総理「アベノミクス失敗でない」経済・財政集中審議(2016/03/07 11:50) 国会では、参議院の予算委員会で集中審議が行われ、アベノミクスの是非などを巡って論戦が行われました。 (政治部・村上祐子記者報告) 民主党は「アベノミクスの失敗を『1億総活躍』で覆い隠そうとしている」と追及し、それに対し、安倍総理大臣は色をなして反論しました。 安倍総理大臣:「アベノミクスは失敗したと決め付けているが、失敗していません。働き盛りの皆さんの失業者も60万人減っています。有効求人倍率も23年ぶりの高い水準、7つの県では過去最高になっている。こうした結果を全く無視して『間違っている』と言って、もとの政策に戻ったら、こうした成果も全部、吹っ飛んでしまう」 また、消費税引き上げについて、民主党は「増税延期でもう一度、解散・総選挙を狙うのはいかがなものか」と迫りました。安倍総理は「リーマンショックや大震災が発生しない限り増税する」と述べ、解散については「全く考えていない」と改めて強調しました。ただ、アベノミクスの恩恵が地方に広がっていないことについては、安倍総理自身も「なぜ実感がないのか分析しなければ」と認めています。 http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000069781.html なぜ十分な財政赤字が「必要」なのか? 財政赤字,企業貯蓄率 (写真=Thinkstock/Getty Images) 深刻な高齢化で、強い緊縮政策をとらないと日本はもはや財政を維持することができないという固定観念が、この20年間の日本経済の停滞の一因になっていたと考えられる。 日本の財政赤字の問題は、高齢化ではなく、企業活動の弱さからくる内需低迷とデフレの長期化と表裏一体の関係にある。日本経済はアベノミクスによりこれまでとは違う景気回復の局面に入っており、財政再建についても過去の考え方は変えるべき時にきている。 過去の考え方は、日本の財政赤字は深刻であり景気回復が進行しても増税をしないと財政再建は不可能ということであった。 しかし、今回の景気回復とともに財政赤字は大きく縮小してきている。財政赤字の名目GDP比は2011年の−8%程度のピークから低下し、2015年には−4%程度まで半減している。どのような財政収支を改善するメカニズムが働き始めているのであろうか。 財政収支を改善するメカニズムとは 企業活動の弱さによる内需低迷とデフレの長期化は、税収の減少などを通して、財政収支も悪化させてきたと考えられる。 日銀資金循環統計がさかのぼれる1981年から企業貯蓄率と財政収支を同一のチャートで確認すると、ほぼ完全にカウンターシクリカル(逆相関)の動きになっていることがわかる。どちらかが上がるとどちらかが下がる関係にある。 景気の振幅の原因となる企業活動の強弱を示す企業貯蓄率(上昇=景気悪化、低下=景気回復)が、財政収支に大きな影響を与えている可能性がある。 景気が悪くなると税収が落ちることにより、自動的に財政が緩和的になり景気を支える力が生まれる。景気が良くなると税収が増えることにより、自動的に財政が引き締め的になり景気を抑制する力が生まれる。即ち、財政の景気自動安定化装置が作動する。 政治家が景気の状況を敏感にとらえ、財政支出を極めてうまく調整してきたとは考えられないため、強いカウンターシクリカルの動きは、この税収の振れを通した景気自動安定化装置が威力を発揮したのだろう。 景気の振れに左右されやすい所得税と法人税などの直接税が中心の税体系であるため、税収の振れは大きいが、逆に財政の景気自動安定化装置が強いとも考えられる。もちろん、景気が悪いときに財政による景気対策が打たれることによる影響もあろう。 ミクロではなくマクロで捉える必要性 もし財政健全化のため税収を安定化させることに注力し、この財政の自動安定化装置の役割を減じてしまえば、企業活動が弱く企業貯蓄率が上昇した分、総需要が破壊され、雇用・所得環境の悪化を通して、家計の貯蓄率が低下し、家計の富が奪われることになってしまう。 税収の振れを小さくすることは、景気の振れを逆に大きくするトレードオフが存在する。消費税は景気動向に関わらずほぼ一定の税収が見込めるため、安定財源と言われる。財政の安定化のため、より安定的な財源を確保すべきであるという意見は耳に心地がよい。 しかし、その裏にある景気の振れが大きくなるリスクが説明されることはあまりない。経済の安定的な成長のためには、その時の経済状況(企業貯蓄率の水準)に応じて、十分な財政赤字が必要であると考えられる。 これまでの日本は、財政が赤字はすべからく「悪い」というミクロ・会計として考えられすぎた一方で、総需要の安定的な拡大のためには財政の赤字は「必要」であるというマクロで考えることを怠っていたと言える。 会田卓司(あいだ・たくじ) ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト 【編集部のオススメ記事】 ・日経新聞・四季報などがネット上で全て閲覧可!その意外な方法とは ・(PR)ビジネスパーソンは誰でも投資家 "キャリア"を考える上で重要な「投資」の視点 ・LINEついに上場決定?2016年夏前に東京、NYで上場予定! ・株初心者おすすめ 株投資を始めるまでに知りたい7つのポイント https://zuuonline.com/archives/99553
G20で各国が財政強化の可能性、日本も春には財政出動か? 2016.03.03 07:00 上海で開催されていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が2月27日閉幕しました。世界的な成長鈍化が懸念される中、各国が財政出動を強化する可能性が高まってきました。日本には過大な政府債務という問題があり、ここで財政を拡大させることには大きな副作用を伴います。しかし政府の一部からは、大規模な財政出動を実施すべきという声が出ているようです。 G20では金融政策の効果に限界との見方 上海で開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(ロイター/アフロ) G20ではこれまで各国が行ってきた金融政策の有効性を認めつつも、その効果には限界があるとの見方が示されました。この結果、共同声明には「すべての政策手段を用いる」という文言が盛り込まれています(具体的には、金融政策、構造改革、財政政策をフル活用するという意味です)。米国と欧州では構造改革は継続して行われていますから、今回の共同声明がもっとも意識しているのはやはり財政政策ということになるでしょう。 日本は財政出動をすべきなのか? 日本以外の先進諸外国は、確かに財政出動するメリットが大きいかもしれません。米国はすでに財政再建に道筋を付けた状況にありますし、ドイツに至っては、2015年度予算から国債の新規発行が事実上ゼロとなりました。鈍化傾向がみられるとはいえ、基本的に経済は好調ですから、多少の借金を背負っても、景気を刺激する効果は大きいと考えられます。 一方日本は、米国やドイツ、英国などとはまるで状況が異なります。20年間、経済はほとんど成長しておらず、世界的に見ても突出した規模の政府債務を抱えています。これ以上、債務を増やすことは将来の金利上昇リスクを高める可能性があるでしょう。また日本の場合、大規模な財政出動が効かなくなり、その解決策として構造改革が模索されたものの頓挫してしまったという経緯があります。日本経済の仕組みは基本的に何も変わっていませんから、再び大規模な財政出動に頼っても大きな効果は得られないかもしれません。 しかし政府の一部からはすでに大規模な財政出動が必要との声が上がっているようです。2015年10〜12月期のGDPはマイナス成長でしたが、消費が非常に弱く、このままでは2016年1〜3月期のGDPも悪い結果となる可能性が高まってきました。具体的な時期としては、1〜3月期のGDP発表後あたりが今のところ有力視されています。 (The Capital Tribune Japan) http://thepage.jp/detail/20160302-00000012-wordleaf 日本の経済も財政も壊す政治 これ以上続けるわけにいかない 参院予算委 小池副委員長の基本的質疑 Yahoo!ブックマークに登録 日本共産党の小池晃副委員長が3日、参院予算委員会で行った基本的質疑は次の通りです。 消費税増税を問う 小池 家計の冷え込みの原因は一昨年の消費税増税にあると認識するか 首相 予想以上に落ち込み、予想以上に長引いている 写真 (写真)質問する小池晃副委員長=3日、参院予算委 小池晃副委員長 日本共産党の小池晃です。 2014年4月に消費税を5%から8%に引き上げて以来、わが国の個人消費は、冷え込み続けております。これは、消費税増税前後の家計消費支出の推計を、前回の増税時(1997年、3%から5%への引き上げ時)と、今回の5%から8%に増税した場合とを比較したものです(図1)。増税前の駆け込み消費も、それから増税後の落ち込みも、今回のほうがはるかに深いものになっているわけですね。 さらに重大なのは、その後の消費の落ち込みが、2年近くたっても低迷が続いている。前回よりも低迷が続いているということだと思うんです。 総理にお聞きしますが、この家計消費の落ち込みは、一昨年の消費税増税に最大の原因があるということは間違いないと思いますが、認識を。 安倍晋三首相 前回の消費税の引き上げは、3から5でございますから2%でありますが、今回は5から8ということもあって、また駆け込み需要も多かったことから予想以上に消費が落ち込み、それが現在まで続いているということだと思います。 図 拡大図 小池 総理は、この間の議論のなかで、いろいろと数字を持ち出して、雇用はよくなった、あるいは賃金も上がった、中小企業の倒産も減ったというふうに繰り返すわけですが、もしそれが事実だったら、なんでこんな事態が続いているということになるんでしょうか。 石原伸晃経済再生相 委員のお示しの通りだと思います。消費税引き上げによる駆け込み(需要)の反動減というものが、われわれが予想したものよりも大きかったということも事実でございます。また、物価上昇によります実質所得の減少が、消費を押し下げたといった影響があった、これも当然のことだと思います。そして、特筆すべきは、2014年は夏が大変寒うございました。春先には長雨があった。この天候不順も消費に大きな影響を与えるということは、月例経済報告でも明らかなわけです。ですから、安倍内閣は消費税の10%への引き上げというものを1年半延長した。こういう期間、「3本の矢」の政策によりまして、2015年の名目のGDP(国内総生産)の成長率は2・5%。実質GDPでも0・4%、GDPデフレーターでも2・0%といずれも上昇しており、経済再生は確かなものだと認識をしているところでございます。 年収は624万円から590万円へ――アベノミクスの悪循環がある 小池 天気のせいだけにするのは、やめたほうがいいと思うんですね。私はもっと深刻に考えるべきだと思うんです。やっぱり、消費税増税による大打撃とともに、アベノミクスの悪循環が起こっているということじゃないですか(「そうだ」の声)。「企業が世界一活躍しやすい国」にするというふうにおっしゃったけれども、結局その大企業はたしかに史上空前の利益を上げた、しかし実質賃金は4年連続で下がっているわけです。勤労者世帯の実質世帯収入はマイナスが続いているわけですよ。結局、アベノミクスの3年間で5%低下していますから、実質世帯収入は、年収ベースで624万円から590万円まで低下しているわけですから、家計消費が上向くわけがないわけです。 総理は、一昨年のこの当委員会で、わが党の大門実紀史委員の質問に対して、「消費税はワンショットです」とお答えになった。一時的なものだと認識をされていた。ところが、ワンショットにとどまらずに、これは日本経済の悪循環を加速するんじゃないかと私どもいったけれども、結局それが現実のものになっているのではないか。総理、やはり8%への増税がこれほど消費を冷え込ませるということは、はっきり想定外だったんじゃないですか。 首相 たしかに、予想以上に落ち込んだのは事実であり、予想以上に長引いているのも事実でございます。しかし、そういうなかにあっても、私たちの経済政策によって名目賃金は十何年ぶりの高い引き上げ率になっておりますし、実質で見ましても、変動の多い賞与への影響を除けば、昨年7月以降、これ増加傾向になっておりますし、みんなの稼ぎである総雇用者所得については実質においてもプラスになっているということは申し添えておきたいと思います。 小池 97年より消費が落ち込んでいるのに10%増税するのか 財務相 1世帯当たり18万4000円、1人当たり8万1000円程度の負担増になる 小池 すさまじい額、過酷な打撃になる 首相 リーマン、大震災級の事態がない限り、引き上げる 小池 世帯収入は減ったといったじゃないですか。やっぱり、都合のいい数字だけでいうのはやめたほうがいい。さきほど自民党の議員だって実感がないという声が街にあふれているといったじゃないですか(「そうだ」の声)。それがね、現実なんですよ。そこをね、しっかり見据えるべきだ。(「そうだ」の声) 97年の増税のときも、家計消費が落ち込んで、その後の不況の原因をつくったわけです。そして、その後17年間、消費税は増税しなかったわけでしょう。ところが今回は、その97年よりも落ち込んでいるのに、それなのに来年、これを10%に再増税するということをやろうとしているわけですよ。 今回の増税というのは、8(%)から10(%)だけれども、実質的には連続増税ですから、これは家計にとってみれば3年間で5から10に引き上がることになる。財務大臣に聞きますが、消費税率を5%から10%に引き上げると、国民1人当たりおよび1世帯当たりの負担増はどれだけになるんですか。 麻生太郎財務相 消費税率を8%から10%に引き上げ、酒類・外食を除く飲食料品および一定の新聞の定期購読料に8%の軽減税率を適用する場合の総所帯の1世帯および1人当たりの消費税負担の税率は、5%時から比べての増加額ということですが、消費税収の見込み額、税率1%当たり2・7兆円、軽減税率制度導入によります減収見込み額1兆円程度というのを所帯数および人口等により機械的に算出いたしますと、1世帯当たり18万4000円程度、1人当たり8万1000円程度になると思われます。 小池 すさまじい額なんですよ、これは、家計から見れば。これだけの大増税になるわけですよ。世界でも、13兆円も消費税を連続的に増税した例なんてないですよ。 私は、この連続する増税というのは、家計消費に対して、97年の増税に比べてもはるかに深刻な打撃となる。いくら軽減、軽減といったって、税率が下がるわけじゃないんだから(「そうだ」の声)。これだけの負担増になる。97年の消費税増税に比べても、過酷な打撃になるという認識は総理にありますか。 首相 97年のときには社会保険料等も引き上げておりまして、今回とは違うわけでございますが、今回の増税は、社会保障を充実させていく、世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくために行うものでございまして、消費税を払っているみなさんにも、社会保障、子育てにおいて、あるいは介護が必要になったときのため、あるいは年金も含めてこれは使っていくんだということもご理解をいただきたいと思いますが、いずれにせよ、われわれはリーマン・ショック、あるいは大震災級の出来事がないかぎり、事態にならないかぎり、消費税を引き上げていく考えでございます。 小池 答えていないんですけど、97年のときに比べても過酷になるでしょうと、どうですか。 首相 税率だけ見れば、あのときは2%でございましたが、今回も2%ということになります。連続という意味においては前回、まさに大変短い期間での8から10でございました。また種々の経済状況にかんがみ、これを1年半延期したところでございます。どちらが過酷かということについては一概にお答えはできないのではないかと思います。 暮らしも経済も壊す10%増税は断じて行うべきでない 小池 3年間で5%上げるんだから、明らかに過酷じゃないですか。1世帯当たり18万円の負担増になる、明らかに過酷じゃないですか(「そうだ」の声)。いま総理は、リーマン・ショックや大震災のような事態がなければやるんだと。いまのように家計消費の水準が増税前を下回ったままであっても、増税をするというんですか。 首相 従来から申し上げておりますように、リーマン・ショック級、あるいは大震災級の事態が起こらないかぎり、基本的に現段階では消費税を引き上げていく考えでございます。(「答えていない」の声) 小池 家計消費がいまのような水準のままだったら、当然増税すべきじゃないじゃないですか。そういったことを一切考慮しないんですか。考慮しないんですか。 首相 もちろんですね、家計消費の動向というものは注視をしてまいります。今年の4月の春闘、そして来年の7月、しっかりと賃金が上がっていく経済状況をつくっていくなかにおいて消費税を予定通り上げていきたい。そのさい、リーマン・ショック、あるいは大震災のような出来事がなければ上げていきたいと考えております。 小池 このまま増税に突き進めば、国民の暮らしも日本経済も大変なことになりますよ。来年4月の消費税10%増税は断じて行うべきではない、中止すべきだということを申し上げたい。それが国民に対していま必要なメッセージだと思います。 年金破壊・株式運用を問う 小池 「キャリーオーバー制度」は、物価が上昇しても年金を据え置く制度だ 厚労相 数値の例は指摘の通り 小池 消費税増税は社会保障のためなんだということをいわれますが、社会保障制度について何が行われようとしているのか。 まず、年金ですが、政府が今国会に提出する予定の年金法案に「マクロ経済スライド」(注)への「キャリーオーバー制度」の導入というのがありますが、国民のみなさんがわかるような説明をしていただきたい。 塩崎恭久厚生労働相 「マクロ経済スライド」は、平成16年度改正におきまして、現役世代の負担が過重なものとならないようにするために、将来の保険料の上限を固定いたしまして、その範囲内で年金の給付水準を調整をしていく「マクロ経済スライド」を導入をしたわけであります。一方で、「マクロ経済スライド」の導入後も、デフレによって賃金や物価が上昇しないという状況が起きました。給付水準の調整が行われない状態がずっと続いてきたわけでありまして、これをできるかぎり先送りをしないという観点から、「マクロ経済スライド」のあり方について、社会保障・税一体改革のときから課題として検討されてきたわけでございます。 「マクロ経済スライド」については、現在の高齢世代の生活にも配慮しつつ、年金の名目額がマイナスとならないようにするいわゆる「名目下限」という枠組みを維持をしながら、経済状況によって「マクロ経済スライド」の調整が完全に実施できなかったとしても、その未調整分を直近の景気上昇局面で、すぐ翌年とかいうことではなくて、直近の景気上昇局面でこの未調整分について調整するという方向で、いま検討をしているところでございまして、いずれにしても、将来世代の給付水準を確保するという先を見た考え方で、この調整を図る仕組みをご提案申し上げようということでございます。 図 拡大図 小池 いまの説明ではほとんど見ている人はわからないと思うんですが、具体的に当てはめてみると、こういうことになるんじゃないですかということでパネルにしています(図2)。仮に、「マクロ経済スライド」による調整率が0・9%だとします。今年の物価上昇がたとえば0・3%ぐらいにとどまったとすると、これは、0・3%分の削減が行われて、2017年度分というのは、年金額は据え置きということになる。そうすると、0・9%との差額0・6%が次の年に繰り越しになる。2017年4月には消費税10%増税がやられるということになると、その分物価上昇が想定されるわけで、仮に1・5%上昇するとすると、18年度は調整分の0・9%に加えて繰り越し分の0・6%が加わって1・5%削減になり、年金額は差し引きで据え置きになる。こういう仕組みということでいいですね。 厚労相 今回の見直しは、将来世代の給付水準の確保のために、現在の高齢者にも少しずつ協力をしていただこうという、世代を超えた助け合いの仕組みとして行うものでございまして、現在の高齢者には、前年度からの年金の実額は下げない範囲という「名目下限」というのを配慮をして行うということになっております。いまお示しをいただいた例ですが、第一に、この法案の内容は現在検討中でございますので、施行がいつかということと、「マクロ経済スライド」の調整率がマイナス0・9と書いてありますが、これらも、毎年、物価、賃金動向に応じて改定されて、なおかつ調整率も被保険者数の動きなどによって毎年変動するということでありますので、そういうことを前提にしていただかなければならないということが一つと、それから、検討中の見直し案に仮定の数値を当てはめることは慎重に行うべきだろうと思いますが、仮に、ご提起になられた数字を機械的に当てはめると、仕組み上の数値の例は、ご指摘のとおりになるということでございますが(議場ざわめく)、タイミングは、消費税のタイミングとかいろいろおっしゃいましたが、まったく、まだ検討中だということを、覚えておいていただきたいというふうに思います。 増税分すら反映させないとんでもないやり方だ 小池 最後のひとことだけでいいんですよ(笑い)。私が示した数字は、仮定の数字ですよ。しかし、これはありそうな数字なんですよ、結局。このぐらいになりそうなんですよ。そうすると結局、年金額が下がることはないとおっしゃるけれども、消費税を10%に増税しても、年金は据え置きということになるんですよ。結局、まとめてそこからとってしまうということになるわけです。「社会保障のための消費税」といっていたじゃないですか。ところが、消費税増税分すら年金に反映させないような仕組みを、今度の国会にあなた方は提出しようとしているんです(「とんでもない」の声)。とんでもないじゃないですか。だいたい、あなた方が想定している、アベノミクスが想定しているような物価上昇があるんだったら、「キャリーオーバー」なんてやる必要ないんですよ。わざわざ、物価が上がらないことを想定して、こんな仕組みをつくっておいて、いざ消費税が増税になったときには、物価が上がらなかったそれまでのツケを消費税の増税分からもとっていくと。まったくもって、ひどいやり方だというふうにいわざるを得ないというふうに思います。 マクロ経済スライドの強化で、どんどん年金が目減りするような仕組みをつくれば、これは受給世代の消費を冷え込ませる、内需の冷え込みは結局、現役世代の賃金にも悪影響を与える、年金への将来不安を高めるだけですよ(「そうだ」の声)。私は、こんなやり方はやめるべきだということを申し上げたいというふうに思います。(拍手) 年金のマクロ経済スライド 自公政権が2004年、「年金制度の持続」を理由に導入した自動削減システム。年金の伸びを物価・賃金の伸びより1%程度低く抑えます。ただし、前年の年金額を下回らないように、物価上昇が抑制分より低い場合は上昇分だけを削減し、物価下落時は抑制分を実施しないのがルールです。これを見直して、未実施分を繰り越して実施できるようにねらっています。 小池 巨額の公的年金資金を市場運用している国などない 厚労相 米国は「市場への政権介入は効率性を損ねる」と運用せず 小池 年金の問題で政府は、次の世代に引き継ぐためだと繰り返すわけです。しかし、その年金資金の株式運用で、将来世代の年金資金が失われるのではないかという不安も広がっているわけです。厚労相にお聞きしますが、公的年金積立金、現在、総額いくらになるでしょうか。 厚労相 平成26年度末の厚生年金と国民年金を合わせた年金積立金総額、全体の総額は約145・9兆円で、うちGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用資産額は、約137・5兆円です。 小池 時価総額で146兆円という数字がありました。これは国民1人当たりにすると114万円、4人家族で456万円分の年金資金となります。これが市場で運用されていることになる。世界で、これだけ巨額な公的年金積立金を、株式などで市場運用している国っていうのは、ありますか。 厚労相 保険料を原資とする積立金を保有をし、市場で運用している公的年金としては、カナダ、韓国、スウェーデンなどがございまして、GPIFほどの規模ではないにせよ、いずれにしても株式を含めたさまざまな資産への分散投資を行っておるところでございます。 小池 カナダ25兆円、韓国51兆円、日本とはケタが違うわけです。 アメリカは、一般国民を対象とする連邦政府の年金制度「社会保障信託基金」で、すべて非市場性の国債で運用されているわけです。アメリカの連邦政府の社会保障年金積立金が、市場での株式運用をしていない理由は、アメリカはどういうふうに説明しているでしょうか。 厚労相 アメリカの社会保障信託基金=OASDIは、その資産の金額を、市場に流通していない国債で保有をしているわけでありますが、「完全賦課方式」で、ペイ・ロータックスで入ってきたものを、年金に回すわけでありますが、一時的に資金繰り上、積み上がったものを市場に流通しない形の国債で運用しているわけで、過去にこのOASDIの株式運用について議論が行われたことがございました。その際に、たしかグリーンスパンだったと思いますが、ときの政権の政治介入により、株式市場の効率性を損ねるのではないかとの懸念等が示されたと聞いておるわけでございまして、むしろ株式市場へのインパクトがどうなのかということを考えて、このような形で市場に流通しない国債で資金繰り上、一時運用をしているというふうに私どもは理解をしているところでございます。 小池 334兆円もの資金を運用しているわけです。それを、非市場性の国債でやっている。その理由は、政府が特定の目的で介入することを回避する。マーケットインパクトを回避する。逆にいえば、日本がやっていることは、これは政府の介入の余地を認めている、リスクにさらすと。マーケットに対して政府が介入するということになっちゃうんじゃないですか。 厚労相 アメリカと日本はまったく制度が違う。「完全賦課方式」でありまして、「社会保障信託基金」の財政はかなり悪化をしておりまして、2034年には積立金が底をつき、予定している年金金額の給付ができなくなるとのリポートも出されていまして、負担と給付の見直しについて議論がなされているというふうに聞いております。わが国は、一方で積立金も活用しながら、およそ、まあ、100年間で収支が均衡する制度設計となっておりまして、現在、積立金の運用は必要な利回りを十分確保しているというふうになっているところでございます。 小池 株価のために老後の資産を食いつぶす、誰も責任を取らないしくみだ 株価維持のため、公的年金運用の信託銀は、海外投資家と正反対の動き 小池 その積立金をどんどん、どんどん取り崩すような事態が、足元で起こっているわけじゃないですか、日本だって。 図 拡大図 確認ですが、大半、日本の場合は、これは信託銀行で運用されているということなわけですが、ちょっと調べてみました。これは年金積立金の株式運用比率を倍増させた「ポートフォリオ(資産構成)」見直し以降の株式市場の動きを、東京証券取引所のデータでまとめてみたものであります。(図3) これをみますと、2014年10月末に「ポートフォリオ」を変えて株式運用比率を大幅に引き上げたわけですが、それ以降の68週間で、海外投資家と、それから信託銀行の株の買い越しがどうなっているか。68週のうち、海外投資家と信託銀行が同じ行動をとったのは24週です。ところが、異なる行動をとったのは44週あります。海外投資家が買い越した35週のうち、信託銀行が売り越したのは約半分の17週に対して、海外投資家が売り越した33週のうち、信託銀行が買い越したのは実に8割の27週になっているんですね。 信託銀行の動きは、大半が公的年金の運用であるっていうことは、これは市場関係者の常識だと思います。これが、海外投資家とまったく反対の動きになっているわけですよ。大臣、これは年金マネーが結局、株価を買い支えていることを証明するものではありませんか。(「そうだ」の声) 厚労相 いまの先生の推論は市場でいわれているというお話である、この信託銀行はほとんどGPIFの動きだという誤った認識で組み立てられているというふうに思います。たしかに、GPIFの株式運用は、基本は信託銀行に預けているのは間違いないわけですが、しかし、信託銀行はGPIFとだけ商売をやっているわけではないのであって、企業年金もあり、他の共済もあり、いろいろな年金の資金を運用しているわけでありまして、そのなかの一部であるわけで、このような動きがGPIFかのようなことをいうのは、あまりにもジャンプが大きすぎるというふうに金融のプロは多分考えると思います。 小池 そんなことない。金融のプロが、たとえばロイターなんかも、この動きは公的年金の動きだとはっきり書いているわけです。みんなそう思っているわけです。しかも、「ポートフォリオ」の変更前にはこんな売り買いは起こっていません。調べてみたんですよ。それ以前はこんな激しい動きはしていませんから、信託銀行は。結局、「ポートフォリオ」を変更して、国内株式の運用比率を引き上げて以来、こういう激しい売り買いが起こっていることは明らかなわけです。 最近でも、株価が1万6000円を割った先々週ですけれども、外国人投資家が4000億円を売り越す一方で、信託銀行はこれまで最高の5000億円買い越している。総理、衆院の予算委員会で、「もっぱら被保険者の利益のために最適な運用を検討した結果なんだ」というふうにおっしゃています。「株価を上げるなど恣意(しい)的なものでは決してない」というふうにいっています。しかし、まさに株価を上げるための売り買いだというふうにみられても仕方ないような動きになっているんじゃないですか。これはどう説明しますか。 首相 そもそも安倍政権が、株価を上げたいからGPIFにどんどん買えなんていうことは、まったく起こっていないわけでありまして、決められた「ポートフォリオ」のなかで最適な運用を行っているわけでございます。かつてデフレ時代には、国債をどんどん買っておけばよかったわけであります。なんていったって、物価が上がっていかないんですから。しかし、物価が上がっていくなかにおいて、それに追いついていく必要があります。たとえばいま国債の金利、これマイナスじゃないですか。これじゃとても将来の世代に年金をお支払いはできないわけであります。しっかりと経済が成長していくなかにおいて国内の株式あるいは海外の株式との適切な「ポートフォリオ」を形成していま運用をしているわけであります。ちなみに、リーマン・ショックを入れたとしても、現在の「ポートフォリオ」でずーっと運用していればいままでの運用よりもはるかに運用益は出ているわけでありますし、安倍政権ができて3年ちょっとで38兆円のプラス(債券なども含めた運用益総額)になっているわけでございます。最近の株価の下げ局面を入れてもそうなっているわけで、そこのところはぜひ、党派性を超えて冷静に見ていく必要があるのではないのかなと思います。 アベノミクスのために株式の運用拡大をすすめた 小池 私は、冷静な議論をしているんです。単に下がった、損したっていう、そういう話をしているんじゃないんですよ(「そうだ」の声)。こんなリスクにさらしておいて、足元は安倍政権になってからいいとおっしゃる。短期的な結果でみちゃいけないといっていたのに、安倍政権だったらよくなった(笑い)、矛盾しているじゃないですか、いっていることが。 安倍政権だって1月に入ってから株価が下落していますから、これは第3四半期はたしかに4・7兆プラス(運用益総額)になった、一昨日発表されました。しかし、この1月に入ってからの株価下落で5兆円マイナスになっているわけですよ。そうなると、4〜6月はプラス1・9、7〜9月でマイナス4・3、10月から12月で3兆プラスになってちょっと取り戻したけれども、今年度末はこのままでいけばマイナスになる可能性は高いですよ。国民の財産を、ジェットコースターのような、こんな相場にさらしていいのかと。その比率を引き上げたのが安倍政権じゃないですか。さきほど、国債の利率が下がったというけど、じゃあ、だれがやったんですか。マイナス金利で自分でやった話じゃないですか。本当にいまのは天にツバする話だというふうに思います。 しかも、国債の運用部分についてみれば、プラスになっているわけですよ、明らかに。アメリカは市場にさらせば特定の政府の意思が介入してマーケットを荒らすからといってやっていない。ところが日本はそれをやった。安倍首相がいいだしたんですよ、あなたが。安倍首相が2年前の1月にダボス(会議)で、5月にはロンドンのシティーで、「世界最大の年金基金、1兆5000億ドルを超す運用資産を持つGPIFがフォワードルッキングな改革を進めていく」と、この演説をしたあとで、上限ぎりぎりまで株を買うようになって、さらにポートフォリオの変更までやったんじゃないですか(「そうだ」の声)。世界最大の年金ファンドが、政府保証つきで、マーケットに参入する。そのことを宣言したのは、まさに総理、あなたではないですか(「そうだ」の声)。この議論のときに、ダボスやシティーで、総理が演説したときに、「年金のためだ」なんてひとこともいっていないんですよ。「成長戦略のためだ」、「アベノミクスのためだ」と、「バイ・マイ・アベノミクス」と、こういう演説をしたんじゃないですか。結局、年金積立金を、年金加入者の利益のために運用しているなどということではなくて、アベノミクスを支えるために、株価に投入したと、株式市場に投入したと、これがあなたのやったことではありませんか。 首相 安倍政権のときに年金積立金を削っているんじゃないかという趣旨のご発言をされましたが、そうではなくて、削っているどころか増えていますよと、誤解を解こうとしたわけでございまして、たしかに短期の話をしたって意味がない話であって、先週までの話をすれば、下がっていますが、今週はまたちがっているわけでありますから、足元の話をしたってあんまり意味がないわけであります。 年金積立金の運用は、デフレから脱却して物価が上昇していく局面では、運用を変えていくのは当然のことでありまして、運用を変えなければ、年金被保険者の利益にはならない。マイナスになってしまうわけでありますから、ポートフォリオを変えるのは当然だろうと。ポートフォリオの変更は、このような想定のもとで、GPIFの運用委員会において最適な組み合わせを選定したものであります。ポートフォリオ変更後の運用収益は、今年度第2四半期がマイナス7・9兆円となったものの、第3四半期はプラス4・7兆円となっておりまして、一昨年10月以降の累積はプラス8・9兆円、仮に現行のポートフォリオで、リーマン・ショックを含む過去10年間にもし当てはめてみると、名目運用利益は4・3%になって、従前のポートフォリオよりも1・1%高い収益率が得られえるわけであります。ちゃんとプラスになっているんですから、ご安心をいただきたい、このように思うしだいでございます。(与党席から拍手) 戦前は戦費調達、戦後は公共事業、今度は株式市場だ 小池 いや、拍手するどころじゃないですよ、ここは。年金について国民は不安をもっているんですよ(「そうだ」の声)。年金の積立金というのは、戦費調達のためにつくったわけですよ。戦後は、公共事業のために、あるいは「グリーンピア」(年金積立金を活用した保養施設)などをつくるために、積立金がさんざん食い荒らされてきた。そういう歴史をもっているわけですよ。そして今度は安倍政権になって、株式市場にこれだけ大量に投入する。アベノミクスを支えるために使っているんじゃないかという不安が広がるのは当然ではありませんか(「そうだ」の声)。あなた方のやっていることが、まさに年金不安をあおっている。安倍政権の株価の維持のために、国民の老後の資産を食いつぶすようなことは絶対に許されない。運用に失敗したって、だれも責任を取らない仕組みですよ(「そこが問題だ」の声)。巨額の資金を株式市場に投入して経済をゆがめる、そういう指摘だってあるわけです。だからアメリカだってやっていないわけでしょう。こんな無責任な、こんな国民の不安をあおるようなやり方は直ちにやめるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。(拍手) 介護保険改悪計画を問う 小池 要介護1、2の「保険外し」は、「介護離職ゼロ」に逆行する 厚労相 高齢者の自立のため 首相 制度の持続性のため 小池 制度は残っても暮らしはズタズタになる 小池 年金だけではない。介護保険の問題について聞きたいんですが、「介護離職ゼロ」を掲げる安倍政権ですけれども、介護保険サービスをさらに受けにくくするような提案をされております。財務大臣にお聞きしたい。財務省は、介護保険の「要介護」1、2の方について、訪問介護における「生活援助」を「原則自己負担」とすることを提案しています。これはなぜでしょうか。 財務相 財政制度審議会の資料だと思いますが、政府部内での検討段階における財政当局の立場からの提案を記載したものだと思います。介護保険における軽度いわゆる「要介護」1とか2の要介護者への生活援助につきましては、日常生活における通常負担すべき費用とのバランス、たとえば生活援助等々によって1割の自己負担で掃除、調理を受ける受給者と、一般の家事代行サービスを利用する高齢者とのバランス等々であります。また介護保険制度の持続可能性というものを考えねばいかん。価格サービスに関する競争の確保、たとえば生活援助とほぼ同じ内容の家事代行サービスとの価格差などの観点から、保険給付をどの程度まで確保すべきか、また効率的なサービス提供体制をどう構築すべきかといった問題意識で提案を行っているところであります。 全額を自己負担にすべきとの主張だけではなくて、現在の9割を自己負担1割から引き下げるべきとの提案を行ったと知っております。 「改革工程表」において、軽度に対する生活援助サービスなどのあり方は、厚生労働省の関係審議会において検討し、2016年末までに結論を得るとされたところでありまして、この方針に沿って、政府として検討を進めてまいりたいと考えておるという資料だと思います。 家事援助を民間にゆだねることは在宅生活の維持が難しくなる(老施協) 小池 検討中だから、決まってからでは遅いから聞いているわけであります。資料をお配りしてありますけれども、たとえば朝日新聞、読売新聞などでもこれは大きく報道されているわけです。 図 拡大図 安倍政権のもとで、介護保険の制度改悪が続いています。すでに、「要支援」1、2の方は介護保険給付から(訪問・通所介護が)除外され、「地域支援事業」にいま移行しつつあるわけです。介護サービス利用時の負担増も行われたわけです。そして、今度は「要介護」1、2の生活援助サービスを原則自己負担にするという案を財務省は提案をしている。パネル(図4)を見ていただきますと、この訪問介護を受けている方のなかで、「要介護」1、2というのは、これは非常に大きな割合を占めます。認定者数のなかでも大きな割合です。要介護1は一番多いわけですが、訪問介護を受けている方のなかでは、要介護者全体の61・3%。だから、介護関係者からも、このやり方には強い批判があるわけですよ。 公益社団法人・全国老人福祉施設協議会の意見書には、こういうふうに書いてあります。「家事援助についても単純に調理のみ、買い物のみを行っているのではなく、ケアプランに基づき訪問介護計画で明確な目標を掲げて実施しています。実施にあたっても食べ残しやゴミの状況から体調を観察したり、好みの変化や買い物の内容の変化で認知症の症状の進行を把握したりと専門職による支援をしています。特に認知症の独居の人にとって家事援助を民間サービスにゆだねることは、上記の支援が期待できなくなり、在宅生活の維持が難しくなることも考えられます」 いま、麻生大臣は、家事代行サービス、民間の家事代行サービスとの類似性みたいなことをおっしゃった。民間の家事代行サービスとは違うんです。専門家による生活援助というのは、そういう意味をもっているわけです。だから、要介護度が低い人に、きちっと専門家が介入をして、そして生活援助も含めてやっていくことが、その人の要介護度を悪化させない大きな担保になるわけですよ(「そうだ」の声)。そういう専門的な役割があるわけです。一昨日は、最高裁で、認知症の方の鉄道事故について画期的な判決も出されています。そして、この問題について老施協は、要介護者と配偶者の「双方が十分な介護保険サービスを受けることで、ある程度のリスク軽減ははかられたであろう」というふうにいっているんですね。これは、本当に国民全体の将来不安にかかわる問題です。総理、「要介護」1、2の方の生活援助サービスを介護保険制度から除外する、あるいは原則自己負担にする、こんなことをやれば、総理がおっしゃっている「介護離職ゼロ」にも明らかに逆行することになると私は思いますが、いかがですか。 首相 いま、軽度の要介護者の生活を支えるという観点から、何をすべきかという検討を行っているわけであります。介護保険制度の趣旨で、制度の改正の状況を踏まえつつ、また介護保険制度の持続性も考えなければいけないわけでありまして、介護保険制度は、ご本人の負担もあるし、現役世代の負担と、そして65歳以上の皆様方に保険料として負担をいただいていて、国費も出していますが、そのなかで維持をされているわけであります。過度に保険料が上がらないということも考えていく必要もありますが、だからといって必要なサービスを切るという考え方はございません。そのなかでどのような改革を行っていくか、しっかりと検討が行われているものと承知しております。 小池 介護保険制度で「軽度」といえば、特養ホームの入所基準で「軽度者」を外したときに、「要介護」1、2を外したんですよ。軽度者だったら「要介護」1、2ということになるじゃないですか。結局、「要介護」1、2の人の生活援助サービスなどをやめてしまったら、あるいは原則自己負担にしたら、いま250円ぐらいの利用料が2500円になる。こんなことになったら、「介護離職ゼロ」という安倍政権の方針に逆行することになるのではないですかと聞いているんです。 厚労相 おっしゃるように、要介護度1、2を対象とする生活援助サービスなどのあり方が検討課題に、改革工程表になっているということは、そのとおりでありますが、まだ議論は始まったばかりでもありますし、どうするかはこれからの議論であるわけでありまして、もともと介護保険は高齢者の自立と、介護の重度化を防ぐということでありまして、そのなかで必要なものは何なのかといことを考えるということが大事でありまして、何か最初に、なになにありきということで決め込んでいるわけでは決してないわけで、財政審は財政審の使命でいろいろおっしゃいますけれども、われわれは別な立場から申し上げることはあるわけでありますから、しっかり議論をしていただこうというふうに考えております。 小池 その部会で反対意見が日本医師会、老施協などからも続出しているわけですよ。じゃあ聞きますけど、財務省は「要介護」1、2を外すんだということをいっている。厚労省はやらないんですね。 厚労相 財務省は財務省の立場があることはお分かりのとおりでありますけれども、われわれは介護保険の原点からみて、高齢者が自立をできるだけするように、そして要介護度が悪化しないようにするという観点からすべてを議論をしてもらおうと思っているわけでありますから、はじめからなんか結論ありきということでは決してないわけであります。ただ、持続性というものを考えなきゃいけないということは総理が申し上げたとおりであって、そういうなかで本当に必要なことをしっかりとやっていくということであるわけでありますので、議論はまだ始まったばかりでありますから、これから大いにいろんな方々に思いのたけをいっていただいて、それをしっかりとみんなで考えて決め込んでいきたいというふうに思います。 被保険者との約束を反故にすれば「国家的詐欺」になる 小池 結局、介護保険の原点とかいいながら、財務省と同じことをいっているじゃないですか(「そうだ」の声)。持続性だということをいっているじゃないですか。結局、切り捨てるということになるじゃないですか。 私は、保険制度の大原則の一つは、所得に応じた保険料と同時に、給付については平等に受けることができるということが原則だと思うんです。医療保険というのは、大概の人が病気になりますから、必ず使うことになる。しかし、介護保険というのは、要介護状態にならずに、かなり長期間過ごす方がいらっしゃるわけですよ。言葉がいいかどうかはわからないけれども、「掛け捨て」になっちゃう人も多いわけですよ。しかし、でも、なぜあれだけ高い保険料を払うかといえば、やっぱり要介護状態になったときに、介護保険サービスが受けられるという期待があるからこそ、保険料を払うんだと思うんですね。ところが、いまやろうとしていることは、高い保険料を払っても、結局、「要介護」1、2の大半のところで、もうサービスから除外されるようなことを検討を始めているわけです。 厚生労働省で介護保険制度の創設に携わり、初代老健局長を務めた堤修三さんは、この間の厚生労働省の給付抑制を厳しく批判をして、業界紙でこういっています。「給付は保険料を支払った被保険者との約束で、国がそれを反故(ほご)にしてしまっては、保険料を納める意欲は減退する一方だ」「言い過ぎかもしれないが、団塊以降の世代にとって介護保険は『国家的詐欺』となりつつあるように思えてならない」。私は決していいすぎではないと思いますよ。総理、40年間、介護保険料を払い続けたのに、要介護状態となっても必要なサービスが一番多い部分で受けられないような制度にしてしまって、介護保険制度に対する信頼が保たれるとお考えですか。(「そうだ」の声) 首相 堤局長が導入時の局長だと、当時、自民党の社会部会長でいっしょに導入に汗を流したんですが、そういう発言があったことは大変残念でございます。持続性というのは当然じゃないですか。持続性がなければ、これからサービスをずっと続けていくことができないわけでありますから、持続性を考えるのは当然のことであろうと思っております。そして高齢者の自立を支援し、真に必要なサービスが提供される。私も和光市に行きました。要介護が必要にならないようなさまざまな取り組みをし成果を上げているところだってあるんですね。真に必要なサービスが提供されるようにするためのものであって、これは「介護離職ゼロ」に逆行する、あるいは介護保険の本旨に反するとか、ましてや詐欺行為ということとは、まったく違うということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。 小池 現実にね、要支援を外したところで、和光市なども含めて、必要なサービスが受けられない事態は起こっていますよ。そういう話はきているんです。しかも、この「要介護」1、2という大半の部分を外すようなことを検討し始めているわけですよ。こんなことをやったら、制度は残るかもしれないけれども、国民の暮らしはズタズタになりますよ。国民の命や健康の持続可能性は破壊されますよ。まったく、こんなことをやったならば、介護保険制度は破壊されることになるというふうに思うんです。 小池 医療も年金も介護も生活保護も大改悪の連続、経済も財政も破壊される 図 拡大図 小池 これだけじゃありません。財務省の社会保障制度改革の提案は、介護だけにとどまらないわけであります。医療も、年金も、介護も、生活保護も、大改悪メニューが並んでいるわけです。主なものをパネル(図5)にしてみましたけれども、大臣、これは、財務省とはやりとりをしてつくったパネルですから、ほとんど間違いありませんね。 財務相 これは昨年の末、経済財政諮問会議において決定された「改革工程表」というものの政府部内における検討段階において、財政制度審議会等々での議論の土台として財政当局の立場から提案を行ったものですが、基本的な考え方を申し上げさせていただければ、すでに社会保障費は歳出全体の3分の1を占めております。歳出は96兆のうち32兆ですから、今後も、高齢化に伴う伸びが見込まれる社会保障分野の歳出改革は避けて通れない課題なんだと基本的にそう思っております。受益と負担というものの均衡がとれた持続可能な制度を構築していく必要があることははっきり認識をいたしております。このため、社会保障の効率化とか、制度の改革に不断に取り組んでいくというのは当然のことで必要なことだと思っております。ご指摘の各項目については、財政当局としての案を示したものでありまして、いずれにしても、政府としては、年末に決定をされる「改革工程表」に沿いまして、今後、社会保障分野のおのおのの分野、個々の改革項目を着実に検討し、実施していくということが重要であろうと考えております。 軒並み2017年法案提出、選挙をやり過ごして押し付ける気か 小池 この項目を検討していることを認めるわけですよ。医療費も、介護保険も、75歳を過ぎても2割負担にする。自己負担の限度額も引き上げる。入院したならば、一般病床でも居住費、水光熱費などを徴収するようにする。「要介護」1、2は、生活援助も、福祉用具も、住宅改修も自己負担にしていく。そして年金は、支給開始年齢の引き上げということも入っているわけですよ。これを避けて通れない、といまおっしゃった。持続可能な制度にすると。私はこんなことをやったら、日本の社会保障制度は破壊されると思いますよ。国民の暮らしも日本の経済も持続不可能になりますよ。結局、こんなことをやれば、ますます重度化、悪化をして、医療費や介護の費用だってかさむことになる。悪循環だと。財政面からいってもそうなるというふうに思うんです。 だいたい、「社会保障のための消費税」だといいながら、なんですかこれは(「そうだ」の声)。増税が決まったとたんに、もうまったく歯止めなく、社会保障の大改悪をやろうとしている。しかも、なんでこれ、17年法案提出なんですか。全部のきなみ17年法案提出ですよ。なんで来年なんですか。選挙をやり過ごして、選挙が終わったら、これだけの痛みを押し付けようと、そういうことじゃないですか。 財務相 私どもは、この制度の維持というものをやっていくためには、いまのまんまの少子高齢化というものに対して真正面からやっていくために、毎年1兆円ずつ増えていく現在の社会保障の伸び率を、この3年間のあいだ、少なくとも約1兆5000億円にする対応ができましたので、いままずは2018年までは、5000億ということで考えておりますけれども、さらに増えていくという状況に対応するためには、財政当局としていろんな案を出させていただいているということだと存じます。 力を合わせて貧困と格差広げる安倍政権を打倒する 小池 完全に開き直りですね。麻生大臣は、麻生総理だったときに、2200億の社会保障の削減は、これは間違っていました、やめますということをいった人ですよ。それがいまや、消費税は増税する、社会保障大改悪だと。結局、こんなことをやったら、日本の経済も財政も破壊されることになる。格差と貧困を広げるような政治をこれ以上続けるわけには絶対いかない(「そうだ」の声)。個人の尊厳を踏みにじるような政治を続けさせるわけにはいかない。日本共産党は、自民党、公明党を、きたるべき選挙で少数に追い込むために(「よし」の声)、野党が力を合わせて(「そうだ」の声)、たたかいぬく(「よし」の声)。いまそういう議論を進めておりますので、必ず安倍政権を打倒するということを宣言させていただいて、私の質問を終わります。(大きな拍手) 日本の経済も財政も壊す政治 これ以上続けるわけにいかない 参院予算委 小池副委員長の基本的質疑 Yahoo!ブックマークに登録 日本共産党の小池晃副委員長が3日、参院予算委員会で行った基本的質疑は次の通りです。 消費税増税を問う 小池 家計の冷え込みの原因は一昨年の消費税増税にあると認識するか 首相 予想以上に落ち込み、予想以上に長引いている 写真 (写真)質問する小池晃副委員長=3日、参院予算委 小池晃副委員長 日本共産党の小池晃です。 2014年4月に消費税を5%から8%に引き上げて以来、わが国の個人消費は、冷え込み続けております。これは、消費税増税前後の家計消費支出の推計を、前回の増税時(1997年、3%から5%への引き上げ時)と、今回の5%から8%に増税した場合とを比較したものです(図1)。増税前の駆け込み消費も、それから増税後の落ち込みも、今回のほうがはるかに深いものになっているわけですね。 さらに重大なのは、その後の消費の落ち込みが、2年近くたっても低迷が続いている。前回よりも低迷が続いているということだと思うんです。 総理にお聞きしますが、この家計消費の落ち込みは、一昨年の消費税増税に最大の原因があるということは間違いないと思いますが、認識を。 安倍晋三首相 前回の消費税の引き上げは、3から5でございますから2%でありますが、今回は5から8ということもあって、また駆け込み需要も多かったことから予想以上に消費が落ち込み、それが現在まで続いているということだと思います。 図 拡大図 小池 総理は、この間の議論のなかで、いろいろと数字を持ち出して、雇用はよくなった、あるいは賃金も上がった、中小企業の倒産も減ったというふうに繰り返すわけですが、もしそれが事実だったら、なんでこんな事態が続いているということになるんでしょうか。 石原伸晃経済再生相 委員のお示しの通りだと思います。消費税引き上げによる駆け込み(需要)の反動減というものが、われわれが予想したものよりも大きかったということも事実でございます。また、物価上昇によります実質所得の減少が、消費を押し下げたといった影響があった、これも当然のことだと思います。そして、特筆すべきは、2014年は夏が大変寒うございました。春先には長雨があった。この天候不順も消費に大きな影響を与えるということは、月例経済報告でも明らかなわけです。ですから、安倍内閣は消費税の10%への引き上げというものを1年半延長した。こういう期間、「3本の矢」の政策によりまして、2015年の名目のGDP(国内総生産)の成長率は2・5%。実質GDPでも0・4%、GDPデフレーターでも2・0%といずれも上昇しており、経済再生は確かなものだと認識をしているところでございます。 年収は624万円から590万円へ――アベノミクスの悪循環がある 小池 天気のせいだけにするのは、やめたほうがいいと思うんですね。私はもっと深刻に考えるべきだと思うんです。やっぱり、消費税増税による大打撃とともに、アベノミクスの悪循環が起こっているということじゃないですか(「そうだ」の声)。「企業が世界一活躍しやすい国」にするというふうにおっしゃったけれども、結局その大企業はたしかに史上空前の利益を上げた、しかし実質賃金は4年連続で下がっているわけです。勤労者世帯の実質世帯収入はマイナスが続いているわけですよ。結局、アベノミクスの3年間で5%低下していますから、実質世帯収入は、年収ベースで624万円から590万円まで低下しているわけですから、家計消費が上向くわけがないわけです。 総理は、一昨年のこの当委員会で、わが党の大門実紀史委員の質問に対して、「消費税はワンショットです」とお答えになった。一時的なものだと認識をされていた。ところが、ワンショットにとどまらずに、これは日本経済の悪循環を加速するんじゃないかと私どもいったけれども、結局それが現実のものになっているのではないか。総理、やはり8%への増税がこれほど消費を冷え込ませるということは、はっきり想定外だったんじゃないですか。 首相 たしかに、予想以上に落ち込んだのは事実であり、予想以上に長引いているのも事実でございます。しかし、そういうなかにあっても、私たちの経済政策によって名目賃金は十何年ぶりの高い引き上げ率になっておりますし、実質で見ましても、変動の多い賞与への影響を除けば、昨年7月以降、これ増加傾向になっておりますし、みんなの稼ぎである総雇用者所得については実質においてもプラスになっているということは申し添えておきたいと思います。 小池 97年より消費が落ち込んでいるのに10%増税するのか 財務相 1世帯当たり18万4000円、1人当たり8万1000円程度の負担増になる 小池 すさまじい額、過酷な打撃になる 首相 リーマン、大震災級の事態がない限り、引き上げる 小池 世帯収入は減ったといったじゃないですか。やっぱり、都合のいい数字だけでいうのはやめたほうがいい。さきほど自民党の議員だって実感がないという声が街にあふれているといったじゃないですか(「そうだ」の声)。それがね、現実なんですよ。そこをね、しっかり見据えるべきだ。(「そうだ」の声) 97年の増税のときも、家計消費が落ち込んで、その後の不況の原因をつくったわけです。そして、その後17年間、消費税は増税しなかったわけでしょう。ところが今回は、その97年よりも落ち込んでいるのに、それなのに来年、これを10%に再増税するということをやろうとしているわけですよ。 今回の増税というのは、8(%)から10(%)だけれども、実質的には連続増税ですから、これは家計にとってみれば3年間で5から10に引き上がることになる。財務大臣に聞きますが、消費税率を5%から10%に引き上げると、国民1人当たりおよび1世帯当たりの負担増はどれだけになるんですか。 麻生太郎財務相 消費税率を8%から10%に引き上げ、酒類・外食を除く飲食料品および一定の新聞の定期購読料に8%の軽減税率を適用する場合の総所帯の1世帯および1人当たりの消費税負担の税率は、5%時から比べての増加額ということですが、消費税収の見込み額、税率1%当たり2・7兆円、軽減税率制度導入によります減収見込み額1兆円程度というのを所帯数および人口等により機械的に算出いたしますと、1世帯当たり18万4000円程度、1人当たり8万1000円程度になると思われます。 小池 すさまじい額なんですよ、これは、家計から見れば。これだけの大増税になるわけですよ。世界でも、13兆円も消費税を連続的に増税した例なんてないですよ。 私は、この連続する増税というのは、家計消費に対して、97年の増税に比べてもはるかに深刻な打撃となる。いくら軽減、軽減といったって、税率が下がるわけじゃないんだから(「そうだ」の声)。これだけの負担増になる。97年の消費税増税に比べても、過酷な打撃になるという認識は総理にありますか。 首相 97年のときには社会保険料等も引き上げておりまして、今回とは違うわけでございますが、今回の増税は、社会保障を充実させていく、世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくために行うものでございまして、消費税を払っているみなさんにも、社会保障、子育てにおいて、あるいは介護が必要になったときのため、あるいは年金も含めてこれは使っていくんだということもご理解をいただきたいと思いますが、いずれにせよ、われわれはリーマン・ショック、あるいは大震災級の出来事がないかぎり、事態にならないかぎり、消費税を引き上げていく考えでございます。 小池 答えていないんですけど、97年のときに比べても過酷になるでしょうと、どうですか。 首相 税率だけ見れば、あのときは2%でございましたが、今回も2%ということになります。連続という意味においては前回、まさに大変短い期間での8から10でございました。また種々の経済状況にかんがみ、これを1年半延期したところでございます。どちらが過酷かということについては一概にお答えはできないのではないかと思います。 暮らしも経済も壊す10%増税は断じて行うべきでない 小池 3年間で5%上げるんだから、明らかに過酷じゃないですか。1世帯当たり18万円の負担増になる、明らかに過酷じゃないですか(「そうだ」の声)。いま総理は、リーマン・ショックや大震災のような事態がなければやるんだと。いまのように家計消費の水準が増税前を下回ったままであっても、増税をするというんですか。 首相 従来から申し上げておりますように、リーマン・ショック級、あるいは大震災級の事態が起こらないかぎり、基本的に現段階では消費税を引き上げていく考えでございます。(「答えていない」の声) 小池 家計消費がいまのような水準のままだったら、当然増税すべきじゃないじゃないですか。そういったことを一切考慮しないんですか。考慮しないんですか。 首相 もちろんですね、家計消費の動向というものは注視をしてまいります。今年の4月の春闘、そして来年の7月、しっかりと賃金が上がっていく経済状況をつくっていくなかにおいて消費税を予定通り上げていきたい。そのさい、リーマン・ショック、あるいは大震災のような出来事がなければ上げていきたいと考えております。 小池 このまま増税に突き進めば、国民の暮らしも日本経済も大変なことになりますよ。来年4月の消費税10%増税は断じて行うべきではない、中止すべきだということを申し上げたい。それが国民に対していま必要なメッセージだと思います。 年金破壊・株式運用を問う 小池 「キャリーオーバー制度」は、物価が上昇しても年金を据え置く制度だ 厚労相 数値の例は指摘の通り 小池 消費税増税は社会保障のためなんだということをいわれますが、社会保障制度について何が行われようとしているのか。 まず、年金ですが、政府が今国会に提出する予定の年金法案に「マクロ経済スライド」(注)への「キャリーオーバー制度」の導入というのがありますが、国民のみなさんがわかるような説明をしていただきたい。 塩崎恭久厚生労働相 「マクロ経済スライド」は、平成16年度改正におきまして、現役世代の負担が過重なものとならないようにするために、将来の保険料の上限を固定いたしまして、その範囲内で年金の給付水準を調整をしていく「マクロ経済スライド」を導入をしたわけであります。一方で、「マクロ経済スライド」の導入後も、デフレによって賃金や物価が上昇しないという状況が起きました。給付水準の調整が行われない状態がずっと続いてきたわけでありまして、これをできるかぎり先送りをしないという観点から、「マクロ経済スライド」のあり方について、社会保障・税一体改革のときから課題として検討されてきたわけでございます。 「マクロ経済スライド」については、現在の高齢世代の生活にも配慮しつつ、年金の名目額がマイナスとならないようにするいわゆる「名目下限」という枠組みを維持をしながら、経済状況によって「マクロ経済スライド」の調整が完全に実施できなかったとしても、その未調整分を直近の景気上昇局面で、すぐ翌年とかいうことではなくて、直近の景気上昇局面でこの未調整分について調整するという方向で、いま検討をしているところでございまして、いずれにしても、将来世代の給付水準を確保するという先を見た考え方で、この調整を図る仕組みをご提案申し上げようということでございます。 図 拡大図 小池 いまの説明ではほとんど見ている人はわからないと思うんですが、具体的に当てはめてみると、こういうことになるんじゃないですかということでパネルにしています(図2)。仮に、「マクロ経済スライド」による調整率が0・9%だとします。今年の物価上昇がたとえば0・3%ぐらいにとどまったとすると、これは、0・3%分の削減が行われて、2017年度分というのは、年金額は据え置きということになる。そうすると、0・9%との差額0・6%が次の年に繰り越しになる。2017年4月には消費税10%増税がやられるということになると、その分物価上昇が想定されるわけで、仮に1・5%上昇するとすると、18年度は調整分の0・9%に加えて繰り越し分の0・6%が加わって1・5%削減になり、年金額は差し引きで据え置きになる。こういう仕組みということでいいですね。 厚労相 今回の見直しは、将来世代の給付水準の確保のために、現在の高齢者にも少しずつ協力をしていただこうという、世代を超えた助け合いの仕組みとして行うものでございまして、現在の高齢者には、前年度からの年金の実額は下げない範囲という「名目下限」というのを配慮をして行うということになっております。いまお示しをいただいた例ですが、第一に、この法案の内容は現在検討中でございますので、施行がいつかということと、「マクロ経済スライド」の調整率がマイナス0・9と書いてありますが、これらも、毎年、物価、賃金動向に応じて改定されて、なおかつ調整率も被保険者数の動きなどによって毎年変動するということでありますので、そういうことを前提にしていただかなければならないということが一つと、それから、検討中の見直し案に仮定の数値を当てはめることは慎重に行うべきだろうと思いますが、仮に、ご提起になられた数字を機械的に当てはめると、仕組み上の数値の例は、ご指摘のとおりになるということでございますが(議場ざわめく)、タイミングは、消費税のタイミングとかいろいろおっしゃいましたが、まったく、まだ検討中だということを、覚えておいていただきたいというふうに思います。 増税分すら反映させないとんでもないやり方だ 小池 最後のひとことだけでいいんですよ(笑い)。私が示した数字は、仮定の数字ですよ。しかし、これはありそうな数字なんですよ、結局。このぐらいになりそうなんですよ。そうすると結局、年金額が下がることはないとおっしゃるけれども、消費税を10%に増税しても、年金は据え置きということになるんですよ。結局、まとめてそこからとってしまうということになるわけです。「社会保障のための消費税」といっていたじゃないですか。ところが、消費税増税分すら年金に反映させないような仕組みを、今度の国会にあなた方は提出しようとしているんです(「とんでもない」の声)。とんでもないじゃないですか。だいたい、あなた方が想定している、アベノミクスが想定しているような物価上昇があるんだったら、「キャリーオーバー」なんてやる必要ないんですよ。わざわざ、物価が上がらないことを想定して、こんな仕組みをつくっておいて、いざ消費税が増税になったときには、物価が上がらなかったそれまでのツケを消費税の増税分からもとっていくと。まったくもって、ひどいやり方だというふうにいわざるを得ないというふうに思います。 マクロ経済スライドの強化で、どんどん年金が目減りするような仕組みをつくれば、これは受給世代の消費を冷え込ませる、内需の冷え込みは結局、現役世代の賃金にも悪影響を与える、年金への将来不安を高めるだけですよ(「そうだ」の声)。私は、こんなやり方はやめるべきだということを申し上げたいというふうに思います。(拍手) 年金のマクロ経済スライド 自公政権が2004年、「年金制度の持続」を理由に導入した自動削減システム。年金の伸びを物価・賃金の伸びより1%程度低く抑えます。ただし、前年の年金額を下回らないように、物価上昇が抑制分より低い場合は上昇分だけを削減し、物価下落時は抑制分を実施しないのがルールです。これを見直して、未実施分を繰り越して実施できるようにねらっています。 小池 巨額の公的年金資金を市場運用している国などない 厚労相 米国は「市場への政権介入は効率性を損ねる」と運用せず 小池 年金の問題で政府は、次の世代に引き継ぐためだと繰り返すわけです。しかし、その年金資金の株式運用で、将来世代の年金資金が失われるのではないかという不安も広がっているわけです。厚労相にお聞きしますが、公的年金積立金、現在、総額いくらになるでしょうか。 厚労相 平成26年度末の厚生年金と国民年金を合わせた年金積立金総額、全体の総額は約145・9兆円で、うちGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用資産額は、約137・5兆円です。 小池 時価総額で146兆円という数字がありました。これは国民1人当たりにすると114万円、4人家族で456万円分の年金資金となります。これが市場で運用されていることになる。世界で、これだけ巨額な公的年金積立金を、株式などで市場運用している国っていうのは、ありますか。 厚労相 保険料を原資とする積立金を保有をし、市場で運用している公的年金としては、カナダ、韓国、スウェーデンなどがございまして、GPIFほどの規模ではないにせよ、いずれにしても株式を含めたさまざまな資産への分散投資を行っておるところでございます。 小池 カナダ25兆円、韓国51兆円、日本とはケタが違うわけです。 アメリカは、一般国民を対象とする連邦政府の年金制度「社会保障信託基金」で、すべて非市場性の国債で運用されているわけです。アメリカの連邦政府の社会保障年金積立金が、市場での株式運用をしていない理由は、アメリカはどういうふうに説明しているでしょうか。 厚労相 アメリカの社会保障信託基金=OASDIは、その資産の金額を、市場に流通していない国債で保有をしているわけでありますが、「完全賦課方式」で、ペイ・ロータックスで入ってきたものを、年金に回すわけでありますが、一時的に資金繰り上、積み上がったものを市場に流通しない形の国債で運用しているわけで、過去にこのOASDIの株式運用について議論が行われたことがございました。その際に、たしかグリーンスパンだったと思いますが、ときの政権の政治介入により、株式市場の効率性を損ねるのではないかとの懸念等が示されたと聞いておるわけでございまして、むしろ株式市場へのインパクトがどうなのかということを考えて、このような形で市場に流通しない国債で資金繰り上、一時運用をしているというふうに私どもは理解をしているところでございます。 小池 334兆円もの資金を運用しているわけです。それを、非市場性の国債でやっている。その理由は、政府が特定の目的で介入することを回避する。マーケットインパクトを回避する。逆にいえば、日本がやっていることは、これは政府の介入の余地を認めている、リスクにさらすと。マーケットに対して政府が介入するということになっちゃうんじゃないですか。 厚労相 アメリカと日本はまったく制度が違う。「完全賦課方式」でありまして、「社会保障信託基金」の財政はかなり悪化をしておりまして、2034年には積立金が底をつき、予定している年金金額の給付ができなくなるとのリポートも出されていまして、負担と給付の見直しについて議論がなされているというふうに聞いております。わが国は、一方で積立金も活用しながら、およそ、まあ、100年間で収支が均衡する制度設計となっておりまして、現在、積立金の運用は必要な利回りを十分確保しているというふうになっているところでございます。 小池 株価のために老後の資産を食いつぶす、誰も責任を取らないしくみだ 株価維持のため、公的年金運用の信託銀は、海外投資家と正反対の動き 小池 その積立金をどんどん、どんどん取り崩すような事態が、足元で起こっているわけじゃないですか、日本だって。 図 拡大図 確認ですが、大半、日本の場合は、これは信託銀行で運用されているということなわけですが、ちょっと調べてみました。これは年金積立金の株式運用比率を倍増させた「ポートフォリオ(資産構成)」見直し以降の株式市場の動きを、東京証券取引所のデータでまとめてみたものであります。(図3) これをみますと、2014年10月末に「ポートフォリオ」を変えて株式運用比率を大幅に引き上げたわけですが、それ以降の68週間で、海外投資家と、それから信託銀行の株の買い越しがどうなっているか。68週のうち、海外投資家と信託銀行が同じ行動をとったのは24週です。ところが、異なる行動をとったのは44週あります。海外投資家が買い越した35週のうち、信託銀行が売り越したのは約半分の17週に対して、海外投資家が売り越した33週のうち、信託銀行が買い越したのは実に8割の27週になっているんですね。 信託銀行の動きは、大半が公的年金の運用であるっていうことは、これは市場関係者の常識だと思います。これが、海外投資家とまったく反対の動きになっているわけですよ。大臣、これは年金マネーが結局、株価を買い支えていることを証明するものではありませんか。(「そうだ」の声) 厚労相 いまの先生の推論は市場でいわれているというお話である、この信託銀行はほとんどGPIFの動きだという誤った認識で組み立てられているというふうに思います。たしかに、GPIFの株式運用は、基本は信託銀行に預けているのは間違いないわけですが、しかし、信託銀行はGPIFとだけ商売をやっているわけではないのであって、企業年金もあり、他の共済もあり、いろいろな年金の資金を運用しているわけでありまして、そのなかの一部であるわけで、このような動きがGPIFかのようなことをいうのは、あまりにもジャンプが大きすぎるというふうに金融のプロは多分考えると思います。 小池 そんなことない。金融のプロが、たとえばロイターなんかも、この動きは公的年金の動きだとはっきり書いているわけです。みんなそう思っているわけです。しかも、「ポートフォリオ」の変更前にはこんな売り買いは起こっていません。調べてみたんですよ。それ以前はこんな激しい動きはしていませんから、信託銀行は。結局、「ポートフォリオ」を変更して、国内株式の運用比率を引き上げて以来、こういう激しい売り買いが起こっていることは明らかなわけです。 最近でも、株価が1万6000円を割った先々週ですけれども、外国人投資家が4000億円を売り越す一方で、信託銀行はこれまで最高の5000億円買い越している。総理、衆院の予算委員会で、「もっぱら被保険者の利益のために最適な運用を検討した結果なんだ」というふうにおっしゃています。「株価を上げるなど恣意(しい)的なものでは決してない」というふうにいっています。しかし、まさに株価を上げるための売り買いだというふうにみられても仕方ないような動きになっているんじゃないですか。これはどう説明しますか。 首相 そもそも安倍政権が、株価を上げたいからGPIFにどんどん買えなんていうことは、まったく起こっていないわけでありまして、決められた「ポートフォリオ」のなかで最適な運用を行っているわけでございます。かつてデフレ時代には、国債をどんどん買っておけばよかったわけであります。なんていったって、物価が上がっていかないんですから。しかし、物価が上がっていくなかにおいて、それに追いついていく必要があります。たとえばいま国債の金利、これマイナスじゃないですか。これじゃとても将来の世代に年金をお支払いはできないわけであります。しっかりと経済が成長していくなかにおいて国内の株式あるいは海外の株式との適切な「ポートフォリオ」を形成していま運用をしているわけであります。ちなみに、リーマン・ショックを入れたとしても、現在の「ポートフォリオ」でずーっと運用していればいままでの運用よりもはるかに運用益は出ているわけでありますし、安倍政権ができて3年ちょっとで38兆円のプラス(債券なども含めた運用益総額)になっているわけでございます。最近の株価の下げ局面を入れてもそうなっているわけで、そこのところはぜひ、党派性を超えて冷静に見ていく必要があるのではないのかなと思います。 アベノミクスのために株式の運用拡大をすすめた 小池 私は、冷静な議論をしているんです。単に下がった、損したっていう、そういう話をしているんじゃないんですよ(「そうだ」の声)。こんなリスクにさらしておいて、足元は安倍政権になってからいいとおっしゃる。短期的な結果でみちゃいけないといっていたのに、安倍政権だったらよくなった(笑い)、矛盾しているじゃないですか、いっていることが。 安倍政権だって1月に入ってから株価が下落していますから、これは第3四半期はたしかに4・7兆プラス(運用益総額)になった、一昨日発表されました。しかし、この1月に入ってからの株価下落で5兆円マイナスになっているわけですよ。そうなると、4〜6月はプラス1・9、7〜9月でマイナス4・3、10月から12月で3兆プラスになってちょっと取り戻したけれども、今年度末はこのままでいけばマイナスになる可能性は高いですよ。国民の財産を、ジェットコースターのような、こんな相場にさらしていいのかと。その比率を引き上げたのが安倍政権じゃないですか。さきほど、国債の利率が下がったというけど、じゃあ、だれがやったんですか。マイナス金利で自分でやった話じゃないですか。本当にいまのは天にツバする話だというふうに思います。 しかも、国債の運用部分についてみれば、プラスになっているわけですよ、明らかに。アメリカは市場にさらせば特定の政府の意思が介入してマーケットを荒らすからといってやっていない。ところが日本はそれをやった。安倍首相がいいだしたんですよ、あなたが。安倍首相が2年前の1月にダボス(会議)で、5月にはロンドンのシティーで、「世界最大の年金基金、1兆5000億ドルを超す運用資産を持つGPIFがフォワードルッキングな改革を進めていく」と、この演説をしたあとで、上限ぎりぎりまで株を買うようになって、さらにポートフォリオの変更までやったんじゃないですか(「そうだ」の声)。世界最大の年金ファンドが、政府保証つきで、マーケットに参入する。そのことを宣言したのは、まさに総理、あなたではないですか(「そうだ」の声)。この議論のときに、ダボスやシティーで、総理が演説したときに、「年金のためだ」なんてひとこともいっていないんですよ。「成長戦略のためだ」、「アベノミクスのためだ」と、「バイ・マイ・アベノミクス」と、こういう演説をしたんじゃないですか。結局、年金積立金を、年金加入者の利益のために運用しているなどということではなくて、アベノミクスを支えるために、株価に投入したと、株式市場に投入したと、これがあなたのやったことではありませんか。 首相 安倍政権のときに年金積立金を削っているんじゃないかという趣旨のご発言をされましたが、そうではなくて、削っているどころか増えていますよと、誤解を解こうとしたわけでございまして、たしかに短期の話をしたって意味がない話であって、先週までの話をすれば、下がっていますが、今週はまたちがっているわけでありますから、足元の話をしたってあんまり意味がないわけであります。 年金積立金の運用は、デフレから脱却して物価が上昇していく局面では、運用を変えていくのは当然のことでありまして、運用を変えなければ、年金被保険者の利益にはならない。マイナスになってしまうわけでありますから、ポートフォリオを変えるのは当然だろうと。ポートフォリオの変更は、このような想定のもとで、GPIFの運用委員会において最適な組み合わせを選定したものであります。ポートフォリオ変更後の運用収益は、今年度第2四半期がマイナス7・9兆円となったものの、第3四半期はプラス4・7兆円となっておりまして、一昨年10月以降の累積はプラス8・9兆円、仮に現行のポートフォリオで、リーマン・ショックを含む過去10年間にもし当てはめてみると、名目運用利益は4・3%になって、従前のポートフォリオよりも1・1%高い収益率が得られえるわけであります。ちゃんとプラスになっているんですから、ご安心をいただきたい、このように思うしだいでございます。(与党席から拍手) 戦前は戦費調達、戦後は公共事業、今度は株式市場だ 小池 いや、拍手するどころじゃないですよ、ここは。年金について国民は不安をもっているんですよ(「そうだ」の声)。年金の積立金というのは、戦費調達のためにつくったわけですよ。戦後は、公共事業のために、あるいは「グリーンピア」(年金積立金を活用した保養施設)などをつくるために、積立金がさんざん食い荒らされてきた。そういう歴史をもっているわけですよ。そして今度は安倍政権になって、株式市場にこれだけ大量に投入する。アベノミクスを支えるために使っているんじゃないかという不安が広がるのは当然ではありませんか(「そうだ」の声)。あなた方のやっていることが、まさに年金不安をあおっている。安倍政権の株価の維持のために、国民の老後の資産を食いつぶすようなことは絶対に許されない。運用に失敗したって、だれも責任を取らない仕組みですよ(「そこが問題だ」の声)。巨額の資金を株式市場に投入して経済をゆがめる、そういう指摘だってあるわけです。だからアメリカだってやっていないわけでしょう。こんな無責任な、こんな国民の不安をあおるようなやり方は直ちにやめるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。(拍手) 介護保険改悪計画を問う 小池 要介護1、2の「保険外し」は、「介護離職ゼロ」に逆行する 厚労相 高齢者の自立のため 首相 制度の持続性のため 小池 制度は残っても暮らしはズタズタになる 小池 年金だけではない。介護保険の問題について聞きたいんですが、「介護離職ゼロ」を掲げる安倍政権ですけれども、介護保険サービスをさらに受けにくくするような提案をされております。財務大臣にお聞きしたい。財務省は、介護保険の「要介護」1、2の方について、訪問介護における「生活援助」を「原則自己負担」とすることを提案しています。これはなぜでしょうか。 財務相 財政制度審議会の資料だと思いますが、政府部内での検討段階における財政当局の立場からの提案を記載したものだと思います。介護保険における軽度いわゆる「要介護」1とか2の要介護者への生活援助につきましては、日常生活における通常負担すべき費用とのバランス、たとえば生活援助等々によって1割の自己負担で掃除、調理を受ける受給者と、一般の家事代行サービスを利用する高齢者とのバランス等々であります。また介護保険制度の持続可能性というものを考えねばいかん。価格サービスに関する競争の確保、たとえば生活援助とほぼ同じ内容の家事代行サービスとの価格差などの観点から、保険給付をどの程度まで確保すべきか、また効率的なサービス提供体制をどう構築すべきかといった問題意識で提案を行っているところであります。 全額を自己負担にすべきとの主張だけではなくて、現在の9割を自己負担1割から引き下げるべきとの提案を行ったと知っております。 「改革工程表」において、軽度に対する生活援助サービスなどのあり方は、厚生労働省の関係審議会において検討し、2016年末までに結論を得るとされたところでありまして、この方針に沿って、政府として検討を進めてまいりたいと考えておるという資料だと思います。 家事援助を民間にゆだねることは在宅生活の維持が難しくなる(老施協) 小池 検討中だから、決まってからでは遅いから聞いているわけであります。資料をお配りしてありますけれども、たとえば朝日新聞、読売新聞などでもこれは大きく報道されているわけです。 図 拡大図 安倍政権のもとで、介護保険の制度改悪が続いています。すでに、「要支援」1、2の方は介護保険給付から(訪問・通所介護が)除外され、「地域支援事業」にいま移行しつつあるわけです。介護サービス利用時の負担増も行われたわけです。そして、今度は「要介護」1、2の生活援助サービスを原則自己負担にするという案を財務省は提案をしている。パネル(図4)を見ていただきますと、この訪問介護を受けている方のなかで、「要介護」1、2というのは、これは非常に大きな割合を占めます。認定者数のなかでも大きな割合です。要介護1は一番多いわけですが、訪問介護を受けている方のなかでは、要介護者全体の61・3%。だから、介護関係者からも、このやり方には強い批判があるわけですよ。 公益社団法人・全国老人福祉施設協議会の意見書には、こういうふうに書いてあります。「家事援助についても単純に調理のみ、買い物のみを行っているのではなく、ケアプランに基づき訪問介護計画で明確な目標を掲げて実施しています。実施にあたっても食べ残しやゴミの状況から体調を観察したり、好みの変化や買い物の内容の変化で認知症の症状の進行を把握したりと専門職による支援をしています。特に認知症の独居の人にとって家事援助を民間サービスにゆだねることは、上記の支援が期待できなくなり、在宅生活の維持が難しくなることも考えられます」 いま、麻生大臣は、家事代行サービス、民間の家事代行サービスとの類似性みたいなことをおっしゃった。民間の家事代行サービスとは違うんです。専門家による生活援助というのは、そういう意味をもっているわけです。だから、要介護度が低い人に、きちっと専門家が介入をして、そして生活援助も含めてやっていくことが、その人の要介護度を悪化させない大きな担保になるわけですよ(「そうだ」の声)。そういう専門的な役割があるわけです。一昨日は、最高裁で、認知症の方の鉄道事故について画期的な判決も出されています。そして、この問題について老施協は、要介護者と配偶者の「双方が十分な介護保険サービスを受けることで、ある程度のリスク軽減ははかられたであろう」というふうにいっているんですね。これは、本当に国民全体の将来不安にかかわる問題です。総理、「要介護」1、2の方の生活援助サービスを介護保険制度から除外する、あるいは原則自己負担にする、こんなことをやれば、総理がおっしゃっている「介護離職ゼロ」にも明らかに逆行することになると私は思いますが、いかがですか。 首相 いま、軽度の要介護者の生活を支えるという観点から、何をすべきかという検討を行っているわけであります。介護保険制度の趣旨で、制度の改正の状況を踏まえつつ、また介護保険制度の持続性も考えなければいけないわけでありまして、介護保険制度は、ご本人の負担もあるし、現役世代の負担と、そして65歳以上の皆様方に保険料として負担をいただいていて、国費も出していますが、そのなかで維持をされているわけであります。過度に保険料が上がらないということも考えていく必要もありますが、だからといって必要なサービスを切るという考え方はございません。そのなかでどのような改革を行っていくか、しっかりと検討が行われているものと承知しております。 小池 介護保険制度で「軽度」といえば、特養ホームの入所基準で「軽度者」を外したときに、「要介護」1、2を外したんですよ。軽度者だったら「要介護」1、2ということになるじゃないですか。結局、「要介護」1、2の人の生活援助サービスなどをやめてしまったら、あるいは原則自己負担にしたら、いま250円ぐらいの利用料が2500円になる。こんなことになったら、「介護離職ゼロ」という安倍政権の方針に逆行することになるのではないですかと聞いているんです。 厚労相 おっしゃるように、要介護度1、2を対象とする生活援助サービスなどのあり方が検討課題に、改革工程表になっているということは、そのとおりでありますが、まだ議論は始まったばかりでもありますし、どうするかはこれからの議論であるわけでありまして、もともと介護保険は高齢者の自立と、介護の重度化を防ぐということでありまして、そのなかで必要なものは何なのかといことを考えるということが大事でありまして、何か最初に、なになにありきということで決め込んでいるわけでは決してないわけで、財政審は財政審の使命でいろいろおっしゃいますけれども、われわれは別な立場から申し上げることはあるわけでありますから、しっかり議論をしていただこうというふうに考えております。 小池 その部会で反対意見が日本医師会、老施協などからも続出しているわけですよ。じゃあ聞きますけど、財務省は「要介護」1、2を外すんだということをいっている。厚労省はやらないんですね。 厚労相 財務省は財務省の立場があることはお分かりのとおりでありますけれども、われわれは介護保険の原点からみて、高齢者が自立をできるだけするように、そして要介護度が悪化しないようにするという観点からすべてを議論をしてもらおうと思っているわけでありますから、はじめからなんか結論ありきということでは決してないわけであります。ただ、持続性というものを考えなきゃいけないということは総理が申し上げたとおりであって、そういうなかで本当に必要なことをしっかりとやっていくということであるわけでありますので、議論はまだ始まったばかりでありますから、これから大いにいろんな方々に思いのたけをいっていただいて、それをしっかりとみんなで考えて決め込んでいきたいというふうに思います。 被保険者との約束を反故にすれば「国家的詐欺」になる 小池 結局、介護保険の原点とかいいながら、財務省と同じことをいっているじゃないですか(「そうだ」の声)。持続性だということをいっているじゃないですか。結局、切り捨てるということになるじゃないですか。 私は、保険制度の大原則の一つは、所得に応じた保険料と同時に、給付については平等に受けることができるということが原則だと思うんです。医療保険というのは、大概の人が病気になりますから、必ず使うことになる。しかし、介護保険というのは、要介護状態にならずに、かなり長期間過ごす方がいらっしゃるわけですよ。言葉がいいかどうかはわからないけれども、「掛け捨て」になっちゃう人も多いわけですよ。しかし、でも、なぜあれだけ高い保険料を払うかといえば、やっぱり要介護状態になったときに、介護保険サービスが受けられるという期待があるからこそ、保険料を払うんだと思うんですね。ところが、いまやろうとしていることは、高い保険料を払っても、結局、「要介護」1、2の大半のところで、もうサービスから除外されるようなことを検討を始めているわけです。 厚生労働省で介護保険制度の創設に携わり、初代老健局長を務めた堤修三さんは、この間の厚生労働省の給付抑制を厳しく批判をして、業界紙でこういっています。「給付は保険料を支払った被保険者との約束で、国がそれを反故(ほご)にしてしまっては、保険料を納める意欲は減退する一方だ」「言い過ぎかもしれないが、団塊以降の世代にとって介護保険は『国家的詐欺』となりつつあるように思えてならない」。私は決していいすぎではないと思いますよ。総理、40年間、介護保険料を払い続けたのに、要介護状態となっても必要なサービスが一番多い部分で受けられないような制度にしてしまって、介護保険制度に対する信頼が保たれるとお考えですか。(「そうだ」の声) 首相 堤局長が導入時の局長だと、当時、自民党の社会部会長でいっしょに導入に汗を流したんですが、そういう発言があったことは大変残念でございます。持続性というのは当然じゃないですか。持続性がなければ、これからサービスをずっと続けていくことができないわけでありますから、持続性を考えるのは当然のことであろうと思っております。そして高齢者の自立を支援し、真に必要なサービスが提供される。私も和光市に行きました。要介護が必要にならないようなさまざまな取り組みをし成果を上げているところだってあるんですね。真に必要なサービスが提供されるようにするためのものであって、これは「介護離職ゼロ」に逆行する、あるいは介護保険の本旨に反するとか、ましてや詐欺行為ということとは、まったく違うということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。 小池 現実にね、要支援を外したところで、和光市なども含めて、必要なサービスが受けられない事態は起こっていますよ。そういう話はきているんです。しかも、この「要介護」1、2という大半の部分を外すようなことを検討し始めているわけですよ。こんなことをやったら、制度は残るかもしれないけれども、国民の暮らしはズタズタになりますよ。国民の命や健康の持続可能性は破壊されますよ。まったく、こんなことをやったならば、介護保険制度は破壊されることになるというふうに思うんです。 小池 医療も年金も介護も生活保護も大改悪の連続、経済も財政も破壊される 図 拡大図 小池 これだけじゃありません。財務省の社会保障制度改革の提案は、介護だけにとどまらないわけであります。医療も、年金も、介護も、生活保護も、大改悪メニューが並んでいるわけです。主なものをパネル(図5)にしてみましたけれども、大臣、これは、財務省とはやりとりをしてつくったパネルですから、ほとんど間違いありませんね。 財務相 これは昨年の末、経済財政諮問会議において決定された「改革工程表」というものの政府部内における検討段階において、財政制度審議会等々での議論の土台として財政当局の立場から提案を行ったものですが、基本的な考え方を申し上げさせていただければ、すでに社会保障費は歳出全体の3分の1を占めております。歳出は96兆のうち32兆ですから、今後も、高齢化に伴う伸びが見込まれる社会保障分野の歳出改革は避けて通れない課題なんだと基本的にそう思っております。受益と負担というものの均衡がとれた持続可能な制度を構築していく必要があることははっきり認識をいたしております。このため、社会保障の効率化とか、制度の改革に不断に取り組んでいくというのは当然のことで必要なことだと思っております。ご指摘の各項目については、財政当局としての案を示したものでありまして、いずれにしても、政府としては、年末に決定をされる「改革工程表」に沿いまして、今後、社会保障分野のおのおのの分野、個々の改革項目を着実に検討し、実施していくということが重要であろうと考えております。 軒並み2017年法案提出、選挙をやり過ごして押し付ける気か 小池 この項目を検討していることを認めるわけですよ。医療費も、介護保険も、75歳を過ぎても2割負担にする。自己負担の限度額も引き上げる。入院したならば、一般病床でも居住費、水光熱費などを徴収するようにする。「要介護」1、2は、生活援助も、福祉用具も、住宅改修も自己負担にしていく。そして年金は、支給開始年齢の引き上げということも入っているわけですよ。これを避けて通れない、といまおっしゃった。持続可能な制度にすると。私はこんなことをやったら、日本の社会保障制度は破壊されると思いますよ。国民の暮らしも日本の経済も持続不可能になりますよ。結局、こんなことをやれば、ますます重度化、悪化をして、医療費や介護の費用だってかさむことになる。悪循環だと。財政面からいってもそうなるというふうに思うんです。 だいたい、「社会保障のための消費税」だといいながら、なんですかこれは(「そうだ」の声)。増税が決まったとたんに、もうまったく歯止めなく、社会保障の大改悪をやろうとしている。しかも、なんでこれ、17年法案提出なんですか。全部のきなみ17年法案提出ですよ。なんで来年なんですか。選挙をやり過ごして、選挙が終わったら、これだけの痛みを押し付けようと、そういうことじゃないですか。 財務相 私どもは、この制度の維持というものをやっていくためには、いまのまんまの少子高齢化というものに対して真正面からやっていくために、毎年1兆円ずつ増えていく現在の社会保障の伸び率を、この3年間のあいだ、少なくとも約1兆5000億円にする対応ができましたので、いままずは2018年までは、5000億ということで考えておりますけれども、さらに増えていくという状況に対応するためには、財政当局としていろんな案を出させていただいているということだと存じます。 力を合わせて貧困と格差広げる安倍政権を打倒する 小池 完全に開き直りですね。麻生大臣は、麻生総理だったときに、2200億の社会保障の削減は、これは間違っていました、やめますということをいった人ですよ。それがいまや、消費税は増税する、社会保障大改悪だと。結局、こんなことをやったら、日本の経済も財政も破壊されることになる。格差と貧困を広げるような政治をこれ以上続けるわけには絶対いかない(「そうだ」の声)。個人の尊厳を踏みにじるような政治を続けさせるわけにはいかない。日本共産党は、自民党、公明党を、きたるべき選挙で少数に追い込むために(「よし」の声)、野党が力を合わせて(「そうだ」の声)、たたかいぬく(「よし」の声)。いまそういう議論を進めておりますので、必ず安倍政権を打倒するということを宣言させていただいて、私の質問を終わります。(大きな拍手) http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-06/2016030607_01_0.html
中国、財政政策を緩和へ−16年の経済成長率目標を6.5−7%に設定 2016/03/05 17:15 JST (ブルームバーグ):中国は、2016年の経済成長率目標を前年に比べて低く設定した。財政政策を緩めるとともに、肥大化した国有産業の再編を加速する方針も示した。 李克強首相は5日開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当) の政府活動報告で、16年の経済成長率目標を6.5−7%にすると発表した。昨年の目標である7%前後から下げ、1995年以来となるレンジでの目標設定となった。また、政府は貿易目標の設定を見送り、世界の経済成長の先行き不透明感の強さが浮き彫りとなった。 李首相は政府活動報告で、国民1人当たりの所得を10年比で倍増させるため、今後5年間は年平均で少なくとも6.5%の経済成長が必要だと強調した。 同首相は、「われわれは現状を直視し、経済への下押し圧力に耐えるため的を絞った措置を講じるだろう」と説明する一方、「われわれは長期的な発展目標を考慮し、一部の政策手段を将来的に用いるための選択肢として残し、われわれの動きを戦略化し、力を結集しなければならない」と述べた。 共産党指導部は非生産的な国有資産の処理を加速する方針を掲げたが、具体策は乏しかった。李首相は、政府が合併や再編を通じて非効率で非生産的な国有企業であるゾンビ企業に対処する一方、こうした過程で削減された従業員らに対して1000億元(約1兆7500億円)を投じる考えを表明した。 金融面では、指導部が金利と人民元相場の自由化を進める方針も表明。中国は人民銀行(中央銀行)でフォワードガイダンスのコミュニケーションを高める計画で、政策が透明性を欠いているとの批判を意識した可能性がある。 財政省は予算案で、16年の財政赤字が国内総生産(GDP)比で3%と、15年の同2.3%から拡大するとの見通しを示した。マネーサプライは13%増と、昨年の12%増から加速する見込み。政府は住宅ローン融資の拡大を求めることなどで不動産市場を活性化する政策を進める方針だ。 原題:China Eases Fiscal Stance to Meet Slower Growth Target for 2016(抜粋) http://www.bloomberg.co.jp/bb/newsarchive/O3JJBV6K511401.html このデータを見ればG20の「財政出動宣言」もナットク!? 財政健全化は道半ばだが… 2016年03月02日 ドイツはG7で唯一の財政黒字国(J BOY/PIXTA〈ピクスタ〉) 2月26、27両日に上海で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は世界経済成長と金融市場安定のため、「すべての政策手段を用いる」との共同声明をまとめました。これは事実上の「財政出動宣言」と言えます。 これまで世界の主要国は欧州債務危機などへの対応を念頭に財政再建を優先する姿勢を取り、景気への対応は金融緩和が中心でした。しかし日本や欧州では量的緩和からマイナス金利導入と未知の領域に足を踏み入れる中、金融政策へのこれ以上の依存は限界に近づいているのが実情です。 ただ、今回の共同声明では「世界経済は下方リスクと脆弱性が高まっている」と指摘し、「さらなる行動が必要」としています。そのうえで金融政策、財政政策、構造政策の3つの政策を進めるとしていますが、その文言に続いて目を引くのが「金融政策のみでは、均衡ある成長につながらない」「債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ、機動的に財政政策を実施する」と記述している点です。 これは、従来の財政再建最優先から財政出動へとカジを切ったことを意味しています。市場には今回のG20について「行動についての具体的な言及がなかった」との批判があり、確かにそのとおりではありますが、それでも財政出動を促したことの持つ意味は小さくありません。 実は、主要国の財政状況は一時期に比べると改善傾向を示しており、財政出動の余地はあるのです。経済開発協力機構(OECD)のデータによると、リーマンショック翌年の2009年にG7各国の財政収支(対GDP比)は大幅に悪化していました。 米国がマイナス12.8%(地方政府なども合わせた一般政府ベース、以下同じ)、英国がマイナス10.8%、日本がマイナス8.8%で、優等生と言われたドイツもマイナス3.2%と財政赤字に転落していました。G7以外の欧州各国でもギリシャがマイナス15.2%になるなど軒並み財政赤字が拡大し、これが2010年以降の債務危機の引き金になりました。 しかし、最近は財政緊縮策や景気回復による税収増加などのおかげで財政収支はかなり改善しています。ドイツは14年に黒字へ転換し、15年はプラス0.9%と黒字が拡大したもようです。そのほかの国はまだ赤字ですが、それでも各国ともマイナス幅を縮小しています。あのギリシャも14年にはマイナス3.6%、15年は同4.3%と意外に赤字の縮小が進んでいます。 債務残高の対GDP比上昇にも歯止め このOECDのデータは各国の財政状況を比較するのによく用いられます。その場合には「対GDP比」で見るのがポイントです。各国の財政状況についてのデータではもう一つ、債務残高が重要です。財政収支のデータが単年度ごとの財政黒字・赤字のフローを表すのに対し、債務残高は借金の累積状況を表すものです。
それによると、主要国の債務残高(対GDP比)は依然として各国とも高水準ですが、それでもここ2〜3年は上昇に歯止めがかかり始めています。日本はG7で最も高い水準ですが、微増にとどまっており、そのほかの国も微増または横ばいです。ここでもドイツの改善が目立っており年々、着実に低下しています(これらのデータの一部は日本の財務省の「日本の財政関係資料」にも記載されており、同省のホームページからもチェックできます)。
もちろん、財政健全化はまだ、道半ばです。それでも、目の前で市場の動揺が続いて世界経済の減速リスクが増大している現状では、財政出動の必要性に目をつぶるわけにはいかないし、以前に比べれば財政出動できる余地も拡大しているのは確かです。 前出のデータでもわかるように、なかでもドイツはG7で唯一の財政黒字国です。ドイツはこれまで財政健全化を重視し、景気対策のために財政出動を行うことには極めて否定的でした。このため、ギリシャをはじめ欧州の他国にも財政緊縮を求めてきたことは周知のとおりです。 しかし、OECDのデータから見ると、最も財政出動の余地があるのはドイツです。今回のG20の声明はドイツに対する財政出動要求と言えるかもしれません。ドイツが今後、財政運営で柔軟な姿勢に変化するかが一つの注目点でしょう。 G20声明は日本にも影響を与えそうです。日本はG7の中で最も財政赤字が大きい国ですから、財政出動の余地はそう大きくありません。しかし国内景気の現状を見ると、政府が財政出動に踏み切る可能性は十分あります。具体的には二つの対策が考えられます。 一つは16年度の補正予算です。現在、国会で審議中の同年度予算案は1日に衆議院を通過。年度内の成立が確定したので、今後は追加の経済政策を検討して補正予算案を編成するとみられます。7月には参院選もあるので、早ければ16年度予算の成立直後の4〜5月ごろにも具体化する可能性がありそうです。 ちょうど5月下旬に伊勢志摩サミットが開かれるので、議長国として議論をリードする“お土産”にもなるということでしょう。 日本は主要国で依然「最悪」だが… 消費再増税をめぐる安倍首相の答弁内容は微妙に変化(撮影:尾形文繁) もう一つは消費再増税の延期です。安倍首相はこれまで「リーマンショックのような危機が起きないかぎり、再増税を実施する」と答弁していましたが、最近では「まさに世界経済の収縮が実際に起こっているか、専門的見地から分析し判断していかなければならない」と微妙に変化させています。 こうした中、G20が財政出動路線を打ち出したことで、消費再増税延期が国際的にも受け入れられやすくなったと言えるわけです。消費再増税の可能性とセットで、衆院解散・衆参ダブル選挙の観測が高まっており当面、これが最大の焦点になりそうです。 ただ、財政出動の可能性を考える一方で、日本の財政赤字が依然として高い水準にあることも忘れてはなりません。債務残高(対GDP比)は232.4%に達しており、主要国で最も高い水準。つまり「最悪」なのです。このデータは、日本が財政健全化と経済成長を両立させることが必要ということを示しているのです。 ※岡田 晃 おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。 https://shikiho.jp/tk/news/print/0/107524
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