日本株は続伸へ、円落ち着きや地価上昇好感−不動産上げ、空運は下落
佐野七緒 2016年3月23日 08:04 JST 23日の東京株式相場は続伸する見通し。為替市場でのドル・円の安定、国内地価が8年ぶりに上昇に転じたことなどを好感する。電機や機械など輸出株、不動産株が上昇する一方、ベルギーでの連続テロ事件を受け、空運や旅行株は安くなりそうだ。 SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長は、「テロを受けて欧州や米国で一時リスクオフとなったが、欧州株も為替も落ち着きを取り戻している。反応はアジア時間まで尾を引かず、しっかりとした動きになるだろう」と予想。「日本株の地合いは良くなっており、足を引っ張っていたのは為替だけだった」と話している。 米シカゴ先物市場(CME)の日経平均先物(円建て)の22日清算値は1万6925円と、大阪取引所の通常取引終値(1万6910円)に比べ15円高だった。 ベルギーの首都ブリュッセルの空港や地下鉄駅で22日、計3回の爆発があり、少なくとも31人が死亡、230人以上が負傷した。ベルギー史上最悪のテロを受け、同国政府は警戒レベルを最高に引き上げた。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。 22日の海外為替市場では、ブリュッセルでのテロを受け円は対ドルで一時1ドル=111円40銭台までドル安・円高が進んだが、その後は円安方向に戻し、けさは112円30銭台で推移する。前日の東京株式市場の終値時点は112円8銭だった。 22日の米国株は、S&P500種株価指数は0.1%安の2049.80、ダウ工業株30種平均が0.2%安の17582.57ドルと小安い半面、ナスダック総合指数は小幅高。欧州も、ストックス欧州600指数が0.2%安で終了。一時1.6%下落したが、テクロノジー株の上げで相場全体の下げ足は鈍った。これに対し、航空株やホテル株は下げた。 きょうの日本株は、為替や海外株式の落ち着きを受け、輸出株に買いが先行しそうだ。また、不動産株も高くなる可能性がある。国土交通省が22日に発表した公示地価(2016年1月1日時点)によると、全国全用途平均の地価が8年ぶりに上昇に転じた。三大都市圏のほか、札幌など地方中枢都市でも住宅・商業地のいずれも3年連続プラス。 ただ、相場全般の上げ幅も限定的になる見通し。「極端なリスクオンにはなりにくい。エアラインや旅行の一角はテロの影響が出るのは否めない」とSMBC日興証の太田氏は言う。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4GPYG6K50YJ01 2016年3月23日 田中泰輔(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー) 110円割れの円高を警戒 相場を見定める4シナリオ 近年のドル円急伸をけん引した3エンジン全てのパワーが落ちている。主エンジンは米景気回復。今年の米経済成長率は1.3%と、近年の2.5%前後から減速しよう。副エンジンの日本銀行の異次元緩和には、もはや相場をサプライズさせ得る政策メニューがない。アベノミクス下では公的年金が、外国証券大量購入で需給支持の補助エンジンとなったが、さらに相場を押し上げるほどの買いは期待し難い。 拡大する 3エンジン中で最も重要なのは米景気である。この主エンジンが不稼働なら、副エンジンの日銀が何をしようと、公的年金がどう頑張ろうと、ドル安(円高)動意が勝ってしまう。図は、日々公表される経済指標に基づいて、米景気のモメンタム(勢い)を逐次描き出すナウキャスト指数(NCI)である。NCIには米経済の最近の変調ぶりがよく表れている。 2014年中好調だった米景気は、15年早々に寒波、港湾スト、原油安に直撃されたエネルギー関連投資減で減速した。寒波やストが終わり、原油価格の底入れでエネルギー投資も落ち着くなら、米景気は持ち直すと期待され、NCIも年央に下げ止まりかかった。しかし7〜9月に中国から株安や元安のショックが相次ぎ、アジア経済が腰折れし、原油価格もさらに下落。米企業投資の底入れは遠のき、外需悪化で米輸出が減り、企業在庫が積み上がった。直近のNCIはリセッション入りの閾値(赤線)近くまで下落している。 米景気が堅調なら、中国ショックにも世界は大丈夫といえた。原油安は、エネルギー部門に打撃でも、米欧日など原油消費国へのプラス効果が勝るといわれた。だが、米経済が失速すると世界は回復へのけん引役を失う。中国株や原油価格の変動に世界の市場もドル円も簡単に振り回される。米経済が、リーマン危機後の果敢な政策をもってしても十分回復を果たせなかったとなると、今後の政策への信認も損なわれ市場の閉塞感を強めよう。 米景気循環の自律メカニズムが弱まると、相場を一方向に見定めるのも難しくなる。ただ、過剰な悲観論のみを正当化するほど世界のリスクバランスは傾いていない。 この不安定な世界を見る枠組みとして、(1)米景気堅調で6カ月内に再利上げ観測、(2)米利上げ見送りの一方で世界のリスクオフもほどほど、(3)米国外(例えば中国)からのリスクオフ、(4)米国のリスクオフで金融緩和という4シナリオを対峙させて視座を定めている。 各シナリオが起こる確率とドル円水準の組み合わせを(1)20%117円、(2)40%112円、(3)20%105円、(4)20%95円とすれば、確率加重平均は108円。これがドル円の戻り売りを優先する円高警戒モードに軸足を置くゆえんだ。 田中泰輔) (ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー
http://diamond.jp/articles/-/88313
2016年3月23日 週刊ダイヤモンド編集部 FRB利上げ先送りは、米国に迫る景気後退の足音か スーパーチューズデー前日にボストン郊外で行われたサンダース氏の支持者の集会。若者の姿が目立ち、元気な掛け声が飛び交った?Photo by Wakako Otsubo 「トランプに投票したよ。民主党政権で金持ちはもっと金持ちになった。でも自分の稼業には全然恩恵がない」 ?3月上旬に行われた米大統領選予備選挙の投票所で、40代の男性はそう打ち明けた。2月から本格化している米大統領選は、共和党のトランプ氏や民主党のサンダース氏といった本命ではなかった候補が躍進している。中間層や若者の不満を代弁する彼らの躍進は、好調に見える米経済が決して盤石ではないことを物語っている。 ?2月の雇用統計は、非農業部門の新規就業者数が24万2000人増加し、失業率は4.9%と8年ぶりの低水準となった。数字上は、雇用は底堅い。だが、ここに落とし穴がある。 ?石原哲夫・米国みずほ証券USマクロストラテジストは、「就業者数を16歳以上の人口で割った就業者比率は、リーマンショック前の水準に回復していない」と指摘する。失業率は、はなから就職を諦め求職活動をしない人が増えれば数字上は改善してしまう。 ?米国のメディアでは、「大卒バリスタ」という言葉がしばしば見られるようになった。大学を卒業しても、大卒の資格が要求されないコーヒーチェーンぐらいしか職が見つからないのだという。雇用の受け皿もレストランなどのウエーターや介護、建設など、生産性の低いサービス業が中心だ。「授業料無料」などを訴えるサンダース氏の支持者には若者が多い。 原油安とドル高の逆風 ?米国では景気の後退懸念も高まっている。その引き金になりそうなのが原油安だ。原油安はエネルギー関連企業の業績悪化、設備投資の抑制、ひいては雇用の悪化につながる。またエネルギー関連企業の株価下落がニューヨークダウの下落を招く可能性もある。 ?ドル高も景気には逆風だ。自動車以外の製造業が苦戦しており、2月の米供給管理協会(ISM)の製造業景況指数は49.5と、依然として好不況の分かれ目である50を割り込んでいる。 ?こうした景気の先行き不透明感や不安定な金融市場に配慮し、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げが見送られ、年4回と予想されていた利上げ回数は、2回との見通しとなった。 ?米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長はFOMC後の会見で、「米国経済は緩やかな成長にあり、雇用も強い。4月の会合でも利上げする可能性はあり、経済指標を見極めたい」と述べ、景気後退懸念の払拭に努めている。 ?しかし市場関係者の間では「下振れリスクが高い上、物価も低迷している。年内の利上げはない」との見方もあり予断を許さない。 ?佳境に入った米大統領選。来年1月に就任する新大統領は、いきなり景気後退という難しい課題に直面することになるかもしれない。 (「週刊ダイヤモンド」編集部?大坪稚子) http://diamond.jp/articles/-/88314
Business | 2016年 03月 23日 09:01 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 米FRB、成長見通し押し上げる能力は限定的=地区連銀総裁 [ニューヨーク 22日 ロイター] - 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は22日、連邦準備理事会(FRB)が米経済成長見通しを押し上げる能力は非常に限定的だと述べ、成長率は今後数年間、抑制されたペースにとどまるとの見通しを示した。 一方、財政政策が成長見通しを押し上げるとの見方を示した。 FRBは先週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を据え置き、海外リスクや市場の混乱を理由に経済見通しを引き下げた。 ハーカー総裁は、金利を決定する上でFOMC内に潜在成長力をめぐる見解の相違があることを示唆した。 利上げに関しては言及しなかった。 http://jp.reuters.com/article/fed-harker-idJPKCN0WO38C Business | 2016年 03月 23日 06:49 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 米利上げは年内2回想定、軌道緩やかに=シカゴ連銀総裁 [シカゴ 22日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は、年内2度の利上げを想定していると述べた。経済指標が大きく上振れるか、インフレ率が予想以上に加速しない限り、米連邦準備理事会(FRB)は緩やかな利上げ軌道にあるとの認識を示した。 総裁は講演後、記者団に対し「個人的には見通しに基づき、年内2度の利上げを見込んでいる」と話した。指標の状況に左右されるため、具体的な時期は言えないとした。 インフレ率は1.75%に加速するとの見方を示し、2%に近付いているとの一段の証拠を確認したいと述べた。インフレ率が目標の2%を一時的に上回っても気にしないとし、仮に2.5%に加速しその水準が続くようなら、FRBは金融政策を少なくとも中立、おそらく抑制方向に調整する必要があるだろうと述べた。 同総裁はシカゴのシティクラブで行なった講演で、FRBが先週の連邦公開市場委員会(FOMC)でインフレ率が目標とする2%に向かって上昇していると自信を深めるまで利上げを待つとの姿勢を示したことは「適切」だったと指摘。 前回利上げを行なった昨年12月時点と比べて3月は見通しに対するリスクが増大しているとの判断から今回のFOMCでは利上げが見送られたと説明し、FRBは現在「様子見」姿勢をとっていると述べた。 その上で「こうした姿勢を維持することは、経済成長の継続、労働市場の一段の改善、賃金のさらなる上昇を確実にするために適切な態度で、これらすべてがインフレ率を目標の2%に押し上げることに貢献する」と述べた。 同総裁はFRBが様子見姿勢を解き、利上げに踏み切る時期については予想は示さなかったものの、自身よりも明らかにタカ派的なFRB当局者の説得にもはや苦慮していないと明言。 FOMCメンバーの金利予測の分布を示す「ドットチャート」について、「以前は自分が適切と考えるよりも制約的と感じていたが、今はかなり適切であると感じている」と述べた。 エバンズ総裁はFRB内ではハト派として知られ、今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)では投票権を持たない。 http://jp.reuters.com/article/usa-fed-evans-twohikes-idJPKCN0WO2WC
クレディ・スイス、投資銀行の縮小を加速へ−関係者 Ruth David、Nishant Kumar 2016年3月23日 06:44 JST更新日時 2016年3月23日 08:35 JST • 23日にもトレーディング事業の縮小を加速させると公表か • 1−3月(第1四半期)業績に関する最新情報を示す可能性 クレディ・スイス・グループは投資銀行の縮小を加速させる計画だ。事情に詳しい関係者1人が明らかにした。同行は5カ月前に経営改革を発表していた。 同関係者が情報が部外秘だとして匿名で語ったところによると、クレディ・スイスは23日にもトレーディング事業の縮小を加速させると公表する見込み。ウォール街の大手金融機関がトレーディングやディールメーキング業務での減収について株主に通知していることから、クレディ・スイスも1−3月(第1四半期)業績に関する最新情報を示す可能性もある。 昨年10月に戦略変更を発表したティジャーヌ・ティアム最高経営責任者(CEO)は、資本規制の厳格化に対応して事業の再構築を進め、トレーディング収入の世界的低迷の中で収益性改善に取り組んでいるものの、投資家の信頼回復にはなかなか結び付かない状況だ。同CEOは成長戦略の重点を富裕層向けの資産管理運用業務に置き、投資銀行業務の縮小を進めているが、株価は今年に入って34%下落している。 クレディ・スイスの広報担当、ニコール・シャープ氏はコメントを控えた。 同行はマクロ・トレーディング事業を縮小しており、欧州では同事業の大部分を閉鎖。ヘッジファンド向けのプライムサービスも圧縮している。ティアムCEOは変動の激しいトレーディング業務の縮小とアジアでのウェルスマネジメント事業の構築を通じて、2018年までに税引き前利益を2倍強に拡大することを目指している。同CEOは先月、「困難な」環境を理由に年内に4000人を削減する計画を加速させる考えを示していた。 原題:Credit Suisse Said to Speed Up, Deepen Investment Bank Cuts (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4GN2A6K50XS01
クルーグマン氏:消費増税するな、財政出動せよ−安倍首相に提言 日向貴彦 2016年3月23日 01:07 JST 日本はまだデフレを脱していない−クルーグマン氏 消費税率は2017年4月に10%への引き上げが計画されている ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は22日、安倍晋三首相に来年予定する消費増税の見送りを促すとともに、景気回復のための財政出動を拡大すべきだとの見解を示した。 クルーグマン氏は同日、安倍首相らが参加した第3回国際金融経済分析会合に出席。その後に記者団に「日本はまだデフレサイクルから脱却するためのスピードを得ていない」と指摘し、「新たな一連の財政による景気刺激が必要だと思う」と語った。 同じくノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏も先週、来年4月に予定されている消費税率引き上げを見送るよう提言した。計画では8%から10%に引き上げられる予定。 同会合に出席した浜田宏一内閣官房参与も消費税引き上げを見送るべきだと述べた。 クルーグマン氏はまた、日本の金融と財政政策が同じ方向を向くべきだと指摘。「日本には金融政策に逆行するのではなく補強する財政政策が必要だ」と述べ、日本銀行が先月導入したマイナス金利政策については「良い考え」だが「効果は限定的だ」との考えを示した。 原題:Krugman Urges Abe to Scrap Sales-Tax Increase, Boost Stimulus(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4G28L6JIJVO01 【第203回】 2016年3月23日 高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト] マイナス金利下で銀行は貸出より出資機能を強化すべき 高田創・みずほ総研チーフエコノミスト 人類初の状況下で どのような運用戦略が有効か マイナス金利という人類初で、前例のない局面では、どのような運用戦略が有効か 時すでに3月後半。2016年度運用計画を各金融機関は策定する時期、企業は16年度投資計画策定の段階だ。 特に今回はマイナス金利という人類初で、前例のない局面だ。 下記図表1は「世界の金利の『水没』マップ」で、国別・年限別の国債利回り、イールドカーブ状況を示す。 筆者は昨年来、同図表を用いながら、マイナス金利、「金利水没」のなかで資産運用を行うには、「LED戦略」つまり、「(1)長く(Long)、(2)外に(External)、(3)多様な(Diversify)なリスク」の3分野しか選択肢はないとしてきた。今日の金融機関の戦略もこのLED戦略に集約される。 ただし、こうした運用戦略の暗黙裡の前提は、「水没」にともなう「運用難民」を受け入れる確固たる基盤、米国の存在だった。米国経済への信認から米国は水没せず「浮き輪」の存在で、世界の運用者が「運用難民」として「浮き輪」に向かったことが米ドル上昇圧力になった。 しかし、年初来、米国の減速不安から「浮き輪」が下がりだし、「浮き輪」不在の「世界水没」不安が世界の市場を揺るがし、従来のLED戦略の反動の円高回帰、株安の変動が生じた。ただし、米国が年初来10円近くドル安の市場誘導を行ったことで、新たな水準で小康状態を取り戻してきた。16年度を展望し、基本はこれまで通りにLED戦略を続けざるをえないだろう。 ◆図表1:世界の金利の「水没」マップ(2016年3月18日) (資料)Bloombergよりみずほ総合研究所作成 拡大画像表示 欧州ではマイナス金利下で不動産が活況 企業は社債調達と株買いへ向かう 具体的にLEDを振り返れば、まず、「Long」、長期化については、金利を確保する以上は、依然、長期化を進めざるをえない。日本では10年までが水没したなか、20年債中心の運用にならざるをえないだろう。少しでもスプレッドがついたクレジット商品に投資対象を拡大することになる。また、その延長線上でハイイールド債、バンクローン等の商品も対象になりやすい。インフラ投資のように安定したものにも関心が向かいやすい。 「External」、海外については、一旦、円高に振れたなかでは慎重な姿勢も必要になった。また、日本の金融機関にとっては外貨ファンディングのコスト上昇のなか、海外投資の抑制も生じやすい。ただし、国内の債券では運用機会が限られるなか、依然、海外に依存する割合をそう下げるわけにもいかない状況に変わりはない。 問題は、「Diversify」の多様な投資対象の模索、なかでも株式の扱いだ。以下の 図表2は日本の配当利回りと長期金利の関係を示す。配当利回りと金利の関係は、株式と債券の関係になる。 今日、配当利回りと金利の関係が歴史的レベルにまで拡大した「債券割高−株式割安」状況にある。そのなかでの裁定行為は「割高売り−割安買い」、すなわち「債券売り−株買い」となる。投資家にとって、債券のもたらすインカムはマイナスでも、株式の配当はマイナスにはならないなか、インカムを確保するにはキャッシュフローが安定する、「ニュー・ソブリン」とされる株式が投資対象となりやすい。 同時に、不動産については、マイナス金利でも賃料はマイナスにならないなか、株式同様、安定してキャッシュフローを生み出す不動産への投資は生じやすい。こうした動きはすでに1年以上先にマイナス金利を導入した欧州で実証済みであり、欧州では不動産投資が拡大している。一方、企業の立場からみると、「債券売り・株買い」は「社債調達・株買い」を意味する。ここで、株の買いを自社株にすれば自社株買いとなり、他社であればM &A等の株式投資となる。 ◆図表2:日本の配当利回りと長期金利の推移 (注)東証一部配当利回りは加重平均、2000年9月までは単体、その後は連結ベース。 長期金利は10年国債利回り。 (資料)NEEDS-Financial QUESTよりみずほ総合研究所作成 貸出金利にも低下圧力が加わる 銀行は出資機能を強化せよ 今日、貸出金利にも一段の低下圧力が加わっている。元より日本の貸出金利は低水準で貸出競争が激化していたなか、一層の市場金利低下環境においては、プライベートエクイティファンドのように、企業に対し出資の機能を強めることも選択肢になるのではないか。 上場株式を金融機関が保有するのは、コーポレートガバナンスや保有株式のボラティリティのなかでは容易でないだろう。ただし、金融機関のもつ目利き力を活かして、プライベートエクイティファンドのように「ヒト、モノ、カネ」で全面から企業をサポート・育成する金融仲介の原点に返ることも重要な選択肢といえる。 そこには、調査・コンサルティング機能が改めて重視される。戦後、一貫して日本の金融機関の貸出しは単なるデットでなく、「疑似エクイティ」としてエクイティ性を帯びたものだった。同時に今後、運用の対象のなかに、エクイティとデットの両方の性格をあわせもつハイブリッド商品を拡大していくことも重要だろう。 http://diamond.jp/articles/-/88306
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