米家計、支出増えるも所得は減少=民間財団調査 ドイツ系格安スーパーのアルディ店内(南カリフォルニア) PHOTO: CASEY RODGERS/INVISION FOR ALDI/ASSOCIATED PRESS By JEFFREY SPARSHOTT 2016 年 3 月 31 日 10:09 JST 米家計の消費支出は直近のリセッション(景気後退)から完全に回復したが、所得は依然さえない。そのため、家計は圧迫されており、多くの低所得世帯が赤字に陥っている。米民間助成財団ピュー・チャリタブル・トラストが30日発表した報告書で明らかになった。 報告書は「低所得世帯は資金の融通が利かないため、短期的には経済的安定が、長期的にはエコノミック・モビリティー(所得や社会的地位の向上を一生涯でどの程度実現できるか)が脅かされている」と指摘する。 同財団は20歳から60歳までの勤労世代の米国民を対象に1996年〜2014年の実質消費支出と所得を調査した。すると、07〜09年のリセッションの後、支出がいったん落ち込んでから回復したのに対し、所得(給与、社会保障給付金、年金、育児手当などを含む)は低迷したままであることが分かった。 広告 報告書から見えてくるのは、安定的な雇用創出や個人消費の拡大に支えられ景気が緩やかに回復している一方で賃金は伸び悩み、所得格差が拡大しつつある、といった経済全般の問題だ。 ENLARGE 米家計の実質支出額 (茶:平均値、青:中央値) 報告書によれば、04年と14年を比較すると税引き前所得(中央値)が13%減少したのに対し、支出は14%近く増加した。結果、全ての世帯所得階層で貯蓄や教育などの投資に回す資金が減った。 増えた支出分の大半は住居、交通、食料への支払いで、家計のやり繰りの余地は少なくなった。低所得世帯の場合、住宅関連費や通勤・通学費、食費を増やす以外の選択肢はあまりないだろう。 実際、同財団は低所得世帯の所得の半分近くが家賃に消えていることを見いだした。 同財団のディレクター、エリン・クーリエ氏は「低所得世帯が経済的な不安を抱えている理由を考えた場合、こうした住宅関連費用の増加は実に重要な要因の一つだ」とした上で、「従って、多くの世帯は家計が綱渡り状態だ。必需品は値上がりしており、所得の伸びはこれに追い付いていない」と述べた。 このため、レストランでの飲食や娯楽などの裁量的支出を削っているにもかかわらず家計が赤字の人たちは多い。報告書によれば、所得から消費支出を差し引いたものを黒字と定義すると、所得階層の下位3分の1に属する典型的な世帯の場合、04年時点では1500ドル(16万8000円)の黒字だったが、14年には2300ドルの赤字に転落した。 報告書を見ただけでは家計が赤字を埋めるための資金をどこから調達しているかははっきりしないが、可能性としては貯蓄、家族や友人、借り入れなどが考えられる。 所得階層の上位3分の1の世帯の場合、所得から支出を引いた金額(中央値)は04年が約4万4915ドル、14年が3万3414ドル。中間層の世帯では、それぞれ1万7000ドル、5944ドルだった。 ENLARGE 世帯所得階層別の住宅関連支出額(茶:上位3分の1、青:中間層、灰:下位3分の1) 関連記事 • 米経済のけん引役はミレニアル世代と低所得者層 • 米個人消費、増え続けるには雇用・所得・貯蓄率の伸び必要 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NH744_PEWEXP_M_20160329152224.jpg https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NH745_PEWHOU_M_20160329152413.jpg 健全な労働市場でも低調な成長、回復の鍵はどこに 世界の鈍い経済成長の背景には弱い生産性がある。これは金融政策や財政出動では修復できないだろう By GREG IP 2016 年 3 月 31 日 13:08 JST
世界経済には暗雲がかかっている。国際通貨基金(IMF)は成長見通しをまた下方修正しようとしている。IMFのラガルド専務理事は先ごろ、「弱々しい」景気回復が「速やかな行動」を求めていると警告を発した。各中央銀行はリセッション(景気後退)を避けるため、残された非従来型政策手段には何があるかを研究している。20カ国・地域(G20)の首脳らは中国の上海で、「金融、財政および構造的な、あらゆる政策手段」を講じることを誓った。 だが、経済の健全性を示す最も重要な指標を見る限り、こうした心配は的外れのように思われる。 大半の経済大国において、失業率は下がりつつある。多くの国々ではリセッション前の水準を回復するという、高い評価に値する展開を示している。ところが、G20もラガルド専務理事も、このことは指摘しなかった。 広告 失業率が国内総生産(GDP)成長率よりも世界経済の健全性にとってより良い指標ならば、金融と財政による景気刺激をめぐる現在の強迫観念は間違いだ。成長は需要の欠落にはそれほど阻止されていないが、人口高齢化と生産性の弱まりによる潜在力の伸び悩みに邪魔されている。 米国は成長と失業率が一致しない典型例だ。2010年にオバマ大統領の経済顧問らは、10年から15年にかけて年率3.9%のGDP成長率を予想した。実際の成長率は辛うじてその半分の平均2.1%だった。失業率は10.0%から5.9%に下がると考えたが、これについては悲観しすぎだった。失業率はいまや4.9%まで低下している。 他の国々でも同じような状況だ。英国の景気回復は期待はずれだが、現在の失業率は07年よりも低い5.1%だ。日本経済は08年以降で4回目の理論上のリセッション(2四半期連続のGDPマイナス成長)に陥っているかもしれないが、失業率は20年間で最低の水準に低下している。ユーロ圏でさえ、失業率が東西統合後の最低水準にあるドイツばかりでなく、失業率は13年以降着実に下がっている。ソブリン債務危機に最も打撃を受けた国々でも、まだ高すぎる水準ではあるが低下傾向を早めている。 失業率低下の原因は、求職を諦めた労働者が労働力人口から離脱しているためでもない。日本や英国、韓国、ドイツでは、雇用がIMFの予想以上に伸びている。確かに米国では、労働力人口に占める働き盛りの成人比率が、人口動態で説明できるよりも大幅に低下した。だが、日本や英国、ユーロ圏では比率は上昇している。 ある意味でこれは朗報だ。各中央銀行は、リセッションの名残である過剰な経済資源を排除するために、かつてない非従来型の措置を試みてきた。失業率の低下は、それがうまく行っていることを意味している。 だが逆に残念なのは、このように低調な成長でも十分にスラック(余剰資源)を解消できるとするならば、成長の潜在力は本当にひどく悪いに違いないことだ。 こうなる理由は二つある。まず、社会の高齢化に伴い、労働年齢人口の伸びは富裕国でも新興国でも鈍化した。次に、生産性、つまり労働者一人当たりの生産の伸びの落ち込みだ。 多くの国々で失業率は金融危機前の低水準まで下がったが、生産性が弱いために成長率は低迷している。(上:失業率の推移、下:雇用(青)と生産性(黄)の推移) JPモルガン・チェースのエコノミストらは、世界の雇用の伸びは実際、過去1年間で加速しリセッション前の水準(必ずしも労働市場の統計が入手可能ではないインドと中国を除く)を回復したと指摘している。だが、生産性の伸びは先進諸国ではゼロで、新興諸国はマイナスだ。世界の生産性が03年から07年にかけてみられた1.7%で伸びたならば、世界の経済成長率は2.4%ではなく4.2%になっているだろう、と同行では推計している。オバマ政権の経済顧問らも、米国の生産性が過去のすう勢程度で伸びたならば、昨年の失業率の低下でGDP成長率は2%ではなく4.3%に達したとみている。 企業がリセッションと金融危機の余波を受け効率を高める機器への投資を渋ったため、弱い需要が生産性を抑えた可能性はある。また、企業は賃金の伸びがあまりにも低いので、設備投資を労働力で補っているのかもしれない。 だが、生産性は金融危機以前から伸びが減速し始めており、リセッションをほぼ回避した国々でもそうなっているという事実からみて、根本には構造的な要因があると思われる。つまり、技術革新の効果が薄れていることや、教育など人的資本の伸びの鈍化だ。 成長がこれほど弱い理由が生産性と人口動態のためだという事実は、どこまで金融緩和と財政出動を進めるかという議論が間違いだということを示している(生産性の伸びの弱さで、賃金の伸びの低迷は説明できる)。 だからと言って各中銀は金融引き締めを急ぐべきということではない。先進諸国のインフレ率はまだ目標を下回っており賃金の伸びは低調だ。それでも、原油相場が下げ止まれば物価は上がるはずで、失業率が下がり続けるにつれ賃金も上がるだろう。 ヘリコプターマネーなど貨幣の増刷で景気を刺激する独創的な提案は、理論的試みとしては魅力的だ。だが、労働市場が発しているメッセージは、金融政策が既に成果を挙げていることを示している。世界の成長を高めるには、生産性の回復が必要だ。これは単に金融政策や財政出動を講じるよりも難しい課題だ。 関連記事 「ヘリコプターマネー」用いる時機到来か 原油安が景気浮揚に寄与していない理由 米景気後退リスク、警戒解除まだ早い https://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CJ631A_CAPAC_16U_20160330125110.jpg 【コラム】米大統領候補に問う「FRBをどうしたい」−コチャラコタ Narayana Kocherlakota 次期米大統領は、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長を再指名するか、別の人物を新たに議長に指名する機会を与えられる。だが、大統領選の5人の有力候補がどのようにFRB議長の人選の任に当たるかつもりか、有権者はこれまでのところほとんど何も分からずにいる。 私の知る限り、ヒラリー・クリントン前国務長官、テッド・クルーズ上院議員、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事、バーニー・サンダース上院議員、ドナルド・トランプ氏のいずれのウェブサイトにも金融政策や連邦準備制度へのコメントは見つからない。 サンダース氏には米金融当局の構造改革についての論説記事があり、クルーズ氏は金本位制への回帰を支持しているが、FRB議長の人選にどう取り組むか理解するための手掛かりとなる部分は限られている。このため候補者全員に次の5つの質問をしたい。 米金融当局は2%のインフレ目標を導入したが、この金融政策目標の変更を望む人物を議長としたいか。そうだとすれば、どのような変更か 金融当局のもう一つの責務である最大限の雇用について、当局自体も議会も数値化していない。次期議長がこの責務への当局の取り組みを変更するよう望むか。仮にそうなら、どうしたいか 下院では、金利設定に数式を用いるよう金融当局に義務づけ、それから逸脱があれば説明を求める内容の法案が可決された。金融政策へのこうしたアプローチに同意する人物を議長としたいか 米金融当局は2007−09年の世界的な金融危機に際し、金融システムを支えるために数多くの異例の措置を講じた。将来危機に見舞われた場合に、同じように介入主義的な手法を取る人物を議長に望むか。もっと概略的な聞き方をすれば、あなたの政権は金融危機にどう対処するか 10年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)は、規制監督を担当するFRB副議長の指名を大統領に求めた。このポストは空席のままだが、空席を解消するつもりか、それともその責務を議長に委ねるつもりか。いずれにせよ、この職務はどうあるべきだと考えるか 最初の3つの質問はあまりにも金融政策に焦点を絞ったものと受け止められるかもしれない。米金融当局は結局、大統領を含む選挙の洗礼を受けて公職に就いた代表からの政治的圧力を受けず、独立して政策金利についての判断を下すことになっている。ただ、金融政策の長期的な目標と戦略に関しては、有権者とその代表が発言権を有することが当然であり、重要だと信じる。 最後の2つの質問は(物価安定、最大限の雇用に加え)多くの識者が米金融当局の3つめの責務と見なしている金融の安定性に関わる。08年の危機の経験によって、金融の安定性が重要であることは誰の目にも十分明らかとなったのは間違いない。この目標を追求する上で、次期大統領が金融当局にどのような働き掛けするつもりか、有権者は知っておかねばならない。 米金融当局がさまざまな任務を遂行できるよう、議会からは極めて大きな独立性を認められている。しかし、そうした独立性には監督と説明責任が伴うものであり、選挙で公職に就いた代表は主に誰をFRB議長に選ぶかを通じて監督権限を行使する。このためこうした代表、特に大統領を目指す人物は全員、自身の行動計画を一般の人々に知らせることが不可欠だ。 (ナラヤナ・コチャラコタ氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストで、2009−15年に米ミネアポリス連銀総裁を務めた。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません) 原題:Ask the Next President About the Fed: Narayana Kocherlakota(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4W05P6JTSEB01 欧州株、回復遅れる理由とは 欧州の難民危機対応は、政策決定の不手際ぶりを投資家に再認識させた(写真はアテネ近郊ピレウス港に到着して食糧配給に並ぶ難民、2月25日) By RICHARD BARLEY 2016 年 3 月 31 日 12:23 JST 世界の多くの株式市場は年初に急落したが、その後下げをほぼ戻している。米国では、S&P500種指数の年初来騰落率がわずかではあるがプラスに転じている。新興国市場もいくらか勢いを取り戻している。ロシアとトルコの株式市場は年初からの上昇率が2桁に達し、通貨や債券も反発している。投資適格債やハイイールド(高利回り)債は安定を取り戻し、商品(コモディティー)相場は上昇している。 だが、欧州株は後れを取っている。欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数は、年初来騰落率がまだ6.7%安だ。欧州の銀行株は特に打撃が大きく、下落率は19.5%に達している。 これはある程度不可解に思える。欧州経済はひどい状況にはなく、欧州中央銀行(ECB)は今月、市場の期待を上回る緩和策を発表した。一方、海外からの逆風はまだ存在するものの、弱まっている。例えば、中国の為替政策をめぐる懸念は今やそれほど顕著ではない。 広告 だが、域内のリスクは多数ある。欧州の難民危機対応は、政策決定の不手際ぶりを投資家に再認識させた。欧州連合(EU)離脱の是非を問う6月の英国民投票もさらなる政治リスクだ。ギリシャ問題も再び表面化する恐れがまだある。 ユーロ圏に限って言うと、経済成長の加速はいまだ願望であって、現実ではない。格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は30日、ユーロ圏の今年の成長率予想を1.8%から1.5%へ下方修正した。企業収益にも同じことが言える。つまり、欧州はまだ持続的な成長を待っている状況だ。調査会社ファクトセットによると、Stoxx600指数の予想PER(株価収益率)は14.7倍で、欧州株が間違いなく価値を提供しているとは主張し難い。ドルに対してユーロが上昇していることもマイナス要因だ。 欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数 ENLARGE 欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数 確かに、現段階で欧州株を毛嫌いする理由はこれといって見当たらない。世界の状況が一段と落ち着いていることは喜ばしい。そして政治リスク、特に英国のEU離脱は差し迫った脅威ではない。欧州はこれまでのように、どうにか難局を切り抜ける状況が続いている。 だがその一方で、他の地域は投資家の関心を引こうと競い合っている。新興国市場の回復がその好例であり、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が利上げに慎重姿勢を示したことが回復に寄与する可能性もある。欧州の投資家自身も見通しに確信が持てないようだ。米金融大手ステート・ストリートが発表した地域別の投資家信頼感指数は、3月に米国とアジアでリスク志向が大幅に回復したことを示したが、欧州での回復は小幅にとどまった。 結局のところ、欧州の経済成長と企業収益の持ち直しが長らく待たれていることが、投資意欲を損なっている。希望の泉は枯れないというが、そうはいかない時もある。 関連記事 ECBの株価押し上げ、期待は禁物 欧州銀行株、なぜ下がる リスク資産の急騰、リスクオン一色にはあらず https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NI024_stocks_G_20160330085949.jpg 焦点:新興市場の回復阻む「3つの要因」、政治リスクの懸念増す Business | 2016年 03月 31日 15:19 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス [ロンドン 30日 ロイター] - これまで数年間にわたった低迷期を経て、新興国市場には割安感が出始めており、世界の投資家の間では、新興国資産への回帰の動きも見られる。しかし、不透明感が残るなか、資金の戻りは鈍い。 国際金融協会(IIF)のデータによると、外国人投資家は今年3月、新興国の株式と債券におよそ368億ドルを投じ、流入額はこの約2年間で最高を記録。過去4年間の月間の平均水準を大幅に上回った。 ただし、2015年の新興国からの資金流出額が約7300億ドルに達したことを踏まえると、新興市場への資金の戻りはごく緩やかだ。 新興国投資の本格回復には、3つの不透明要因の払拭が必要だ。 その3つの要因とは、まず、米利上げとそれに伴うドル上昇への警戒感。そして、中国の景気減速、およびその影響がコモディティー(商品)価格や新興市場全体に波及する可能性。最後に、ブラジルやトルコ、南アフリカなど多くの国で起きている政治的なリスクの高まりだ。 最初の2要因については、今のところどちらも解消されていない。 たとえば米利上げだが、米連邦準備理事会(FRB)は昨年12月の利上げ後、追加利上げ実施をためらっているが、最近は一部のFRB当局者がタカ派的な姿勢を示しており、市場を再び動揺させかねない。 JPモルガンのストラテジストらは、新興市場が向こう3カ月、アウトパフォームすると見ている。ただ、経済情勢は改善しない見通しであり、新興市場の回復は主にポジション調整によるもの、としている。 <「新興市場から距離置いている」> 「中国リスク」も無視できない。中国は無秩序な人民元下落の可能性を否定するが、投資家は中国市場について確信を持てないでいる。 ピクテのウェルスマネジメント部門でアセットアロケーションを担当するクリストフ・ドナイ氏は、中国は当面は現状を維持するかもしれないが、今後3年以内に「ミンスキー・モーメント(信用や通貨への圧力の結果、資産価格が急落すること)」が起こるリスクは高いと指摘。 「そのため、当社では、新興市場資産からは距離を置いている。われわれの新興市場へのエクスポージャーは極めて限定的だ」と語った。 ただでさえ国際的な環境への疑念が強いなか、政治リスクを抱える新興市場に投資するというのは、蛮勇以外の何物でもない。 政治リスクの代表格が、リセッション(景気後退)に陥っているブラジルだ。国営石油会社ペトロブラスをめぐる汚職捜査が拡大するなか、ルセフ大統領は弾劾に直面する。政権交代への期待感から市場は上昇したが、混乱の決着にはまだ、数週間、数カ月かかる可能性がある。 トルコでも、シリアの内戦とそれに伴う難民流入、独立を目指すクルド人との対立、メディア規制、ロシアとの関係悪化に苦慮している。 ゴールドマン・サックスの新興市場リサーチ担当マネジングディレクター、カマクシャ・トリベディ氏は「新興市場では先行き、政治が大きな役割を占める」と指摘。「政治という要因は、経済成長が加速し信用も潤沢な時期には軽視されがちだが、成長が低迷し信用が引き締まっているような局面においては、重要性が増す」との見方を示している。 (Mike Dolan記者 翻訳:吉川彩 編集:内田慎一) http://jp.reuters.com/article/global-emerging-politics-idJPKCN0WX0D4?sp=true アングル:15年度は日経平均2448円安、アベノミクス相場初の下落 ロイター 3月31日(木)18時16分配信
3月31日、2015年度の日経平均は前年度末比で2448円32銭安となり、いわゆるアベノミクス相場で初の下落となった。年度ベースで下落となるのは2010年度以来、5年ぶり。写真は都内の株価ボード、2月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino) [東京 31日 ロイター] - 2015年度の日経平均<.N225>は前年度末比で2448円32銭安となり、いわゆるアベノミクス相場で初の下落となった。年度ベースで下落となるのは2010年度以来、5年ぶり。 6月に18年ぶり高値を付けたが、夏場以降は中国ショック、原油安を背景にした世界的なリスク回避などで失速。昨年後半からは円高も進行し、海外勢の売りが強まった。 <下げ幅はリーマンショック以来> 15年度はまずドル高/円安が進行。6月5日に1ドル125.85円まで上昇した円安基調を追い風に日経平均は同月24日に2万0952円71銭と、1996年12月以来、18年半ぶりの高値を付けた。 だが、夏場以降に相場のムードが一変。8月11日に中国人民銀行(中央銀行)が人民元を事実上切り下げたことを機に、中国景気減速への懸念が台頭。日経平均は同月25日までの約2週間で3000円超の大幅な下落となったほか、125円近辺にあったドル/円<JPY=EBS>も一時116円台まで急落した。 12月にかけて日本株、ドル/円ともにいったん持ち直しの動きがみられたが、今年に入り、再び円高・株安が進行。日銀によるマイナス金利導入も打開策にはならず、世界的なリバウンド相場の流れに乗れないでいる。 15年度の日経平均の下落幅は、リーマン・ショックの08年度(4416円01銭安)以来の大きさとなった。売買主体別では、外国人投資家が現物・先物の合計で10兆円に迫る売り越しとなったことが大きい。 ドル/円はきょうの午後3時時点で112円前半。昨年度末は120円前半であり、1年間で約8円の円高となった。ドル/円が前年度末の終値との比較で円高となったのは、これもアベノミクス相場初で、11年度以来となる。 <内需株好調・外需株軟調> 年度後半の円高基調を背景に、業種では内需株が好調だった。東証33業種のうち、上昇率トップとなったのは水産・農林<.IFISH.T>の29.6%高。建設<.ICNST.T>の9.5%高、食料品<.IFOOD.T>の6.1%高がこれに続く。下落率では海運業<.ISHIP.T>の38.3%安が最大。自動車・電機など外需関連は総じてさえない。 個別株では、TOPIX500構成銘柄の上昇率で雪印メグミルク<2270.T>がトップとなった。コーセー<4922.T>などインバウンド関連も上位にランクインした。 雪印メグの16年3月期純利益は前年比約3.7倍の145億円と、過去最高益となる見通し。「利益率の高い製品が売れたことに加え、製品価格の値上げ後も物量が落ちることがなかった」(広報部)という。 下落率首位は半導体ウエハーを手掛けるSUMCO<3436.T>。ミネベア<6479.T>など米アップル<AAPL.O>関連や、不正会計問題に揺れた東芝<6502.T>の下げも目立つ。 SUMCOはスマートフォンなどに使われる半導体ウエハー需要の懸念が重しとなった。15年12月期は増益を確保したものの、株価の面では「供給過剰感があるなかで、長期契約などで安定供給先を確保している競合他社との格差が広がっている」(藍沢証券・投資顧問室ファンドマネージャーの三井郁男氏)との見方もある。 日本株全体では円高による来期企業業績への懸念が強まっている。日本アジア証券エクイティ・ストラテジストの清水三津雄氏は「景気対策が打ち出され参院選に突入する展開が見込まれるが、それ以降は日本株はもたつく形となり、夏場がピークとなる可能性がある」との見方を示している。 (長田善行 編集:伊賀大記) 【関連記事】 コラム:海外勢が見た日銀マイナス金利の功罪=佐々木融氏 焦点:年明けの市場変動、春闘に冷水 政府内に高まる失速の懸念 コラム:荒れる市場、逆境に立つアベノミクス コラム:世界的株安、カギ握るドラギ総裁 焦点:甘利氏辞任、海外勢は政策実行懸念 税収増活用に影響も 最終更新:3月31日(木)18時16分 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160331-00000066-reut-bus_all
広木 隆「ストラテジーレポート」 チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。広木 隆が投資戦略の考え方となる礎を執筆していたコラム広木隆の「新潮流」は、こちらでお読みいただけます。 (@TakashiHiroki) プロフィール 2016年03月30日 年度替わりの日本株相場展望 10月は、株式投資にはとくに危険な月である。それ以外に危険な月は、7月、1月、9月、4月、11月、5月、3月、6月、12月、8月、2月である。(マーク・トウェイン) 4月相場に期待 日本株式相場は昨日から実質新年度入りした。前回のレポートで述べた通り、年初からの嵐のような下落相場は終わった。3月ひとつきをかけて日経平均は1万7000円という「居心地の良い」水準をしっかりと固めた。年度替わりで日本株は戻りを試す展開となろう。まずは次の節目の1万7500円を明確に上抜けることが目先のターゲットだ。昨年12月高値から2月安値までの下落幅の半値戻しに当たる水準である。その水準を固められれば、2月の高値(1万7905円)を抜いて1万8000円台をつけにいくことが可能となろう。 4月相場は期待していい。新年度入り初日の昨日29日の日経平均は30円安の1万7103円。配当権利落ち分(127円)を考慮すると、実質的には値上がりである。配当落ちを即日埋めるのは相場が強い証拠と言われる。昨日は配当落ち分を「すべて埋めた」わけではないが、「ほぼ埋めた」とは見なせる。なので、「それほど弱くはない相場」くらいのことは言ってよかろう。 そもそも4月は株が上がる月である。日経平均の月別上昇率を見ると4月は1月に次いで2番目に上昇する確率が高い月であるが、その背景として新年度入りした機関投資家からの資金流入期待が挙げられる。 日本株の出遅れ感 下げ相場は終わったとはいえ、日本株は年初来上昇率がプラスに転じたNYダウ平均などに比べて戻りの鈍さが際立っている。もっとも、出遅れ感が強いのは日本株だけではなく、景気減速懸念の強い中国株およびスイス、ドイツ等の欧州株も米国株に大きく劣後する。 一方、ブラジルのボベスパ指数は1月安値からの上昇率が3割を超え、年初来のリターンも世界の主要株価指数のなかで突出して高く、その次にはラテンアメリカではメキシコやアルゼンチン、アジアではタイ、インドネシアなどが続く。3月FOMCが示唆した年内利上げの回数は2回とそれまでの4回から大幅にトーンダウンした。米国利上げに伴う資本流出懸念で売られた新興国が米国の利上げペース鈍化観測を受けて買い戻されている背景である。 米国の利上げペース鈍化観測はドル独歩高を是正し、それは米国企業にとって好材料であるため米国株も順調に戻り歩調にあるという構図が鮮明である。その裏返しが直近の円高であり当然、日本株にとっては重石であった。米国の利上げペース鈍化観測のタイミングにリパトリ等の期末要因も加わって円高が進行、ドル円相場は先日一時110円台をつけた。 円高の背景 - 米国のインフレ期待 但し、今回の円高も早晩一服するだろう。期末の円高要因が剥落したこともあるが、最大の要因である日米のインフレ期待の格差拡大にも歯止めがかかる可能性があるからだ。円高に振れていた最大の要因が日米のインフレ期待の格差であるということをもう一度、丁寧に説明しよう。 前回のレポートでもこう指摘した。<(円高の背景は)米国のインフレ期待が徐々に高まっていることだろう。インフレとは通貨価値が減価することだ。米国でインフレ期待が高まる一方、日本はマイナス金利が足元では逆効果を生んで却ってデフレ的な側面が強くなっている。この日米のインフレ期待の差が円高ドル安の背景ではないか> 日本のマイナス金利の影響で日米の名目金利差は拡大している。しかし、インフレ期待の格差が名目金利差以上に大きいため、実質金利ベースでは日米金利差は縮小し、むしろドル安円高の要因となっているのである。グラフは市場が推測する期待インフレ率であるBEI(Break Even Inflation rateブレークイーブンインフレ率)を名目金利から差し引いた2年国債の実質利回り格差とドル円レートである。 では、なぜ米国の期待インフレ率(その指標であるBEI)が上昇しているのか?それは、実際に足元のインフレ指標が上昇しているからだ。米国の2月の消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除くコアが前年比で2.3%上昇と2012年5月以来の高い伸びとなっている。 FRBが目標として見ている物価指標はPCE(個人消費支出)のデフレーターである。コアPCEインフレ率は前年比で1.7%の上昇である。これはFRBが予想する今年の中央値(1.6%)を上回り、中心的予想レンジ(上下3つ両極端の予想を排除して丸めたレンジ)の上限に達している。 FRBはデュアルマンデートを負っている。デュアルマンデートとはFRBとFOMCが連銀法により課されている「物価の安定」と「完全雇用(雇用の最大化)」という金融政策の運営にあたっての2つの法的使命のことである。この2点についての一般論は、失業率は5%を割り込むまでに低下し「ほぼ完全雇用」の水準にあるが、一方、物価については原油安の影響や低成長もあって遅々として目標とする2%に届かない - というようなものであったように思う。 ところが現実は、インフレのほうがFRBの当座のターゲット(見通し)をクリアしており、失業率のほうが見通しまでまだ伸びしろがある。市場は、ある意味、盲点をつかれたような状態だったのだろう。BEIは、コアPCEインフレを追いかける格好で急上昇した。これが足元、米国の期待インフレ率が急激に高まった背景である。 米国の個人消費支出が弱くインフレ期待の上昇も一服 今週は重要指標が目白押しでハイライトは週末4/1(金)の米国・雇用統計とISM製造業景況感指数、中国・PMI、日本・日銀短観の発表である。だが、僕が一番注目した指標は月曜日に発表された米国の2月個人消費支出(PCE)だった。コアPCEインフレ率の事前予想は1.8%だった。もしも予想通りの数値となれば上述したFRBの中心的予想レンジを上抜けることになる。そうなれば4月利上げの蓋然性が一段と高くなっていたであろう。結果はコアPCEインフレ率の前年比は前月と変わらずの1.7%だった。予想ほど高まらなかったが、依然としてFRBの中心的予想レンジの上限に張り付いていることには注意したい。 発表された2月個人消費支出(PCE)の内容は弱いものだった。2月の前月比は0.1%増だったが、1月分が大幅に下方修正された。家電や自動車など耐久財への支出が速報段階の12%増から0.7%減に下方修正されたこともあって全体が0.5%増から0.1%増にまで下方修正されたのだ。 こうした個人消費の弱さに、昨日のイエレン議長の講演で示唆された利上げを急がないというメッセージもあって、一時高まっていた早期利上げ観測は後退した。短期的にはそれによって円高となっているものの、基本的にはこれ以上の円高進行は限定的だろう。なぜなら根本的な背景である米国の期待インフレの急上昇にも歯止めがかかりつつあるからだ。BEIの急騰は、もともと実際のインフレ率の上昇を織り込み切れていなかった部分の急速なキャッチアップという側面もあり、それはほぼ達成しただろう。加えて、実際のインフレがこの先すぐに一段と加速する兆しは2月個人消費支出を見る限りないと思われる。改めて雇用統計で賃金の上昇ペースを確認することに市場の関心は向くだろう。 さて、その米雇用統計だが、非農業部門の雇用者数が前月比で25万人かそれ以上の増加、失業率の4.8%への低下となれば再度、早期利上げ観測が浮上しよう。しかし、米国の非農業部門雇用者数という統計にとって3月は鬼門である。過去8年のうち7回、3月の数値は予想を下回っている。2008年からでは、実際に発表された雇用者数がブルームバーグ調査の予想中央値を平均で約5万3000人下回った。2000年以降の3月では7割近く(67%)で平均約6万9000人下回っている。15年3月は予想に11万9000人届かず、01年以降で最も大きく下回る結果となった(以上はブルームバーグニュースの情報に依る)。今年も波乱に注意したい。 https://info.monex.co.jp/report/strategy/index.html
コラム:米大統領選とドル円、警戒すべき展開は=植野大作 FX Forum | 2016年 03月 31日 09:24 JST 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト [東京 31日] - 米国大統領選挙は、民主・共和両党の候補者指名を争う予備選がいよいよ大詰めを迎えている。民主党では本命視されていたヒラリー・クリントン元国務長官が対抗馬のバーニー・サンダース上院議員に意外な善戦を許しつつも7月の党大会での勝利に必要な代議員数の7割以上をすでに獲得、候補者に指名されることがほぼ確実視されている。 一方、共和党では過激な暴言の数々で存在感を増す大富豪のドナルド・トランプ氏が指名獲得レースの先頭を走っており、7月の党大会までに指名獲得に必要な代議員を確保できるかは微妙だが、現時点ではその可能性が最も高い位置にいる。 このような状況を受け、「米大統領選がドル円相場に与える影響」についてのマーケット・トークが活性化している。まだ予備選の段階であれこれ考えるのは時期尚早との意見もあるが、今のうちから頭の体操を行っておくのは、決して無駄にならないだろう。以下、現時点における筆者の見解を示しておきたい。 <米政治めぐる霧が晴れるまでドル円の重しに> 米大統領選がドル円相場に与える影響を考察するに際しては、選挙の期間中と結果判明後に分けて考える必要がある。 まず選挙期間中については、いったい誰が米国の次期大統領になるのかが分からないため、新政権発足後の政策運営も読み切れない。米大統領選は4年に一度開催される「世界最大の政治ショー」だが、市場関係者は、結果の読めない不透明な状態を最も嫌う。 特に、ドル円ファンは「米国の政治ネタ」に対して非常に敏感だ。米大統領選をめぐるモヤモヤ感が晴れない間は、そのこと自体がドル円相場の心理的な重しになりやすい。 実際、民主・共和両党の最有力候補と見られているクリントン氏とトランプ氏が、いずれも選挙キャンペーン中に米地方紙に寄せたコラムや演説で「中国と日本が米国の国益を損なう通貨安誘導を行っている」という著しい事実誤認を露呈している。今後も同様の発言が反復されるリスクに対し、市場はしばらく神経質にならざるを得ないだろう。 前回のコラムで指摘したように、2月上中旬の円高ショックでドル円相場はすぐに上昇トレンドに復帰するのがほぼ絶望的な深手を負った。筆者がトレンド判断の際に重視している52週移動平均線は現在明確な下向きに転じており、当面のドル円相場は「米大統領選絡みのモヤモヤ感」なども口実に、上値の重い展開が続きそうだ。 ただ、11月に米大統領選が決着し、来年1月20日に新政権が発足する頃になれば、ドル円相場は次第に「日米金融政策の印象格差」というファンダメンタルズ睨(にら)みの色彩を取り戻すだろう。日銀が実施している異常な金融緩和はその頃も続いている可能性が高いため、米国で緩やかな景気回復基調が崩れていなければ、やがては米国の利上げ観測に立脚したドル高・円安ストーリーの信奉者が再び増えてくると思われるからだ。 もちろん、過激な主張を繰り返すトランプ氏が大統領になった場合は、彼の選挙キャンペーンで「口撃」の対象となっているメキシコ、中国、日本、イスラム圏諸国の金融・為替市場が極度の不安を強いられるほか、米国の重要施策があらゆる分野で迷走しそうなため、「リスクオフの円高局面」が長期化する可能性はある。 ただ、良識のある米国民がそのような人物を次のホワイトハウスの主として迎える可能性は低い。恐らく本選挙で勝つのはクリントン氏になるだろう。 11月の本選挙でクリントン大統領の誕生がほぼ確定した場合、初期反応としては同氏が米中西部の地方紙に寄せていたコラムが蒸し返され、一時的に円高気味の市場解釈が広がる可能性はある。だが、当該コラムはかつて日本の製造業を激しく敵視していた風潮が残る地域の票獲得を狙った一時的かつ政治的な方便である可能性が高い。 ヒラリー氏の地元に本社があるニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルにも同様の見解が示された場合は、そのような考え方を改める必要が出てくるかもしれないが、古今東西、「君子豹変」は政治家の日常だ。「大統領候補」としての言動と「現職大統領」としての言動は相当違ってくるのではなかろうか。 米国の新政権が市場で決まる為替変動を尊重する姿勢を示すようになれば、ドル円相場は政治的ノイズから解放されるだろう。米国景気の回復基調が続く限り、「金融政策の正常化をゆっくり進める米国」と「出口の見えない異常な金融緩和を続ける日本」の違いが再び市場で重視されるようになり、ドル円相場は安定感を増してきそうだ。 <米為替政策のキーパーソンは大統領より財務長官> ただし、米国の新政権が本当に市場メカニズム重視の為替政策を採用してくるか否かを確認するに際し、絶対に確認しないといけないチェックポイントが1つだけある。それは、次期大統領が指名権を行使する財務長官人事だ。 米為替政策の歴史を振り返ると、大統領自身が直接的に関与していた痕跡は薄く、具体的な戦略の策定及び運用は財務長官に委ねられることが多かった。実際、米為替政策が同じ大統領の任期中に180度変わった事例が戦後2回ある。 1980年代に2期8年続いた共和党のロナルド・レーガン政権時、最初にドナルド・リーガン氏が財務長官だった間は「ストロング・ダラー、ストロング・アメリカ」をキャッチフレーズにしたドル高政策が採用されたものの、その後、ジェームズ・ベーカー氏が財務長官に就任した途端に「プラザ合意」でG5諸国を巻き込んだ大幅なドルの切り下げが断行された。 一方、90年代に同じく2期8年続いた民主党のビル・クリントン政権時は、最初にロイド・ベンツェン氏が財務長官だった間こそ、通商交渉で日本に市場開放圧力をかける道具として円高攻撃を仕掛けられたが、同氏の辞任後にロバート・ルービン氏が財務長官に就任した途端に市場関係者に「マントラ(呪文)」と揶揄されるほど「強いドルは米国の国益である」と言い続け、大幅なドル高が進んだこともあった。 このため、今秋の大統領選で「ヒラリー・クリントン政権の発足」が決まった場合でも、その後に決まる財務長官人事を睨んで、米為替政策に対する市場の印象が変わる可能性は残される。バラク・オバマ政権で国務長官の要職まで務めた同氏の経歴なども加味すると、極東アジアで米国にとって最も重要な同盟国である日本に対する通商・為替政策のスタンスは「正確な現状認識に基づく現実路線」に豹変することを期待したいところだ。 ただ、現時点ではまだ米国の次期大統領すら決まっていないため、次の財務長官人事まで読むのは無理だ。米新政権の為替政策をめぐる「詮索トーク」を煮詰めていくのは、現時点ではやはり情報不足であり、「頭の体操」にも限界がある。今秋以降のドル円を読む上で、必須のチェックポイントであるとの認識を踏まえた上で、現時点では米大統領選の展開をしっかりフォロー、「米国の民意」を見極めることに専念したい。 *植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisaku-ueno-idJPKCN0WW1UM
田嶋智太郎の外国為替攻略法 2016年03月30日 当面は米国の賃金と消費者物価の伸びに要注目! 筆者は、明日(31日)の20:00よりマネックス証券オンラインセミナー「4月の為替相場展望」の講師を務めさせていただきます。前回(2月23日)と前々回(1月28日)のセミナーでも繰り返し述べたのですが、以前から筆者は米国経済の成長度合いについて「年前半は非常に緩慢に見えるものの年後半からは一気に加速しはじめる」と考えています。 少なくとも、現時点における米国経済の成長度合いが多くの人々の目に「非常に緩慢」と映っていることは間違いなさそうですし、これまで実際に発表された経済指標・景気データの多くもそのことを裏付けています。たとえば、下図に見られるPCEコア・デフレーターという指数の推移を見ても、少しずつ水準が切り上がる傾向にはあるものの、遠目に見れば「ほぼ横ばい」と言えなくもない状況に今はあります。 このPCE(個人消費支出)コア・デフレーターは個人消費の物価動向を示す指標で、個人消費のうち変動の大きい食品・エネルギーを除いたものです。米連邦準備理事会(FRB)の物価判断基準において最も重要視される指標であり、FRBは同指数が2%にまで切り上がることを目標にしているとされます。その意味では「徐々に目標水準に近づいてきている」と見ることもできますし、逆に言えば「もう一歩足りない」ということにもなります。つまり、成長は続いているけれども、その度合いは非常に緩慢であるということです。 実際、米商務省が一昨日(28日)、2月のPCEコア・デフレーターが前年同月比で1.7%上昇したと発表した後、市場は一旦ドル売りで反応しました。市場予想の中心であった1.8%を下回ったことや、この程度の水準ではFRBが利上げ判断を急ぐことにはつながらないと市場が見做したことなどがドル売り材料とされた模様です。 振り返れば、昨年までPCEコア・デフレーターは長らく伸び率が1%台前半に留まっていたわけであり、ここにきて1%台後半での推移が続いていることは大いに評価されていいものと思われます。最近の雇用回復に伴う賃金の上昇によってサービス物価などが上向いていることが同指数を緩やかな上昇に向かわせていると考えることができ、今後一段の上昇が十分に見込めるものと思われます。 実際、下図中に示したもう一つのデータ「平均時給の推移」は右肩上がりの伸びを続けており、いま米国では水面下で沸々と人々の消費マインドが盛り上がりはじめているように思われます。あと「もう一歩」でそれが実際の消費行動に結びつき、結果として個人消費の物価動向を一段と押し上げる段階が訪れることでしょうし、それが年後半以降、米国経済の成長度合いをグンと押し上げるものと筆者は想定しています。 20160330_tajima_graph01.jpg その一方で、景気の後追いとなることが「宿命」である金融政策(=追加利上げ)の出番は、想定以上に先延ばしされることとなる可能性が濃厚です。その実、昨日(29日)行われたイエレンFRB議長の講演は、市場関係者の多くが想定していた以上にハト派な内容となりました。このところ複数の米地区連銀総裁によるタカ派な発言が相次いでいたことによって戻り歩調にあったドルは、議長の発言で急落することと相成りました。 こうした場面で過度に大きな痛手を負わないために、今後も米国における賃金の上昇度合いや、それを反映して動く個人消費の物価動向などを丹念にチェックし続けて行くことは非常に重要であると思われます。差し当たっては、今週末1日に発表される3月の米雇用統計では「平均時給」の伸びに注目したいところです。 コラム執筆:田嶋 智太郎 経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役 前の記事:あらためてドル/円の下値の目安を想定してみる −2016年03月23日 http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2016/03/30.html Business | 2016年 03月 31日 13:43 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 国債買い入れ、財政ファイナンスと誤解される恐れない=日銀総裁 [東京 31日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は31日午後の参院財政金融委員会で、大規模な国債買い入れの狙いは2%の物価安定目標を早期に達成するためであり、「財政ファイナンスと誤解されるおそれはない」との認識を示した。小池晃委員(共産)への答弁。 そのうえで総裁は、市場に十分に理解してもらえるよう、常に説明を心がけたい、と語った。 (伊藤純夫) http://jp.reuters.com/article/boj-jgbpurchase-idJPKCN0WX09U
現在の政策に量的限界や乗り越えられない壁はない=日銀総裁 [東京 31日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は31日の参議院財政金融委員会に出席し、現在の金融政策に「量的な限界や乗り越えられない壁はない」と述べた。 大塚耕平委員(民進)への答弁。 黒田総裁は、金融緩和の手段に限界はないとの従来の主張についても「私の考えは変わらない」と述べた。 また、黒田総裁は「デフレやデフレスパイラルの定義はいろいろある」と指摘したうえで、日銀は政府のようにデフレ脱却の定義を政策委員会で決めていないが、2%の物価目標の早期達成を目指して現行のマイナス金利付きの大規模な金融緩和を進める考えに変わりはないことを強調した。 (竹本能文 編集:吉瀬邦彦) http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-policy-idJPKCN0WX07V バーゼル委の金利リスク規制、「監督対応」で大筋合意=関係筋
Business | 2016年 03月 31日 00:20 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス [東京 31日 ロイター] - バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)は、銀行が抱える国債や長期貸出金などの金利リスクに対する規制について、従来通り各国による「監督対応」とすることで大筋合意した。規制の詳細を詰めて4月にも最終案として発表する。複数の関係筋が30日、明らかにした。
バーゼル委は昨年発表した市中協議案で、銀行の金利リスクに対する規制案について、1)資本の積み増しを求める新たな規制、2)各国の金融当局による監督対応──の両論併記とし、どちらを導入するのか議論を進めてきた。 銀行の金利リスクは、金利の上下によってどれだけ損失を被るかで計られる。国債のほか、長期の貸出金となるプロジェクトファイナンスや住宅ローンなどはリスクが高くなる。 複数の関係筋によると、バーゼル委は3月の会合で、従来通りの監督対応とする方針で大筋合意した。各銀行はこれまで通り金利リスク量を開示するが、これまでは銀行ごとに異なっていたリスク計測の手法を一定程度統一化することにし、一段の透明性を図る。計算手法の統一化により、銀行同士の金利リスクの比較が可能になり、リスク管理力が高まると判断した。 また、現行の規制では、金利リスク量が自己資本の20%超える金融機関(アウトライヤー銀行)に対して監督を厳しくする仕組みになっているが、この水準をどのように設定するかなどの規制の詳細を詰めて、4月の会合で最終案を決定し、公表する。 バーゼル委は、世界的に低金利環境が続く中、将来の金利上昇リスクが高まっているとの認識を強め、より厳格に銀行の金利リスクを捕捉する必要があるとして議論を進めてきた。 関係筋によると、自己資本積み増しによる対応を主張してきたのは、ドイツ、英国、スイス、オランダなどだ。これらの国の金融システムは健全性が相対的に高いが、ギリシャなどユーロ圏の周辺国で国債利回りが急上昇した経緯を踏まえ、将来の金利変動に備える必要性を痛感していたという。 一方、日本や米国は、国や銀行によって金利リスクの性質が異なるため、一律に資本賦課を義務化することに反対を表明していた。規制強化により、銀行の融資行動を委縮させるリスクも懸念されていた。 資本増強を求める規制が導入された場合には、邦銀はこれまで注力してきた海外でのプロジェクトファイナンスなど長期の貸出金や、国債保有にも影響が出かねないとの懸念が、金融関係者や当局関係者から出ていた。 (布施太郎 伊藤純夫 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/basel-rate-risk-regs-idJPKCN0WW1SS 大槻 奈那「金融テーマ解説」 チーフ・アナリスト 大槻奈那が、毎回、旬な金融市場のトピックについて解説します。市場の流れをいち早く把握し、味方につけたいあなたに、金融の「今」をお伝えします。 プロフィール 2016年03月29日 金融規制の方針転換発表〜余剰資金1,000兆円の行方に注目 3月24日、金融規制に新たな動きがあった。 世界の金融規制を決めるバーゼル委員会(BIS)が、高度なリスク計算手法の利用を制限し、格付機関の格付に準拠するよう求めるという、いわば「先祖返り」的な規制強化案を発表したのである。 現段階では市場参加者に意見を募る「市中協議案」の初期段階であり、かつ、中には規制が緩くなる項目も入っているため、銀行株価への影響は限定的となっている むしろ問題は、実体経済や市場への影響であろう。世界のマネーの方向性を決める大きな要素は「金融政策」と「金融規制」であるが、緩和に傾く政策に対し、今回の規制方針は、金融機関のリスクテイクに冷や水を浴びせかねない。特に邦銀の場合、消費増税延期の行方次第では、国や金融機関の格付けが引き下げられる懸念があり、格付機関への依存を高める本案の影響を受けやすい。 一方、緩和マネーが世界中にあふれている状態では、規制が厳しくなればなるほど、規制が相対的に緩めの、ごく狭い分野の運用先に過度な資金が集中することもある。中長期的には、局所的な"バブル"も誘発しうるという点も念頭に置いておきたい。 邦銀と米銀の合計余剰資金は過去5年で4倍、1000兆円規模に 現在、銀行の余剰資金、即ち貸出に回されていない預金の量は日米合計で1,000兆円にも上り、このうち600兆円が中央銀行などの預金に滞留している(図表1、2、注参照)。過去5年間で、余剰資金は4.1倍に、中央銀行などへの預け金は2.2倍に膨らんでいる。米国の余剰資金は、金利引き上げで減少する可能性もあるが、日本は依然増加傾向にあることから、引き続き世界の余剰資金は高水準に留まるとみられる。 これらの史上最大級に膨れ上がった金融機関の余剰資金はどこに向かい、どこで目詰まりを起こしうるのかを次項以降で考えたい。 金融規制の経緯:従来は、計算技術を磨く大銀行に有利だったが・・・ BISが決定した金融機関の資本比率の規制は、1993年に実施された。資本比率の計算式は以来一貫して「資本÷リスクアセット」とされているが、その計算手法は大きく変化している。 計算式の分母に当たるリスクアセットとは、各銀行のすべての資産を種類ごとに分け、それぞれのリスクに応じた掛け目を掛けて合計したものである。例えば、100億円の貸出を行った場合、損失が発生するリスクが20%と低ければ20億円、120%と高ければ120億円が、分母に加算され、金融機関はこの額に応じた資本を積まなければならない。この例では、同じ金額を貸しても必要な資本は6倍違うことになる。 図表3の通り、規制導入当初は、BISが決めた同一の掛け目を世界中の銀行で用いてリスクアセットが計算されていた。その後2004年に、格付機関の格付を用いる「標準的手法」か、または、高度な手法を開発し、各銀行独自の信用格付けを用いることが容認された。銀行独自の計算は、「内部格付手法」(IRB= Internal-Rating Based approach)と称される。高度化のインセンティブを付けるため、「内部格付手法」を取ると、リスク資産を削減できるように設計された。 バーゼルU導入を機に、主要国の銀行は計算技術を磨き、リスクアセットの圧縮に動いた。図表4は、銀行の総資産をリスクアセットで割った数値の推移である。この値が低ければ低いほど、会計上の資産に対してリスク量が低く計算されていることになる。邦銀は、過去ほぼ一貫して低下しているのがわかる。この低下の一部は、現在信用リスクがゼロで計算されている国債が増えためである。しかしこの影響を除いていても、高度な「内部格付手法」の活用等で、リスクアセットは1〜2割圧縮されたと思われる。なお、米銀は、そのような手法の高度化をあまり行わず、近年は、投融資リスクを取り始めたことから、リスク掛け目が上昇している。 バーゼルV導入後も、特に邦銀ではリスク手法高度化のメリットを享受してきた。しかし、高度化が進めば進むほど、複雑化し、銀行間の横比較がしにくくなってきた。このため数年前から、資本計算を「シンプルにするべき」という意見が出始めた。 そこで提案されたのが今回の変更案である。前掲図表3の通り、金融機関取引、大企業融資、プロジェクト・ファイナンスや事業用不動産融資、株式などについては、銀行の内部格付手法を認めず、格付機関の格付けに沿った掛け目を用いることとされた。過去10年余り容認されてきた「内部格付手法」を一部でも禁止したことは、大きな方向転換である。 (なお、今回の変更案以外にも、「標準的手法」自体の見直しも12月に発表されており、株式、住宅ローン等の掛け目が厳格化されている。) 影響度:株式、海外貸出、事業用不動産融資等に逆風 これらの変更案が採用された場合の影響度はどの程度になるか。一定の開示がある株式と金融機関向け与信だけを取っても、リスクアセットが8.5%増加する計算である(図表5)。今の資本比率を維持するには、年間純利益の8割に当る2.4兆円の資本が追加で必要になる計算となる。但し、冒頭触れたように、その他の緩和点もあるため、これだけで、金融機関が財務的に苦しくなるわけではない。 より注目すべき点は、銀行の資産運用方針への影響である。一部資産については、リスク掛け目が上がれば投資妙味が薄れ、運用方針の見直しが迫られるかもしれない。 このような資産として第一に注目されるのは株式運用である。マイナス金利下で有力な運用先と考えられる高配当株だが、リスク掛け目が、現在の約140%から250%へ、1.8倍に膨らんでしまうので、同じリスク・リターンを得るには、配当等の総リターンが1.8倍以上高い株式を探す必要がある。 第二に、大企業向け貸出へのマイナス影響が懸念される。例えば、銀行のメイン先大企業が赤字を計上したとする。現在は、ヒアリング等を経たメイン行が、融資を続ければ倒産はあり得ないと判断した場合、独自計算のリスク評価を据え置くこともできる。しかし新規制の下では、大企業貸出のリスク掛け目は格付機関の格付けに基づいて決まる。外部格付では日本特有のメイン行の支援はそこまで考慮されない。このため、大企業の業績が悪化した際には、格付機関の格下げで、銀行が支援しにくくなるといったケースが発生しうる。 第三に、資源・エネルギー関連与信も問題がある。プロジェクト・ファイナンスのリスク掛け目が上昇することから、来期以降満期が増加した際に、再貸しがしにくくなる可能性がある。 更に、マイナス金利でインターバンク市場の収縮が懸念される中、規制が追い打ちをかける可能性がある。為替スワップ等についても、相手行のリスク算出が厳格化される見通しで、海外投融資に逆風である。特に邦銀の場合、前述の通り、格下げリスクがあるため、格付機関への依存を高める本案の影響を受けやすいと考えられる。 巨額の余剰資金はどこに流れやすいのか このような環境下で消去法的に残る運用先は、現時点では超長期債が筆頭格であろう。しかし、これも、現在「自国の国債の信用リスクを 'ゼロ' に放置するべきか否か」という、金融規制最大の難問が話し合われている最中であり、中長期的には大きな不確実性を抱えている。 だとすると、金融機関が積極化しやすいと考えられるのは、例えば、高格付の国内社債、地方債、中小企業融資など、今回の規制上の取り扱いが比較的緩く、安定的な分野である。株式については、一定の投資は続くと思われるが、今回の規制が施行された場合、これまで以上に選別的にならざるを得ないだろう。 規制実施までには間があるので、ハイリスク市場への規制影響が表面化するまでには時間がかかると思われるが、中期的には、資金の集まりそうな債券関連商品への投資(公社債投信等)にも注目したい。 (※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。 https://info.monex.co.jp/report/financial-market/index.html アングル:豪ドル、「やや先走り」の上昇に反転リスク Business | 2016年 03月 31日 11:52 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス [シドニー 31日 ロイター] - 豪ドルは3月に対米ドルで主要通貨を軒並み上回る上昇を記録したが、「やや先走り」の感もあり、投資家心理の反転に最も影響を受けやすい通貨の1つとなっている。 3月の豪ドルの対米ドル相場AUD=D4は7%近い上昇となり、1豪ドル=0.76米ドルに達した。単月では4年超ぶりの大幅な値上がりだ。貿易加重平均でみた豪ドル指数(TWI)=AUDの上昇は3%超と、2012年以来の大きさで、現状は64.0となっている。 対照的に英国ポンド、カナダドル、ニュージーランドドルは米ドルに対し3─4%の上昇にとどまっている。 ひときわ目立つ豪ドルの上昇は、米ドル相場の下落や、好調なオーストラリアの経済ファンダメンタルズ、さらには同国にとって最大輸出品目である鉄鉱石など商品市況の反発の動きを反映したものだ。 米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、2014年後半以降は圧倒的に豪ドルに対して弱気だった投機筋は、今年2月中旬に買い越しに転じた。 AMPキャピタルの投資戦略責任者シェーン・オリバー氏は「売りポジションが極めて大きい時に、豪ドルに関する一連のニュースが豪ドルを支援する内容に変わった。買戻しが進み、売り持ちが買い持ちに転じるという真逆の方向に市場は向かっており、0.80米ドルを目指すとの見方も出ている」と語った。 しかしこれは、とりわけ豪ドルが反撃にもろいことをも意味している、とオリバー氏は指摘する。同氏は今後1年間に豪ドルが0.60米ドルまで下落すると見ている。 アビバ・インベスターズのマルチ・ストラテジー・ターゲット・リターン・ファンドとターゲット・インカム・ファンド部門でポートフォリオマネージャーを務めるイアン・パイザー氏によれば、対米ドルでの豪ドルの売り持ちが最も好ましいトレード。 仮に米連邦準備理事会(FRB)が慎重に利上げを進めるとしても、オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)には豪ドル相場を低めに維持する理由があるからだという。 実際、イエレン氏が今週非常にハト派なスタンスを取ったことで米ドルが売られ、RBAは一段の圧力を受けている。 フィリップ・ロウ副総裁は今月、「ほぼ全ての中央銀行は通貨安を好む。それを公然と口にするところもあれば、言葉を濁すところもある」と語った。 スティーブンス総裁も前週、為替は「やや先走りしている」と述べた。 キャピタル・エコノミクスの豪州およびニュージーランド担当エコノミスト、ポール・デールズ氏は、豪ドルが0.80米ドルまで上昇した場合、RBAは発言のトーンを強めると予想する。 さらにデールズ氏は「もしくは通貨戦争で負け組に入るのを避けるために、追加の利下げが必要かどうかを真剣に検討する」と語った。 日本銀行と欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を導入しているため、オーストラリアの2%という政策金利は天文学的な数字に見える。RBAは、こうした状況を是正するため、今後1─2カ月間の間に金融緩和策を実施する可能性もある。 (Ian Chua記者) http://jp.reuters.com/article/australian-dollar-idJPKCN0WX05C 消費増税は延期されるのか!?(大前研一) 【日本】消費増税は延期されるのか!? 政府は16日、国際金融経済分析会合の初会合を開き、その中で講師役の、ノーベル経済学賞を受賞しているジョセフ・スティグリッツ氏が、消費税は総需要を増加させるものではないので、今のタイミングで引き上げるのは適切ではないと指摘しました。一方、安倍首相は18日の参院予算委員会で、世界経済に不透明感が増しているとの認識を示すとともに、「経済状況を注意深く見ていきたい、経済が失速しては元も子もなくなる」と述べ、2017年4月の消費税率引き上げ再延期に含みをもたせました。 これは非常に卑怯なやり方で、ノーベル賞受賞者や、もともとの応援団のような人たちも呼んで、世界経済について意見を聞きましょうとやっているのです。そして、わざわざ世界経済について語ったはずのスティグリッツ氏までが、消費税を上げるのは今は適切ではないという話をしているのです。ノーベル賞をもらったような人がストライクゾーンに球を入れるようなことをしたわけです。飛行機代を誰が出したかにもよるのでしょうが、非常にみっともないやり方です。 それよりもさらに、出だしで黒田日銀総裁が、「不可思議なことがあります、質問していいですか」と言って、「金融政策を打っても賃上げが遅いのはどういうことでしょうか」と尋ねているのです。中央銀行の総裁が、金融政策について思ったほど効果が出ていないのはなぜでしょうかなどと聞いているのです。市中引き回しの刑だというくらい罪の重い質問でした。スティグリッツ氏がなんと言おうと、自分はこのやり方を信じているというくらいでないといけないのです。 また、安倍首相の言い方にも驚きます。経済が失速しては元も子もないと言っていますが当たり前のことです。親の恩はありがたいという言葉と同じで、当たり前すぎてなんの意味もない言葉です。ただ、安倍首相は最近まではそうは言っていませんでした。リーマンショッククラスのことが起こった場合は別として、と言っていたのですが、今回は経済が失速しては元も子もないと言い、消費税増税は延期しますと持って行きたいのです。この経済の失速は原則として過去形になっていなくてもいいのです。失速していなくても、失速するのが恐ろしいからと言えるのです。そうならば最初からそんな約束はしなければよかったのです。ダブル選挙に向けての見え見えの作戦だと言えます。 しかし、タブル選挙については非常にタイミングが悪いのです。7月に参議院の選挙をせざるを得ないわけですが、本当は8月にしたいのです。安倍首相は今回、対抗馬がいないので総裁選に受かるとして、改選された場合、オリンピックまでもつのです。2020年8月がオリンピックなので、その開会の総理を務めるためには、どうしても選挙を8月にしたいのです。つまり、目的は幾つかあり、一つは三分の二を取りながらダブル選挙することです。まず参議院選で勝つ、という目標はどこかへ行ってしまい、ダブル選挙にして、公明党と大阪維新とでどちらも三分の二以上を取ってしまおうということなのです。 そしてもう一つは、オリンピックの時の開会を宣言する首相になりたいという目的ですが、その場合選挙は8月にしなくてはならず、ダブル選挙はできなくなります。参議院選は3年と決まっているのでどういう理由が見つかるかわかりませんが、何か技術的に、ダブル選挙に持ち込む理由を探ろうと苦悶しているのです。だから歯切れも悪いのです。元も子もないといろいろ言いながら、基本的には約束していた消費税増税は延期します、そんな悪い人間なので裁いてくださいと選挙に臨むわけです。しかし増税延期でもって裁いたら、民衆は拍手を送るに決まっています。方法としては、参議院を先にやっておいて、余韻のある間に衆議院もやる、ダブル選挙だが一、二ヶ月ずらして行うとか、いわゆる小手先の議論に入ってしまっています。 このように外国の専門家を呼び、周辺を固め、世界の賢人に聞きましたところ、これはやめろということでしたと話を持って行きたいのです。実に見え見えの演技で、歌舞伎などで唸っている間にくるくると回って江戸に到着してしまったという演出と同じ感じです。また、それについて、批判もなく垂れ流ししている新聞も恐ろしいものがあると思います。 【日本】米利上げ鈍化観測→ドル安加速→原油40ドル台回復 http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160330-2/ 日経新聞は19日、「マネーの流れ急変」と題する記事を掲載しました。これは、アメリカの利上げ観測の後退でドルの実効為替レートは4ヶ月ぶりの水準に下がる一方、ドル建てで取引するアメリカ原油は1バレル40ドルと、3ヶ月ぶりの高値になったと紹介しています。株式市場ではロシアなど資源国に資金が戻る一方で、円高を背景に日本では売り圧力が強まっており、二極化が鮮明としています。 WTI原油先物の推移を見ると、戻ったと言ってもほんの少しであることがわかります。一時は140ドルなどという水準の時もありましたが、今は40ドルとなっています。このレベルだとまだほとんどの産油国は苦しいわけです。 一方ドル円の推移を見ると、円高が進んでいます。輸出企業は70円台も経験しているのでまだ大丈夫だと思いますが、安倍政権になってから円安に振れたので、安心していたところだったと思います。しかし、実は今年の秋の先物は103円までいっていて、110円台というレベルではないのです。輸出企業にとっては厳しくなると言えます。 輸出企業は超円高の時には海外の、米ドルに近いような通貨のところで生産して持って行ったり、直接アメリカでの生産を増やすということをするしかないのです。当たり前のことですが、できるだけ生産性を上げることも重要です。実際どちらに振れるかはわかりませんが、秋には103円というのが今のところの予測です。アメリカの方は腰がフラフラしていましたが、利上げを後4回と言っていたのを2回としてきているので、かなり腰が引けてきていることは間違いないようです。 悪いことばかりではなく良いこととしては、産油国が少し元気になってきて、そちらにお金が戻り、アメリカ一極集中ということではなくなりそうだということで、これはメリットの一つです。輸出企業は少なくとも100円程度を想定しながら準備しておく必要があるでしょう。想定レートを115円程度にしている企業が多いので、結構大変だろうと思います。 講師紹介 ビジネス・ブレークスルー大学 資産形成力養成講座 学長 大前 研一 3月20日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。 詳しくはこちら その他の記事を読む 方向感がない金価格と原油価格(近藤雅世) http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160330-2/ グロース氏、競合ファンドの約90%を打ち破る−移籍後最高の成績 John Gittelsohn 2016年3月31日 14:50 JST
ジャナス・キャピタル・グループのビル・グロース氏は1−3月期、「ジャナス・グローバル・アンコンストレインド・ボンド・ファンド」の運用を引き継いで以来、四半期ベースで自身最高の運用成績を上げている。 同ファンドのリターンは今年に入ってプラス約2%で、投信調査会社モーニングスターが調査対象とする同種ファンドの運用成績上位11%に入った。ミューチュアルファンド運用者にとって3カ月という期間は成績を評価するには短いが、グロース氏は幸先の良いスタートだとの認識を示した。 同氏は2014年9月にパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)を退社した後、ジャナスに移籍した。 グロース氏は他の運用者が避けた新興市場の証券やスワップの活用で、他を上回るパフォーマンスを記録した。ジャナスのウェブサイトによると、2月29日時点でジャナス・グローバル・アンコンストレインド・ボンド・ファンドの資産の36%が新興市場資産で、その大半は中南米となっている。 原題:Gross’s Janus Fund Capping Its Best Quarter Since He Took Charge(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4VYJX6KLVR801 中国の格付け見通し「ネガティブ」に、改革遅れ見込む−S&P Malcolm Scott 2016年3月31日 18:07 JST 更新日時 2016年3月31日 19:14 JST
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ (S&P)は中国の信用格付け見通しを「ネガティブ(弱含み)」と、 従来の「ステーブル(安定的)」から引き下げた。中国の経済リバラン スの進み方がS&Pの想定より遅くなるとの見通しが理由。 同時に、長期格付け「AA−」と短期の「A−1+」を確認した。 S&Pは発表資料で、「中国政府の信用力に対する経済的および財 政面でのリスクが徐々に高まるとの予想を反映させ、見通しを変更し た」と説明。「中国が向こう5年に、経済のリバランスと与信拡大ペー ス減速で緩やかな進展しか示さないとの当社の見込みに起因するもの だ」と解説した。 S&Pは中国の今後3年の成長率について、年6%以上を維持する と予想。その上で、投資水準がS&Pが持続可能と判断する国内総生産 (GDP)の30―35%を大きく上回る可能性があるとの見方を示した。 「当社の見解では、予想されるこのようなトレンドは中国経済の衝 撃に対する耐久性を弱め、政策の選択肢を狭めるほか、潜在成長率がよ り急激に落ち込む確率を高めることがあり得る」と分析した。 S&Pによれば、中国が成長率を6.5%以上で安定させるために与 信を名目GDPの伸びよりも「はるかに速いペースで」拡大させる可能 性が高まったと同社が判断した場合は格下げにつながり、与信拡大が経 済成長と同程度のペースに減速すれば格付けは安定するという。 (詳細を追加します) 原題:China Rating Outlook Cut to Negative From Stable by S&P (1)(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4WBP16KLVRL01
ユーロ圏:3月インフレ率はマイナス0.1%−2カ月連続の物価下落 Marcus Bensasson 2016年3月31日 18:27 JST 更新日時 2016年3月31日 19:36 JST ユーロ圏では3月に消費者物価が下落し、2カ月連続でインフレ率がマイナスとなった。欧州中央銀行(ECB)はデフレ回避に向けて追加刺激策を4月から実施する。 欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が31日発表したユーロ圏の3月の消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比0.1%低下し、ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査の中央値と一致した。2月のインフレ率はマイナス0.2%だった。 価格変動の大きいエネルギーなどを除いた3月のコアインフレ率は1%と、前月の0.8%を上回った。 ウニクレディト(ミラノ)のユーロ圏担当チーフエコノミスト、マルコ・バリ氏は「エネルギーがインフレ率に大きな下押し圧力を加えている」とし、「金融政策で全てを解決することはできないが、基本的に当面は唯一の策だ。これが現状で、向こう数カ月にさらなる衝撃があった場合、おそらく同様となるだろう」と述べた。 ECBは4月1日から月間の資産購入額を800億ユーロとし、これまでの600億ユーロから拡大する。これはドラギ総裁が今月発表した追加利下げなど新たな政策パッケージの一環。ユーロ圏のインフレ率は2013年以来、ECBが目安とする2%弱を下回る水準にとどまっており、原油安による物価下落の影響を打ち消すほどの景気回復を果たせていない。 原題:Euro-Area Prices Drop for Second Month Before ECB Beefs Up QE(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4WC6A6S972L01 ウォール街、高リスクローンの始末に苦戦−チャート Claire Boston 2016年3月31日 15:54 JST 高リスクの企業向け融資があまりにも不人気になったため、今年販売されたこうしたローン、230億ドル(約2兆5800億円)余りについて銀行は利回りを引き上げざるを得なかった。企業買収のための融資であるレバレッジドローンは厳しい環境に直面している。巨額債務を抱える企業について投資家が警戒を深めているためだ。ハードディスク駆動装置(HDD)メーカーの米ウエスタンデジタルは米サンディスク買収のためのローンで利回り上乗せを受け入れた。 原題:Offloading Junk Loans Is Getting Harder for Wall Street: Chart(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4W4IC6KLVRQ01
投資家が金連動型ETFに殺到、資金流入は09年以来最大−チャート Luzi Ann Javier 2016年3月31日 12:38 JST 金連動型上場投資信託(ETF)の2大ファンド「SPDRゴールド・シェアーズ」と「iシェアーズ・ゴールド・トラスト」への1−3月(第1四半期)の資金流入が、2009年以来最大となっている。金相場は16%上昇と、四半期としては1986年以来最大の上げ。米連邦準備制度当局がハト派的な姿勢を強めたことがドルの重しとなったほか、7兆ドル(約790兆円)を超えるソブリン債がマイナス利回りとなっていることが背景。 原題: Investors Pile Into Gold ETFs at Fastest Pace Since 2009: Chart https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4VTR86JTSF301 米経済のけん引役はミレニアル世代と低所得者層 ENLARGE クレイ マーブックス&アフターワーズ・カフェ店内の買い物客(ワシントン) PHOTO: BETH J. HARPAZ/ASSOCIATED PRESS By ERIC MORATH 2016 年 3 月 30 日 14:59 JST 米経済は昨年末、個人消費が大きく伸びたおかげでマイナス成長を免れた。個人消費をけん引したのは富裕層ではなく、低所得者層とミレニアル世代(18〜34歳)だった。 JPモルガン・チェース・インスティテュートは全米15都市圏の顧客5000万人超を対象にデビットカードとクレジットカードの毎月の利用額(約140億ドル)を集計し、個人消費の一つの目安となる指標「米国消費者取引インデックス(LCCI)」を算出しているが、29日発表のLCCIリポートによると、2015年12月のLCCIは前年同月比2.3%上昇し、原動力となったのは若年層と低所得者層だった。10月と11月もこれらの層がけん引役を務めた。 米商務省が25日公表した15年10-12月期の国内総生産(GDP)確報値では、個人消費の伸びがGDP成長率を上回り、設備投資と輸出入のGDP押し下げ分を相殺した。 JPモルガンのデータによると、12月のLCCIの伸び率(2.3%)に対し、25歳未満の寄与度は約1ポイントで、35歳未満で区切ると1.9ポイントに達した。一方、55歳以上の伸びは1年前を下回った。 所得階層別では、最も所得の低い層(多くは若年層)がLCCIの伸びを主導した。寄与度は下位20%が1.25ポイント、上位20%がマイナス0.43ポイントだった。 同社のダイアナ・ファレル最高経営責任者(CEO)は「下位20%の消費者が大きく貢献した。彼らの利用額は全体の20%に届かないのが一般的だ」と述べた。 ENLARGE 米15都市圏における個人消費の前年比伸び率に対する年齢別寄与度(単位:ポイント) 12月は下位20%が利用額全体に占める割合は13.8%だったが、前年同月比で10%近く増えた。同様に、人口の9.4%を占める25歳未満の利用額は全体の6.9%だったが、前年同月比の伸び率は16%に達した。 ファレル氏は二つの要因が関与している可能性が高いと指摘した。 ガソリンを除き、医療費や自動車修理費など多くの生活必需品が値上がりしている。裁量の余地がほとんどない低所得者層は支出を増やさざるを得なかった。 だがその一方で、雇用の伸びは引き続き安定しており、賃金も小幅ながら上向きつつある。これは所得ぎりぎりの暮らしをしている消費者の後押しとなるはずだ。JPモルガンのデータもこれを裏付けている。ぜいたくなお金の使い方の典型とも言えるレストランでのカード利用額は昨年を通して増加傾向にあった。病院の診察代、娯楽、賭博、美容院やネイルサロンなど、他のサービスの利用額も増えた。 燃料費は年間を通して減少が続いたが、12月のLCCIの伸び全体に対する寄与度はマイナス0.6ポイントで、マイナス幅は一年で最も小さかった。燃料価格が個人消費に与える下押し圧力が弱まりつつあることがうかがえる。 ENLARGE 米15都市圏における個人消費の前年比伸び率に対する所得階層別寄与度(単位:ポイント、赤=下位20%、青=上位20%) 関連記事 • 米個人消費、増え続けるには雇用・所得・貯蓄率の伸び必要 • 10-12月期の米GDP、年率1.4%増に上方修正−予想上回る https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NH586_Income_M_20160329105358.jpg
ヘッジファンド資金引き揚げ増加 リターン低下で 低コストの代替運用商品を提供するAQRキャピタルの運用担当者アスネス氏 By TIMOTHY W. MARTIN AND ROB COPELAND 2016 年 3 月 31 日 16:37 JST 運用資産160億ドル(約1兆8000億円)のイリノイ州投資委員会のマーク・レビン会長は、今月のヘッジファンドに関する会議で挑発的な質問を投げかけた。 「なぜヘッジファンドが必要なのか」という同氏の問いかけは、現在多くの有力投資家が共有している疑問だ。 年金基金、保険会社、大学基金がこの10年間でヘッジファンドに資産運用を委託した額は過去最大の3兆ドルに達した。しかし、そのリターンは株と債券との伝統的な資産配分がもたらすリターンを6年連続で下回り、その不均一な投資リターンから一部の州では高額な手数料が政治的に問題になり、多くの機関が委託資金を引き揚げつつある。 ニューメキシコからニューヨークまで大型投資家がヘッジファンドへの委託資金を大幅に減額し、資金を手数料の安い類似の資産運用機関へと移している。HFRによると、昨年10-12月期には世界の投資家によるヘッジファンドからの引き揚げ資金が委託資金を上回った。四半期ベースの資金出超はこの4年間で初めてだ。そして、調査会社イーベストメントによると、今年1、2月のヘッジファンドからの引き揚げ額はさらに153億ドルにのぼったという。 レビン会長率いるイリノイ州投資委員会も間もなく引き揚げ組に加わる。同氏がヘッジファンドは必要かと疑問を呈してから2日後には、約6万4000人の公務員の資金を運用する同委員会の役員会は、資金のうち10億ドルを未公開株(PE)投資専門の低手数料率で運用するファンドに振り替えることを決めた。レビン会長によると、委託をやめたファンドの一つはパーシング・スクエア・キャピタルだ。事情筋によると、ニューヨークに本拠を置く同ヘッジファンドは、カナダの製薬会社バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルへの投資が不調なため、先週までに運用利回りが20%超低下したという。 パーシングの広報担当者はイリノイ州投資委員会の資金引き揚げについてのコメントを控えた。 多くの大手機関はヘッジファンドが景気下降局面での損失回避を約束していることから運用委託を継続している。しかし、昨年に市場の変動が大きくなり、そのために損失が出たことに対し、資金を長期間委託してきた投資家の不満は募っている。 米保険大手アメリカン・ インターナショナル・グループ(AIG)は先月、当初ヘッジファンドへの委託を予定した運用資金110億ドルを半分に減額することを発表した。低調な運用成績を理由に挙げたAIGは、その減額分を自前で債券や商業不動産に投資することを明らかにした。 ほかには、かつてはヘッジファンドだけが提供していた投資戦略が今や他の運用機関でも数分の一の手数料を通じて利用できるようになったために資金を引き揚げている投資家もいる。「リキッド・オルタナティブ」や「マルチ・アセット」と呼ばれるこれらの金融商品は、低いボラティリティや金利の方向性を手がかりに、リターンを向上するためにさほど借入金を使わずに資金を投入できるものだ。 ヘッジファンドは通常、ほかの運用機関より高い手数料を取っており、これまでは運用委託総額の2%と利益の20%を毎年徴収してきた。ヘッジファンドの新たな競争相手の一部は、手数料を委託総額の1%、利益に対しては無料で同様の運用サービスを提供している。 例えば、ノーザン・トラストは、ヘッジファンドと似た「エンジニアード・エクイティ」という投資戦略の新金融商品を委託手数料1%足らずで提供している。同社の定量調査部門責任者、マイク・ハンスタッド氏は、新商品はトレーダーでなく運用モデルを使い、ボラティリティや市場リスクを一定の限度内に抑えるように株式を一括運用すると説明した。 こうした低手数料の代替運用商品が広まってきたことは、イリノイ州の公務員退職基金(IMRF)が先月、ヘッジファンドへの5億ドルの委託プログラムを打ち切った理由の一つとなった。 同基金の運用責任者、ドゥバニ・シャー氏は、委託コストが高かったとし、「本当に引き合うのか」といえば「答えはノーだ」と話した。 イーベストメントによると、1月には有力投資家の資金引き揚げ額が全体で197億5000万ドルとなった。これは1月としては09年以来最大の金額だという。2月には委託資金が44億ドルの純増となったものの、10〜15年の2月の平均純増額である226億ドルを大幅に下回っている。 今後もこうした低調さが続くかは不明だ。依然多くの有力投資家がヘッジファンドに巨額の資金を運用委託している。 例えば、財団や基金は昨年、コンサルティング会社ウィルシャー・トラスト・ユニバース・コンパリソン・サービスが01年にデータの集計を始めて以来初めてヘッジファンドを通じた運用額を減らした。しかし、こうした団体の運用ポートフォリオのうちヘッジファンドを利用した運用は依然8.62%を占めている。 ウィルシャーによると、米公的年金の運用ポートフォリオ全体に占めるヘッジファンドの割合はピークだった12年の2.31%から昨年は1.37%へ低下したという。 債券専門のヘッジファンド、TIGアドバイザーズのスピロス・マリアグロス社長は、投資家は今後も通常の投資手段より高いリターンを求めてTIGのようなヘッジファンドを求めると見込んだ。しかし、ヘッジファンド業界は、単に最も高いリターンを得るのではなく、投資を多様化し、市場の振れによる影響を緩和することも狙うことを一層明確に伝える必要があるとした。 同社長は「我々が改善しなくてはならないのは、委託会社に何が期待できるかを明確にすることだ」と述べた。 フロリダ州の公的年金を管理するフロリダ州管理理事会は39億ドルをヘッジファンドに委託しているが、それを減額する計画はないという。 あるヘッジファンドの元役員で現在は同理事会を切り盛りするアッシュ・ウィリアムズ氏は「われわれの目的は満たされている」と語った。 ヘッジファンドは投資家の不安を鎮静化させるための新たな方策を探っている。一部のファンドは、伝統的な手数料とはかけ離れた低コスト商品を投資家に提案している。 AQRキャピタル・マネジメントは、そうした低コスト商品を提供する大手ヘッジファンドの一つだ。米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州退職年金基金(カルパース)は、14年にすべてのヘッジファンドへの運用委託をやめると表明したものの、AQRの低コスト商品には依然5億7800万ドル分の運用を委託している。 AQRの幹部、クリフォード・アスネス氏は「これは超特価のような価格設定となっている」という。さらに「まだマジックのような(高い手数料の)商品はあるが、最近はほぼ同様の成績を上げる、一段と単純で安価な商品が他にもある」と述べた。 関連記事 ヘッジファンド、供給過剰の原油に強気に転じる ボラティリティー上昇に賭けるヘッジファンド https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NI154_HEDGER_M_20160330132947.jpg
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