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マンション・戸建て購入は、賃貸より総負担額が安かった!「持ち家は負債」の嘘
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14421.html
2016.03.27 文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役 Business Journal
バブル崩壊以降、「家は買うな」「持ち家は負債」という論調が多いのですが、今回はあえて持ち家を取得することのメリットを考察してみたいと思います。
ひとつは、資産価値があることです。戸建ては35年経つと無価値になるといわれますが、賃貸でも家賃を払い続けて何も残らないので、これは戸建て特有の特徴ではありません。もちろん建物の価値(金融機関や行政の評価額)はほぼゼロになるものの、とりあえず土地は残るので、よほどへんぴで利便性の悪い場所でなければ、わずかな金額であっても売れば現金になります。
また、リバースモーゲージという金融商品を利用すれば、老後資金を手当てすることも可能です。これは土地建物を担保にお金を借り、本人が死去したら金融機関がその自宅を売却して回収に充てるという商品です。これがマンションなら、場所が良ければ35年経っても比較的高値で売れるので、資産価値は残るといえます。あるいはローンの返済が終わったタイミングで修繕して賃貸に出せば、すべてプラス収入になります。
次に、老後の住居費負担を軽減することが可能な点です。賃貸では、永遠に家賃と2年ごとの更新料および火災保険料がかかります。特に都市部では家賃はそれなりにかかりますから、年金だけで払い続けられるかという不安があります。しかし、持ち家で定年退職とともに完済できる設定にしておけば、老後は住居費がほとんどかからなくなります。
マンションでは管理費・修繕積立金が毎月かかり、年1回固定資産税・都市計画税がかかります。特に修繕積立金は経年とともに金額も上昇します。とはいえ、同じ条件の物件の家賃と比べると圧倒的に安いものです。戸建てに至っては、修繕の時期や範囲は自分で選べるので、当面はほぼ固定資産税くらいです。最新の戸建て住宅は性能も高く、大規模修繕がほとんど不要な仕様も出てきています。
そして、どんな経済状況になってもとりあえず住むところはある、というのは心強い安心材料ではないでしょうか。
■家賃よりも買ったほうが安くなる
人口は減少し、家が余り空室が増え借り手優位になるから賃貸のほうがいいという意見があります。確かに貸し手は借り手を選ぶ状況ではなくなる可能性があり、高齢者でも賃貸を借りやすいという環境になるかもしれません。
しかし、すべての大家がそのように合理的に考えてくれるでしょうか。連帯保証人がいない高齢者は大丈夫か、年金だけで家賃を払い続けられるのか、居室内での自然死のリスクはないのかなど、不安を感じて入居を拒否あるいは条件を厳しくする大家も少なくないからです。
大家は借り手を選ぶこともできますから、需要のある場所であれば強気な大家もいます。つまり、自分が住みたい場所では借りられないリスクもあるということです。
また、賃貸よりも住居費負担は低いケースが多いというのもメリットです。賃貸の貸し手は利益のための賃貸経営ですから、保有コストを補ってなお手取りが残るように賃料を設定します。あるいはそういう場所・金額で取得します。つまり、賃貸物件と同じ条件(場所・広さ・築年数など)では、家賃よりも買ったほうが安くなります。特に低金利の今では顕著です。
筆者は不動産投資家ですが、
賃料−(ローン返済額+管理費・修繕積立金+固定資産税+火災保険料+将来の修繕費予測額)
がプラスになる物件を取得します。よって、一般的には同規模同条件物件では、賃貸のほうが割高なのです。もちろん大家によっては現金で購入していたり、相続で引き継いだだけであったり、ローン残債や金利など条件は異なるため、事情も異なります。
取得時のコストや修繕費がかかるため、持ち家の総コストは賃貸より高いという意見もあります。しかし、家をローンを組んで買うと、条件によって変わりますが住宅ローン減税の対象となり、税金が軽減されます。また、通常は団体信用生命保険に加入しますから、その分、民間の生命保険負担を減らすことができます。
火災保険も賃貸では通常2年満期ですが、持ち家なら10年満期を選べるため割安です。戸建てなら屋根に太陽光パネルを設置すれば、自宅の電気代が削減されるとともに、10年間の余剰売電収入が得られます。そう考えると、取得時のコストや修繕費は、ほぼ吸収できると考えられます。
■投資家目線で物件を選ぶ
35年も勤める会社が存続するのか、給料がダウンしたり、解雇されたりといった、収入の変動に対応できないのはハイリスクだという意見もあります。それを防ぐために、先ほどのように投資家目線で物件を選ぶのです。
マイホームを買う時も、前述と同じ計算式でプラスになるような物件を買えば、仮にローンが払えない、転居の必要があるという場合にも、引っ越して貸せば収入になります。これなら身動きが取れないということはなくなり、持ち家であっても賃貸と同じ感覚で住み替えができるでしょう。
あるいは前回の本連載(http://biz-journal.jp/2016/03/post_14099.html)で書いたとおり、最初から賃貸併用住宅を建てることで回避可能です。筆者も同じ発想で最初に買った自宅マンションは現在賃貸に出して家賃収入を得ていますし、賃貸併用住宅も建てました。
家族構成の変化に対応できないという意見もありますが、これはリフォームである程度対応可能です。あくまでも自分の返済能力で無理のない範囲内で、という条件つきですが、マンションならLDKが広めの物件を選ぶことで、リフォームで子供部屋を増やすことができます。そしてまた夫婦2人になれば、壁を取り壊して広いリビングにしたり、戸建てであれば場所にもよりますが子供部屋を賃貸仕様にリフォームして貸し出し、家賃収入を得ることも可能です。これらは賃貸ではなかなかできないことでしょう。家族構成が変わるたびに引っ越すのも面倒ですし。
このように、家を持つにはクリエイティブな方法がたくさんあり、知恵と工夫と想像力を働かせれば、リスクを軽減あるいは回避することも可能なのです。つまり「持ち家は資産」「持ち家は負債」「賃貸は無駄」「賃貸が安全」という短絡的な発想は、ほかの選択肢から目をつむりたいだけで、思考停止しているということです。
ただし、そもそも家とは理想的な人生を送るためのひとつの道具にすぎません。家を買うことが目的ではなく、買わないことが目的でもない。そこに住むことによって、何を得たいのか。あるいは何を得るために、その場所のその住まいを選ぶのか。
それに「損得」といっても、お金の面だけでなく、本人の生き方や置かれている状況、価値観などによって評価軸は変わります。お金に代えられない価値だってあるでしょう。通勤や通学に便利とか、静かで自然が多いとか、子育てに適した住環境とか、「トクした」「満足だ」と感じる条件は人によって違うということ。だからまずは、自分と自分の家族が理想とする生き方を設定し、その実現にはどういう住まい選びが必要かを考えることです。
(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)
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