FX Forum | 2016年 03月 24日 19:19 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:ヘリコプターマネーの悲劇=佐々木融氏 佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長 [東京 24日] - 最近、国内外を問わず、投資家とのミーティングで「ヘリコプターマネー」の可能性について議論することが非常に多くなった。 ヘリコプターマネーとは、文字通り、ヘリコプターからお金をばらまくように、国民に対して現金をばらまくような政策のことを言う。もともとは経済学者のミルトン・フリードマンが1960年代に用いた言葉だが、近年ではバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)前議長がまだ理事だった時代に、デフレに関する講演で「デフレ克服のためにはヘリコプターからお札をばらまけば良い」と発言したことが有名だ。 これまで、日銀やその他主要国の中央銀行も、量的緩和と呼ばれる金融緩和政策を行ってきた。この量的緩和もお金をばらまいているような印象を与えるが、そうではない。 中央銀行はお金を銀行に渡す代わりに国債やその他の資産を受け取っている。つまり、ただで銀行にお金をあげているわけではない。銀行も我々にただでお金をくれるわけではない。どんなに金利がマイナスになっても、銀行は我々に対してお金をくれるわけではなく、貸しているだけだ。つまり、実際には金融政策でヘリコプターマネーを行うことはできない。 ヘリコプターマネーを実行できるのは政府だ。中央銀行は我々の財布の中にお金を入れることはできないが、政府にはできる。交付金、商品券、地域振興券、子育て支援金、高齢者補助金など、名目は何だったとしても、政府はやろうと思えばいつでも国民に対してお金をばらまくことができる。 通常の場合、ばらまきを思いとどまらせるのが、国債価格の下落、つまり長期金利の上昇である。政府はお金をばらまくためには、新たに国債を発行し、お金を市場から借りてこなければならない。 その結果、市場は財政赤字増大に対する懸念を強め、国債価格は下落し、長期金利が上昇、結果的に政府の資金繰りは苦しくなる。格付け機関から格下げもされてしまうため、なおさら金利は上昇する。だから通常のケースでは、ばらまきを実行するのは難しい。 しかし、日本では今、事情が異なっている。期間10年までの国債であれば、政府は国債を増発し、借金を膨らませても、金利を払うどころか、金利を受け取れるような状態になっている。 また、日本の中央銀行である日銀が、国債発行額の90%以上を市場から購入しているため、国債価格の下落を心配する必要がないように見える。おそらく、今の日本政府は日本国債が格下げされても気にしないのではないだろうか。 つまり、現在の日本では、政府が借金を膨らませることを思いとどまらせるメカニズムが正常に機能していないため、政府が中央銀行を財布代わりに使って、お金をばらまくことが可能になっている。まさに、ヘリコプターマネーを実現することが容易な状況なのである。 何か対価となるものがありさえすれば、中央銀行はその気になれば、いくらでもお金を発行することができる。したがって、歴史的教訓から中央銀行は政府から独立していなければならないとされてきた。時の為政者が国民からの人気を高めるために、お金をばらまこうとするのを防ぐためである。 しかし、中央銀行の独立性は、今の日本では形骸化してしまっている。日銀の議事要旨によれば、マイナス金利導入を決定した1月29日の金融政策決定会合は、16分間中断している。政府側の出席者から、財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があったからだという。 <出口のない泥沼> 一般的には政府が日銀からお金を受け取って、国民に対してばらまいてくれたら嬉しいと思う人もいるかもしれない。しかし、政府がお金をばらまき始めると、結果的にはお金の価値が下がることになり、大多数の国民にとっては悲劇的な結果を生むことになる。 例えば、日本にいる全労働者に対して、給料と同じだけの補助金が配られ、それがしばらく続くと政府が約束したとしよう。そうなると、単純に言えば、お金の価値は半分になってしまうと想像がつくだろう。 今まで月30万円の給料をもらっていた人が月60万円の給料をもらうことになるわけだから、町の商店街の店主は商品価格を倍にするだろう。お金の価値が半分になるということは、物価が倍になるということと同義だ。 給料が倍になって、物価が倍になるなら、何も変わらないから別に良いのではないかと思う人もいるかもしれない。ただ、なぜこれが大多数の国民にとって悲劇になるかというと、大多数の国民は預金を持っているからだ。残念ながら、この場合、保有している預金の価値も半分になってしまう。預金金額は変わらないが、物価が倍になってしまうからだ。 つまり、ヘリコプターマネーは、国民にお金をばらまいているように見えるが、実際には、押しても引いても出てこない日本国民の大量の預金を巧妙に引き出す政策であるとも言えるのだ。 ならば、それほど大規模に行わずに、少しだけやれば良いではないかとの意見も聞かれそうだ。しかし、今の日本で消費が盛り上がらないのは、明らかに経済構造に問題があるからであって、一時的に「棚からぼた餅」的な収入があっても、ほとんど預金されてしまうだけだろう。 だから、継続的にやらなければ目に見える効果は出ない。したがって、政府は目に見える効果が出るまで、ばらまきを継続してしまうだろう。何しろ、借金を膨らませれば膨らませるほど、収入が増え、国債価格の下落も気にする必要がないのだから、継続するインセンティブが強くならない方がおかしい。 そうしてお金の価値が下がった時、物価は上昇する。この時、普通に考えれば、日銀はマイナス金利どころか量的緩和政策も止めることになる。しかし、それでは、日本の長期金利が急騰し、大量に超長期債を購入している日本の金融機関が、これらの債券投資から膨大な損失を被ることになる。 そのため、たとえ物価が上昇したとしても、日銀はマイナス金利や量的緩和政策を簡単には止められないだろう。そうなると、政府は、ばらまき政策を容易に続けることが可能になってしまう。つまり、いったんヘリコプターマネーを始めてしまうと、出口のない泥沼にはまってしまう可能性があるのだ。 日本は1930年代にも似たような過ちを犯している。筆者は1年ほど前に某政治家にこうした懸念をぶつけてみたところ、「1930年代は、金融政策や経済のことをよく分かっている人が少なかったが、今は何が危険かを分かっている人は多い。だから、政府が危険な政策を取ろうとしたら皆で止めるだろう。よって、同じような結果にはならない」と言われたことがあった。 その指摘が正しいことを願い、ヘリコプターマネーの悲劇を止める側の一人として、とりあえず本コラムを執筆した。 *佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN0WQ0RJ?sp=true
FRBはどうすれば市場を満足させられるか 餌にありつけそうな食べ物屋で猫がおとなしくなるように、株式投資家はFOMCのたびにご機嫌
By JAMES MACKINTOSH 2016 年 3 月 24 日 15:40 JST 誰もが、市場にとって大事な問題は中央銀行に関することだけだと感じることがあるものだ。これは決して間違いでもない。過去30年間の米国株式市場において、上げの4分の1は米連邦準備制度理事会(FRB)が年に8回開催する政策会合の日に起きている。 投資運用会社GMOの資産配分チームに所属するジェームズ・モンティエ氏とフィリップ・ピルキントン氏が分析した結果、1964年から84年にかけては連邦公開市場委員会(FOMC)当日の相場騰落率は他の営業日と変わりがなかったが、それ以降は、FRBが利下げないし利上げ、あるいは現状維持としてもFOMC当日は平均をはるかに上回る上昇相場だったことが明らかになった。 両氏は「基本的に株式市場の反応は、FOMCで緩和したという事実にはあまり左右されなかったようだ」と述べている。 広告 金融危機以降の2008年から12年にかけて、FOMC当日の上昇率が通常時の29倍という強い株式相場の反応を示したのは驚くに値しない。その後は、1983年から危機に至るまでの時期の水準におおむね戻った。 FRBが相場を左右していると聞いて驚くような投資家はいないだろう。 だが、これは間違いだ。より広範な学術分析によると、利下げは株式相場にとって好材料だが利上げは悪材料だ。したがって、FOMC当日というだけで相場の好材料とするのは奇妙で気がかりなことだ。猫が餌にありつけそうな食べ物屋の店先では機嫌が良くなるように、投資家はFOMC当日にはご機嫌な反応をみせるのだ。 モンティエ氏とピルキントン氏は一歩踏み込み、このご機嫌な反応をはぎ取り、投資家が頼りにしている株価評価の尺度がここ数十年間あまりうまく機能していない理由をつきとめた。この尺度はノーベル経済学賞を受賞したエール大学のロバート・シラー教授(ファイナンス)が一般化したもので、景気循環調整済み株価収益率(CAPE)と呼ばれるものだ。CAPEは、過去10年間のインフレ調整済み利益を平均して算出するPER(株価収益率)の一種だ。 FRBには逆らうな−FOMC当日は通常時より株高になる(左から、利上げ時、利下げ時、現状維持、通常の平均:出所GMO) CAPEの問題は、2000年以降、投資判断の尺度としてあまり良い結果を出していないことにある。2000年のIT(情報通信)バブル期を通じ、この指数は割高の売りシグナルを発し続けていた。いまもまだ、株価は過去の例からみて全般に割高だとしている。
GMOの二人はFOMC当日の騰落率を取り去った新たなCAPEを創り出し、この(人工的な)尺度が示す株価評価の方がはるかに合理的で、現在の水準は平均を下回っていることを明らかにした。つまり、FOMCの影響を取り除くと、株価は割安ということになる。 では、FRBは市場の機嫌をとり続けることができるのだろうか。できるとするならば、投資家は満足し、株式はお買い得だと受け止めるだろう。だが、政策当局が餌を与えるのをやめれば、相場はFRBのてこ入れがなかった場合の水準まで痛みを伴い反落するに違いない。投資家が、FRBの一挙手一投足に市場の手助けをしない兆候がないか注目するのは当然だ。 関連記事 米FRB特集 先週の米国株は5週連続上昇、FRBのハト派姿勢で FRB、絶妙な政策発信に成功 「ヘリコプターマネー」用いる時機到来か http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NF783_fedsha_M_20160323152427.jpg
ウォール街証券マン賞与は1650万円−金融危機後も歯止め効かず45%増 Jesse Hamilton 2016年3月24日 15:10 JST ドッド・フランク法成立から6年たっても高報酬がリスクテーク促す 報酬ルールは施行細則づくりが6つの政府機関に委ねられている
ウォール街のバンカーに特大のリスクテークを奨励するインセンティブ報酬は、もう終わりにしたいと米議会が2010年に金融監督当局にメッセージを送った。しかし、ニューヨークの証券会社が支給するボーナスの平均額は、11年から31%増加しているというのが実情だ。 金融業界の報酬抑制をめぐる議論は、ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井画を描くために要した期間よりも長い時間が経過しても延々と続き、大手銀行のロビイストが妨害に動くことすらあるほどだ。米金融規制改革法(ドッド・フランク法)の一部である報酬ルールは、施行細則づくりが6つの政府機関に委ねられているが、それぞれのアジェンダ(協議事項)は時に両立が難しい。報酬制限が必要なほど大きな危険に金融機関をさらす行員をいかに特定するのか、この重要な考え方をめぐり議論は行き詰まっている。 ワシントンの政策研究所のサラ・アンダーソン氏は「彼らが6年もたついている間に報酬水準の上昇が続いている。『ドッド・フランク法が可決・成立したのだから、もう終わりだ』との印象を人々が持つようにしたいのではないか」と指摘する。 2016年の米大統領選挙に向けた民主、共和党候補の指名獲得争いでも、所得格差と無謀なリスクテークが米経済にもたらす危険性との関連において、ウォール街の報酬が争点に浮上している。 ニューヨーク州会計検査官の推計によれば、ニューヨークの証券会社のボーナス平均額は、15年には14万6200ドル(約1650万円)に減ったが、金融危機後の底と比較すると平均45%増えている。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者 (CEO)の昨年の報酬総額は、同行の過去最高益を反映し、前年比35%増の2700万ドルに達した。 原題:Wall Street Bonuses Roll on as Washington Dithers Over Pay Rules(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-24/O4J1SK6JTSEB01 米金融機関、報酬に関する新規則に直面 FRBなど金融機関の監督当局のトップと会談するオバマ大統領(中央) By DONNA BORAK 2016 年 3 月 24 日 14:32 JST 【ワシントン】米ウォール街の投資銀行など金融機関の幹部に賞与が支払われるまでのロックアップ(保留)期間が、今後さらに長くなりそうだ。 金融危機期の幹部報酬に関する規則の更新版が4月に予定されている。事情に詳しい関係筋によれば、監督当局はその規則の一環として、幹部に対する賞与の大半の支払いについて、3年間を超えて保留することを銀行に義務付ける計画だ。この3年間保留の慣行は既に多くの金融機関で採用されている。 新たな支払い保留期間はまだ決まっていないが、関係者によれば、欧州の基準である10年間より短くなる公算が大きい。賞与のうちどれほどの比率の支払いが保留になるのかも不明だ。5年前の当初の規則案では、最大50%にすべきだとされていた。 広告 最終的な数字がどうあれ、この規則は金融機関幹部の報酬支払いにさらなる制限を課すことになる。金融機関幹部の報酬は、一部の大口トレーディング事業が低迷するなか、既に圧力を受けている。 新規則の狙いは、幹部の行動が銀行の打撃になったと判明した場合、銀行が幹部から賞与を取り戻せる期間を長くすることにある。この規則は、銀行に損害を与えられる立場にあるリスクテーカーの報酬を規定している。 監督当局は、保留期間の延長のほか、新規則の適用対象を広げたいと考えている。具体的には、リスクテーカーの定義に、従業員の取り扱い金額などの要素を含めることでそれを広げたいとしている。 監督当局はまた、金融機関に大規模な損害が生じた場合、幹部が賞与をすべて没収され得るケースを具体的に挙げる公算が大きい。 金融機関の幹部の報酬を制限することは、金融規制改革法(ドッド・フランク法)で構想されていたものの、決着していなかった主な問題の1つ。金融規制改革法は金融危機後の2010年に成立した。 この規則の完成を目指す動きは、今月に入って改めて活発になった。オバマ大統領がホワイトハウスで金融規制当局者と会い、自らの大統領在任中に銀行役員報酬規則を完成することを優先するよう求めたためだ。同大統領はこの協議後、新規則は、金融会社で働く人々が「多大なリスクを取る誘惑に駆られて、金融システムに打撃を与えることがないようなものにしなければならない」と述べた。 規則の新バージョンが完成に近づくなか、監督当局は、2011年当初の提案より法的な実効性を持たせることだけでなく、ウォール街の金融機関に対し、現行の報酬慣行以上に行くよう義務付けることについても協議している。こうした報酬慣行は、一度も施行されなかった当初提案のコンセプトに合うよう過去5年間で進化してきた。 関連記事 米銀行監督当局、透明性向上に腐心 米下院共和党、金融規制改革法の修正案公表 米当局、危機後の金融規制を一斉に擁護 米金融当局、インセンティブ報酬規則の強化を検討 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NF314_0323ex_M_20160322175735.jpg
野村HD:北米で人員削減を準備、トレーディング不調で−関係者 日向貴彦、Kiel Porter、Cathy Chan 2016年3月24日 16:17 JST 更新日時 2016年3月24日 16:55 JST
野村ホールディングスは北米での人員削減を計画していると、事情に詳しい関係者が明らかにした。トレーディング業務不調の中でクレディ・スイス・グループやドイツ銀行の動きに追随する。 匿名を条件に語った関係者らは、どの部門が削減対象となるかについては言及しなかった。野村の広報担当、山下兼史氏はコメントを控えた。野村の米州の従業員数は2500人前後で大半は米国とカナダ勤務。 永井浩二最高経営責任者(CEO)は昨年12月、米州では損失を出しているが採用を増やす余地があると語っており、人員削減の動きはそれと相反することになる。ウォール街各社は1−3月期のトレーディングや助言・引き受けからの収入が急減すると見込んでいる。 野村は2008年にリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの欧州アジア事業を買収したが、コストや損失が膨らむ中で同地域の事業を縮小。米州では6四半期連続の税引き前赤字となり、永井CEOは16年3月期の海外利益500億円の目標を撤回した。海外事業の黒字は10年3月期が最後。 世界の投資銀行はトレーディング低迷と規制強化の中で人員削減を加速させており、クレディ・スイスは23日に2000人の追加削減計画を発表した。 永井CEOは最近数カ月に海外事業の見通しについてやや弱気となり、2月のインタビューでは人員削減と不採算の業務の縮小によってコストを減らす方針を示した。世界的な市場混乱が海外のホールセール事業に影響し、黒字転換の時期が見えにくくなったと語った。 昨年12月には「まだまだ米州には成長ののりしろがある。引き続き強化していく」とし、投資銀行業務からの収益を今後2−3年で倍増する方針を示していた。 原題:Nomura Said to Prepare North America Job Cuts Amid Trading Slump(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-24/O4J7NW6TTDSA01
三菱商事:今期4300億円の減損計上−商社5社で1兆円に迫る規模 鈴木偉知郎、Stephen Stapczynski 2016年3月24日 16:35 JST 更新日時 2016年3月24日 18:58 JST 純損益を1500億円の赤字に修正−初めての赤字 連結ベースの最終赤字は初めて−今期の期末配当25円は維持 三菱商事は24日、今期(2016年3月期)の連結純損益(国際会計基準)を1500億円の赤字に下方修正すると発表した。従来予想は3000億円の黒字。チリの銅事業やオーストラリアの液化天然ガス(LNG)事業などで計4300億円の減損損失を計上する。連結ベースでの最終赤字は初めてとなる。 資源価格の下落が総合商社の業績を直撃した。三井物産は23日、2600億円の減損を計上するとして今期純損益を700億円の赤字に下方修正すると発表。住友商事もニッケル価格の下落などで今期に1700億円の減損計上を見込む。現時点で総合商社大手5社が想定する減損の合計は約9700億円となる見通しで、前期の合計6900億円を大きく上回る。 24日に会見した三菱商の小林健社長は「全保有資産の評価について聖域を設けずに精査し必要な措置を取った」と説明。減損額が膨らんだことについては「資源価格変動のマグニチュードが非常に大きかった」と振り返った。一方、減損計上した資源資産については「中長期的には十分な成果をもたらす」と指摘。継続して資源資産を保有していく考えを示した上で「非資源分野をさらに強化することが直近の命題」と述べた。 減損の内訳はチリの銅事業アングロ・アメリカン・スールへの投資で約2800億円、オーストラリアのブラウズLNG事業で約400億円のほか、同国の鉄鉱石事業や南アフリカのフェロクロム事業、複数の原油ガス開発事業でも計上した。今期の期末配当については1株当たり25円の従来予想を据え置いた。 赤字転落となることを受けて、6月に支払う予定だった全役員の賞与を不支給にすることを決めた。また、報酬の一部返上も実施することで15年度の社長の役員報酬は約5割、資源分野の担当役員は約3割のカットとなる。 ドルトン・キャピタル・ジャパンの松本史雄ファンドマネジャーは「減損額は大きいが、懸念されていた悪材料は出尽くしたとみている」と指摘。「資源分野は楽観できる環境ではないが、財務の安定性や総合力において商社業界の中では引き続き競争力を維持できる」との見方を示した。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-24/O4J19U6JTSE901 ブラジル、好況時の失策のツケが重荷に ブラジルではインフラ投資が遅れており、今年のオリンピックで実態が問われそうだ(写真はオリンピック会場建設現場)
By GREG IP 2016 年 3 月 24 日 15:27 JST ブラジルの経済と政治は昔から絶えず混乱を繰り返してきた。そのため現在の深刻なリセッション(景気後退)と政局不安も、またかという印象があるかもしれない。 だが、今回は従来の危機とは様子が違う。 多くの新興国が80年代と90年代に経験したように、ブラジル経済もエコノミストらが言うところの「急停止」にたびたび見舞われてきた。通貨高と高インフレで競争力は弱まり、海外からの借り入れが増える一方、海外資本の流出を受けて通貨が暴落し、政府や銀行、企業は外貨建て融資の元利払いができなくなる、といった具合だ。 ブラジルの現状はこれとは大きく異なる。ブラジルは変動為替相場を採用している。足元のインフレ率は10%で、低下傾向にある。借り入れの大半はブラジルレアル建て。銀行の財務内容は健全で、外貨準備は3700億ドルと潤沢だ。 広告 現在の危機は決して「急停止」ではなく、投資不足、保護主義、過剰規制が何年も続いてきたなれの果てだ。これらの問題の背景にあったコモディティー(国際商品)ブームはもう終わってしまった。 政局不安の発端は国有石油大手ペトロブラスをめぐる汚職疑惑だ。だが実際には、ブラジルの石油資源がもたらした恩恵はいかに少ないかがスキャンダルに等しい。購買力平価によるブラジル国民1人当たり国内総生産(GDP)は現在、米国の27%だ。2010年は30%、1980年には38%だった。 ブラジルの苦境は特に深刻だが、ロシアや南アフリカなど、中国主導のコモディティーブームに支えられていた多くの新興国がすでに同じような窮地にある。これらの国の多くは政府主導による経済運営という中国方式に倣ったものの、中国のように莫大な設備投資や製造業輸出を軸足に生産性や経済成長を押し上げる戦略を採らなかったため、経済は立ち行かなくなった。国際通貨基金(IMF)の職員がサウジアラビアやエクアドルなど18カ国を対象に1998年〜2011年の経済情勢を調査したところ、好況時にコモディティー部門以外で生産性の伸びが加速した国は皆無だった。 中国の官民合わせた設備投資額は対国内総生産(GDP)比43%相当だ。過剰生産設備や債務といった難点はあるが、目覚ましい生産性向上を実現させてきた。一方、ブラジルの場合、設備投資は同17%にすぎず、チリ、コロンビア、メキシコよりも少ない。 歴史を振り返ると、ブラジルではインフレ率と金利が高水準で変動が大きいことが民間投資の妨げとなった。90年代末から2000年代初めまで任期を務めたカルドソ大統領はレアルの変動相場制への移行、インフレ抑制、財政再建を進めた。同大統領の保守的政策は02年に就任した後任のルラ前大統領に引き継がれた。 ブラジルは他の多くの新興国と同様、先進国を襲った金融危機をやり過ごした。09年は小幅なマイナス成長に沈んだものの、10年にはコモディティー価格の上昇、大規模な海底油田の発見、政府による財政出動や低金利融資などに支えられ、7.5%のプラス成長を達成した。IMFは同年、ブラジルの長期的な潜在成長率を自信満々で4%と予測した。 【左】設備投資の対GDP比率(青:中国、赤:ブラジル)、【中】ブラジル連邦政府歳出の対GDP比率(赤:資本関連、オレンジ:その他)、【右】購買力平価による国民1人当たりGDPの対米国比率(赤・ブラジル、青:中国) ところが、IMFとブラジル政府が好況は持続可能と考えたのは間違いだった。14年までに経済成長は滞った。インフレ加速と失業率の下落からうかがえるのは、14年時点でブラジル経済の生産能力は限界に達していたということだ。イタウ・ウニバンコのチーフエコノミスト、イラン・ゴールドファン氏は「マクロ経済が好調だったあまり、人々は改革を怠っていることに気づかなかった」と指摘する。ブラジルの税制がぼうぜんとするほど厄介で複雑なのは今も昔も変わらない。大々的な優遇融資は不適切な資本配分や金融政策効果の阻害につながっている。 最も重大な問題はコモディティー収入の余剰分が浪費されたことだ。ゴールドファン氏によると、連邦政府の歳出は対国内総生産(GDP)比で2000年の14%から15年の20%に急増したが、増加分は全て消費と所得分配に充てられた。 こうした使途の中には、子供の就学やワクチン接種を条件に貧困家庭に直接現金を給付する「ボルサ・ファミリア」など素晴らしい政策もあった。だが中にはあまり感心できないものもある。ペトロブラスから契約を受注するために複数の企業が政治家らに贈ったとされる賄賂は、ブラジル特有の縁故主義の最も顕著な例だ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の教授らの調査では、思いがけない大きな石油収入を手にした地方自治体では、自治体職員の住宅だけが大きくなっていることが分かった。 こうした余剰資金のうち、開発が大きく遅れているインフラに充てられたのは微々たる金額だ。これについては今年のオリンピックで実態が問われる可能性が高い。公共投資は対GDP比で2%強、連邦政府予算のうち1%前後にすぎない。中国指導部は所得再配分よりも経済成長の方をはるかに重視してきた。中国のインフラ投資は対GDP比で平均6%だ。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによると、1平方マイル当たりの舗装道路の長さは中国がブラジルの32倍、鉄道は3倍だ。こうした差こそが、中国が世界のサプライチェーンに深く組み込まれている一方でブラジルがそうではない重要な理由の一つだ。もう一つの理由はブラジルの輸入障壁だ。中国の輸出は対GDP比で26%だが、ブラジルはわずか13%と世界経済大国の中でも特に少ない。ある調査によると、ブラジルの人口はノルウェーの40倍なのにもかかわらず、輸出企業の数はほぼ等しい。 ブラジルの長期的な経済成長率は現時点でおそらく2%をやや上回る程度だろう。リオデジャネイロのポンティフィカル・カトリック大学のモニカ・デ・ボレ経済学教授はブラジルのインフレ率が20%に向かう可能性があると考えており、「ブラジルの過去が形を変えて再現されるお膳立てが整ったようだ」と指摘する。現状はまだ昔のような「急停止」ではない。だが、突如勃発した危機ではなく何年もかけて表面化した危機だからといって痛みが少ないわけではない。 関連記事 ブラジルの政治危機、知っておくべき5つのこと ブラジルが直面する高インフレと景気後退の二重苦 ブラジル大統領に強まる退陣圧力、5つの背景 http://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CJ554B_CAPAC_16U_20160322190610.jpg ロシア、3年ぶりのソブリン債発行に苦戦 国際資本市場から3年近く離れていたロシアの復帰は前途多難 ENLARGE 国際資本市場から3年近く離れていたロシアの復帰は前途多難 PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES By CHRISTOPHER WHITTALL AND ANDREY OSTROUKH 2016 年 3 月 24 日 16:14 JST
ロシア政府は30億ドル(約3400億円)相当のソブリン債を国際資本市場で発行しようとしているが、世界の大手主要銀行からの協力を得られずに苦戦している。3年近く離れていた市場にロシアが復帰できるか疑問視されている。 欧州の銀行の多くは、ロシアの企業や個人に制裁を科している米国や欧州当局の怒りを買いたくないので、起債への参加を避けている。米政府は既に一部の大手米銀に手を出さないよう警告している。 この結果、ロシアは起債調達を行うにあたり、主に国内と中国の銀行を頼るしかなくなっている。だが、これらの銀行には、2014年のロシアによるクリミア併合を受けて制裁が科されて以来初の外債発行を国際市場で消化する力はないかもしれない。ロシア政府高官らは、この起債には欧州の銀行が重要だと言っている。 広告 国際社会の制裁は、ロシア政府の起債を扱ったりその債券に投資したりすることを明確に禁じてはいない。だが、事情に詳しい関係者によると、ロシア政府が調達した資金を制裁下にある企業に注入する可能性を米国や欧州連合(EU)は懸念しており、欧米の銀行にその懸念を伝えている。 一部の投資家も、同様の理由から予定される債券への投資に慎重になっている。運用会社GAMホールディングの運用担当者、ポール・マクナマラ氏は「制裁の精神から外れているとみなされる可能性があるようなことをしたい人は一人もいない」と語った。 ロシア政府は、30億ドル規模になる可能性のある起債について、米国や欧州、中国の銀行に募集をかけた。 ロシアのソブリン外債発行額(2014年、15年はゼロ、16年は30億ドルを計画している) EUは銀行が起債に参加することを禁じてはいないが、事情に詳しい関係者によると、その資金が制裁対象の企業の手に決して渡らないように銀行を指導している。あるEU高官は声明で、「どの銀行も注意して(制裁の精神に反しないよう)適正評価を行う必要がある」と指摘した。 欧州の銀行は、米国を怒らせないようにも配慮している、米国はここ数年で、制裁を破ったとしてBNPパリバやHSBCホールディングスなどの欧州の金融機関に対し数十億ドルの罰金を科した。 事情に詳しい関係者によると、BNPパリバ、クレディ・スイス・グループ、ドイツ銀行、HSBCおよびUBSグループは、ロシア債を引き受けないことに決めている。やはり関係者によると、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックス・グループ、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、ウエルズ・ファーゴなどの米銀も関わらずにいる。 これも事情に詳しい関係者によれば、イタリアのウニクレディトやフランスのソシエテ・ジェネラルなど一部欧州の銀行は起債引き受けを否定していない。ロシアの大手民間銀行ロスバンクを傘下に置くソシエテ・ジェネラルのコメントは得られなかった。 ロシアのシルアノフ財務相の顧問を務めるスベトラーナ・ニキティナ氏は3月初め、募集をかけた28の銀行の半数程度が応募したと語った。 起債に詳しいロシアの銀行関係者によると、同国政府と発行条件を交渉している銀行は、ドル建てにしないよう求めている。このためロシア政府が調達できる総額は限られる可能性があると投資家らはみている。ドル建て債となると、決済は米国を通じて行うことになり、起債を引き受ける銀行にとって問題になる可能性があるとこの人物は語った。 ロシア政府高官によると、幹事銀行の最終決定は今週終わりか来週早々になる見通しだ。ロシアの銀行とともに中国の銀行も主幹事に加わるだろうが、政府高官やロシアの銀行関係者によると、ロシア政府としてはまだ欧州の銀行にも参加してほしいと考えている。中国の銀行は国際的影響力の拡大を反映して海外市場での力をつけているが、欧州や米国の資本市場にはまだしっかり足場を築いていない。 関連記事 米政府、米銀のロシア国債入札参加に警告 【社説】シリアの「泥沼」で目的果たしたプーチン大統領
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