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日本郵政ビル(「Wikipedia」より/Rs1421)
日本郵政、西室社長退任が濃厚に…完全に崩れた「上場」成長戦略、マイナス金利が直撃
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14212.html
2016.03.12 文=編集部 Business Journal
日本郵政の西室泰三社長が今春にも退任する見通しとなった。2月8日から検査入院中で退院の見込みは立っていない。社長職は鈴木康雄上級副社長が代行している。
西室氏は、東京芝浦電気(現東芝)や東京証券取引所の社長などを歴任し、2013年6月に日本郵政の社長に就任した。15年11月に日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の同時上場を果たした際、「17年6月の株主総会まで社長を続ける」との考えを示していた。
一方で、今年に入って首相官邸や経済界からは“古巣”東芝の粉飾決算問題の経営責任を問う声が上がっていた。また、西室氏の健康を不安視する声もあった。
1月28日の会見で、全国地方銀行協会の会長行を「常陽銀行」と言い間違える一幕があった。会長行は常陽銀行(寺門一義頭取)から横浜銀行に代わり、大蔵省(現財務省)OBで元国税庁長官の寺澤辰麿頭取が地銀協の会長を務めている。
寺澤氏は地銀協の会長になるまでは、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額の引き上げに断固反対の急先鋒だった。それが西室氏の頭にこびりついていたのだろう。「横浜銀行が頭から消えて、常陽銀行と言ってしまった」と、会見後に事務方は釈明したという。
日本銀行が導入したマイナス金利によって、西室氏が描いた日本郵政グループの成長シナリオが崩壊してしまったのは間違いない。
ポスト西室が誰になるのか、さまざまに取り沙汰されている。日本郵政の指名委員会は委員長が新日鐵住金相談役名誉会長の三村明夫氏、委員は西室氏のほか、キヤノン会長兼社長CEOの御手洗冨士夫氏、東京海上日動火災保険相談役の石原邦夫氏、現在上級副社長を務める元総務省事務次官の鈴木康雄氏の5人である。
後任候補には民間の企業経営者を起用する案が浮上しているが、引き受け手がおらず難航が予想される。大株主である政府が最終判断するが、内部昇格する案も残っている。
■旧郵政省出身の候補は2人
内部昇格する場合に有力視されているのが鈴木氏だ。同氏は郵政省(現総務省)の出身だ。05年の郵政民営化法成立以来、旧郵政省を母体とする日本郵政グループは政争の舞台となった。
鈴木氏は09年7月に総務事務次官に昇格したが、民主党政権時代の原口一博総務相によって就任から半年で解任された。
政権に復帰した自民党は民主党政権時代の日本郵政の役員を一掃。13年6月、社長に西室氏、副社長に鈴木氏を起用した。鈴木氏は菅義偉官房長官が第1次安倍晋三内閣で総務大臣を務めた時の審議官だったこともあって、官邸と太いパイプがある。
対抗馬は日本郵便社長の高橋亨氏とみられている。日本郵政グループ各社のトップのうち、高橋氏だけが唯一、旧郵政省の出身だ。郵政省は郵政事業と電気通信行政を所管していたが、鈴木氏がNTT などの電気通信行政を担当したのに対し、高橋氏は郵便事業一筋だ。日本郵政発足当時から役員を務めてきた。
政権交代の荒波にさらされ、旧郵政省出身の幹部たちが次々と表舞台から去った。その中で生き残ったのが高橋氏だ。永田町に強力な影響力を持つ全国郵便局長会(全特)と日本郵政グループ労働組合(JP労組)との交渉役を務め、郵便事業に精通していたことから日本郵便の社長に起用された経緯がある。
■有力候補者のうち民間出身者は日本郵政副社長の曽田氏のみ
日銀の「黒田バズーカ」第3弾であるマイナス金利導入は、ゆうちょ銀行の収益を直撃した。ゆうちょ銀行は運用資産の4割以上を日本国債で運用しており、国債の利回りが急低下したのだから、ひとたまりもない。ゆうちょ銀行の収益への影響度はメガバンクの3〜4倍と指摘するアナリストもいる。
ゆうちょ銀行の15年12月末時点の運用資産残高は205兆円で、そのうち国債は82兆円。日銀の黒田東彦総裁が打ち出した異次元緩和以降、残高を減らしてきたが比率はまだ40.8%もある。
4月からは上限1000万円の貯金額が1300万円に引き上げられるため、今後間違いなく貯金は増加する。だが、ゆうちょ銀行に運用を多様化するノウハウはあるのだろうか。6月の日本郵政グループの株式総会で、「ゆうちょ銀行の資産運用方針を示せ」といった質問が出た場合には返答に窮するのではないか。
“天下り社長”では、難局を切り抜けられない。民間企業の経営者の起用が取り沙汰される理由は、これに尽きる。民間出身者で、現在、経営陣に加わっているのは副社長の曽田立夫氏だ。13年6月、三井不動産副社長から日本郵政の副社長に転身した。
西室氏の前は2代続いて旧大蔵官僚がトップだった。一時、財務省事務次官を務めた勝栄二郎氏がポスト西室の有力候補に浮上したことがある。勝氏は12年に退官後、IT(情報技術)企業のインターネットイニシアティブ社長になっている。
だが、民主党色を一掃した安倍晋三首相=菅義偉官房長官コンビが、民主党・野田佳彦内閣で経済指南役を務め、“影の首相”とまで呼ばれた勝氏を起用することはないだろう。
果たして、ポスト西室の引き受け手はいるのか。
(文=編集部)
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