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世界経済、5年周期の「バブル」リレー 中国が握るバトンはどの国に渡るのか? グローバル・マネーの行方
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48213
2016年03月17日(木) 安達誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」 現代ビジネス
■世界経済の「バブル」サイクル
1980年代後半以降の世界経済は、ほぼ5年に1度の周期で「バブルの発生と崩壊」を繰り返している。
世界の「バブル・リレー」は、1980年代後半の日本、北欧諸国(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー)の不動産バブルから始まり、東アジア通貨危機、及びロシア通貨危機へと続き、米国のITバブルへと引き継がれた。
そして、その後、米国のサブプライムローンとユーロ発足にともなう長期金利の収斂を梃子にした欧米の不動産ブームが始まり、リーマンショック、及びユーロ危機で幕を閉じた。
また、欧米の不動産ブームと同時並行で進んだ部分も多かった新興国ブームは、リーマンショック時も継続したが、ここ数年の中国経済の減速によって遂に崩壊しつつある。原油価格の大幅下落や経済成長率の減速にともなう通貨の大幅下落はそのあらわれであろう(ただし、「バブル・リレー」のスタートを80年代後半の住宅ブームとその後のS&L危機とすることも可能である)。
このような約5年に1度の周期で問題化する「バブル」のサイクルは、まるで、世界の国・地域間で、「バブル」の受け渡しをやっているようにみえるので、「バブル・リレー」といわれることがある。
この「バブル・リレー」論で考えると、目下のところ、バトンは、中国に渡されている状況ということになるのではなかろうか。
■きっかけは「資本取引の自由化」だった
以上のように、1980年代の後半から「バブル・リレー」が展開されるようになった大きな理由は、1985年9月の「プラザ合意」以降、世界中で資本取引の自由化が進み、「マネー」が大量に行き来するようになったためではないかと思われる。
プラザ合意とは、「双子の赤字(財政赤字と経常収支赤字)」にあえぐ米国経済を国際協調的な枠組みで他の先進国が協力して支えようとする試みであった。米国の経常収支赤字を削減させるためには、米国からの輸出を増やす必要があるということで、先進主要国の政策協調によって、ドル安が誘導されたのだった。
当然、日本もそれに協力したが、当時の日本では、ドル安円高を誘導するために、日銀による大幅な利上げが実施された。これによって、1986年、日本経済は、円高と金利高のダブルパンチを受け、深刻な不況に陥った(円高不況)。そのため、ある程度のドル安が実現した後、政府日銀は積極的な緩和政策に転じることとなった。
実は、これは日本だけの現象ではなかった。先進各国は、ある程度のドル安誘導に成功した後、大幅な金融緩和を実施すると同時に、財政出動も行った。また、米国もドル安誘導のために金融緩和を実施したため、世界中に大量のマネーが供給されることになった。
その結果、1980年代後半以降、この大量のマネーが、「資本取引の自由化」という流れの中で高い収益を求め、世界中を駆け巡るという新たな時代が始まったのである。
こうした「グローバル・マネー」は投資収益が高そうな地域に集中的に流入し、その地域に「バブル」をもたらす。そして、バブルは、多くの場合、景気を過熱させ、インフレ圧力を高めるため、最終的には金融引き締めによって終焉の時を迎えることになる。
また、場合によっては、投資規制等で資金の流入を制限しようとする動きが採用されることもある。そのようなバブル対抗策によって当該地域への投資にこれ以上の妙味がないと判断されると、「グローバル・マネー」は新たな収益機会を求めて一気に流出し、当該地域の「バブル」が崩壊する代わりに、新たな地域で新たな「バブル」が発生することになる。
このプロセスの繰り返しが、「バブル・リレー」である。
■次にバトンを受け取る有力候補は?
そこで、現在、中国に渡されているバブル・リレーのバトンだが、例えば、中国の株価をみてみると、予想PERは他国と比較しても突出して高い水準ではないため、既にバブル崩壊を終えているとも考えられる。
多くの識者が中国経済の構造調整の必然性を理解していることからも、中国経済の高成長期待の剥落が佳境に入ってきた感がある。よって、中国は現在、バブル・リレーの最終コーナーを回っている可能性が高い。
問題は、中国は次の走者にバトンを渡すのか、それとも、中国がバブル・リレーの最終走者(アンカー)なのか、という点である。
そこで注目されるのは、2つの地域における不動産価格の上昇である。1つ目は、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコといった「資源国」であり、2つ目は、デンマーク、スウェーデンといった「北欧諸国」である。
最初の地域は、いわゆる「資源国」に分類される。資源国の多くは、中国経済の減速によって、現在、大きな痛手を被っている。中国経済の成長率の急低下によって、資源の需要が落ち込むとの見通しから、原油や鉄鉱石といった資源価格が急落したためである。
確かに、資源価格の急落は、産油国を中心とした資源国経済を痛めつけた。さらに、それと同時並行的に、資源国の通貨も暴落している。
そこで、資源国の対応は2つに分かれる。1つは、自国通貨の暴落を阻止するために、為替介入を実施している国、もしくは、米ドルに「ペッグ(対ドルレートを固定させている)」している国であり、もう1つは、自国通貨の暴落を放置して金融緩和で国内景気の浮揚を図っている国である。
前者では、為替レートが重要なので、暴落を防ぐために事実上の金融引き締め政策をとっている。そのような国では、不動産価格は上がりようがない。むしろ、新興国ブームに便乗した原油価格の上昇で不動産バブルが発生し、その後遺症に悩んでいる。ドバイ等の中東諸国がその典型例であろう。
一方、後者では、大幅な金融緩和が実施されるようになっている。そして、金融緩和によって、住宅ローン等の金利が急低下している。そのような金融緩和局面で起こっているのが、不動産価格の上昇である。それが前述のオーストラリア、ニュージーランド、メキシコといった国なのである。
すなわち、「通貨防衛を考える必要がなく、金融緩和で景気浮揚をはかれる資源国」が1つ目のカテゴリーである。
2つ目の地域は、いずれも「マイナス金利」を適用している。ただし、単に金利水準がマイナスで推移しているだけではない。同時にマネタリーベースの伸び率が急上昇しており、その結果として、通貨価値が大きく低下しているのだ。一方、マイナス金利を採用しながらも、名目実効為替レートが上昇しているスイスでは、不動産価格の伸び率は極めて低い。
すなわち、2つ目のカテゴリーは、「通貨価値が下落しているマイナス金利採用国」になる。
2つの地域とも、金融緩和によって為替レートが低下し、しかも、それを放置できる国であり、これらの国の不動産価格の上昇が、昨年9月頃から顕著になり始めているのである。
つまり、これらの地域は、「バブル・リレー」において次にバトンを受け取る有力候補であるといえよう。
■鍵を握るのは、やはり米国
一方、中国が「バブル・リレー」の最終走者となる可能性もある。
それは、米国が「出口政策」に失敗する場合である。米国が拙速な政策金利引き上げによって、深刻な景気悪化に見舞われる場合、FRBは再度、ゼロ金利政策ないし量的緩和政策を余儀なくされるかもしれない。
同様の事態に見舞われた1937年以降の米国では、ゼロ金利・量的緩和と同時に大幅な財政拡張も実施されたが、その後、出口政策を実施することができずに、戦時経済に突入し、経済は統制された。
よく、「デフレは戦争でしか解決できない」と言う識者がいるが、これは正確な表現ではない。当時の米国は拙速な出口政策に伴う引き締め政策で再び深刻な経済危機に陥ってしまったために、出口政策が続行不可能になってしまったのである。
この「1937年以後」の経済政策を米国政策当局が実施せざるを得ない状況に追い込まれた場合には、「経済の統制」が新しい潮流になるリスクがあると考える。その場合には、「バブル・リレー」は強制終了ということになるだろう。
現時点で、「バブル・リレー」が継続するのか、それとも終焉するのか、どちらのシナリオの実現可能性が高いのかはわからないが、その鍵を握るのは、米国の経済政策である。
このところ、あまりクローズアップされることのない米国の経済政策だが、依然として極めて重要な意味を持っている点に注意する必要がある。
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