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斉藤惇・KKRジャパン会長、日本取引所グループ前CEO
マイナス金利で株価暴落!市場原理を歪めた張本人は誰だ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160308-00017518-president-bus_all
プレジデント 3月8日(火)11時15分配信
年初から株価が乱高下し、世界的に金融市場が大混乱している。日本はマイナス金利政策を打ち出したが株価は暴落、急激な円高となった。日本取引所グループ前CEOで、米大手投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の日本法人会長の斉藤惇氏を緊急インタビューした。
■金融緩和策の実態は為替の切り下げだった
――日本は年初から世界的に株価が乱高下しています。
これは難しい問題で、正しい解答はないと思います。一つは政府としての政策で「これは」というものがないので、少なくとも世界中で金融緩和をした。結果としてどの国も中央銀行に頼った金融緩和政策をとったわけです。それがある程度効果があったかのように見えていたのですが、金融緩和政策の実態は為替の切り下げ競争に近かった。しかも市場に介入した形になっていたるために、金利に自然な値段がついていない。特に為替市場などと違って介入しやすい債券市場、金利市場は、各国の中央銀行の介入市場になっていたのです。だから本来つくべき値段がついていなかった。少し長い目で見ると、自然に需給バランスがつくはずの金利も政策的に歪められたために、そのツケがまわってきてしまったのではないかと思います。
そしてもう一つは原油価格の問題です。原油の取引にはアービトラージャー(裁定取引の参加者)が間に入って非常に重要な役割を果たしてきました。かつてはゴールドマンサックスやモルガンスタンレー、JPモルガンなど大手投資銀行が、コモディティ―(商品先物取引)の部門を持っていて、売買をやっていました。ところがボルカールール(注)など新しい金融規制で、こうし投資銀行が自己勘定での取引ができなくなりました。さらに銀行がコモディティ―の倉庫を持っていることが問題となり、大手のアービトラージャーがみんな、原油などの商品の先物取引をやめてしまった。
そのため、今売り物があると、いきなり値段が下の方に落ちてしまうし、一方通行の非常に荒っぽい市場になっています。値段が下がるのはわかるのですが、それが非常に荒っぽい。市場があるというよりは、相対取引のようになっているのです。私は市場をわかっている人たちが、市場のルールを作り直していかなければならないと思います。そうしないと、何にでもこうした問題が現れてくる。観念的にインベストメントバンカーが、レバレッジをかけてコモディティーの取引をしていることがいけないのだと決めつけるのはいかがなものか。金利市場にも原油取引市場にもそのとがめがきている。良かれと思ってやった過去2、3年のことが、市場の原理を曲げてしまって市場が怒ってしまったのだと思います。
――中国の経済成長が減速していることが世界経済に大きな影響を与えているのではないかという指摘があります。
中国でも、国家や国有企業が、民間が伸びていく市場に過剰に介入をしている結果、本来の需給が形成されるような物価ではなくなっている。モノの値段が異常に不合理になってしまっているのです。中国経済が効率性を落としているのはそのためで、これを変えられないから中国経済は苦しい状態となっています。ここを変えれば、経済が回復する。それは中国当局も頭ではわかっている。もうすぐ発表される第13次5カ年計画にははっきりそういうことが書いてあります。重工業から第3次産業への移転、できるだけ国有企業を民営化する。しかし問題はそれが本当にできるのかということなのです。それができれば、中国は少々の混乱があっても大丈夫です。しばらくコストを払ってから安定すると思います。
注.ボルカールール:2010年夏に成立した米国の金融規制改革法(ドッド・フランク法)の中核となる「銀行の市場取引規制ルール」のこと。2015年7月21日より全面適用されている。 銀行が自らの資金(自己勘定)で自社の運用資産の効率を図るためにリスクをとって、金融商品を購入・売却また取得・処分をすることを禁止する。オバマ米大統領の呼びかけにより、ポール・ボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長が提唱した。(野村証券の証券用語解説より)
■規制緩和すればさまざまな可能性が
――日本経済に大きな影響を持つ米国経済が回復基調にあるといわれていますが、実際はどうなのでしょうか。
米国はGDPなどのデータの公表が遅いのですね。しかも使っている数字と違う数字が出てくる。失業率も少なくなっているように見えていますが、老齢化している人たちが就職を申し込まない。それがものすごく増えているから失業率が減っている。さらに簡単な技術を持っている人たちが、ロボットなどに取って代わられて、中間層の職がない。一方で英語がしゃべられないような教育水準の低いような人たちの職はあるのですが賃金が安い。企業はそうした賃金が安い人たちを使い、さらにロボットを使って利益を上げているから、企業の利益は高く出てきたりしている。特に米国の経営者は株主を考えすぎて、株式の買い戻しをやりすぎる。借金してまでやっているために、株価は上がるけれども、実体経済を誤解させる要因になっている。総合的に考えると、米国の経済はもう少し厳しいのではないかと思っています。
――日本の大手企業の経常利益は大きく伸びていますが、実態はどうなのでしょうか。
確かに日本の上場企業の経常利益は何期に渡っても伸びています。しかし輸出入を見ると、数量はほとんど伸びていない。むしろ減っているといってもいいかもしれません。円安の中で値下げをしなかったので、ドル建ての商品が円に換算されたときにものすごく大きな利益が出たのです。為替に連動してドル建て商品の値段を下げずに済んだのは、質が良かったということもあるのでしょうが、これは会計上のマジックといった方がいいかもしれません。結局、金融緩和政策は何だったのかといったら、円安政策だったということなのです。それ以外は極論すると何もなかったということでしょうね。そういうことを今、株式市場が警戒しているのではないでしょうか。
――そのような中で日本経済は今後どうなっていくのでしょうか。
日本経済は、円が1ドル=110円を切っていくと問題だと思いますが、110円から120円ぐらいの間であれば、十分回復できると思います。おかげさまで観光客が来て、大きな市場となっていますが、設備投資をしてモノを作ってGDPを取り戻すというのは無理だと思います。日本は抜本的な構造改革が必要です。第3の矢が構造改革につながっていけばいいのですが、これがなかなかできない。
要するに既成勢力がいろいろな圧力をかけている。それをなかなか否定できなくて大きな壁になる。それはさまざまな産業で起こってきていたのです。25年間に世界のGDPが2.5倍になっているのに、日本だけがそうならなかった。アジアでも1人あたりのGDPがシンガポールだけでなく、数年以内には台湾にも負けるようになってきている。それは自分たちのテリトリー(縄張り)を守る人が多すぎるからです。本当は国家権力がそうしたテリトリーを撤廃すればいいのですが、民主主義はそうした人たちを敵にはまわせない。それは日本だけではない。米国などでは、結果的には部分的に破壊しているが、日本ではそれすら難しい。農業などでも規制緩和すれば、さまざまな可能性が生まれてくるのですが、それをやらせない。それで国が行き詰まっていく。そうしたところに資金需要がないから、金融セクターから産業に金が出ていかないという構図が出てきてしまっているわけです。
■資金需要を作ることが先決で、金融政策は後だ
――マイナス金利政策についてはどうですか。
その是非については正直わかりません。しかし10年債もマイナスになり、銀行の経営も厳しくなり、MMF(公社債を中心とする投資信託)も返すといわれれば、そんな社会はどうでしょう。皮肉にも金庫が売れているようですが、家にお金が置いてあるというのは、泥棒は喜ぶかもしれませんが、それは何かおかしいのではないでしょうか。欧州に何か成功例でもあればいいんでしょうが、その反応はまちまちです。デンマークはすでにいろいろなものの値段が上がり、逆にコストがかかるので市中金利も上がってしまう。スイスも長い間、ネガティブ金利(日本でいうマイナス金利のこと)をやってきましたが、これが非常に有効的に為替を守れたとか、経済を守れたということもない。正直まだわからないのではないでしょうか。
――日銀はマイナス金利で金融を緩和して市中に資金が出回るようにして、景気の活性化をしたいのだと思うのですが、狙いどおりにいきますか。
マイナス金利をつければ、当座預金からお金がでて、市場での貸し出しが増えるのかといったら、そんなことはない。需要のないところに貸し出しはないですよ。最悪の場合、マイナス金利がついているのにそのままの状態が続けば、銀行はコストばかりがかかって貸し出しができない、という状況に陥ってしまいます。一番大事なことは、資金需要を作ることが先で、金融政策は後だということです。つまり今やっていることは逆なのですよ。これは何も日本だけではなく、どの国も同じような状況にあり、中央銀行の金融政策に頼りすぎではないでしょうか。資金需要を生み出すためには、新しい技術の開発などを進めていくことが大切で、税制面での優遇などでR&Dへの積極投資ができるような政策が必要なのだと思います。
さらに最終的には公共投資などを通して需要を生み出していくことが必要です。潜在成長率が0.4%程度だと、すぐにその水準に達してしまいます。生産性の改善も何も起こらない。潜在成長率そのものを上げなければいけませんが、人口が減って、老齢化していく、そんな国でどうやって潜在成長率を上げるかというと、結局、トータル・ファクタ・プロダクティビティー(全要素生産性)、技術革新を拡大するしかないと思います。そのためには、ものすごく思い切った税制面で優遇措置をとって利益を刺戟したり、規制を行き過ぎるぐらい撤廃するという取り組みが必要です。そうすることによって、そこに大きな需要を生むしかないのではないでしょうか。
ジャーナリスト 松崎隆司=文
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