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ニトリの店舗(「Wikipedia」より/あばさー)
29期連続増益ニトリ、世界展開本格始動で抱えた「大きなリスク」「双子の赤字」
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14313.html
2016.03.20 文=牧瀬良/フリージャーナリスト Business Journal
家具小売り最大手ニトリホールディングス(HD)の2016年2月期連結決算は、純利益が440億円を超え、前期比約6%増えて17年連続(29期連続の増収増益)で最高になることが確実だ。帝人と共同開発した冷感寝具「Nクール」など夏物商材や吸湿発熱素材を使った「Nウォーム」など秋冬物商材の販売も好調。さらに、東京・銀座など都心部に出店した効果で既存店の客単価も上昇している。国内外で積極的に出店している一方、通販事業も売り上げを伸ばしており、17年2月期連結決算も最高益を更新するのは間違いなさそうだ。
そのニトリHDは1月26日、似鳥昭雄社長が会長に就任し、白井俊之副社長が社長に昇格する人事を発表した。白井氏は1979年4月、宇都宮大学工学部を卒業すると同時にニトリに入社。2004年に常務、08年に専務、14年にニトリ社長兼ニトリHD副社長と歩み、店舗開発や物流、組織づくりなどに幅広く携わった。その意味で、まさに「満を持してのエース登板」。「創業家経営は一代限り。長男には継がせない」と公言してきた似鳥氏にとって、脱・創業者経営への舵を切ったということだろう。
日本経済新聞の連載『私の履歴書』をベースに書籍化された似鳥氏の著書『運は創るもの』のなかに、「会社は後継者で決まってしまう」という一文がある。創業者の才覚と旺盛な行動力で拡大してきた流通チェーンは後継者問題で苦しむケースが少なくないが、ニトリHDはこの後継者に恵まれたのである。自称“おちこぼれ経営者”の似鳥氏は今後、赤字が続く海外事業など次の成長戦略策定に注力するという。
■派遣の人材を減らし、自動化でコスト削減も
ニトリHDは16年2月20日現在で国内外合わせて420店舗(国内383、海外37)を持つ。国内は郊外店だけでなく、都心への出店を加速させている。「郊外では出店余地が小さくなり、残された空白地帯が都心とその周辺」だからだが、都心の消費者ニーズに応えたこの積極策が奏功。盤石な体制を築きつつある。
コスト削減にも果敢にチャレンジしている。たとえば、物流サービスを担う連結子会社のホームロジスティクスが運営する川崎市・川崎区にある統合発送センターでは最近、家庭用品・生活雑貨品のピッキング(商品仕分け)業務を自動で行う「オートストア」を稼働させた。日本では初めての自動化システムという。
関係者によると、これまで派遣社員の人手に依存していた部門で、投資額は5億円。ニトリHDの年間450億円の設備投資の一部分に過ぎないが、それでもこの物流拠点だけで派遣社員の人員を毎日50人減らせられ、年間では約1.5億円程度のコスト削減になるという。
余談だが、この統合発送センターでは、「女性も多く比較的働きやすい環境です。その仕事が減るのは痛いですね」と、同センターでの仕事を中心に生計を立てる派遣社員のひとつは漏らす。ホームロジスティクス社員の対応も紳士的だという。そうした側面があるにしても、ニトリHDはコスト削減につながる物流機能の改革にも余念がないのだ。
■海外は苦戦し、赤字解消が最大の課題
もちろん、ニトリHDは海外展開にも目を向ける。「グローバルチェーン展開の本格的なスタート」と位置づける17年に500店舗・売上高5500億円、22年に1000店舗・売上高1兆円、32年に3000店舗・売上高3兆円というビジョンを掲げている。この拡大に不可欠なのが海外での出店であるのはいうまでもない。高齢化や人口減で市場縮小を余儀なくされる国内では、いずれ限界があるからだ。
現在の海外37店舗は、台湾24、米国5、中国8。快走が続く国内とは違い、海外は苦戦しており、「米国と中国の双子の赤字」を抱えている。その「双子の赤字」を解消し、海外を成長軌道に乗せることができるかどうかが、500店、そして1000店、さらには3000店実現のカギといえる。
すでに、「将来の中国における事業拡大を図るため」として、今年6月に販売子会社、12月には商品供給・物流子会社を設立することを発表している。海外での出店は中国でのウエイトが大きいことを示唆する動き。赤字解消の道筋を描きつつあるのは確かだが、政治情勢や経済環境の変化など事業上のリスクもあるだろう。
「しばらくは、両地域ともに様子を見ながら数店舗ずつ増やしていくつもりだ。合計で20店を超えるとアジアから独自商品を輸入でき、経営も安定する。早ければ17年には赤字を解消できるかもしれない」(同書より)。
似鳥氏には、海外事業を軌道に乗せる自信と戦略があるからこその言葉だが、果たして赤字解消は実現できるのだろうか。
(文=牧瀬良/フリージャーナリスト)
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