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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47976
東大「最強ゼミ」が明かす「いい会社・悪い会社」
〜ブラック企業を摘発せよ!
「このままでは、日本の企業はぜんぶブラック企業になるかもしれないわ」
「な、なんだってー!?」
「これを見れば一目瞭然」
東大ブラック企業探偵団の団長・東大法学部3年のハルキ、そして経済学部のマオ、農学部のカンタが隠れたブラック企業を摘発、眠れるホワイト企業を見つけ出す……。
東大ブラック企業探偵団とは、実在する「Tゼミ」(瀧本哲史京大客員 准教授が顧問)をモデルにした、東大本郷キャンパスに部室をおく「秘密結社」。「Tゼミ」は、公開情報に基づく企業分析と政策分析を通じ、過酷な現代社会 を生き抜くための意思決定方法を学び実践するゼミ。東京と京都を拠点にさまざまな大学の学生が参加している。投資コンテスト「バークレイズ大学生アナリス トカップ」では2年連続優勝に輝いた。
日本最強の「Tゼミ」企業分析ノートのノベライズが明かす、幸せに働ける「いい会社」「悪い会社」とは? 問題企業、業界を徹底分析して実態に迫る!
プロローグ
昇ったばかりの朝陽が、繁華街のはずれに立つテナントビルを照らしはじめた。その4階へと続く外階段を上り、さきほどまで従業員が後片付けの仕事に追われていた居酒屋「ワイワイ」の非常口から入っていく女の影があった。
女の名前は羽入マオ。1週間前からここでバイトを始めた東大生だ。あたりに注意を払いながら店内に入ったマオは、レジの下にある、売上管理用の書類や勤怠表の束が入った引き出しを開けた。
書類の束を脇に寄せると、引き出しの底の奥に、指が入るくらいの穴が開いている。そこを引っ張ると底板は持ち上がり、下から1冊の分厚い日誌が現れた。表紙には「成長管理日誌」の文字。
(とうとう、見つけたわ……)
表紙をめくって、マオは背筋が凍る思いがした。
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「私は無能です私は無能です私は無能です……」と、ページいっぱい小さな文字で埋め尽くされているのだ。
さらにページをめくると、衝撃的な文章が次々と目に飛びこんできた。「自分の力不足で月次の売上目標に達しなかったため、自腹を切って償いました。 申し訳ありません」。「学生バイトさんがいっぺんに2人も休んでシフトに穴が開いたので、48時間連続で働き続け、今までの自分の殻を破れた気がしまし た」。
何よりも恐ろしいのはページを繰っても繰っても、一日たりとも日付が飛んでいないことだった。
「おい、何してるんだ」
非常口の扉が乱暴に閉められる音がして、痩せこけた男が入ってきた。マオが手にしている日誌を見て、血相を変える。
「マオちゃん、それは……」
「店長、これはあなたの『成長管理日誌』です」
「よ、読んだのか……いったい、どうして……」
店長は30歳にしてはシミだらけの手をぶるぶると震わせている。
「おかしいと思ってたんです。『ワイワイ』のあまりにもできすぎたホワイトな環境は」
居酒屋「ワイワイ」は、消費税の税率アップの際にあえて値下げをするなど激安路線をとっている新進気鋭のチェーン店だ。社員の離職率は極端に低く、 学生アルバイトからは、時給の良さと、上下関係がゆるく和気藹々とした職場の雰囲気に絶大な人気があり、人手不足という外食産業に共通の逆風をものともせ ず急速に店舗数を増やしていた。
「……そうだ。学生バイトさんには楽しく働いてもらえ。徹底的にもてなしてキツい仕事はやらせるな。毎月行われる店長研修でエリアマネージャーから叩き込まれることだ」
「そしてその裏で、ツケはすべて店長に回される。なのに、どうしてあなたは辞めないの? 完全に会社に洗脳されてしまったの?」
「うちの社員は、オレみたいに痴漢で懲戒免職になった公務員や、使い込みが発覚して会社にいられなくなったような、ワケありなヤツばかりなんだよ。ワイワイ様だけが拾ってくれたんだ。誰も逃げ出すわけがないし、秘密が外に漏れることはない」
「上司に殴られても『叱っていただいてありがとうございます』だものね」
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「ああ。ところで、マオちゃん、なんでオレがこうやってぺらぺら君に話すかわかるか?」
いつの間にか、店長の手の震えは止まっている。虚ろだった目にも生気が宿り、マオを射抜くように見つめている。
「え?」
「もう、君を、生きて帰すつもりがないからだよ」
と言うなり店長は、勤務中には見せたことがない薄気味悪い表情でマオに襲いかかり、床に組み伏せた。
「きゃあっ」
押し倒された際にマオのブラウスの第2ボタンがはじけ飛び、白い肌が露わになる。店長は馬乗りになってマオの細い首を締めつけながら、ぶつぶつとつぶやいた。
「絶対に……絶対に、外に漏らすわけにはいかないんだ」
「やめて……店長……目を覚まして!」
「オレにとっては、ここがすべてなんだよ!」
「その子から離れろ!」
突如背後から野太い声がし、店長が思わず振り返った瞬間、大柄な青年が飛びかかる。重心の低いタックルが炸裂して、店長はテーブル席まで吹っ飛んだ。その隙に青年はマオの手をとり、非常口へと駆け出した。
「待てえええええ!」
そのすぐ後ろを、鬼気迫る表情の店長が追ってくる。
「カンタ、あそこよ」
外階段を駆け下りながらマオが地上のある一点を指差すと、カンタと呼ばれた青年はうなずき、マオを抱きかかえて手すりを越えた。
「何をする気だ?」
驚いた店長が思わず立ちすくんでいるうちに、宍戸カンタは迷わず3階から飛び降りる。ゴミ袋の山がクッションとなり無事に着地した2人の前に、マオが呼んでおいたタクシーが待ち構えていた。
「東大本郷キャンパスへ!」
バックミラーには追ってくる店長の姿が一瞬映ったが、すぐに遠ざかっていった。
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タクシーは繁華街を抜け、陽光に照らされて輝く本郷通りを走っていく。
「大丈夫か、マオ。怪我はないか」
「最悪よ!もう潜入調査なんて二度としない。アンタも助けに来るならさっさと来なさいよ。いや、どうせならハルキに助けに来て欲しかったわ」
マオは、ボタンがはじけ飛んだブラウスの前を気にしながら悪態をつく。
「助けてもらっておいてその言い草はないだろ!」
「ふん!」
まだ震えながら、マオは「成長管理日誌」の写真を撮ってLINEで針谷ハルキに送った。
「ワイワイ」がブラック企業である決定的証拠だ。もちろん、店長に暴行され、ショックを受けていることも書き添えて。優しい労いと心痛を気遣う言葉を期待したマオに、ハルキからの返信は速攻で来た。
「そうか、調査がうまくいってよかったな」
マオはそれを見るなりスマホをカンタに投げつけた。
「なによ、あの男!?」
「痛いてて。まあまあ、ハルキらしいじゃないか」
「もう、知らない!」
と言ってマオは今にも泣き出しそうな顔をしてそっぽを向いてしまった。車内に流れる気まずい雰囲気に耐えかねたカンタは、おろおろしながらもマオに話しかける。
「ほら、もうすぐ正門前につくぜ。帰ろうよ、オレたち――『東大ブラック企業探偵団』(UTBD)の部室に」
→つづきはこちら リンク先のコピペが下に続く
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48010
日本の会社すべてが「ブラック企業」になる!?
絶望のニッポンを救う「ホワイト企業」はここだ
実在する「Tゼミ」(瀧本哲史京大客員准教授が顧問)をモデルにした、東大本郷キャンパスに部室をおく「秘密結社」、東大ブラック企業探偵団。「Tゼミ」は、公開情報に基づく企業分析と政策分析を通じ、過酷な現代社会を生き抜くための意思決定方法を学び実践するゼミ。
日本最強の「Tゼミ」企業分析ノートのノベライズが明かす、幸せに働ける「いい会社」「悪い会社」とは? 問題企業、業界を徹底分析して実態に迫る!
プロローグはこちらからご覧ください。
日本の会社はすべて「ブラック企業」化する……
その日の昼下がり、安田講堂の地下にある「東大ブラック企業探偵団(UTBD)」の部室に備え付けられたテレビからは、“奇跡のホワイト居酒屋”と してもてはやされてきた「ワイワイ」の悲惨な内情を綴った日誌が明るみにでたというニュース映像が流れていた。「ワイワイ」の株価は午後の取引市場が始ま るや否やストップ安をつけたことも報じられている。
「で、アンタの調査はどうだったの?『塚田農場』に潜入したんだっけ?」
いまだに不機嫌そうな羽入マオが、資料を整理しながら宍戸カンタに問いかける。長い黒髪で眼鏡をかけたマオは東大経済学部の3年生。カンタは東大農学部の3年生で、2年生までラグビー部に所属していただけあって体格がいい。
「ああ、美人の先輩に一から手取り足取り優しく指導してもらえて、す ごく楽しい職場だったぜ!400円までなら店員が好きなメニューをお客さんに一品サービスできたり、とにかく自由度が高いんだ。関東圏を中心にどんどん新 規出店もしているし、会社もうまくいってると思うぜ」
「あの『ワイワイ』だって、オモテ向きには最高の職場だったのよ。居酒屋チェーン業界のなかで塚田農場(エー・ピーカンパニー、本社:東京都港区、東証一部)がなぜ伸びてるかはちゃんと分析したの?」
「えーっと、それは……なんでだっけ?」
「アキれた〜。あのね、自前で養鶏場を持って食材供給源を確保しているのが大きいのよ。これによって、よその居酒屋にはない美味しいメニューが次々と企画できるの」
もともとはアパレル業界でユニクロが手掛けた素材開発と商品企画と店舗販売を一貫して行う仕組み(SPA)を、居酒屋に持ち込んだのが塚田農場というわけだ。
「たしかに、ほかの居酒屋より断然美味しいからちょっと高くても頻繁に行っちゃうな」
「実際、リピート率は開示データによればずっと50%以上と非常に高いそうよ」
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塚田農場は立地戦略でも逆転の発想が際立つ。居酒屋チェーンは、他のチェーンより少しでも優位に立とうと、立地でもしのぎを削る。そのため駅チカは 激戦区となる。しかし好立地は当然賃料が高い。塚田農場は、少々歩いても食べに行きたいと思わせる味を訴求していることで、駅から距離のある穴場にあえて 店をだす。
「売上に占める地代の割合は、一般的な居酒屋で15%程度だけど、塚田農場を経営しているエー・ピーカンパニーは10%程度を基準にしているらしいわ。しかもいったん出店すると定着する。この数字を見て。他社と比べて退店数が非常に少ないのよ。
2012年度期首から2014年度末までの3年間で88店舗の出店に対して、退店はわずか10店舗。いっぽう業界最大手のワタミは50店舗出店したけど152店舗も退店したわ。……って、なんで私のほうが潜入してたアンタより詳しく知ってるのよ」
マオは呆れ顔でカンタを見上げる。
「い、いやぁ。ははは。それにしてもやっぱり塚田農場は優良だな!」
「ただ、エー・ピーカンパニーの社員の平均年収は365万円と、上場企業の中で下位4%に入る低さよ。現時点では社員にとっていい企業と言えるかどうかは、微妙かも」
「えっ、そんなに低いのか。うーん、じゃあそもそも、いい企業ってなんなんだよ?」
「いい企業……これからの日本では、難しいかもしれない……」
「どっ、どういうことだよ!」
「もっというと、このままでは、日本の企業はぜんぶブラック企業になるかもしれないわ」
「な、なんだってー?」
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「これまでの日本が天国だとすると、これからの日本は、地獄よ。この図を見たら一目瞭然」
マオは、目の前にある資料の山から、日本の全労働者に占める非正規雇用労働者の割合の推移を表す一枚の図を取り出した。
総務省によれば、非正規労働者は、この四半世紀の間、年々増え続け4割(37・4%)となり、1991年から倍増している。さらに厚労省が2015年11月に発表した調査によれば40%に達したという。
「ど、どうしてこんなことになってるんだ?」
「それはね……」
とマオは語り始めた。
高度経済成長期以降の日本では、終身雇用制度のもと、社員がやりがいを持ってスキルを磨くことで新しい製品を次々と生み出し、会社は高収益を実現し、社員の賃金も上昇していくという、企業にとっても、そこで働く人々にとっても幸福な時代が続いていた。
しかし1990年代以降、2つの大きな波がそれを一変させてしまった。
ひとつは、グローバル化だ。人・モノ・情報の行き来が自由になったことで世界中のあらゆる場所から、最もいい製品を最も安く手に入れられるようになった。
もうひとつは、IT化である。高度な技術もあっという間に陳腐化してしまい、熟練を必要としていた労働の多くが誰にでもできるようになり安価になった。
その結果、日本企業のビジネスモデルは崩壊した。
たとえば、品質の高さを武器に世界と戦ってきた日本の家電メーカーは細やかな性能向上の努力を続けたが、もはや消費者の目には新興国のメーカーが作 るそれなりの品質の製品と大差ないものに映るようになってしまった。そうなると、製品を徹底的に値下げして安さをウリにするしかなくなる。いわゆる「コモ ディティ化」である。
いわゆる「失われた20年」とは、日本企業の製品が次々とコモディティ化していく過程だったのだ。そんな中、ますます激しくなる国際的な競争に耐え 忍ぶため、日本企業は人件費を削らざるをえなかった。人材の領域でもコモディティ化が進み、誰にでもできるような仕事しかできない人材は、安く買い叩か れ、さらには使い捨てられるようになった。
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「だから、いつでも解雇できる非正規雇用労働者が増え続けてるってわけか」
「そうよ。そして、運よく正社員になれたとしても、こんな悲惨な現実が待っているの」
「なっ、なんだ、これは?」
マオが新たに示したグラフを見て、カンタが驚嘆の声をあげる。社外研修費など、企業が人材育成のために行う投資の総額は著しく減少し、全盛期の20・8%になった。つまり8割減ということだ。
「かつて栄華を極めた日本のホワイト企業たちはもはや、未来を担う人材をまともに育てる余力を失ってしまい、なすすべなく次々とブラックに染まっていっているというわけ」
「そ、そんな……オレたち、大変な時代に生まれちゃったんだなあ。いったいどうすりゃいいんだ」
「生き残る道は、あるわ。たとえば変化の激しかった電機業界の中で も、ニッチな電設資材を作っている『未来工業』という会社はすごいわ。毎年たくさん特許をとってユニークな部品を次々と発明しているお陰で高収益体質。全 従業員を正規雇用しているのよ。連続的なイノベーションで、高い利益率を達成し、それを社員へ還元して高待遇を実現するという3拍子を叶えているところ が、これから生き残るホワイト企業なんでしょうね」
「へーっ、その企業はすげぇな! でも、どこにそんな企業が眠ってるんだろう」
「それを調べるのが、私たちUTBDの使命でしょ」
そう、UTBDとは、徹底的な企業分析によってブラック企業を暴き、隠れたホワイト企業を見つけ出すために東大内に結成された、秘密結社”なのだ。
「だから、そのためにも」
とマオが続けようとしたその時、部室の扉をノックする音がした。
「ハルキか?」
と言ってカンタが扉を開けると、立っていたのは団長の針谷ハルキではなく、いかにも東大生らしいよれよれのチェックシャツを着た男子学生だった。
「あっ、あの、UTBDのメンバーの方ですか ? おっ、折り入って、相談したいことがあるんです」
「すいません、私たちは、個別の相談は受けつけていないんです」
マオがきっぱりとはねつけようとしたが、男子学生はすがるように話を続けた。
「実は僕、ゼンショーに内定しちゃったんです」
その言葉に、マオはぴくりと反応した。
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10年で市場は2割も縮小
「『カタチあるものを売って人から感謝されたい』という軸で、メー カーの総合職を中心に就活してたんですけど、うまくいかなくて……。まわりの連中はどんどん内定ゲットして、焦ってもうちょっと手広く受けようと思って、 外食産業の大手にもエントリーしたら、受かっちゃって……」
マオが淹れたお茶を飲みながら、黒井ヤスシと名乗る男子学生はおどおどとした様子で話を続ける。
「でもゼンショーといえば、2014年にアルバイトがストライキを起こした、とか、いろいろニュースになったじゃないですか。あとナントカ委員会がどうとかって……」
「第三者委員会による調査報告書のことね。あなた、そんなこともよく知らないでゼンショーを受けて内定しちゃったの?」
「す、すみません。もともとは博士課程を目指していたんですが、研究に行き詰まったので就活を始めたものの、勝手がよくわからなくて……。とにかく人から感謝される仕事がしたいって言いつづけたら通っちゃったので……」
「修士にもなってそんなに意識が低いんじゃ、ヤバいわよ」
要領を得ないヤスシの発言に、年上にも物怖じしないマオの口調はついついキツくなってしまう。
「おいおい、先輩に対してそんな言い方ないだろう。黒井さん、オレたちもちょうど外食産業を調べてるところなんだ」
体育会系出身者らしく年長者を敬う気持ちが強いカンタがすかさず助け舟を出す。
「黒井さんのためにも、もっと分析してみようぜ」
「そうねえ、でも、やっぱり外食産業の未来はどう考えても明るいとは思えないわ」
マオがパソコンのキーボードを叩きながら言う。
「10年間で市場は2割も縮小してるのに新規参入は増え続けて競争は激化。それが現場のオペレーションをより過酷なものにしていて、今では外国人労働者ですら敬遠する労働環境で人手不足。ゼンショーの問題にもそうした背景があるのよ。たとえば……」
ヤスシがますます小さくなっていくのをまったく意に介さず、外食産業を取り巻く惨状を並べ立てていくマオに、カンタがまたつっかかる。
「外食が全部ブラックだとは限らないだろ。安くておなかいっぱい食べ られるなんて消費者にとっても最高だよ。黒井さんの受かった『ゼンショー』がどういう会社なのか知らないけど、オレはこの前『すき家』に行って感動したん だ。注文したら一瞬で牛丼は出てくるし、オレが水を飲み干したらすぐに察知して入れにきてくれる。まさに人の温かみと高度なオペレーションの融合を感じた ね」
マオは心底あきれたというふうに大げさに肩をすくめて両手を広げてみせた。
「恥ずかしいから、もうアンタはUTBDを名乗らないでくれる?いい?ゼンショーっていうのは、『すき家』ブランドを保有している会社なのよ」
業界最大手のゼンショーホールディングスの年間売上高は、2015年3月期で約5118億円。じつにその約4割を牛丼チェーン店の「すき家」(すき 家本部)で稼いでいるが、残る6割はファミリーレストランから寿司チェーン店まで多岐にわたる。「ココス」や「ジョリーパスタ」「はま寿司」などが、この ゼンショーホールディングスのものであるのを知らなかったという人は多いかもしれない。
「じょ、冗談だよ。客前ではすばらしいサービスをしているウラで、従業員にとんでもなく無理をさせてたって話だろ?」
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かねてから従業員の不満がたまっていたすき家では、2014年春頃から勤務ボイコットが頻発。ストライキまで噂される事態に発展したことで報道も激化、4月28日、経営陣は労働環境改善のために調査・提言をさせるべく第三者委員会を設置するに至る。
調査の結果浮き彫りになったのは、徹底的な人件費の切り詰めを背景に、おもに深夜帯で1人勤務に当たらせる、いわゆる「ワンオペ」の実態だった。 「平均残業時間100時間超」や「大雪時に48時間連続で勤務する従業員の存在」といった驚くべき事実も明らかになる。第三者委員会はこれらを踏まえて 「すき家のビジネスモデルは限界」とまで結論づけている。
「結局、外食産業の構造が、もう価格を切り詰めることでしかサービス を差別化できなくなった、つまり、コモディティ化したから、人を削って無理やり回そうとするのよね。業界トップ企業なのに営業利益率がたったの1・5%な んてふざけてるわ。ゼンショーだけじゃなくて多かれ少なかれほかの会社にも言えることだと思うけど」
外食産業の過酷な現状に、さすがのマオも気がめいっているようだ。
「ちょ、ちょっとこのままだと黒井さんがあまりにもかわいそうだよ。オレたちで、外食産業のホワイト企業を探そうぜ。実地調査なら任せてくれよ」
カンタが胸を張った、そのときだった。
「その必要はない!」
入り口の扉が開き威勢のいい声の主が姿をあらわした。
団長のハルキが、右の脇には分厚い資料を抱え、そして左手には白いレジ袋をぶら下げて立っていた。針谷ハルキ。法学部3年生にして、UTBDを束ねるリーダーである。彼の卓越した思考力を武器にした鋭い分析には、マオもカンタも一目置いている。
「話は聞かせてもらった。結論から言わせてもらおう。日本の外食産業は……このままだと5年後にはどこも死ぬ!」
「な、なんだってー?」
「ただしひとつの例外を除いて……」
つぶやきながら、ハルキは机の上にどっさりと資料を載せる。あちこちに付箋が貼られ書き込みがしてあり、その調査量がうかがい知れる。
「たったひとつって……いったいなんなんだよ ? ハルキ〜、もったいぶらずに教えてくれよ!」
ハルキはレジ袋の中から透明のフードパックを取り出した。
「これだ」
その中身は、色とりどりの生魚がのっているご飯。一口サイズのソレは――
「寿司!?」
続きは本書でお楽しみください
『進め!!東大ブラック企業探偵団』大熊将八著
「Tゼミ」企業分析ノートのノベライズ。問題企業、業界を徹底分析して実態に迫る、ますます残酷な社会となる日本で、幸せに「働ける会社」「働けな い会社」とは?……『未来工業』『キーエンス』『日本M&Aセンター』……ニッポンを救うホワイト企業はここだ!! 話題のニュース共有サイト 「NewsPicks」の人気コンテンツ待望の書籍化
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