Business | 2016年 03月 18日 19:17 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 円高による競争力阻害は解消、生産性回復が急務=ジョルゲンソン教授 [東京 18日 ロイター] - 17日に首相官邸で開かれた国際経済金融分析会合に出席した米ハーバード大のデール・ジョルゲンソン教授は18日、都内でロイターの取材に応じ、25年間にわたり日本企業の競争力阻害要因だった円高は終わっており、低下した生産性の回復が急務だと主張した。 そのためにも、法人税から消費税への税負担シフトが重要と指摘した。 ジョルゲンソン教授は、1985年のプラザ合意後の過度な円高が日本企業の競争力を阻害してきたとし「日銀の金融政策は間違い続けてきた」と批判。一方、黒田東彦日銀総裁の下での大規模金融緩和で「ドル円は、もちろん多少の上下はあるものの、購買力平価の水準となった」とし、円高は解消済みとの見解を強調した。 この結果、日本経済が直面する重要課題は、1)生産性の回復、2)高齢化・人口減少、3)財政の持続可能性確保──と総括。特に「1995年以降、停滞を続けてきた生産性の回復がより重要な課題に浮上してきた」と指摘した。「生産性の拡大と言うと、人工知能などを連想する人も多いが、まず岩盤規制改革など競争の促進が重要」とし、製造業と比較して生産性の低い農業や電力で改革を進めようとしている安倍政権の姿勢を評価した。高齢化と人口減のなかで、女性の労働力活用など雇用改革も重要と強調した。 財政については「企業の競争力を引き上げるには法人税の減税が重要なため、生産性向上には法人税減税と消費税増税を進めることが重要」と指摘した。 もっとも、2017年4月に予定されている消費税率の10%への引き上げの是非については明言を避けた。「生産性が向上すれば海外からの投資が拡大し、財政改善に資する」とし、財政戦略と生産性向上はセットで進めなければいけないと強調した。「分析会合の後に話した麻生太郎財務相は共鳴していただけたようだった」と付け加えた。 (竹本能文、スタンレー・ホワイト) http://jp.reuters.com/article/jorgenson-idJPKCN0WK123
FX Forum | 2016年 03月 18日 20:54 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:事実上の米金融緩和が示す「2つの問題」=鈴木敏之 三菱東京UFJ銀行 シニアマーケットエコノミスト [東京 18日] - 米国のコアインフレ率に上昇の兆しが見える。失業率は4.9%まで低下。経験則で言えば、景気の過熱を懸念しなければならないところだ。それでも15―16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、金融緩和を行ったに等しい結果となった。 つまり、世界経済と金融情勢は引き続きリスクであるという判断を残し、次回の4月26―27日のFOMCでの利上げの可能性を小さくしたのである。 また、今回発表されたFOMC経済見通しのフェデラルファンド(FF)金利予測で、年内の利上げ回数は2回であることが示唆された。昨年末には4回と示唆されていたので、意外とも言える大きな引き下げである。 さらに、景気に中立的なFF金利は、メンバーの中位値で3.5%から3.25%に引き下げられた。これは、今後のFF金利パスの期待形成に影響を与え、やはり緩和効果を持つことになる。 <「ROW」の低迷と成長期待喪失の懸念> 今回の「事実上の緩和」は、2つの問題を示したと言える。 第1に、世界経済と金融市場の状態の悪さを正面からとらえ、信用スプレッドの拡大などを通じて、米国経済にも悪影響を与えるリスクがあると改めて示したことだ。 米国経済がしっかりしていれば、同国以外の世界経済(ROW:Rest of the World)をけん引できた時代もあったが、いよいよ立場が逆転して、ROWが弱いと米国もその方向に引きずられるリスクを心配しなければならないということである。 第2に、中立のFF金利の引き下げが、なぜ必要なのかが明瞭ではないことだ。確かに、将来のFF金利パスの引き下げを通じて金融緩和効果を持つが、それを狙いとしているような説明はない。単純に、潜在成長率の低下を認めざるを得ないということだろう。 FOMCの声明には、設備投資が弱含みであることが記された。失業率が4.9%まで低下するような元気な経済であれば、設備投資も力強く拡大しても良さそうだが、現実には勢い不足だ。これは、米国経済の最大の懸案である労働生産性の伸び悩みにも通じる問題である。 設備投資が勢いを失っている要因については、議論が尽きない。悩ましい議論は、将来の成長期待の喪失である。人口動態などを勘案すると、将来の成長期待がないので企業は投資をしなくなっていることが懸念される。 また、経済がある程度成長していても、これまでは大きな資源の遊休(スラック)があったので、それを稼働させれば、今程度の需要拡大には応じることが可能だ。その遊休が解消されるところまで到達して、さらに拡張に走るだけの成長の期待がないとすると、設備投資の拡大余地は乏しい。設備投資の伸び悩みは生産性の向上を妨げ、賃金引き上げの原資を企業が稼ぎ出せないことにつながる。 <中立政策金利引き下げに見える成長期待低下> イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は、FOMC後の会見で、これだけ雇用情勢が改善しても賃金上昇が見えないのは、サプライズだと言っている。労働生産性が伸びず、賃金を引き上げる原資を企業が稼ぎ出せていないのに、賃金は上昇すると見込んでいるのであれば、それこそサプライズである。 この罠にはまってしまうと、いくら金融を緩和しても、設備投資を誘発することには限界がある。中央銀行には抗い難い流れのもとで、自然利子率、そして中立のFF金利の数字を後追いで引き下げていくことになってしまう。 ROWに問題があり、それが信用スプレッドの拡大、ドル高などを通じて、米国経済の成長を妨げるとして、当面は利上げに慎重になったというのが、今回のFOMCのメッセージだろう。 しかし、より深遠な問題は、中立のFF金利の引き下げに見える経済成長期待の低下であり、米金融政策当局に目下、なす術がないということである。 *鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。 *本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-toshiyuki-suzuki-idJPKCN0WK14U
Business | 2016年 03月 18日 19:33 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 焦点:ドル高是正で「G20協調」の思惑、市場混乱の収束で増幅 [東京 18日 ロイター] - 2月に上海で行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、各国当局がドル高是正で水面下の合意に達していたのではないかとの観測が市場で浮上している。 欧州中央銀行(ECB)が緩和手段を突然見直した一方、米景気がドル高で失速する事態は各国共通の大きなリスクで、市場不安定化など混乱回避を狙った「協調」があってもおかしくないとの見方だ。当局から肯定する情報はないものの、市場混乱が収束しつつあることが、「協調」への思惑を増幅させている。 <ドラギECB総裁の変節、真の狙いは> 市場の憶測が強まるきっかけとなったのは、10日のECB理事会。中銀預金金利のマイナス幅拡大は予想通りだったが、資産購入枠・対象の拡大や新たな資金供給策導入など、予想外の大規模包括緩和を突然打ち出し、政策手段の軸足を「金利」から「量」へ再び移行させた。 特に注目を集めたのは、階層金利制度の見送り。事前には日銀と似た2段階制の導入を予想する声もあったが、理事会協議の結果は不採用。ドラギ総裁は、期待ほど金利が低下しないことや、複雑さ、追加引き下げの思惑回避などを理由に挙げた。 ECBウォッチャーによれば、域内格差が大きい欧州は、銀行の置かれた環境も非常に多様。一律管理する階層制を採用しても効果が上がりづらい。 だが、銀行間格差の存在は以前から認識され、なぜ今「量」へ方針転換する必要があったのか、との根強い疑問がささやかている。 一部で浮上している「限界説」通りなら、マイナス幅をさらに拡大させてリスクを積み増す必要もなかったはず──。そうした疑問の間で浮上してきたのが協調説だ。 効果が未知数で「壮大な社会実験」(国際金融筋)とも言われるマイナス金利政策。まだ、定まった評価はないが、銀行のバランスシートに直接影響を及ぼす量的緩和に比べると、通貨安は重要な波及経路のひとつとされる。 つまり「量」へのシフトは、政策から生じる通貨安圧力の減退につながる。ECBの狙いの1つは、ここにあったのではないかとの解釈だ。 <政治の季節到来の米、通貨高はしばらくご法度> 憶測が広がり始めた要因は、ECBだけではない。G20で初の議長を務めた中国も、その後に行われた全国人民代表大会(全人代)で、財政出動強化を明言。同時に人民元の再切り下げを否定した。 具体的には、金融政策の「穏健」な運営方針を掲げ、ドル高につながりかねない元安誘導の思惑を強くけん制した。今年は人民元再切り下げをメーンシナリオの1つに据える投資家が多かっただけに、ここまでの当局の言動は、参加者に少なからず予想外の動揺を及ぼした。 さらに韓国では、中銀総裁が先の会合で追加緩和の可能性を明確に否定。南アフリカは予想外の利上げに踏み切った。通貨高が進行しているオーストラリアも、懸念こそ示したものの、従来のようなけん制発言は封印している。 G20メンバー国で相次ぐこうした出来事は、参加者の目に「ドル高是正」を水面下で共有したかのごとく映り始める。もちろん本丸の米連邦準備理事会(FRB)が、利上げ見通しを後退させたこととも整合的だ。 ひょうそくを合わせるように市場では、G20前後から年初来の市場動揺が急速に安定。商品や新興国株・通貨が買い戻され、ドルが下げ基調を強めてきた。 産油国減産の思惑、中国資本流出の緩和などが落ち着きの背景とされるが、決定打に欠いたまま強まるリスクオンを明快に説明できる要因は、あまり見当たらない。普段は目から鼻へ抜けるような動きを見せるファンド勢ですら「違和感をぬぐい切れず、今回のリスクオンには乗りきれていない」(ヘッジファンド関係者)という。 ドル相場はこの1カ月、対円を除き幅広く下落。JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFX/EMストラテジストは、過去数年来の「ドルの過大評価の修正が、本格化した可能性」を指摘する。 だが、米金利が上昇しても低下しても、切り返すことがないドルの不自然な動きに首をかしげる参加者は少なくない。 ブレイナードFRB理事は今月7日の講演で、ドル高が国内総生産(GDP)を1%押し下げるとの試算を披露した。 米国では今後、大統領選や環太平洋連携協定(TPP)の議会承認という政治の季節が到来する。通貨政策を担う財務省で国際担当次官を務めた同氏の発言に対し、景気失速以外の火種にもなり得るドル高を心配する米政策当局の本音が隠れていると、分析する市場関係者の声もある。 (基太村真司 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/focus-g20-dollar-idJPKCN0WK13J?sp=true 日銀執行部は量的・質的緩和拡大も提示、委員全く議論せず−1月会合 2016/03/18 11:26 JST (ブルームバーグ):日本銀行が日本で初となるマイナス金利の導入を決定した金融政策決定会合で、執行部は追加緩和の選択肢として量的・質的金融緩和の拡大とマイナス金利導入の2つを提示したにもかかわらず、政策委員は量的・質的緩和の拡大について全く議論していなかったことが分かった。 日銀が1月28、29日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。それによると、議長である黒田東彦総裁に追加緩和の選択肢の提示を求められた執行部は、量的・ 質的金融緩和の拡大とマイナス金利の導入という2つの案を提示。このうち前者について「実務的に可能」と報告し、後者については3層構造などを説明した。 これに対し、多くの委員は「物価の基調に悪影響が及ぶリスクの顕現化を未然に防ぎ、2%物価目標に向けたモメンタムを維持するためマイナス金利の導入が望ましい」との見解を表明。執行部が提示したもう1つの選択肢である量的・質的緩和の拡大については、誰一人言及しなかった。追加緩和の手段として、なぜ量的・質的緩和の拡大ではなく、マイナス金利だったかについても議論は全くなかった。 日銀は昨年12月18日の金融政策決定会合で、量的・質的金融緩和の補完措置を決定。黒田総裁は会合後の会見で、「量的・質的金融緩和をしっかりと継続し、 物価安定目標の早期実現のために必要と判断した場合には、迅速に調整ができるようにするための措置」と説明した。 副作用について突っ込んだ議論の形跡ない みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストはマイナス金利導入を決定した金融政策決定会合について「議論のバランスが欠けており、マイナス金利導入という『結論先にありき』だったことが裏付けられた。マイナス金利についての副作用、弊害についても突っ込んだ議論がなされた形跡がない」と指摘する。 マイナス金利の導入により、証券売買の決済口座に使われるMRF(マネー・リザーブ・ファンド)の運用が困難になったことを受けて、日銀は15日の金融政策決定会合でMRFへのマイナス金利の適用除外を決めた。 上野氏は「内部で細かい点まで詰めないまま、マイナス金利が決定されたことの表れだろう。マイナス金利の導入は拙速に決められたと言わざるを得ない」という。その上で、「これほど国民の反発が強まっている中で、日銀はマイナス金利の拡大は当面棚上げせざるを得ない。次の追加緩和は、1月会合で全く議論しなかった量的・質的緩和の拡大が柱になるだろう」としている。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O47OR36JIJUO01.html
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