダラス連銀の調査に拠れば、コアPCEデフレーターの上昇を牽引しているのは主に衣料品や宝石・高級時計、自動車、医薬品といった項目である。またコアCPIに関しても家賃と医療保険支出などの上昇が主因で、どちらの上昇も一時的な現象だと見られている。 FRBが留意すべきは成長率の鈍化 また、利上げの前には「頭打ちの賃金上昇率」という大きなハードルも聳え立つ。2015年の米国における賃金上昇率は2.2%であった。2%に満たないインフレ率を考えれば、確かに実質賃金は多少上昇しているが、賃金上昇が加速する気配は見えないままだ。 さらに、賃金や福利厚生の分布を見れば、米国家計がそれほど経済成長の恩恵を受けていないことがわかる。Economic Policy Instituteの統計に拠れば、2007-2014年の間で豊かになったのは上位10%の労働者に限定されていた、という。 オレゴン大学のマーク・トーマ教授は「その歪な構造は現在も変わっていない」と述べ、低いパーセンタイルの労働者は今でも実質的な賃金低下や福利厚生削減に見舞われている、と述べて、賃金上昇のトレンドを抑制する必要性は全くない、とFRBの利上げ姿勢を批判している。 米国市場では、自然失業率は5%前後ではなくいまや3%程度に低下している、といった議論すら起きている。現時点でFRBが留意すべきはインフレ率の上昇ではなく成長率の鈍化だ、といった指摘はあちこちで見られるようになった。 バーナンキ前FRB議長でさえも、自身のブログで「FRBにはまだ武器が残っている」として、米国に導入される可能性は低いとしながらも、マイナス金利の政策的な有効性を解説しているのが興味深い。利上げに理解を示してきた同氏も、先行きに不安感を感じ始めているのかもしれない。 実はイエレン議長も、前述したように利上げ方針を継続するとの姿勢を堅持しながらも、インフレ率に対しては、上述した地区連銀総裁らの認識とは違った考えを抱いているように見える。12月と3月の発言内容の落差は、思考回路の大幅修正を反映していると思われるからだ。 具体的には、同議長は昨年12月時点の「2%という物価上昇率を超えてはならない」という認識から、今では「一時的な目標超えは許容しうる」との考えに変えてきたように感じている。もしそうであれば、この変化は地区連銀総裁らの「ノイズ」と違い、極めて貴重な「シグナル」である。敢えてそれを明言せずに利上げ方針継続の表明を行ったのは、12月の利上げは失敗だったのか、と問い詰められる可能性があったからだろう。 世界的に頭打ちになる労働生産性 現在の米国経済成長力にさほど勢いがないことは、個人消費、住宅投資、設備投資、貿易収支そして財政支出のどの項目からも明白だが、労働生産性の低下という別の視点から見ても、FRBがなぜ利上げ継続にこだわるのか、不思議に思えてくる。 労働生産性の伸びが頭打ちになっているのは世界的な傾向だ。1960-70代の高度成長時代には8%を超えていた日本の数値は今では1%に満たない水準にまで低下しているが、経済の一強時代を象徴する米国でも、昨年第4四半期には伸び率が2.2%へ低下し、2016年を通じても0.6%の上昇率に留まっている。 輸出競争力の高いドイツも然りである。そして、先進国の先端技術を容易に導入し得るメリットがある筈の新興国でも、労働生産性の伸び率は低位で推移している。技術開発の停滞を背景とする世界的な労働生産性の低下は、現代社会における「成長の限界」を示唆しているのかのようだ。 もちろん、それには反論もある。iPhoneの登場や3Dプリンターの発明、或いはグーグルやSNSの普及など、人々の生活を豊かにしている実例は沢山ある。また先日、世界的な囲碁の名人である李九段を打ち負かした「AlphaGo」のような人工知能に代表される21世紀の新技術は、19世紀や20世紀の技術開発と比べても遜色はなさそうに見える。GDPなどの経済指標は、現代のそうした革新の果実を反映出来ていない、という主張もある。 だが先般、FRBとIMFの研究者(David Byrne氏、John Fernald氏、及びMarshall Reinsdorf氏)が発表した研究論文は「その反論の根拠は薄い」と主張している。彼らは無形資産、ソフトウエア、コンピューター、特殊機械、コミュニケーション・ツールなど、従来のGDP把握から漏れていた要素を組み込んで時間当たりの生産の伸び率を計算しなおしてみたところ、従来の計測結果とそれほど大きな違いはなかった、と結論付けている。 原因は競争の阻害と低賃金 ではなぜ、労働生産性が上昇せず低成長が続いているのだろうか。MITの研究者らは、ここ15年間で新興企業の成長・拡大の速度が20世紀後半と比べて大幅に鈍化していることを理由に挙げている。その背景には、投資意欲の希薄化に見られる競争意識の低下がある、という。米国では昨今の規制強化において金融、ヘルスケア、保険、通信、化学、建設など様々な分野で競争が阻害されており、それが生産性低下の一因になっている、との指摘もある。 さらに注目されるのは、低生産性と低賃金の相関だ。従来、低生産性が低賃金の原因だと見られてきたが、逆にその結果である可能性も指摘されている、と英エコノミスト誌は述べている。例えば金融危機後の米国では安価な労働者が多数存在したことで、企業はロボットやソフトウエアへの投資を抑制し、低賃金労働者の雇用に拠る限定的な利益確保に走った。日欧などでも、低賃金構造が固定化されることで生産性の低下が長期化する傾向が出ているのかもしれない。 その悪循環を断ち切ろうと、日本やユーロ圏ではマイナス金利まで導入したが、効果は乏しいだろう。米国は金利正常化に向けて舵を切ったが、どうやらそれは拙速な判断であったように見える。市場には、12月の利上げが世界的な資本の流れを変えて金融市場の不安定さを招き、米国経済にも自業自得的な悪影響を与えてしまったのだ、という見方すらある。 イエレン議長が利上げ路線の看板を下ろすのは容易ではないが、海外要因を理由にして「転向」する可能性は十分ある。安定しているように見える中国は、いつどこで火を噴くかわからないエンジンを抱えた飛行機のようなものであり、難民問題や英国のEU離脱リスクを抱える欧州は、目的地を失った漂流船の如きである。 仮に同議長が利上げ路線白紙化への布石を打ち始めれば、それはドルの上昇エンジンの停止を意味する。時期を予想するのは難しいが、夏から秋に向けてドル円が100円割れに直面する可能性が仄かに見えてきたように思われる。 次の流行語は「ヘリコプター・マネー」? 日本でも金融政策の限界論が主流になりつつあり、政府は財政政策を検討する必要に迫られてきた。消費税増税延期はもはや既定路線であり、アベノミクス失敗論に対抗すべく政府が補正予算などに一歩踏み出す可能性もある。だが、大胆な国債借り換え策などを伴わない財政出動の威力は限定的だろう。 残る手段は所謂「ヘリコプター・マネー」だ。それはハイパー・インフレを招く禁じ手だとして封じ込められてきたが、何をやってもインフレにならない現状、善悪は別として、政府・日銀が経済政策への批判をかわすために採り得る奇策(愚策?)は、恐らくこれしかない。 現在、金融市場の流行語といえば「マイナス金利」と「フィンテック」だが、年末に流行語大賞が決まる頃には、それらを押しのけて「ヘリコプター・マネー」が日本中のメディアを席巻しているかもしれない。 このコラムについて 倉都康行の世界金融時評 日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/230160/032900011/?ST=print 2016年4月1日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] 日銀のインフレ2%目標は 中長期的目標にシフトすべき時 参議院予算委員会で、マイナス金利政策の効果について答弁する日本銀行の黒田東彦総裁 Photo:REUTERS/アフロ ?黒田東彦総裁をはじめとする日本銀行幹部は、マイナス金利政策は日本経済にとって有効であり、その金利を今後引き下げる可能性があることを最近たびたび示唆している。 ?3月の金融政策決定会合で日銀は、景気判断を下方修正した。一方、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)は、事実上、過度なドル高を避ける情報発信を行いながら、ゆっくりと利上げを進める方針を示した。過去3年間のFRBは、日銀や欧州中央銀行(ECB)の金融緩和でドル高が起きてもわれ関せずだったが、様子が変わってきている。 ?日銀としては円高が進んでインフレ目標達成がさらに遠くなることは避けたいだろう。最近は人々のインフレ予想も弱い。マイナス金利の一段の引き下げを含む追加緩和策のタイミングを日銀は意識し始めているようだ。 ?とはいえ、マイナス金利政策に対して国民は警戒心を抱いている。経済データ解析を手掛けるナウキャストが最近実施した1.2万人を対象としたアンケートによると、マイナス金利政策を「非常に望ましい」「望ましい」と答えた人は計17%にとどまった。一方、「やや望ましくない」「望ましくない」は計83%もいた。 ?日銀は同政策によって2%のインフレ目標を早期に達成することを狙っている。だが、その目標自体の評判が芳しくない。 ?前掲調査によると、日銀の物価目標について、「非常に望ましい」「望ましい」と答えた人は、1年前は計32%だったが今年は29%だ。逆に「やや望ましくない」「望ましくない」と答えた人は、計67%から71%へ増えた(同社マンスリーレポート3月号、渡辺努・東京大学大学院教授のレポートより)。 ?ところで、政府・日銀は企業の賃上げペースの低調さにいら立っているが、経営者だけでなく労働組合側も東京五輪後の日本経済に自信を持てないのが実情といえる。自社の対外競争力に不安を感じている企業も少なくない。 ?代表例が、本誌12月26日・1月2日合併号の自動運転に関する対談記事に載っていた。泉田良輔氏が日本の電機産業が衰退していく過程を本にまとめたところ、「実は電機より自動車業界で反響が大きかった」そうだ。「次に狙われるのは日本の自動車産業だと」。 ?今の日本で自分の先行きの所得増加に自信がある人はそう多くない。そんな中で、物価が毎年2%ずつ上がる経済を早期に実現すると日銀が意気込んでも、ポジティブな心理効果は生みにくい。 ?3月14日に筆者も参加した野村総合研究所主催の「金融市場パネル」で、聴衆(金融機関関係者、機関投資家、研究者等)へのアンケートが行われた。「2%のインフレ目標を日銀はどうすべきか」という質問に対して、「あくまで早期に達成すべき」と答えた人はわずか5%。一方で、「中長期的目標に変えるべき」は37%、「目標自体を見直すべき」は58%もいた。 ?実現困難な目標を追求する金融政策が副作用を起こしつつあることを考慮すると、目標見直しは正論といえる。ただ、日銀がインフレ目標を1%に下げ、欧米は2%のままだと激しい円高が生じる。 ?日米欧が目標を一斉に1%に下げる可能性は現在ほとんどないだけに、現実対応としては、インフレ目標を「中長期的目標」へと徐々にすり替えつつ、日本企業がイノベーションを起こせる環境づくりをじっくりとサポートしていくしかないように思われる。 (東短リサーチ代表取締役社長?加藤 出) http://diamond.jp/articles/-/88611 “現状維持”が最悪の選択である 【第1回】 2016年4月1日 井堀利宏 財政再建に消極的な政治と現在世代の重罪 財政健全化に消極的なアベノミクスのもと、消費増税は再延期の見通しが濃厚となってきた。消費税ありきとは言わないが、財政健全化そのものを先送ることで若い世代や将来世代に負担を強いる構造をそろそろ本気で変えるべく行動を起こすべきではないだろうか。本連載では、財政学の第一人者である井堀利宏・東京大学名誉教授が描く財政健全化に向けた具体策を順次ご紹介していく。
?消費増税を巡る政策決定が迷走している。 ?安倍政権は消費税の引き上げに消極的である。2015年10月に予定されていた10%への税率引き上げは、「信を問う」と強引な解散総選挙を実施して、2017年4月まで先送りした。 ?昨今は来年に迫った増税も「リーマンショックや大震災級の世界経済の収縮が起きなければ」という不明瞭な留保条件を付けるなど、及び腰になってきたのが窺える。安倍首相と菅官房長官は「消費税率を引き上げて税収が上がらなければ元も子もない」とも発言されていたが、そもそも消費税率を上げることで消費税収が減るなどということはあり得ない。 ?合理性の欠ける言い回しに、よほど消費税率を上げたくないのか、と勘ぐりたくなる。増税凍結かという観測を一応は否定してみせるが、額面通り受け取れないのが安倍政権である。 ?いずれにしても、増税時に導入する軽減税率などを含めた準備期間や、7月に参議院議員選挙が実施されることなどを勘案すれば、その前までに増税か否かの結論が下されるだろう。 ?私は決して、消費税増税ありきと主張したいわけではない。ただ、巨額の国債残高があり、社会保障需要の増大が避けられないわが国の厳しい財政状況を勘案すると、歳出削減とともに10%程度の消費税率引き上げは避けられまい。 ?仮に消費税増税を再度先延ばしするとして、1年の延期でも、2020年に基礎的財政収支を均衡させる財政健全化計画そのものを見直す必要が出てくる。消費税率の引き上げは、財政再建に対する本気度を試す一里塚ではないだろうか。財政再建を先延ばしすれば、いま生きている現在世代は助かるが今後生まれてくる将来世代は大きな負担を被る。再建タイミングは世代間格差に直結している点を忘れてはならない。 量的な歳出入改革だけでは、もはや限界 ?では財政再建を着実に進めるうえで、量的な歳出入改革以外には何をすべきか。 ?たとえば、財政運営の錘となっている社会保障費用の見直しは急務である。少数の若者が多くの年配層への給付を支える現行の賦課方式が続く限り、世代間不公平も解消されない。実の親子間で年金や医療費をまかなう個人勘定の積立方式への移行を検討すべきではないだろうか。 ?また、そのように社会保障制度を抜本改革するには、抵抗勢力となる高齢者が過度に政治力をもつ現行選挙制度の改革が必須である。青年世代の選好が政治に反映される世代別選挙区の導入や選挙権年齢の引き下げなど、従来の弥縫策にとどまらない新たな仕組みが必要である。 ?財政運営は政治の場で意思決定される。わが国の財政状況が悪化したのは、政治が若い世代や将来世代の利害を加味せず、その場しのぎで政策決定をしてきたためである。本連載では次回以降、財政赤字が世代間格差を助長する構造をふまえ、それを是正するための年金・医療制度改革や、その改革を可能にする選挙制度改革について私案を紹介していく。 ?改革の痛みを甘受してでも抜本改革を実施できるかどうか、われわれ現在世代の良心が問われている。 http://diamond.jp/articles/-/88824
NY外為(午前):ドルが下げ渋り、雇用統計で利上げ観測強まる Taylor Hall、Rachel Evans 2016年4月1日 21:53 JST
1日午前のニューヨーク外国為替市場ではドルが下げ幅を縮小。3月の米雇用者の伸びが市場予想を上回り、利上げの根拠が強まると受け止められた。 3月の非農業部門雇用者数は21万5000人増。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は20万5000人増だった。 ニューヨーク時間午前8時32分現在、ドルは対ユーロで前日比0.3%安の1ユーロ=1.1409ドル。一時は0.5%下落する場面もあった。 原題:Dollar Pares Drop as Jobs Report Boosts Outlook for Higher Rates(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4YGUI6KLVR601 3月の米雇用者:21.5万人増、賃金も伸びる−失業率は5%に上昇 Victoria Stilwell 2016年4月1日 23:38 JST
米国では3月に雇用者数が増加し、賃金も増えた。 米労働省が1日発表した3月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比21万5000人増。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は20万5000人増だった。前月は24万5000人増(速報値24万2000人増)に修正された。 3月の平均時給は前月比0.3%増となった。前月はマイナス0.1%だった。前年同月比では2.3%増。 一方で家計調査に基づく3月の失業率は5%と、前月の4.9%から上昇。労働力人口に復帰した人が増えたことが背景にある。 ジェフリーズのチーフ金融エコノミスト、ウォード・マッカーシー氏は「厳しい局面もいくらかあったが、多くの雇用を生み出し続けている」と指摘。「消費者主導の経済では、そうした状況により正しい方向に進み続けることができる」と加えた。 雇用者数を業種別に見ると、建設業が3万7000人増と3カ月ぶりの大幅な伸び。気温が高めだったことも影響した可能性がある。一方で製造業は2万9000人減少した。 労働力人口への復帰について詳細を見ると、一部はパートタイムの職しか得られなかったことが分かる。経済的理由からパートタイムで勤務している人は13万5000人増えて612万人と、昨年8月以来の高水準。 これにより、経済悪化でパートタイム就労を余儀なくされている労働者や職探しをあきらめた人などを含む広義の失業率は9.8%と、前月の9.7%から上昇した。
労働参加率は63%に上昇し、2014年3月以来の高水準となった。 民間部門の週平均労働時間は前月から変わらずの34.4時間だった。 統計の詳細は表をご覧ください。 原題:Payrolls in U.S. Increased 215,000 in March as Wages Picked Up(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4YJ8SSYF01Y01
Business | 2016年 04月 1日 23:14 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 3月米雇用21.5万人増、賃金プラスに
[ワシントン 1日 ロイター] - 米労働省が発表した3月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が21万5000人増となり、予想の20万5000人増を幾分上回った。時間当たり賃金も前月比0.3%増と、プラスに転じた。 労働市場が底堅く推移していることで、連邦準備理事会(FRB)が緩やかな利上げを実施できる可能性があることが示された。 1月と2月分は1000人下方修正された。 失業率は5.0%と、8年ぶりの低水準だった前月の4.9%から悪化したものの、労働参加率の上昇を反映しており、心強い兆候となる。市場予想は4.9%だった。 労働参加率は63%と、前月の62.9%から上昇し、2014年3月以来の高水準となった。 時間当たり賃金は前月比0.3%、前年同月比2.3%それぞれ増加した。エコノミストによると、インフレ率がFRBの目標である2%に到達するには、時間当たり賃金が3─3.5%の伸びとなる必要がある。 3月の雇用は幅広い業種で増加したものの、製造業は2万9000人減少し、2009年12月以来の大幅減となった。製造業部門で安定化の兆しがみられる中での減少となった。 鉱業は1万2000人減。ピークをつけた2014年9月以降、18万5000人の雇用が失われている。 建設は9カ月連続で増加し、3万7000人増。小売も4万7700人増と好調。 政府は2万人増だった http://jp.reuters.com/article/us-jobless-mar-idJPKCN0WY4V4 円高の「巻き戻し」を警戒せよ−流れには逆らうな Luke Kawa 2016年4月1日 16:05 JST 円は今年に入ってからこれまでにドルに対し7%近く上昇した。しかしソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、キット・ジャックス氏によれば、4−6月(第2四半期)のテーマの一つは「円高の巻き戻し」だ。 同氏は円の対ドル上昇の過程で投機家が相当大きな円買い持ちポジションを積み上げてきたことを認識しているが、それよりも日本に関する証券投資の数字に注目し、資金の流れが円高の方向に向いていないと指摘する。外国人による日本の株・債券への投資が純減となる一方で日本の投資家は急ピッチで外債を買い増しているという。 先週は日本の債券と株の外国人による売り越しが2008年以来で最大となり、日本の投資家による過去4週間の外債買い越しは少なくとも2000年以来で最大だったと同氏は説明。「投機家による円ロングが資本流出を相殺しドルの対円相場を現水準に保っているとすれば、どちらの力が最後に勝つ可能性が高いか私には確信がある」と述べた。 原題:There’s a Big Reason to Watch Out for the ’Unwinding of Yen Strength’(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4XYM0SYF01X01 Column | 2016年 04月 1日 17:02 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:円安のゲタ脱いだ日本企業、株価は海外動向次第の構図に
田巻 一彦 [東京 1日 ロイター] - 円安のゲタを脱いだ日本企業の業績と株価はどうなるのか──。3月日銀短観の大企業・製造業の想定為替レートが117円台となったのを見て、多くの市場関係者はこんな連想をしたのではないか。米連邦準備理事会(FRB)が緩やかな利上げを志向し、ドル高/円安進行のハードルは上がっている。もし、円安依存の企業が多かった場合、今年の日経平均.N225は海外動向に振らされ、値幅の大きな展開になると予想する。 <日本企業の想定レート、117円台の意味> 3月短観で示された想定レート117.46円は、1日の東京市場で取引されている112円前半から5円超も円安となっている水準だ。 昨年前半のように、日米金利差の拡大を材料にドル/円JPY=EBSが円安方向に動けば、輸出企業を中心に為替差益で収益が押し上げられ、増益基調を維持できる企業が増えるだろう。 しかし、足元の外為市場を見ていると、そのシナリオの実現性に「黄信号」が点滅しているように見えてならない。 最大の要因は、FRBの金融政策スタンスだ。イエレン議長は3月29日の講演で「政策調整を慎重に進めることが妥当だと考える」と明言。一部で主張されている年内3回の利上げ路線とは明確に距離を置いた。 NY連銀のダドリー総裁も3月31日、イエレン議長の利上げに関するスタンスに賛同するとの見解を示した。 市場では、4月利上げの可能性低下が指摘されているだけでなく、一部では6、7月の利上げ可能性の後退もうわさされ、ドルに下落圧力がかかっている。 また、一部のFEDウオッチャーの中には、こうしたイエレン議長らの発言の背景には、ドル高進展による国内総生産(GDP)下押し効果への懸念があるという見方がささやかれている。 「ゆっくり利上げ」と発信することで、過度のドル高圧力を回避し、適度な成長と物価上昇、利上げ回数をどれも達成させる狙いがある──との見方だ。 このため市場にはドルの上値が当面は重くなると予想する声が年初よりも増加しており、ドル/円の114円半ばよりドル高方向には、ドルの戻り売り注文が並んでいるとされる。 仮に112円前後の水準が長期化するようなら、117円の想定レートを組んでいる企業にとって、増益要因がなくなるだけでなく、減益要因が増加することになりかねない。 <円安依存と利益剰余金> いわゆる「円安のゲタ」を脱いでも、増益基調を維持できる企業がどの程度の割合で存在するのか──。今年は、日本企業の実力が試される年になるだろう。 ただ、利益剰余金を過去最高の355兆円も貯め込み、ベースアップ率は昨年を下回る現実を見るにつけ、日本企業が独自の戦略を策定し、その下で積極的にリスクを取って将来を見据えた設備投資に注力しているとは思えない。 この私の見方が正しいなら、前年に計上した為替差益分の利益がなくなって、前年比減益となる企業が、かなりの割合になるだろう。 ただ、産油国の増産回避に向けた会議が成功し、原油価格が1バレル40ドル台から徐々に値上がりし、リスクオフ心理が鎮静化していけば、米経済の成長トレンドも鮮明化し、FRBが6月に利上げを決断しても、大きな株価下落を回避し、世界的な株高シナリオが実現する可能性もある。 そのケースでは、ジワジワとドル高/円安が進み、国内企業の想定レート117円台を超えて円安が進むかもしれない。その結果、為替差損のリスクは大幅に低下し、増益企業の割合が増えることが予想される。 <リスク判断次第で大きく振幅か> こうした点について見方を変えて俯瞰すれば、日本企業の収益は海外経済の動向によって、大きく振れる構造に直面していると言えるのではないか。 リスクオン心理の盛り上がりで、日経平均が2万円前後まで上昇する可能性がある一方で、FRBの利上げが当面ないという展開になれば、円高進展で1万4000円近辺まで大幅下落する可能性もゼロではない。 最近の電機業界における名門企業の凋落を見るにつけ、戦略的な投資を怠った企業に未来はないとの思いが深くなる。 積極的な投資によって、国際競争力を磨いていく経営方針を掲げている企業なら、為替の振幅で赤字になったり、黒字になったりするような「ブランコ現象」に直面するリスクは、大幅に低下するだろう。 2月29日のコラムでも指摘したが、企業経営者の勇気ある行動が、日本経済の未来を切り開いていくことになる。「円安のゲタ」を履いているだけでは、株主に対する説明もおぼつかないことになるのではないか。 http://jp.reuters.com/article/tamaki-c-idJPKCN0WY3WF Business | 2016年 04月 1日 12:00 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 「精一杯取り組んでいる」入行式で日銀総裁、脱デフレ強調せず
[東京 1日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は1日の入行式で「日本経済が健全な発展を遂げることを心から願い、精一杯の取り組みをしている」と強調。新入行員に対して、1)専門性を磨くこと、2)理論と実践の両面を大事にすること、3)自分の考えをしっかり持つこと──の心構えを示した。 自身の経験を振り返り「固定相場制の時代に『変動相場制が望ましい』との論文を執筆、時代に先駆けてインフレ目標の論考を寄稿した」と披露した。 13年3月に就任した黒田総裁は、過去3回の入行式では「わが国のデフレは、世界的にもきわめて異例。日銀はこれに果敢に立ち向かって行かなければならない」などと檄を飛ばしてきたが、今回は脱デフレ向けた強い文言はなかった。 その代わり、情報技術と金融の融合によるフィンテックや、マイナス金利政策、国際金融規制、決済システムなどの分野に触れた。 (竹本能文) http://jp.reuters.com/article/boj-commancingdate-idJPKCN0WY3CR Business | 2016年 04月 1日 12:09 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 海外減速・円高で企業の景況感悪化、3月日銀短観 市場に政策期待
[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業、中小企業の業況判断DIがそろって悪化し、中国をはじめとした新興国経済の減速や円高進行などの影響が表れた。一方、企業収益が高水準を維持する中で設備投資計画はしっかりした内容となったが、市場には金融・財政政策への期待が高まりつつある。 業況判断DIは大企業・製造業がプラス6、同非製造業がプラス22となり、前回12月調査からぞれぞれ6ポイント、3ポイントの悪化となった。中小企業も製造業、非製造業ともに悪化。大企業と中小企業の製造業・非製造業がそろって悪化するのは、消費税率引き上げ後の2014年6月調査以来となる。 中国をはじめとした新興国経済の減速が長引き、年明け以降の国際金融市場の不安定化で株安・円高が進むなか、大企業・製造業では輸出関連企業を中心に慎重な見方が強まっている。 海外での製商品需給判断DI(需要超過─供給超過)はマイナス11と前回から2ポイント悪化。海外需要が減退する中で、15年度の輸出の売上高計画も下方修正された。16年度の想定為替レートは1ドル117.46円。足元の112円台からは円安方向に想定されており、今後の企業収益を下振れさせる可能性がある。 好調な内需に支えられてきた非製造業も大企業の業況判断DIが6四半期ぶりに悪化した。緩和的な金融環境を背景に建設・不動産が好調で、原材料価格の下落に伴うコスト減も引き続き支援材料になっているが、訪日外国人によるインバウンド消費の増勢鈍化や盛り上がりに欠ける個人消費などが企業心理を慎重化させている面がある。 一方、原材料価格の低迷に伴うコスト減もあり、企業収益は引き続き高水準を維持している。15年度の売上高経常利益率の計画は大企業・全産業で前年比6.08%ポイント増、全規模・全産業でも同4.87%ポイント増と3月調査では過去最高を更新した。 好調な企業収益を背景に設備投資計画はしっかり。大企業・全産業の15年度計画は小幅の下方修正となったものの、同9.8%増と06年度以来の高さを維持。16年度計画も同0.9%減と過去の平均並みのスタートが見込まれている。 市場では、3月短観が事前の予想よりも弱い内容となったことに失望感も出ている。 ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏は「こうした市場のセンチメント悪化が、今後の財政出動や日銀の追加緩和を促す可能性がある」とし、金融政策について「追加緩和のメーンシナリオは7月とみているが、ETF(上場投資信託)の買い入れ額の拡大だけなら4月もあるかもしれない」との見方を示している。 (伊藤純夫) http://jp.reuters.com/article/tankan-mar-worsen-idJPKCN0WY3DF?sp=true
News | 2016年 04月 1日 16:23 JST 関連トピックス: トップニュース 来週のドル/円は下値への警戒必要、株安なら円買いも
[東京 1日 ロイター] - 来週の外為市場で、ドル/円はレンジ継続を基本線としつつ、下方向への警戒も必要とされる。米国の早期追加利上げ観測が後退し、米国サイドからのドル買い要因に期待できなくなっている。一方、株価が予想以上に下げるなど悪い流れが続いた場合は、リスク回避の円買いが強まりそうだという。 予想レンジはドル111.00―114.00円、ユーロ1.1200―1.1500ドル。 先週は複数の米連邦準備理事会(FRB)高官からタカ派的な発言が相次いだ。米国の早期利上げ期待がにわかに高まったが、今週、イエレンFRB議長が予想以上に慎重な姿勢を示したことで、4月の利上げ期待は一気にしぼんだ。 そのため、きょうの米3月雇用統計が良い数字になった場合でも、4月の利上げ期待は再燃せず、ドルの強いサポートにはなりにくいとみられている。「雇用統計後の米ISM製造業景気指数も良ければ113円台に回帰する可能性はあるが、114円を超えていくのは難しいのではないか」(国内金融機関)との見方が出ている。 <輸出企業に業績下振れ懸念> 1日発表された3月日銀短観によると、大企業、中小企業の業況判断DIがそろって悪化。2016年度の大企業・製造業の想定為替レートは1ドル=117.46円と、実勢に比べて5円近い円安水準となった。 短観を受けた東京市場では、16年度の企業業績の下振れ懸念が強まり、日経平均株価が大幅に下落。ドル/円はリスク回避的な円買いが強まった。 ただ、ドル/円は下値の堅さも確認されつつある。市場からは「ベルギーの連続爆破事件でリスク回避が強まった場面でも111円前半で反転した。下がっても111円くらいで買戻しが入りそうだ」(外為アナリスト)との声が出ていた。 <ユーロ/ドルは上値余地> ユーロは買われやすい地合いが続きそうだ。31日、ユーロ/ドルは一時1.1412ドルまで上昇し、昨年10月16日以来5カ月半ぶりの高値をつけた。 米国の早期利上げ観測が後退した一方、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和打ち止め観測があり、米欧金融政策のギャップが意識されている。「(ユーロは)一段と上がりそうな雰囲気はある。1.15ドルも視野に入ってきた」(国内金融機関)との声が出ていた。 (外為マーケットチーム) http://jp.reuters.com/article/tokyo-f-idJPKCN0WY3TX Business | 2016年 04月 1日 15:44 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 焦点:日銀短観が発する「黄信号」、市場に追加策の思惑 [東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月短観は、市場予想を超えて悪化した。世界経済の減速懸念による悪影響が出た製造業とともに、国内消費の弱含みを反映して非製造業も景況感が悪化した。 また、企業の物価観を反映する価格判断も下落方向にシフト。経済・物価情勢が「要注意」となってきた可能性を示している。市場関係者の間からは早速、財政・金融政策による「追加刺激策」を求める声が浮上してきた。 <予想以上の悪化> 市場が注目している大企業製造業の業況判断DIは、前回の昨年12月と比べて6ポイント低下して6となり、市場予想の8を下回った。 先行きも悪化しており、日銀では、1)中国・新興国経済の減速、2)インバウンド需要の鈍化──が響いたとみている。 全規模全産業での2015年度の経常利益見通しも、5年ぶりに下方修正された。16年度も減益見通しだ。 また、企業の物価への見通しを反映する販売価格判断(「上昇」─「下落」)は、大企業が昨年12月のマイナス11からマイナス15へマイナス幅が4ポイント拡大。仕入価格判断でも、大企業はマイナス2からマイナス8へ6ポイントのマイナス幅拡大となった。 さらに注目されるのが、大企業・製造業の想定為替レート。15年度のドル/円JPY=EBS119.80円に対して、16年度は117.46円。企業が次年度を円高方向にみるのは2011年度以来となった。 しかし、足元での急速な円高シフトには追いつけず、1日の水準である112円台とは約5円のギャップが生じている。 <価格判断にデフレ方向の動き> 景況感悪化の背景として、日銀は新興国経済の減速の悪影響を注視している。昨年12月の短観では、企業の業況感が日銀が心配していたほど悪化せず、いったんは安心感が広がった。 しかし、3月短観を見ると、懸念していた中国などの減速を起点にした悪影響が、いよいよ国内企業に波及してきた可能性が高いとみている。 また、内需の動向を反映している割合が大きい非製造業でも、足元だけでなく先行きの景況感が悪化方向に傾いたことに対し、日銀内では警戒感が高まり出している。 市場の一部では、インバウンド効果の頭打ちの反映との声も出ているが、国内消費に力強さが見られない最近の動向が、非製造業の業績に影響を与え出した可能性を指摘する声も日銀内にはある。 もし、外需と内需の両方に懸念材料を抱えることになれば、この先の日本経済が再浮上ではなく、失速するリスクが高まってしまう。日銀内では、足元の停滞感が一過性なのか、それとも長期化するのかを見極めたいという声も出ている。 さらに販売と仕入れの価格判断が、下落方向に動き出したことに対する警戒感も一部で聞かれる。もし、この背景に全体的な需給の緩みが存在しているなら、「デフレ方向」に引き戻そうという力が、久方ぶりに強まっているリスクがあるからだ。 <人手不足は物価押し上げ要因> 他方、日銀にとって好ましいデータもある。企業の人手不足感を示す雇用人員判断は18ポイントの「不足」で、先行きも人手不足の度合いが高まると予測している。 「少子高齢化による人手不足について、企業が織り込み始めている」(ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミスト、上野剛志氏)ことが事実なら、賃金の上昇を通じて物価上昇圧力となりやすい。 設備投資も堅調さが確認された。16年度大企業・全産業の設備投資計画は前年度比マイナス0.9%だったが、大企業製造業は同プラス3.1%。麻生太郎財務相は1日の閣議後会見で、大企業製造業の設備投資が増えているのは良い傾向だとの認識を示した。 <短観受けて株価急落、一時500円安> しかし、1日の市場は政府の楽観的な見通しとは対照的な動きを示した。日経平均.N225は前日比500円超の下落となる1万6200円台まで水準を切り下げた。 同時に市場の一角では「市場のセンチメント悪化が、今後の財政出動や日銀の追加緩和を促す可能性がある」(ニッセイ基礎研の上野氏)との思惑も浮上した。 これに対し、日銀は4日に公表される企業の物価見通しによって、期待インフレ率の失速感が明確になれば、追加緩和の検討も辞さない構えだ。 ただ、政府・与党関係者の一部には、1月のマイナス金利導入決定後に銀行株が急落し、株価全体が下押しされ、それが円高要因として指摘された記憶が、今も「生々しく残っている」(政府関係者)という。 政府・日銀がどのような情勢判断を下すのか。閣僚や政府高官、日銀幹部からのメッセージ発信をマーケットは見守っている。 (竹本能文 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/boj-idJPKCN0WY3L7 Business | 2016年 04月 1日 15:44 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 16年度相場は波乱の幕開け、業績懸念強めた日銀短観 [東京 1日 ロイター] - 厳しい2016年度相場のスタートとなった。円高は限定的だったが、日本株は大幅安。売りの背景は日本企業の業績懸念だ。この日発表された3月日銀短観で示された業績予想や想定為替レートが先行きの不安を強めている。政策催促相場になったとしても、持続的な業績拡大期待が高まらないようであれば株価の反発力は弱くなりそうだ。 <海外勢が警戒する業績下振れ> ネガティブ・サプライズの業績予想といえるかもしれない。3月日銀短観で示された2016年度の経常利益は全規模・全産業で前年比2.2%減となった。 新年度の収益計画は、3月の日銀短観で初めて明らかになるが、1997年以降、経常利益予想が前年比マイナスで出たのは09年と14年の2回しかない。「その後下方修正されるにしても、最初はわずかでも増益の計画を出してくるはず」(国内証券エコノミスト)との期待は裏切られた。 14年度の経常利益の結果は5.9%増と増益で着地したが、今年度は業績下方修正の可能性を秘めている。3月短観で示された大企業・製造業の想定為替レートは1ドル117.46円と足元の水準から約5円の円安。1円の円高で0.5%の減益要因とすれば、2.5%の下押し要因になる。 「昨年度までと真逆だ。海外投資家は、景気や業績に下げ止まり感がある米国企業などに業績上振れを期待している一方、円安の追い風が消えた日本企業には業績下振れリスクを警戒している」(JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏)という。 1日の値下がり率2位(東証1部)はパナソニック(6752.T)の12%。同社は31日に、17年3月期が減収・減益になるとの見通しを発表、19年3月期の売上高10兆円目標も撤回した。市場の業績懸念を示した株価の動きといえる。 <日経1万5000円割れ予想も> 年初からの日本株安の要因としては、中国景気減速や原油安など海外の材料も指摘されているが、突き詰めれば日本企業の業績悪化に集約される。 足元の日経平均の予想一株利益は約1123円。前年度ピークの1275円程度からは、約150円下がったことになる。PER(株価収益率)15倍なら2250円分だ。日経平均は前年度1年間で2448円下がったが、業績悪化でほぼ説明がつく。 15年度の業績予想に関しては保守的な予想が多いとみられており、4月後半からの3月期決算企業の業績発表時点では、上方修正される可能性が大きい。しかし、今年度は円高や世界景気の減速など逆風が吹いており、減益決算の可能性が高まっている。 ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏は15年度の1株利益の着地を1200円とみる。しかし、今年度は中立シナリオで1120円(7%減)、悲観シナリオで1038円(13%減)と予想。「悲観シナリオではPERは13─14倍に低下、日経平均は1万3500円─1万4500円がフェアバリュー」という。 <政策効果には冷めた見方> 足元の株安は政策催促相場ともいえるが、市場では「今後、景気対策が打ち出されたとしても、短期的にはともかく、中長期的な業績拡大期待は高まらない」(外資系投信)と冷めた見方も多い。 日銀がマイナス金利政策の導入を決定してから2カ月。市場の一部では、4月の追加緩和期待も高まってきているが、今回の3月短観にみる「政策効果」はまちまちだ。 金融機関の貸出態度DIが上昇し、借入金水準判断DIが低下するなどマイナス金利のポジティブ効果がみられている項目もある。しかし、利回り低下による運用難に苦しんでいる銀行業のDIはプラス16と前回比8ポイント低下。先行きはプラス8とさらに低下する見通しだ。 日銀短観の業況判断DIには金融機関は含まれないが、もし含めれば、全体の景況感はさらに悪化する。マイナス金利政策がなければ、全体の景況感はもっと悪化していたということも可能だが、日本経済をトータルにみて、マイナス金利政策の景気押し上げ効果は現時点ではそれほど大きくない。 販売価格DIから仕入れ価格DIを引いた「マージン」は先行き低下。輸入品などのコストが上昇する一方、消費環境は厳しく、業績改善期待は高まりにくい。財政政策で消費を押し上げても短期的効果しかないことは、バブル崩壊後の日本経済が示している。 アベノミクスを支えてきた企業業績に暗雲が漂い始めている。 (伊賀大記 編集:石田仁志) http://jp.reuters.com/article/tokyo-st-idJPKCN0WY3PR 3月日銀短観、予想以上に悪化:識者はこうみる News | 2016年 04月 1日 10:48 JST 関連トピックス: トップニュース
[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月短観は、大企業・中小企業、製造業・非製造業を問わず幅広い業種で業況判断が悪化。指標とされる大企業製造業の業況判断DIは昨年12月の前回比で6ポイントと大幅に下落して6となり、市場予想の8を下回った。 <みずほ証券 チーフ為替ストラテジスト 山本雅文氏> 企業の景況感悪化については市場の想定内だが、悪化の程度は市場予想以上に弱いものだった。 こうした結果を踏まえた景気刺激策について、為替市場はドル/円相場に影響を及ぼす可能性がある追加的な金融緩和ではなく、財政政策が採用される公算が大きいとみている。 このため、短観発表直後のドル/円は目立った反応を示さなかった。ただ、発表後に取引が始まった株式市場が株売りで反応しているため、リスク回避から若干の円買いを招いている。 現行のドル/円水準からかい離した117.46円に設定された2016年度の大企業・製造業の想定為替レートについては、ドル/円相場に直接的な影響を及ぼすものではないだろう。 ドル/円は当面111―114円をコアとするレンジ内での取引になるとみているが、今夜発表される3月米雇用統計が市場予想(非農業部門雇用者数(NFP)の伸び:20.5万人、平均時給の前年同月比2.2%増)を大幅に下回ったり、あるいは上回る結果となれば、コアレンジの下限/上限を試す展開となるだろう。 ただ、NFPと平均時給の両方が市場予想を上回る場合でも、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長のハト派発言を受けて、4月のFOMCでの追加利上げ期待にはつながりにくく、ドルの上昇は限定的なものになると考えられ、114円台に定着するのは難しそうだ。 <ニッセイ基礎研究所 シニアエコノミスト 上野剛志氏> 想定より良くない。大企業製造業DIが6で、先行きは3。非製造業も同じく22、17だった。ともに市場予想を下振れた。 発表後のドル/円は、株安もあってリスク回避的な円高が先行したが、こうした市場のセンチメント悪化が、今後の財政出動や日銀の追加緩和を促す可能性がある。政策期待に目が向けば、相場の下支えにはなるため、急激なドル安/円高の材料にはなりにくい。追加緩和のメーンシナリオは7月とみているが、ETFの買い入れ額の拡大だけなら4月もあるかもしれない。 16年度度の企業収益は、経常利益が前年比マイナス2.2%と慎重なスタートといえる。しかも前提となるドル/円レートは、大企業製造業で117.46円となった。足元は112円台前半と5円のかい離があり、相場がここから円安に向かわなければ、収益計画はさらに下振れる。 大企業製造業は機械系が総崩れとなり、円高や中国をはじめとする新興国経済の減速の影響を色濃く受けている印象だ。鉄鋼も弱い。 非製造業では、金融緩和の追い風を受けやすい建設・不動産がプラスだったが、個人消費の低迷を受けやすい小売・卸売がマイナスとなった。宿泊・飲食も相当大きく下落しており「爆買い」の下支え効果も力不足だったようだ。 需給は足元で国内外がともに弱含んでおり、販売価格もやや下振れバイアスがかかっており、景況感に響いたのだろう。設備投資もやや弱い印象だが、計画が詰まっていない春先はマイナススタートが通例のため、しばらく様子を見る必要があるだろう。 <大和証券・チーフエコノミスト 永井靖敏氏> 大企業の製造業・非製造業の業況判断DIは市場予想を下回ったほか、先行きも悪化持続を示している。新興国経済の減速や金融市場の混乱に加えて、内需も消費中心に低迷しているため、企業経営者の心理が一段と慎重になっていることが明らかになった。 また、16年度の大企業・製造業の想定為替レートは1ドル=117.46円と現在の水準に比べて5円程度のドル高・円安水準。今後の企業業績は下方修正含みだ。製造業の業況判断DIは、先行きゼロまで落ち込んでも不思議ではない。 ただ、日銀短観は、現時点で景気後退を示すほど悪い内容というわけではない。日銀が4月末の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切る可能性は低いとみている。追加緩和は早くても、金融機関のシステム対応が進み、マイナス金利でのコール取引に厚みを増す7月ごろではないか。 安倍首相は、16年度予算の前倒し執行を指示しているが、追加景気対策は既定路線だろう。消費再増税の先送りも議論されるだろうが、リーマン・ショック後ほど、景気の落ち込みがひどくないことを踏まえると、再増税先送りの根拠に乏しい。 <三井住友アセットマネジメント チーフストラテジスト 石山仁氏> 全体的に弱い印象があるが、ある程度想定の範囲内での悪化となった。ただ、想定為替レートは今の水準と相当のかい離がある。1ドル=112円─113円で想定レートが置かれれば、減益になる企業は当然出てくる。だが今の水準の円高が持続可能かといえばそうではない。 今後の米国景気の改善と、日本のマイナス金利政策の本来の効果を考えれば、年後半にかけて117円─118円への円安進行が期待できる。今回の短観で大幅に想定レートが円高方向に変わっていれば、今年度下期に円安になることによる企業業績のサプライズが期待できたが、発射台が117円台となれば、そうはいかない。 金融機関の貸出態度判断の部分は、前回調査からあまり動きはなかったが、業種ごとに濃淡が出ている可能性もある。中小企業で若干の改善がみられたことは、前向きに評価をしていいのかもしれない。一方、製造業の販売価格判断などをみても、物価に下落のプレッシャーが掛かっている。これは日銀の追加緩和に対する期待をつなぐものとなるだろう。 今後は追加緩和の期待による円安・株高と、期待はく落による円高・株安を繰り返す可能性がある。もっとも、アベノミクスへの信頼感が落ちているなかでは、追加緩和だけでなく、財政対応や消費税引き上げの先送りなど、日銀と政府の政策が一体感を持たなければ、市場は反応しないのではないか。追加緩和で投機筋が円安・株高に持って行ったとしても、再び巻き戻しになり株安になる可能性も意識しなければならない。 http://jp.reuters.com/article/martankan-idJPKCN0WY39O 桜井日銀委員:政策は乱発すべきでないが、やるべき時はきちっとやる 日高正裕 2016年4月1日 19:26 JST
「それほど早急な判断せず落ち着いて慎重に判断していけばいい」 「これからも知恵を絞って新たな政策手段を開発すべきだろう」 日本銀行の桜井真審議委員は1日夕、就任会見で、追加緩和について「金融政策はそれほど乱発すべきものでない」としながらも、「やる時はきちっとやるべきだろう」と述べた。 桜井委員は「景気の下振れリスクが高まっていることは事実」としながらも、「日本の経済指標は結構良いもの、悪いものが混じった状態だ」と指摘。「それほど早急な判断をするのではなく、少し落ち着いて、慎重にものを見て判断していけばいいのではないか」と語った。日銀は27、28両日、金融政策決定会合を開くが、一部で追加緩和観測がくすぶっている。 政策手段については「政策当局として一番重要なのは政策手段を多く持ち、たくさん開発しておくことだ」と指摘。「政策手段が多ければ多いほど目標は達成しやすい。これからも知恵を絞って新たな政策手段を開発すべきだろう」と語った。 日銀が1月に導入を決定したマイナス金利については「イールドカーブが随分早く下がった。意外なくらいに効いている」とした上で、実体経済に好影響を及ぼすには「ある程度時間がかかる」と語った。国債の買い入れについては「限界はまだまだ先の話だろう。日本の国債は短期から長期までいろいろとあるので、まだまだ余裕があるだろう」と述べた。 円はそれほど高くはないが 為替相場については「為替は金融政策の目標にはなっていない。ただ、結果として円高是正になった」と指摘した。足元の円相場については「12年前半は1ドル=80円というのはいくら何でも高すぎるだろう。今の状況はまあ、それほどすごく高いというほどでもないような感じがする」と語った。 一方で、「1月からわずか3カ月で7円、8円と上がってきたので、これはちょっと難しい。短期の変動はどうしてもオーバーシュートするのである程度仕方ない面もあるが、金融政策を考えれば、中長期でどれくらい安定してファンダメンタルズを反映するレートになっているかどうかが一番重要な判断の基準だろう」と述べた。 午後7時22分現在のドル・円相場は112円28銭付近で推移している。 同日発表された企業短期経済観測調査(短観)については「確かに悪化しているのは事実」としながらも、「設備投資はそれほど悪くなってない」と指摘。良い経済指標もあり、「そう悲観することもない」と語った。 一方で、2017年4月に予定されている消費増税については「消費が弱くなっているのは事実」とした上で、「景気の下振れリスクが高いときは、やはりかなりハードルは高いのではないか」と述べた。 物価目標は60%くらいは達成 桜井委員は白井さゆり氏の後任。任期は5年。1970年中央大学経済学部卒の桜井氏は76年に日本輸出入銀行に入行、旧大蔵省(現財務省)財政金融研究所特別研究員や旧経済企画庁(現内閣府)経済研究所客員研究員を歴任した。三井海上投資顧問取締役を経て2007年からサクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表。 会見で抱負を聞かれ、「景気は半年前に比べ、世界経済全体の成長減速に直面しているので、下振れリスクはやや高くなっている」と指摘。このような時期に審議委員に就任することになり、「大変責任重要で、身を引き締めて仕事をやっていきたい」と述べた。日銀が掲げる2%の物価目標については、原油価格の大幅な下落を考慮すれば、「だいたい物価目標の60%くらい達成しているのではないか」と述べた。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4Y96O6KLVRP01
Business | 2016年 04月 1日 19:58 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 金融政策、ある程度サプライズ必要=桜井日銀審議委員 [東京 1日 ロイター] - 4月1日就任した日銀の桜井真審議委員は同日会見し、金融政策について「ある程度のサプライズは必要。小出しに乱発すべきではない」と語った。黒田東彦総裁による政策運営スタイルを全面的に支援する姿勢を明確にした。 2%の物価目標は「できる限り(5年間の)任期中に達成したい」と述べる一方で、景気の現状は「下振れリスクが高い」とも指摘。目標達成のため、さらなる緩和強化にちゅうちょしない姿勢を示した。 <下振れリスク高まっている> 桜井委員は過去3年間の黒田日銀による大胆な金融緩和により、「物価目標は6割達成している」が、原油価格下落などの影響で「100%達成には時間がかかる」との見解を示した。 景気の現状について「日本経済は世界経済の減速に直面しており、半年・1年前と比べて下振れリスクが高まっている」との認識を示した。 もっとも、「経済指標は良いものと悪いものが拮抗している」とし、細かな景気認識については明言を避けた。 年初来の円高・株安については「ドルが80円台であった時と比べれば、今の状況はそれほど円高でない」とも述べた。 <金融政策、乱発すべきでない> 金融政策運営については、黒田総裁体制以降の過去3年間は「きちんと前向きにやってきた効果が出ている」と評価し、期待を変える観点からも、金融政策で「ある程度のサプライズを狙うのは必要」と語った。 2%の物価安定目標は「できれば早く達成するに越したことはないが、景気の基調を崩すことなく進んだ方がいい」と指摘。これまでの政策効果が出ている中で「慎重に推移を見守り、どういう政策を採るべきか考えた方がいい」とし、「金融政策は乱発すべきものではない」との見解を示した。 <新たな政策手段開発すべき> 債券市場を中心に年間80兆円の国債買い入れが数年内に限界を迎えるとの懸念が出ているが、「限界はまだまだ先の話」と否定した。同時に「政策手段は量から広げることが必要」と指摘。「今後も知恵を絞り、新たな政策手段を開発すべき」とし、各種政策手段を組み合わせることも提唱した。 消費増税については「景気の下振れリスクが高い場合はハードルが高い」と述べた。 桜井委員は金融市場でも必ずしも知名度が高くなく、このため「首相官邸のよほど強い意向で選ばれた」(国際金融筋)との見方もある。桜井氏は任命の経緯については「自分の書いた経済分析リポートが読まれたからだろう」と述べるにとどめた。 *内容を追加しました。 (竹本能文、伊藤純夫 編集:内田慎一) http://jp.reuters.com/article/sakurai-boj-money-idJPKCN0WY4A7
日銀短観、大企業製造業の設備投資増 麻生財務相「良い傾向」 [東京 1日 ロイター] - 麻生太郎財務相は1日の閣議後会見で、同日発表された3月調査の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)について、大企業製造業の設備投資が増えているのは良い傾向だとの認識を示した。 トップニュース, ビジネス 10:08am JSTPhoto 日銀短観は総じてプラス、石原再生相「所得と雇用環境いい」 [東京 1日 ロイター] - 石原伸晃経済再生相は1日の閣議後会見で、日銀が同日発表した日銀短観3月調査に関して「総じてみればプラスの状態を維持している」との認識を示した。 Business | 2016年 04月 1日 10:32 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 3月日銀短観は予想以上に悪化、中国減速でアベノミクス変調の兆し
[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月短観は、大企業・中小企業、製造業・非製造業を問わず幅広い業種で業況判断が悪化。指標とされる大企業製造業の業況判断DIは昨年12月の前回比で6ポイントと大幅に下落して6となり、市場予想の8を下回った。先行きも悪化しており、日銀では、1)中国・新興国経済の減速、2)インバウンド需要の鈍化──が響いたとみている。 全規模全産業での2015年度の経常利益見通しが5年ぶりに下方修正されており、安定した海外経済を背景に円安・株高が下支えしたアベノミクスの変調がいよいよ明確になった。 ・景況感は輸出企業ほど悪化、インバウンド増勢鈍化も響く 今回もっとも悪化幅が大きかったのは大企業製造業。中国発の国際商品市況急落と需要減が直撃した鉄鋼が22ポイントと落ち込んだほか、はん用・生産用機械などが落ち込んだ。造船も市況悪化が響いた。大企業非製造業も3ポイント悪化。小売や対個人サービス、宿泊・飲食サービスの悪化が目立っており、インバウンド需要の伸びが鈍化しているためとみられる。原油価格下落で恩恵を受ける電気・ガスなどは3ポイント上昇している。 ・経常利益、2011年以来の下方修正 2015年度の売上高は全規模全産業で前年度比マイナス1.0%と前回より0.5ポイントの減収見通しとなった。経常利益は4.3%の増益を見込むが、前回より1.0ポイントの下方修正。経常利益見通しの下方修正は2011年以来。 ・想定為替レートは実勢より円安 大企業製造業の想定為替レートは2015年度がドル円119.80円と前回の119.40円より円安となった。16年度についても117.46円と市場実勢より円安に設定されている。 ・国内、海外ともに製品・サービス需給悪化 国内での製品・サービス需給は、製造業、非製造業ともに供給超過方向に悪化した。海外での製造業の需給も供給超過方向に悪化した。 (竹本能文) http://jp.reuters.com/article/mar-tankan-idJPKCN0WY39A Business | 2016年 04月 1日 19:35 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス アングル:動き鈍る消費エンジン、「プチ富裕層」と「爆買い」変調 [東京 1日 ロイター] - 国内消費を支えてきた富裕層と訪日観光客の動きが鈍り始めている。年初からの株価下落が高級時計の売れ行きなどに影響、「プチ富裕層」の慎重な消費姿勢が顕著になってきた。 訪日観光客の免税売上高(インバウンド)は、客単価の減少を客数増でカバーする状況が続いており、消費拡大の原動力になってきた二つのエンジンが変調をきたしている。 1日に発表された3月の百貨店売上高速報では、各社の宝飾品・時計が前年同月比マイナスとなった。J.フロント リテイリング (3086.T)の宝飾・時計は21%減と大きく落ち込んだほか、高島屋 (8233.T)でも宝飾が6.5%減、時計が4%減となっている。 高島屋の広報担当者は「百貨店の高額品販売は、株価に対して2―3カ月遅れで連動する。年初からの株価下落により高額品の販売に影響が出ている」と分析する。昨年末1万9000円だった日経平均株価は、年初から荒い値動きとなり、4月1日現在では1万6000円付近で推移している。 こうした株安の影響は「超富裕層」ではなく「プチ富裕層」に鮮明に表れている。三越伊勢丹ホールディングス (3099.T)の三越日本橋本店では、500万円以上の時計の販売個数は前年同月と同水準だったが、100―500万円の時計の販売個数は2桁減と落ち込んだ。 三越伊勢丹HDの広報担当者は「基調として、富裕層のマインドが慎重になってきているが、背景などは分析し切れていない」としたうえで、「日本橋店で美術品は60%増。富裕層の消費がどう動くか、2・3・4月が転換点になる可能性も含め注目している」と話す。同社の3旗艦店(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店)の宝飾・時計は3%減となった。 <免税売上は客単価減> 消費を支えるもう一方の柱だった訪日観光客による消費は、免税売上高でみると、高額品のまとめ買いから、化粧品を中心とした消耗品へと購買対象が移り、客単価が下落している。三越伊勢丹では、3月の客単価が前年同月比17%減と大きく低下した一方で、客数は30%増と伸び、結果、免税売上高は9.1%増と伸長した。 安倍晋三政権は3月31日、訪日観光客数を2020年に4000万人とし、訪日客の消費額を8兆円まで引き上げる新たな目標を設定した。こうした政府の動きがあるだけに、客数増に対する期待は大きい。 高島屋では「中国の景気減速の影響が懸念されていたが、中国の富裕層は1億人、そのうちパスポート保有は5%と言われている。まだまだポテンシャルは高い」とみている。 今年1月の三越銀座店に続き、ロッテが3月31日に銀座に空港型免税店をオープンさせた。消費税だけでなく、関税なども免税となるほか、受け渡しが空港となり、荷物を運ぶ手間も省ける。大阪や福岡など今後も計画は目白押しだ。増える観光客、そしてその消費をどのようにして取り込むか―――。消費を支える貴重な柱だけに、インバウンド獲得競争はますます激しくなってくる。 (清水律子 編集:北松克朗) http://jp.reuters.com/article/focus-shopping-idJPKCN0WY4B6?sp=true
Business | 2016年 04月 1日 19:11 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 消費喚起へ「定率減税を」、諮問会議民間議員 骨太取りまとめへ提言 [東京 1日 ロイター] - 経済財政諮問会議(議長、安倍晋三首相)の民間議員が4日の会合で示す、骨太方針の取りまとめに向けた提言原案がわかった。 2017年4月の消費税率引き上げを控え、所得税や住民税を視野に入れた「定率減税」を含む可処分所得の増加策を柱に、消費喚起への取り組みが重要と指摘する。政府筋が明らかにした。 提言は、今年5月の取りまとめをめざす骨太方針のたたき台となる。日銀が1日発表した3月短観は大企業製造業の業況判断(DI)がプラス6と専門家の予想に届かず、景気の足踏み感が色濃い。 提言では、日本のファンダメンタルズについて、良好との認識を維持する一方、「民需に力強さを欠いている」と強調。そのうえで安倍政権が掲げる1億総活躍社会の実現に寄与する政策を重点的に盛り込み、600兆円経済に向けた道筋を鮮明にすべきと指摘する。 成長と分配の好循環に向けた基本方針としては、1)国際協調に向けG7で日本が積極的役割を果たす、2)定率減税を含む可処分所得の増加策などの環境整備、3)アベノミクスの成果の活用方針の明確化──などを列挙。 具体策として、待機児童解消に向けた保育の受け皿拡大や保育士の待遇改善、最低賃金1000円の早期実現などを掲げる。子育て支援バウチャー(クーポン)の導入で、潜在的な需要の創出にも努める案も明記する。 <結論まで曲折も> 民間議員が減税措置を提言する背景には、消費税率8%への引き上げ以降、低迷する個人消費への危機感がある。 ただ、現政権がめざす経済成長と財政健全化の両立に効果があるかは不透明なうえ、「減税すれば将来的に社会保障制度が維持できない」「20年度に基礎的財政収支の赤字を解消できなくなる」などと反発を招くのは必至だ。 政府内には「定額ならまだしも定率にする意味はあるのか。『高所得者優遇』との批判が強まるだけでは」との声も出ており、実際に導入できるか結論を得るまでの曲折は避けられそうにない。 http://jp.reuters.com/article/tax-cut-plan-idJPKCN0WY47H Business | 2016年 04月 1日 17:43 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス GPIF新理事長「現在の枠組みで最善」、市場変動に警戒感も
[東京 1日 ロイター] - 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の高橋則広理事長は1日、就任に当たって記者会見を開き、現在の基本ポートフォリオの中で最善を尽くす考えを示した。足元では市場の動きが激しく「短期的な収支変動は避けられない」と警戒感をにじませた一方、分散投資によって安全かつ効率的な運用を目指すと強調した。 GPIFの運用をめぐっては、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会などで株式の直接投資に関する議論が進められたが、見送られる結果となった。 高橋理事長は「運用には必ず制約があるもの。今の制約の中で、長期投資家としてどの程度のリターンを出せるのか、チャレンジしていきたい」と語った。 (梅川崇) http://jp.reuters.com/article/gpif-idJPKCN0WY40C リスクあるが追加利下げは可能−スイス中銀のメクラー理事 Catherine Bosley 2016年4月1日 18:35 JST スイス国立銀行(中央銀行)のメクラー理事は追加利下げについて、生じ得る副作用を踏まえ検討する必要はあるものの、可能性は排除しないとの考えを示した。 メクラー理事はチューリヒで3月31日行われた金融専門家のイベントで、「常に、必要に応じてあらゆる選択肢を検討している。追加利下げを含めいかなる選択肢も排除しない」と語った。 原題:SNB’s Maechler Says Further Rate Cut Possible Despite Risks (1)(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4Y506SYF01S01 ユーロ圏:3月の製造業上向く、製品価格は下落−ECBに警鐘 Jeanna Smialek 2016年4月1日 18:13 JST ユーロ圏では3月に製造業の活動が上向いた ものの、製品価格は2009年以来の大幅下落となった。インフレ圧力が弱 く企業が値上げをしにくい状況が示された。 マークイット・エコノミクスが1日発表した3月のユーロ圏製造業 購買担当者指数(PMI)改定値は51.6と、2月の51.2から上昇し活動 拡大・縮小の分かれ目である50を上回った。3月は速報値の51.4から上 方修正されたものの、1−3月期ではここ1年で最も低い水準にとどま った。 価格の指標は欧州中央銀行(ECB)にとっての事態の厳しさを浮 き彫りにした。ECBは域内のインフレ押し上げに向け新たな刺激措置 を打ち出しているが、3月のユーロ圏インフレ率はマイナス0.1%と2 カ月連続でゼロを下回った。インフレ率は3年にわたり、ECBが目指 す2%弱の水準に届いていない。 マークイットのエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「製造 業のサプライチェーン内でデフレ圧力が高まっていることに当局者らは 懸念を深めるだろう」とし、「デフレ圧力は『中核国』で特に顕著で、 価格は急落している。活動はドイツで2カ月連続してほぼ停滞したほ か、フランスでは昨年8月以来の縮小となった。両国では雇用も広範な トレンドに反して純減した」と語った。 3月のドイツ製造業PMI改定値は50.7と、速報値の50.4から上方 修正された。フランスの製造業PMIは49.6だった。 原題:Prices Sag in Warning to ECB Even as Manufacturing Picks Up(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4Y4XU6KLVRM01 ロシア:10−12月GDPは前年同期比3.8%減−予想ほど縮小せず Olga Tanas 2016年4月1日 22:46 JST ロシア経済は昨年10−12月(第4四半期)もマイナス成長となったものの、予想ほど縮小しなかった。 連邦国家統計局が1日発表した10−12月国内総生産(GDP)は、前年同期比で3.8%減少した。ブルームバーグがまとめたアナリスト13人の調査中央値では3.9%減が見込まれていた。7−9月(第3四半期)は3.7%減に上方修正された。 1−3月(第1四半期)と4−6月(第2四半期)はそれぞれ2.8%減、4.5%減と、これまでの2.2%減と4.6%減からそれぞれ修正した。通年では3.7%のマイナス成長となった。 原題:Russian Economy Shrank Less Than Forecast, Enduring Crash in Oil(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4YIWR6KLVRU01 新興国株は「新たな夜明け」、クレディSは一段高を予想−チャート David Wilson 2016年4月1日 15:48 JST
先進国株との比較でここ数年、回復に苦戦していた新興国株が「新たな夜明け」を迎えたと、クレディ・スイス・グループのストラテジスト、アレクサンダー・レッドマン、アルン・サイ両氏が指摘した。MSCI新興市場指数とMSCI世界指数の比率は1月21日に付けた11年ぶりの低水準から3月30日までに9.8%上昇した。新興国通貨や商品相場の上昇、利益率の改善、投資信託への資金流入は一段の上昇を示していると両氏は31日付リポートで分析した。 原題:Emerging-Stock Rebound Means ’New Dawn’ to Credit Suisse: Chart (抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4XYWA6JIJUQ01 【インサイト】ジャンク債のデフォルト、10兆円で終わりとは限らない Lisa Abramowicz、Rani Molla 2016年4月1日 07:03 JST
クレジットサイクルが急速に悪化しつつある状況を疑う人がいるなら、世界最大の米社債市場でデフォルト(債務不履行)の数字が上昇している様子を見るといい。 フィッチ・レーティングスによれば、米国のジャンク(投機的格付け)債のうち今年は900億ドル(約10兆円)相当がデフォルトに陥ると予想される。これは先の金融危機以降では、最も大規模だ。社債市場の窮状の深刻さは、大手格付け会社のアナリストを含め多くの人々を仰天させ、アナリストらはデフォルトの見通しを増加方向に修正した。 米連邦準備制度の緩和的な金融政策がリスクの高い米債の購入を促し、リスクに見合う十分な補償がない事実が時に無視される浮ついた状態が何年も続いた後、デフォルトの拡大が予想される今の状況は、投資家を冷酷な現実に目覚めさせる。また、より投機的な資産に運用担当者を駆り立てようと中央銀行が全力を挙げている欧州にも、同時に警告を発することになるだろう。 米国の高利回り債市場が2009年末以降66%拡大し、約1兆4000億ドル規模に達していることもあって、デフォルト率が同年のピークをなお大きく下回っていることは朗報だ。 しかし、今後1、2年でさらにデフォルトがどれだけ多く発生するかはっきりせず、基金からヘッジファンド、投資信託の投資口を購入する一般家庭の投資家に至るまで、ありとあらゆる種類の投資家が痛みを感じていることは、悪い知らせだ。ブルームバーグが最新の届け出資料をまとめたところでは、約10億ドルの負債を抱え、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請した石油掘削リグメーカー、パラゴン・オフショアが発行した社債の大口保有者には、米資産運用会社ルーミス・セイレスやアライアンス・バーンスタインも含まれている。 今後さらに痛みが待っているのは、かなりはっきりしている。今がデフォルト局面の終わりなのか、中盤なのか、始まりにすぎないと考えるべきか、ただそれが分からないだけだ。 (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません) 原題:A $90 Billion Default Flood That May Not Be Cresting: Gadfly(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4W4WS6KLVRO01 Business | 2016年 04月 1日 14:32 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 中国統計局3月製造業PMI、50.2で予想以上に改善 人員減は続く [上海 1日 ロイター] - 中国国家統計局が発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2で、2月の49.0から予想以上に改善し、景況拡大と悪化の分かれ目となる50を9カ月ぶりに上回った。 市場の予想は49.3で、2月から幾分改善するものの、節目の50には届かないとみていた。 2月の製造業PMIは2011年以来の低水準だったが、一部エコノミストは春節(旧正月)休暇の時期の影響で指数にゆがみが生じた可能性があると指摘していた。 また、このほど発表された1─2月の工業部門企業利益が前年同期比で4.8%増加し、昨年12月まで7カ月連続で続いていた減少からプラス転換。製造業の苦境が底打ちしたのではないかとの期待が強まっていた。 一部アナリストは、不動産市場の回復が加速し、建設活動が活発化したことでセメントやガラス、鉄鋼といった建材の需要が強まったことも今回の改善の背景にあるのではないかと指摘している。 ただ、生産指数が上昇し、国内外ともに新規受注指数が50を上回ったものの、雇用指数は依然として50を大きく下回り、工場の人員削減が進んでいることを示している。 中国ウオッチャーらは経済は引き続き低迷が見込まれるとして、中国政府や中銀による財政出動拡大や利下げの支援が必要だと指摘する。 実際、統計局のPMIよりも小さい規模の企業に焦点を当てた財新/マークイットの3月中国製造業PMIは49.7で、13カ月連続で50を下回っている。とはいえ、悪化の度合いは13カ月中で最も軽微となった。雇用指数は前月とほぼ変わらない水準となっており、29カ月連続で50を下回った。 国家統計局が同時に発表した3月の非製造業PMIは52.7から53.8に上昇した。 *内容を追加します。 http://jp.reuters.com/article/china-statistics-idJPKCN0WY3B8 金融監督当局、気候変動リスクの影響に注目 By GABRIELE STEINHAUSER 2016 年 4 月 1 日 15:14 JST 【ブリュッセル】世界各国の規制当局は、気候変動や原油価格の急落に対処できなかった場合、金融の安定にどのようなリスクが生じ得るかについて検討を進めている。 英イングランド銀行(中央銀行)や金融安定理事会(FSB)、欧州システミックリスク理事会(ESRB)といった監督当局は、二酸化炭素の排出規制で石油やガス、石炭の関連企業株が急落した場合、銀行や保険会社、年金基金などがどのような行動を取るかについて分析を行っている。 監督当局が注目しているのは、こうしたエネルギー関連企業に対し、株式と債券の両市場で抱えるリスクの開示を義務付け、さらには、異なる環境条件下でのシナリオに基づくストレステスト(健全性審査)を実施したり、追加的な資本バッファーを求めたりする新たな規制策だ。 当局が懸念しているのは、科学的な評価によると、各国政府が地球の気温上限を産業革命以前の水準から2度上回る温度にしたいと考えた場合、現在分かっている世界の石油埋蔵量の多くは今後掘削することができなくなることだ。昨年12月に合意した「パリ協定」に盛り込まれた通り平均気温の上昇を1.5度に抑えようとすれば、いわゆる「炭素予算」はさらに縮小するだろう。 このため、太陽光や風力といった再生可能エネルギーへの転換での管理がうまくいかなった場合、石油関連会社の株が売りを浴び、エネルギー不足による経済問題が広がるのではないかとの懸念が生まれている。 イングランド銀行のカーニー総裁は最近の講演で、「今後の展望に大規模な見直しがあった場合、それが急なものであればなおさらだが、市場は不安定化し、景気循環に沿った形で損失が発生したり金融環境の引き締まりが続いたりする恐れがある」と述べた。 FSB議長でもある同総裁はこのところ、気候変動リスクをめぐる議論の有力な論客となっている。20カ国・地域(G20)は昨年、気候変動に関連して金融システムが脆弱(ぜいじゃく)化する可能性の範囲について、FSBに問いただした。 これに対しFSBは、各企業が気候変動リスクを開示する際の基準を策定する作業部会を立ち上げた。初の報告書は1日に発表される。 関連記事 欧州の再生可能エネルギー開発減速 中国のCO2排出目標、すでに達成=英研究所 米国債市場、4-6月期も不安定な展開続くか 米国債市場にかかる相反する圧力が、4-6月期の相場動向予想を難しくしている By MIN ZENG 2016 年 4 月 1 日 15:27 JST 米国債市場では、一部の債券利回りが数年ぶりの低水準をつける中、投資家らは米国の雇用急増とのつじつまをどう合わせるか苦慮しつつ、4-6月期の荒れ相場に身構えている。 2016年1-3月期に長期米国債利回りは四半期としては最大の低下を記録し、四半期末としては12年末以来の低水準で3月31日の取引を終えた。10年債利回りの終値は1.784%で、15年末の2.273%から大幅に下がった。これは投資家らが米国債を長く買ったままにするリスクを気にしていない様子を物語っている。 しかし、米国経済の情勢は、債券投資家にとって10年前の住宅バブル全盛期よりもさらに多くの危険性をはらんでいると言うのがアナリスト全般の見解だ。失業率は08年以来の水準まで低下し、賃金は上向く兆しをみせており、待望のインフレ回復が始まる可能性がある。インフレは、固定された金利収益の価値を薄め、債券投資家に打撃を加える事態だ。 こうした情勢から、4-6月期の投資行動を予想するのはかなり難しいものになっている。 ウィリアムズ・キャピタル・グループの債券取引責任者、デビッド・コード氏は、「経済指標と債券相場のずれが実際どうなるか、解き明かすことは難しい」と指摘した。 一部の投資家は、13年半ばに米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和(QE)縮小観測を背景として生じたいわゆる「テーパリングかんしゃく」のような債券相場の急落が今後数カ月で起きる可能性があるとみている。経済成長が上向きインフレ率を押し上げ、長期国債の売りを促し、米国債利回りが上昇するとの見方だ。 一方、世界に目を向け、欧州と日本は金利をさらにマイナス水準に引き下げ、FRBが利上げする構えであっても米国債の需要は高まるとの見方もある。 FRBのイエレン議長は29日、世界の成長見通しが不透明なため利上げは極めてゆっくり行うと語った。アナリストらは、こうした慎重な姿勢で米国債利回りは抑えられ続けるだろうとみている。 だが、利回りを動かす力は上下のいずれについてもかなり強い。アナリストやトレーダーらの多くは、利回りは必ずしも経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)で左右されるものではないとして、大幅な値動きに甘んじている。 2年債と10年債の利回り差(左)、長期米国債ファンドへの資金動向(中)、1-3月期の年限別米国債運用成績(右) ENLARGE 2年債と10年債の利回り差(左)、長期米国債ファンドへの資金動向(中)、1-3月期の年限別米国債運用成績(右) 実際、長期米国債に対する世界からの需要があまりにも強いため、2年債と10年債の利回り差は2月29日に07年12月以降では最少の0.95%まで縮小した。ヘッジファンドや資金運用担当者らが長期米国債の持ち高を積み上げているため、この利回り差は13年末の2.62%から急激に縮小した。 長短の利回り差縮小は、先行きの景気低迷を示唆することが多いが、そうした兆しはいま見当たらない。米国の失業率は2月に4.9%となり、一部のインフレ指標はこのところFRBが目標とする2%を上回っている。 一部の投資家は、この利回り差の急速な縮小は、米経済の下ぶれリスクを過大に見積もっている可能性があると懸念している。 一方、利上げしても長期金利が上がらないという逆説的状況の可能性を指摘するアナリストもいる。04年6月から06年6月にかけてFRBが利上げを続けたにもかかわらず、大量の外貨準備を背景とした中国をはじめとする新興諸国からの米国債需要が利回り上昇を抑えたときのようにだ。 だが、いまや中国からの相場支援は期待できない。米国債にとって最大の外国投資家である中国は、人民元の急落を回避するため米国債の持ち高を解消して資金化し始めており、この動きが急に終わると予想するアナリストはほとんどいない。 関連記事 米大手銀、利上げに備え「満期保有」債券を拡大 米国債市場の戦略、海外のマイナス金利で異変 米長短金利差が縮小の一途、景気見通し予断許さず https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CO940A_QMLED_16U_20160330185739.jpg
主要行の原油相場見通し、昨年8月以降で初の上方修正 当面は供給過剰継続が予想されるため、慎重姿勢は変わっていない WSJが調査した投資銀行13行の原油相場の見通し
By GEORGI KANTCHEV 2016 年 4 月 1 日 17:10 JST 主要投資銀行は原油相場の見通しを昨年8月以降初めて、やや上方修正した。ただし、慎重な見方は崩していない。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が投資銀行13行を対象に実施した調査によると、原油価格の平均予想は前月より1ドル上がった。米国の原油価格は2月につけた安値から50%近く戻している。国際指標のひとつである北海ブレント原油の今年の平均予想は1バレル=40ドルで、米国指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は同39ドル。 米国ではガソリン販売が伸びている(写真はノースダコタ州の油田) ここ最近の上げ相場は、2014年から相場の押し下げ圧力となってきた世界的な在庫のだぶつき感が今年は後退し始めるとの楽観的な見方が背景。サウジアラビアやロシアを含む主要産油国は生産量の制限を約束した。一方、米国では自動車による移動の需要が伸び、ガソリン販売が押し上げられた。 だが当面は供給過剰が続き、世界の在庫も増え続けると予想されるため、主要各行は相場の見通しに慎重になっている。 ソシエテ・ジェネラルの石油市場調査責任者マイク・ウィットナー氏は「大量の供給過剰により、現在の世界的なファンダメンタルズは依然として弱い」と指摘。 ウィットナー氏は、原油価格には圧力がかかっているとみている。その理由は、やや下向きとはいえ立ち直りの早い米国の原油生産、石油輸出国機構(OPEC)加盟各国による大量生産、さらにイランによる世界市場への段階的な回帰だ。 カタールの首都ドーハで今月17日、OPECと非加盟産油国が増産凍結に関して協議する予定だが、合意にいたる可能性についてアナリストらは懐疑的だ。例えば、イランは長年にわたる経済制裁の影響で失った市場シェアを取り戻すため、生産量の拡大を目論んでおり、今回の話し合いには参加しない。 また、OPEC加盟国のなかで輸出量が最大級のサウジアラビアとクウェートは今週、1日当たり最大30万バレルの生産能力を持つ共同運営の油田の生産再開を決めた。 関連記事 中国の石油会社、原油安でも従業員は安泰 ヘッジファンド、供給過剰の原油に強気に転じる 米シェールオイル業界、反撃の機会はあるか https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AH989_OILPOL_16U_20160331062712.jpg 山田厚史の「世界かわら版」 【第106回】 2016年3月31日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員] 増税見送りなら、日銀は「財政ファイナンス」責任論を免れない 中央銀行の規律は守られているか―― ?渋顔が多い日銀総裁の中で、黒田東彦総裁はなぜか微笑みを絶やさない。安倍首相の勉強会・国際経済分析会合でノーベル賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏や、ポール・クルーグマン氏と並んだ時も、笑っていた。TVに映ってニコニコ顔に「黒田さん、笑ってられる場ですか」と突っ込みを入れたくなった。世界の「賢人」は、日本経済の危うさを指摘し「消費税増税を実施できる経済状況でない」と進言し、首相は「消費増税先送り」へと動き始めた。 ?日銀の見立ては「景気は緩やかに回復中」だったはずだ。それが正しいなら消費税見送りという結論にはならない。「リーマンショック級の事態が起きない限り消費増税は実施する」と首相は繰り返し言っていた。 ?異次元緩和に踏み切ったのは「政府は財政健全化に努める」ことが条件だった。ところが、猛烈な勢いでお札を刷って財政赤字を埋める「日銀による財政ファイナンス」が進んでいる。後世、黒田氏は「中央銀行の規律を崩壊させた総裁」と言われるのではないか。理由は3つ。@国債バブルを発生させた。A事実上の国債日銀引き受けを行った。B中央銀行の政治的独立を放棄した。 ?笑っている場合ではない。 2013年の政策アコードで 政府と日銀は財政規律を“約束” 「政策アコード」という取り決めがある。2013年、白川方明日銀総裁の日銀と政府の間で取り交わされた協定だ。日銀は国債を買い上げて金融機関に流動性(通貨)を供給する。政府は財政健全化に努め、国債の膨張を抑制する。そんな約束だった。 「市場に出回る資金を増やすため日銀は国債を買うが、政府がこれ幸いと財政赤字を膨らませたら大変、ということで念のため約束を取り交わした」 ?日銀の政策担当者はそう言っていた。 「政府が財政規律を緩めることの片棒を担ぎませんよ」という日銀に、政府が「大丈夫、財政節度は守るから」と応じたのが政策アコードだ。 ?そのころ日銀が買い上げる国債は年間5兆円程度だった(2012年の取り決め)。これぐらいなら財政も緩むまい、という判断だった。ところが、黒田総裁が就任すると「異次元の金融緩和」が始まり、買い入れ額は一桁上がって50兆円に膨れた。 「そんな無茶苦茶な」と金融界は驚いた。常識はずれの政策まで動員し日銀の本気を示す、ショック療法である。「インフレがやってくる」と世間が受け取れば、「今のうちにカネを使ってしまえ」と消費や投資が誘発される、というシナリオだった。 ?異次元緩和は短期決戦を狙った劇薬だった。物価が跳ね上がったらさっと手仕舞い、という筋書きだったが、目論見はもろくも崩れた。だが一度手を染めた劇薬はやめられない。「有事の非常手段」が日常のオペレーションになり、それでも効かないため劇薬の処方を増やす。第二弾が2014年10月末に放たれた。50兆円が80兆円になった。目先の株価は上がったが物価に効かない。景気も冷え込んだまま。期待したトリクルダウンも起こらず、アベノミクス神話は陰りだす。そして第三弾がマイナス金利だった。 「ベースマネー」を増やせば、インフレ期待が膨らむという仮説は「的外れ」だったことが、この3年で立証された。 ?劇薬の処方はもう止めたほうがいい。副作用があるからだ。 マイナス金利は赤信号 いつかは終わる「国債バブル」 ?怖い副作用の典型が「国債バブル」である。満期10年の長期国債の市場金利はマイナス0.1%となった。国債金利がマイナスになるということは借金する側が利息をもらう、ということだ。財政赤字で政府は借金すればするほど得する。あり得ないことが国債市場で起きている。 ?国債価格がどんどん上がっていく。満期が来たら100円で償還される国債が102円前後で買われている。非常識を絵に描いたような現実が起きている。日銀が買い上げているからである。 ?こんなバカげたことはいつまでも続かない、と知りながら市場は熱狂に沸いている。バブルである。弾けるまで上昇相場に乗る。リーマンショック直前のサブプライムローンや、バブル経済に沸いた日本の不動産市場がそうだった。 ?賢明な読者はお分かりと思うが、マイナス金利は国債バブルに赤信号が灯った、という警鐘である。それなのに「資金調達がしやすくなった。どんどん国債を発行して公共事業で景気対策しよう」とい声が首相周辺から上がっている。そうした風潮がバブルである。 ?輪転機を回せばカネはいくらでも創れる。日銀はこれからもずっと国債を買い支えるのか。それは不可能だ。やがて日銀財政が破綻するだろう。高値で買った国債が額面価格(100円)で償還されれば差損が出る。今のペースで国債を買い上げていたら、遠からず年間数十兆円の国債が償還期を迎え、数兆円規模の損失さえ生じかねない。どこかで止めなければ日銀財務が破綻する。 ?証券市場は、売ったり買ったりするプレーヤーで成り立っている。政府の介入は短期的には有効であっても、ひたすら買いだけ、しかも通貨発行権を背に、という行為は間違いなく市場を歪める。咎めはやがて国民が負うことになるのだ。 出口が見えない「財政ファイナンス」 異常な相場はハードランディングが常 ?第二の副作用は財政ファイナンスである。日銀は「国債を買っているのは通貨発行量を増やすための措置であり、財政への資金供給にはあたらない」としている。それは方便に過ぎない。硬貨の裏表みたいなもので、金融政策で買い取っても、財政補填になる。 ?財政法は「日銀による国債引き受け」を禁止している。戦費を国債で賄い戦後のハイパーインフレにつながった教訓が込められた「禁止規定」だ。それなのに日銀の国債買い上げが許されるのはなぜか。 ?政府から直接引き受けるのではなく、銀行が保有する国債を買い取るから構わない、という理屈である。だが銀行は「媒介業者」に過ぎない。財務省から買って利益分を上乗せして日銀に売っている。事実上の日銀引き受けである。年間80兆円の買い上げは、新規の国債発行(2016年予算で34兆円)の2倍超に相当する。 ?強引な買い上げは「市場のメカニズム」を破壊した。国債は大量に発行されれば引き受け手が足りなくなり、金利が跳ね上がる。調達コストが上がり発行にブレーキが掛かる、という市場メカニズムを通じて放漫財政を封じてきた。カネに糸目をつけない日銀の登場で市場による抑制機能が失われ、マイナス金利で借金ができる魔法の杖を政府は手に入れた。 ?先に指摘したように「魔法」はやがて消える。その時に何が起こるのか。国債バブルで高騰した価格は反落する。異常なほど上がっているから衝撃は大きいだろう。いずれは下がる、と皆知ってるが、いつ起こるのか。それは暴落か。だれも分からない。分からないから考えたくない。上がっているうちに儲けておこう。市場参加者の多くはそんな対応ではないか。 ?軟着陸のシナリオもある。日銀が買い上げのペースを緩める、市場の落ち着きを見定めながらやがて停止し、景気が良くなってきたら少しずつ売って日銀の負担を減らす。 ?異次元緩和の「出口戦略」と呼ばれるものだが、言うは易く、行うは難し、である。投資家は先を読む。日銀が買い入れペースを落とせば、国債価格はこれから下がる、と見て売りが殺到するだろう。出口戦略は全く描けていない。リーマンショックやバブル崩壊のように熱狂相場はハードランディングで終止符を打たれるのが常だ。 ?大型倒産、政情不安、外国発の経済危機、天変地異、テロ。何が引き金になるかわからない。ヘッジファンドなど投機筋が仕掛けることもあるだろう。日本国債の格下げがきっかけになるかもしれない。 ?今のペースが続けば、2年後には政府が発行する国債のおよそ半分を日銀が保有することになるという。銀行、生命保険、年金基金などが国債を保有しているなら、その後ろに国民の貯蓄がある。日銀が持つ、ということは政府の借金が輪転機によって賄われていることに等しい。 ?だから政策アコードで、日銀は「健全財政をお願いします」とクギを刺した。クギは抜けてしまったのか。 「政治から独立」のはずの 日銀総裁が去就を問われる事態 ?6月の参議院選挙は、ダブル選挙になるかもしれない。首相はその前に、来年4月の消費税10%増税延期を発表する。そんな政治スケジュールが永田町で語られている。 ?2014年11月と同じことが繰り返されるかもしれない。あの時は、翌年10月に決まっていたのを1年半延期し、「国民への約束を変更したことへの信を問う」と称して衆議院を解散した。その時、安倍首相は何と言ったか、以下は読売新聞に載った記者会見の記事である。 「安倍首相は18日夜、首相官邸で記者会見し、2015年10月から予定されている消費税率10%への引き上げを17年4月に1年半先送りするとともに、21日に衆院を解散する考えを表明した」 「17年4月の再増税に関しては、『18ヵ月(1年半)後にさらに延期するのではないかといった声があるが、再び延期することはない』と(安倍首相は)強調した。来年の通常国会で、増税の道筋を定めた社会保障・税一体改革関連法を改正する際、景気次第で増税を見送る『景気条項』を撤廃する方針も示した」 ?首相は「景気判断で再延期するようなことはもうしません」と言ったのである。 ?前回(2014年11月)は国内の経済学者やエコノミストを集め意見を聞いた。予定通りの増税を求めた専門家は少数ではなかったが首相は「延期」を強行した。 ?今回は海外からノーベル賞級の学者を呼んだ。首相がお相手を務め、「あたま撮り」をTVがお茶の間に流す。結論は人選で決まる。「消費増税の延期を進言した」とメディアが伝えれば、「増税などゴメン」と思う有権者は「安倍支持」に傾く、という世論誘導でもある。 ?学者たちがどんな論理でどのような分析をしたか、全体像は「非公開」。都合のいい部分だけを抜き出して菅官房長官が発表した。 ?財政再建を消費税で行うことが正しいか、大いに議論はあるだろう。スティグリッツ氏は、消費を冷やす消費増税を否定し、併せて法人税減税に異を唱えた。温暖化ガスの排出に課税する炭素税を主張している。大事なのは公平な課税と適切な分配である。 ?安倍政権には未来を見据えた財政論議がない。決めていた不人気政策を、自ら取り下げ「甘口政策」の是非を国民に問う。そこで約束した政策を、また取り下げ、二匹目のドジョウを狙う。頭にあるのは選挙に勝つこと。 ?政治の世界はそんなものかもしれない。経済政策を預かる側はそれでいいのか。 「政治から独立」のはずの日銀総裁が去就を問われる事態である。 ?2014年11月に安倍首相が「増税一年半先送り」を決めた時、黒田総裁は困惑していた、という。 「債券市場がどのように反応するか注目している」 ?記者会見で、懸念を表明した。財政再建の先送りは国債の信用を低下させる。消費税先送りを受けて米国のムーディーズは日本国債の格付けを1ランク下げた。総裁は「消費税延期を残念に思った」「裏切られた思いだったようだ」と解説する人もいる。 ?直前の10月31日に「黒田バズーカ第二弾」と呼ばれる金融緩和策が発表された。ここまでしたのだから、財政再建はしっかりやってほしい、という日銀の思いを込めた追加策だった、という。 ?官邸は無視し「財政健全化」を先送りした。同じことがまた繰り返されるとしたら、総裁として将来に責任はとれるのだろうか。 ?短期決戦で始めた戦争が長期化し、敗戦確実な状況でもやめられず、絶望的な思いで戦艦大和が沖縄に向かった情景が、マクロ経済運営に重なる。 ?黒田総裁の内心は知る由もないが、苦悩を表に見せない仮面がニコニコ顔のように思えてならない。 http://diamond.jp/articles/-/88788
|