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マイナス金利に翻弄される「銀行」の深い苦悩 安全資産の運用ではもはや稼げない!
http://toyokeizai.net/articles/-/109971
2016年03月22日 井下 健悟 :東洋経済 記者
「マイナス金利に振り回されている」「営業の現場は完全な消耗戦」「預金金利はマイナスにしにくいのに、貸出金利はどんどん下がる。日銀はどう考えているのか」――。
1月29日に日本銀行が決定したマイナス金利政策を受けて、金融機関の現場からは日銀に対する恨み節があちこちから聞かれる。こうした状況だけを切り取ると、”銀行いじめ”のようにも映るが、当の日銀にそんな意図はない。なぜなら、預金を集めて貸し出しを行うという金融仲介機能が壊われてしまうと、元も子もないからだ。
民間の金融機関は通常、貸し出しや有価証券運用などに使っていないおカネは日銀に預けている。そこに置いておけば年0.1%の利息がついた。ところが、日銀はマイナス金利政策を導入し、民間銀行の預け入れたおカネの一部にマイナス0.1%の金利をつけると決めた。要は、「ウチ(日銀)に置いておくと損をしますよ。だから、集めた資金は寝かさず、貸し出しや投資へ積極的に回してください」というメッセージだろう。
■運用の柱である国債の金利が消滅
日銀は3月15日の金融政策決定会合で「現状維持」としたが、実はマイナス金利政策に一種の”特典”を設けた。民間銀行が貸し出しを増やし、その資金を日銀から借り入れた場合、当該銀行は0.1%のマイナス金利を課される金額を減らせるというもの。貸し出しを増やした銀行にマイナス金利の影響を軽減する措置といえる。
もっとも、1月のマイナス金利政策を発表してから市場金利は一段と低下。2月上旬には10年物の国債利回りも初めてマイナスに沈み込んだ。銀行にとって有価証券投資の中核である国債の金利はほぼ消滅。日本では前例のない政策の導入で、安全資産では稼げない状況に追い込まれたわけだ。
突如ブチ上げられたマイナス金利政策にどう対応するか。銀行は焦りと危機感を募らせている。週刊東洋経済は3月26日号(22日発売)で『追い込まれる銀行』を特集。メガバンクから地方銀行、信用金庫まで、さまざまな金融機関の動きを追った。
さらなる金利低下の影響を挽回しようと、銀行の営業員はすでに躍起になって動いている。
ある食品メーカー首脳は「これまで付き合いのなかった銀行から、次々とM&Aを提案されている」と明かす。銀行が持ち込んだ案件額を足し合わせるとゆうに手持ちの資金を超すという。だが、同社の財務担当役員は「資金調達や現預金の使い方は大きく変わらない」とにべもない。
中堅の部品メーカーの財務担当役員は「3月は長期借入金の一部を借り換えるが、3行、4行と提案が活発。金利は従来の半分になりそうだ」と話す。だが、ここも「設備投資は従来の計画通り。金利が安くなったからといって借入を増やすことはない」と言い切る。金利低下は歓迎しているが、あくまで事業計画ありきというわけだ。
■「メガバンクの動きを注視せよ」
メガバンクの今までにない動きに、地銀も警戒心を高めている(撮影:尾形文繁)
首都圏に本店を置くある地銀の支店長は「掘り起こせる融資先はすべて掘り起こしている感覚。そもそも新規の資金需要がない。どんな産業が有望なのか教えて欲しい」とため息交じりに話す。だが、何もしなければ、競合が自分たちの取引先を奪いにくる。そして金利競争が過熱する。
マイナス金利政策の導入後、新たな動きも出ているという。「これまで訪問していなかった中小企業にメガバンクがアプローチしている。国内の利ザヤが低下する中で、メガとしても比較的利ザヤの高い中小企業に行かざるを得なくなっているのだろう。本部からは『メガの動きには注視するように』との指示も来ている」(前出の支店長)。
貸し出し競争で金利の更なる低下が見込まれる中、下げ余地のほとんどない預金金利の扱いも悩みのタネだろう。銀行は長年、貸し出し以上に預金が集まる「預金超過」の状況が続いている。国債の金利がなくなったことで、銀行の有価証券運用はそうとう行き詰まっており、「これからは預金の増加が金融機関の恐怖となりかねない」(アナリスト)からだ。
マイナス金利の幅が一段と広がった場合、いずれ「預金口座維持手数料」を設定する金融機関も出てくるはず。だが、先陣を切ると”悪者”扱いされかねず、「いつでも追随できるように準備はしておく」(銀行関係者)と、まさに横にらみだ。
金融庁は金融機関の融資先1000社ヒアリングを進めている(撮影:尾形文繁)
横の動きばかりを気にして金利競争だけを続けていると、銀行業界の収益は沈み込む一方だろう。生き残りを図るには、事業モデルをいかに再構築できるかにかかっている。
そこで参考になるのが、金融庁が昨年来行っている融資先企業1000社をメドにしたヒアリングだ。昨年12月、今年2月に公表された中間報告では企業側の本音が見て取れる。融資先からの”厳しい声”は、「支店の業績のため、期末に資金需要に基づかない短期間の借入を要請された」「顧客の方を向いて仕事をしておらず、本部の方を向いて仕事をしている」「保証料が高い信用保証協会を利用するより、銀行のプロパー融資で対応してもらいたい」といった具合だ。
■時間も手間もかかる変革の覚悟
中間報告のアンケートでは、メインバンクを選んでいる理由として「当社や事業に対する理解」が最も多く、その回答数は「融資の金利」の約3倍。しかし、「アドバイスや情報が期待できない」という理由で、約3割の企業がメインバンクに経営上の課題や悩みをまったく相談していない、というアンケート結果も出ている。
従来の「量的・質的金融緩和」に加えてマイナス金利導入の狙いを語った黒田東彦総裁。民間銀行が”変わる”きっかけとなるのか(撮影:大隅智洋)
一方、金融機関を” 評価する声”には「準メインだが、今までの金融機関と違い、融資先と一緒になって問題を解決し、成長していこうという姿勢がみられる」「当社(1次下請) だけでなく、3次下請先までヒアリングを行い、地域全体の業界分析まで行ってくれて、非常に有り難い」「事業内容や今後の方向性を理解した上でアドバイスや取引先の紹介を行ってくれる」などがある。751社のヒアリングを終えた段階で金融庁の評価は「厳しい声が多い一方、金融機関の熱心な行動を評価する声も一部に見られる」というものだった。
こうした生の声からも分かるように、時間や手間もかかるが、融資先の業界動向や事業性をいっそう深く分析し、経営改善支援などの取り組みを通じて成長融資を地道に増やすことがポイントだろう。ある日銀OBは「追い込まれた状況だからこそ、民間銀行が本来の”目利き力”を発揮していく必要がある」と強調する。
マイナス金利の導入で、日銀への預金や国債投資という安全な”逃げ道”は閉ざされた。銀行が迫られているのは金利競争ではなく、変革の覚悟なのかもしれない。
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