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あの急成長・新電力、危険な人脈&問題企業への接近が次々発覚…資金繰り悪化で事業撤退
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14065.html
2016.03.03 文=高橋篤史/ジャーナリスト Business Journal
新電力(特定規模電気事業者)大手の日本ロジテック協同組合(東京都中央区)が、3月いっぱいで電力小売り事業から撤退することが明らかになった。資金繰り難から東京電力に対し託送料金(送電線の使用料)の支払いも滞っている模様だ。実のところ、少なからぬ関係者は日本ロジテックが早晩行き詰まることを予期していた。というのも、「ハコ企業」と称される問題上場企業との提携を繰り返し、背後には過去の経済事件にまつわる人脈の影もちらついていたからである。
日本ロジテックは2007年11月に設立された。外国人技能実習生の共同受け入れやETC割引きの共同利用とともに、10年から力を入れていたのが電力小売り事業である。官公庁の入札で安値攻勢を仕掛けていたことで知られ、ここ数年その急成長ぶりは際立っていた。直近でも関東地方整備局常陸河川国道事務所や宇都宮地裁などの入札案件を次々と落札、15年3月期の売上高は555億円に上っていた。資源エネルギー庁による直近の統計によれば、特定規模電気事業者で5番手につけるほどの勢いにあった。
そうしたなか、日本ロジテックは5〜10万キロワット規模の自前発電所を持つ構想までぶち上げていた。母体となり12年に設立した日本新電力(東京都中央区)は全国各地で用地を物色した。13年8月には茨城県那珂市に約31万平方メートルもの広大な用地を約13億円で取得。これはかつて国が誘致を目指したものの断念した国際熱核融合実験炉(ITER)の候補地だった土地だ。さらに14年10月には佐賀県伊万里市に約15万平方メートルの土地を契約額22億円で取得。進出協定締結式には古川康知事(当時、現衆院議員)も出席したほどで、それだけ発電所計画は地元の期待を集めていた。
■リミックスポイントとの提携
しかし、日本ロジテックの内情は自転車操業そのものだった。もともと同組合の電力小売り事業は薄利多売で、しかも入出金のギャップが大きいため、売り上げを伸ばせば伸ばすほど多額の運転資金を必要とする。電力の大半は日本卸電力取引所のルートで調達していた模様だが、その場合、取引所には数日ごとに支払いが必要。対して、ユーザーからの料金収受は1カ月単位といった具合だ。このため昨年5月には再生エネルギー関連の賦課金を期限までに納めることができず、経産省から公表措置も受けていた。
多額の運転資金を確保するため日本ロジテックが接近したのは、よりによって問題上場企業ばかりだった。最初は東証マザーズ上場のリミックスポイントである。提携したのは14年9月のことだ。リミックスポイントはもともと業務用ソフト開発のベンチャーだったが、上場後は業績低迷が続いた。09年に新たな株主が入り経営陣の一角も占めたが、それはローソン子会社を舞台とする多額の資金流用事件を引き起こした人脈で、その後も株主は頻繁に入れ替わった。
現在、リミックスポイントに少なからぬ影響力を持っているのは「ダイマジン・グローバル」なる香港法人だとされる。その背後に控えているのは安愚楽牧場の破綻劇に深く関わった人脈と見られている。安愚楽牧場は和牛預託商法で投資家から4000億円超を集めたものの11年に行き詰まり、その破綻は社会問題化した。ダイマジン・グローバルの関連人脈は、飼料利権で一財産を築いたと見られており、破綻当初は都合良く債務だけカットできる民事再生を押し通そうと裏で主導していたとされる(のちに投資家の反発を受け安愚楽牧場は破産処理に移行した)。
成長著しい新電力との提携という提灯がついたリミックスポイント株は一時、急騰した。その裏で日本ロジテックはリミックスポイントに電力調達取引の間に入ってもらい、資金支援を受けるという実利を得ていた。ピーク時、リミックスポイントが立て替えた金額は約10億円に上った。しかし、とある経緯から元楽天副社長の國重惇史氏がリミックスポイントの社長に就任したことで蜜月関係には終止符が打たれた。昨年夏、多額の立替金を問題視した國重氏は関係見直しに動き、同年11月に提携は正式に解消となった。
■クレアホールディングスとの提携
蛇口を閉められた格好の日本ロジテックは売上債権の流動化で息をつなごうとファクタリング会社と交渉を始めたが、うまくいかなかったようだ。結局、次に頼った先は東証2部のクレアホールディングスである。
まさにクレアホールディングスは「ハコ企業」の代表格といえる会社だ。もともとの社名はキーイングホームで住宅メーカーだった。それが千年の杜、東邦グローバルアソシエイツへと頻繁に社名変更を繰り返し、現社名となったのは7年前。私募CB(転換社債)を使った錬金術を広めた有名ブローカーの下で15年前に新株乱発を始め、その後もグッドウィル・グループを食い物にした別のブローカー筋などが入れ替わり立ち替わり入り込んだいわく付きの会社だ。ロシアで巨大人工島を造るという眉唾物の構想を大々的に発表し、そのいかがわしさをよそに、株価だけが急騰劇を演じたこともある。
日本ロジテックがクレアホールディングスと提携したのは、リミックスポイントから縁を切られる直前の昨年10月のことだった。ただし調達額はかなり限られた。電力販売債権の譲渡により日本ロジテックが受けられた資金支援は1億円にとどまった。
■キナ臭い人脈
それら問題企業との接近に加え、そもそも日本ロジテック自身の背後にもキナ臭い人脈の影がちらついている。
14年3月、千葉県銚子市の民家に本店を登記する「丸嶋」なる会社が解散を決議している。日本ロジテックで代表理事を当時務めていた鈴木智晴氏(14年7月辞任)は丸嶋の取締役でもあった。解散決議時、丸嶋には鈴木氏も含め取締役が3人いた。不可解な人脈というのは残りの2人、代表取締役・A氏ともうひとりの取締役・B氏のことである。
両氏の名前が世間を騒がせたのは1998年のことだ。やはり銚子市にあった「全国生鮮食品ロジスティクス協同組合」を舞台とする賃金ピンハネ事件においてだった。同組合は中国などから来日した外国人技能実習生を地元の水産加工場などに派遣していたが、本来なら実習生に支払うべき賃金約1億円を違法に中間搾取していた。要は業務上横領である。B氏は同組合の代表理事、A氏は経理担当理事だった。そして前出の丸嶋は搾取した賃金をプールしていた先だったのである。01年、A、B両氏には懲役2〜3年の執行猶予付き有罪判決が下った。
呆れたことに、2人は05年にも地元を揺るがすような大事件を引き起こしている。こんどは銚子信用金庫を舞台とする総額17億円に上る不正融資事件である。2人は銚子信金職員を丸め込んで融資金を引っ張り、競売で人手に渡る寸前だった自宅を買い戻したほか、残土処分場用地に注ぎ込んだ挙げ句、焦げ付かせた。この事件でB氏には懲役2年の実刑判決が下っている。
■銚子コネクション
2つの事件の間、A、B両氏の関係先として「労働安定センター」なる会社が銚子市内に設立されている。日本ロジテックの鈴木前代表理事はやはり同社の取締役も長い間、兼務していたから、関係性はかなり深いものと見られる。さらにこんな事実もある。日本ロジテックはなぜか銚子市内で次々と不動産を取得しているが、そこでも前述した2つの事件が幾重にも絡みついているのだ。
その一例が「コアビレッジ」と呼ばれていた施設だ。日本ロジテックが競売で落札したのは08年8月のことである。じつはコアビレッジは前述したピンハネ事件の舞台だった全国生鮮食品ロジスティクス協同組合が実習生を研修していた施設で、同組合の経営破綻後はA氏が代表取締役を務める不動産会社「コア・コンピタンス」が銚子信金からの不正融資金により買い取っていた。しかし、事件発覚後は税金滞納で差し押さえられ、銚子信金からは競売を申し立てられていた。A氏は「フロンティア21」なる別の不動産会社を07年に設立しているが、実は同社こそが日本ロジテックの大口出資企業の1社。A氏の影響下にある日本ロジテックが第三者に渡る寸前にコアビレッジをかわって買い戻した構図と見て取ることもできる。
これら「銚子コネクション」とも呼ぶべき事件人脈が背後で蠢きつつ、日本ロジテックはいわく付きの不動産購入や、無謀とも思える発電所計画で多額の支出を繰り返し、それが資金繰り難の元凶だった可能性は高い。日本ロジテックは横浜市に対しても電力購入代金7億円が未払いのままだ。先述した佐賀県伊万里市の土地代金もまだ15%の即納金しか払っていない。今回明らかになった電力小売り事業からの撤退は、次なる破局的な事態の序章に過ぎないと見たほうがいいだろう。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト)
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