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消費支出5カ月連続減…庶民はカップ麺を爆買いしていた(日刊ゲンダイ) :政治板リンク
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/235.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 02 日 18:09:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

消費支出5カ月連続減…庶民はカップ麺を爆買いしていた(日刊ゲンダイ)

http://www.asyura2.com/16/senkyo202/msg/251.html
 

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1. 2016年3月03日 07:34:20 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[334]

減少する実質消費支出(大前研一)
【日本】2015年実質消費支出 前年比2.3%減 〜総務省〜
 総務省が16日発表した2015年の家計調査によると、二人以上の世帯の実質消費支出は、前年比2.3%減少したことがわかりました。2年連続で前の年を下回ったもので、2014年4月の消費増税以降、消費の手控えムードが長引いている現状が改めて示されました。
 結局、200円カレーやローエンドのガストなどが非常に好調ということで、再びデフレであり、もつ鍋に焼酎というスタイルに戻ったと言えます。安倍首相は賃金が上がったと言っていますが、実態はそれが消費に結びついていないことが明らかになっているのです。

 消費支出の対前年増減率の推移を名目と実質で見ると、実質は相当冷え込んでいることがわかります。支出ではどういうものを削っているかというと、水道などの公共料金は上がっているものの、その他のものは不要不急のもの、例えば衣服や教養娯楽などが落ち込んでいます。つまり皆が身構えているということが非常にはっきり表れているのです。

 ただ、実際の感覚としては少し違うように感じるところもあります。私はCoCo壱番屋のシーフードカレーが安くて美味しいので大好きです。特に642円のあさりカレーは無限に入っているように思えるほどたくさんのあさりが入っていて、大いに満足できます。もちろん何万円とする懐石料理にも仕方なく行く時はあります。しかし今現在、642円であのあさりカレーが食べられるならば、それ以上のものを食べる必要はないのです。
 つまり、世の中は製造業だけではなく、デフレでも耐えられるように、そうした商品ができてきてしまっているのです。ガストでもよし、バーミヤンの定食も大変美味しいです。お金を使わなくてもよい世の中を作ってくれている有難い会社があちこちにあるということなのです。その上、コンビニも選択肢にあります。どんとお金を使いたくなるような大きな理由がなければだめなのですが、それが日本にはないのです。
 アメリカ人は普通の会社の部課長で、寒いところで働いている人は南に第二の家を引退用として買うわけです。だからこそサンベルトに需要があるのです。しかも、それを貸し出してお金を稼ぐので、買っても負担にはならないのです。そして年に二週間ほどそこを使って楽しむのです。これが巨大な消費となっているわけです。そして最後には北の家を売ってすべてキャッシュにして、これが貯金だったということがわかるのです。これにより経済が膨らむのです。アメリカにもとんでもなく高いハンバーガーもありますが、全体的には安い方向にも行っているわけです。こうした特徴が経済の支えとなっています。
 一方、ヨーロッパ人も同様にデフレの方向に向かっているのですが、彼らもどんと奮発する時があります。それがバケーションです。イタリア人は収入の三分の一をバケーションに使います。日本人はせいぜい年間二日ですが、イタリア人は三週間以上バケーションを満喫します。ドイツ人はバケーションを取らないことで有名でしたが、結局この30年の間に、夏に二週間、冬はスキーに一週間で、年間三週間バケーションを取ることがドイツ人も平気になりました。これが非常に大きいのです。
 ヨーロッパ人はバケーションでどんと消費し、アメリカ人は引退に使うセカンドハウス、それにより経済がどんと膨らむというわけなのです。この膨らみの部分が日本にはないということに気づきました。ちょっと値段の高いカレーやハンバーガーもありますが、そんなものは誤差の内です。CoCo壱番屋のカレーを食べてみたら、富士屋ホテルの2500円のカレーよりもおいしいと思うほどです。その意味でデフレはすでに構造的に進んでいるのです。それ以外のもので膨らませない限り、日本の巨大な1700兆円の個人金融資産は出てきません。
 アメリカやヨーロッパはその点非常にはっきりした消費の膨らみがあるので、日本もこれに匹敵するものが必要です。倹約するところはすれば良いのですが、そうではないところを作らないとだめだということです。ようやくそこに私も気づいたので、低欲望に対して何か高欲望になるような手立てを考えなくてはいけないと思い、今そのことに頭を集約して考え始めているところです。皆さんもいいアイディアがあれば知らせてください。
【日本】2015年度配当総額 約10兆8000億円で過去最高更新
 日経新聞は21日、「不動産融資、26年ぶり最高」と題する記事を掲載しました。これは、2015年の不動産業向け新規貸し出しが10兆6730億円と、前の年に比べ6.1%増加したと紹介。低金利で住宅やオフィスビルの需要が底堅いうえ、日銀の異次元緩和でマネーが不動産市場に流れ込んでいることが要因としています。

 これについて、私の肌感覚では、去年11月あたりがピークであり、今はまた冷え込んできていると思います。銀行の不動産向けの新規貸し出しの推移では、確かに80年代のピークの水準に達しています。ここまで不動産に資金が流れてきたわけですが、私の感覚では、かなり急速に値上がりが止まりつつあります。売りたい人がいたら、去年の11月頃に売っておけばよかったという状況で、買い案件が実に少なくなってきています。
 値上がりの多くの部分は中国からの影響でしたが、中国経済の問題もあり、それがピタリと止まってしまったのです。中国の方も金持ちがお金を持ち出す方法がないので、そこで滞留してしまっているのです。そうしてみると、この記事は私の瞬間的な肌感覚から見ると二ヶ月ほど遅れているように思います。
 また、日経新聞の統計によると、上場企業約3600社の2015年度配当総額は約10兆8000億円と、初めて10兆円を超え、3年連続で過去最高を更新する見通しとなりました。業績の見通しを下方修正した企業でも約9割が従来の計画通りの配当を維持する見込みで、稼いだ利益を溜め込まず、配当に回すことにより、足踏みする個人消費を下支えしそうです。
 日経のこういう記事は誤りだらけです。ほとんどの株は金融機関が持っていて、機関投資家は配当がある限りは株価がどうであっても持ち続けるのです。たとえ将来性が暗くても、配当をしている限りは持ち続けるわけです。その理由は、銀行などに預けてもわずかな金利しか付かないので、配当さえあれば株で持っておこうということなのです。

 このことの持つ意味を検算するため東証一部の時価総額を見てみると、直近では約479兆円です。それに対して配当総額が10.8兆円ということは2.25%にあたり、銀行に預けておくよりはるかに良いのです。2%も入ってくるのなら売ることはないということなのです。株価は企業の将来得べかりし利益を反映しないといけないわけですが、今はそれとは無関係に機関投資家が持ち続けてしまうという現象が起こっているのです。
 また、配当が増えたことで個人がお金を使うようになると言いますが、個人の持ち分は1割以下です。また、私もBBTの株を持っていますが、課税金額を考えると配当が入るので使おうという気にはなりません。配当には課税をしないということになれば、使うと思うでしょう。ただ、高額な配当をもらっている個人はそれほど多くなく、そうした人たちは逆に総合課税になってしまうので、総合的に税制が変わらない限り消費への効果は出にくいと言えます。

 配当性向の状況をみると、日本企業もアメリカ企業も3割程度です。昔は日本の配当性向はかなり低かったのですが、今は配当によって株価維持をする、配当によって機関投資家を引きつけておくので、日本もアメリカと変わらない水準になってきたというわけなのです。
講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
2月21日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら

その他の記事を読む

深刻な問題として急浮上 チャイルショック(大前研一)

http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160302-2/


 

野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて
【第52回】 2016年3月3日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
消費増税延期と法人増税こそ正しい緊急経済対策

緊急経済対策は必要か。必要なら、どのような方策が有効で適切か。
 今年の1月以降、株式市場も為替市場も大きな変動を繰り返しているが、傾向としては円高、株安の方向に進んでいる。また、実体経済も、実質GDPのマイナス成長に見られるように、低迷している。法人企業統計によれば、2015年10〜12月期の全企業の売上高も利益も、前年同期より減少した。

 1月末には日本銀行がマイナス金利政策を導入したが、金融市場を混乱させた以外には、経済効果が見られない。金利を下げて円安に誘導しようとしたのだろうが、実際には、世界的な投機資金のリスクオフの動きによって、円高が進んでいる。

 こうしたことを背景として、緊急経済対策が必要との議論が生ずる可能性が強い。

 以下では、消費税増税再延期または公共事業増加を行なうのであれば、法人税増税によって財源を調達すべきことを論じる。また、公共事業増加の問題点についても触れる。

経済的検討を欠いた緊急対策が
政治的事情でとられる危険

 緊急対策は、政治的な事情と密接に絡んでいる。

 夏に参議院選があり、それに加えて衆議院の解散も取りざたされている中で、現下の経済状況が与党にとって望ましくないことは明白だ。したがって、経済効果がどうであるかとは別に、心理的な好転を図ろうとすることを目的として緊急対策を打ち出すことは、十分に考えられる。

 政権にとって関心があるのは、株価だ。そして株価は、実体経済の動向というよりは、心理的な要因によって大きく動く。したがって、経済効果に関する十分な検討なしに対策がとられる可能性が高い。

 緊急対策の柱の1つとなりうるのは、消費税増税の再延期であり、いま1つは公共事業の増加を中心とする補正予算の策定である。消費税の増税は与党にとって不利な材料だから、実際の経済効果がどうであるにせよ、その再延期は十分ありうることだ。

金融政策の限界についての考慮は必要
財政政策の適用も常識的手段ではある

 以上では、政治的な考慮から緊急対策が議論されていることを指摘した。

 ただ、経済的に見ても、短期的経済政策の見直しが必要なことは事実である。とくに、従来の金融緩和一本やり(その実態は、円安一本やり)の政策に見直しが必要なことは否定できない。

 マイナス金利は、金融政策として異常なものである。金融秩序を混乱させなければ、金融政策に効果を期待できないところまで追いつめられていることを意味するからである。

 先般のG20においても、金融政策に過度の負担をかけるのではなく、財政政策も考慮されるべきことが示唆された。

 また、アメリカ大統領選の議論などを見ても、日本のマクロ政策を円安政策であるとして批判する風潮が世界的に高まる可能性もある。

 金融政策が機能を発揮しえない状況においては、マクロ経済政策として財政政策を用いるべきだというのは、常識的な見方だ。

本当に重要なのは構造改革
金融・財政政策は時間稼ぎ

 金融政策や財政政策などのマクロ経済政策は短期政策であり、日本経済の構造を変えるものではない。その意味では、時間稼ぎにすぎない。

 現在の日本経済において本当に必要なことは、経済の構造改革に手を付けることである。

 労働力の減少を考えると、日本経済に残された時間的余裕はあまりない。このことは、安倍晋三内閣の発足当初から意識されていた。それにもかかわらず、いまに至るまで、長期的な構造改革政策が行なわれていない。財政についていえば、社会保障制度の見直しが放置されている。

 短期的政策が必要なときにこそ、長期的政策の重要性が認識されなければならない。

 仮に緊急対策の結果、株価が短期的に上昇しても、中長期的観点から見ると、日本経済の成長基盤にはかえってマイナスの効果がもたらされる危険が強い。だから、経済効果についての慎重な検討が必要だ。すでに述べたような事情で緊急対策がどうしてもとられるのであれば、その内容をいくらかでも望ましいものに近づける必要がある。

 以下では、そうした観点から、この問題を考えることにしたい。

財政拡大策は金利上昇圧力を生む
日本経済の将来には大きな問題

 第1は、金利に対する影響だ。

 一般に、財政拡大を行なえば、金利上昇圧力が生じる。つまり、金利に対して、財政拡大政策は金融緩和政策とは逆の効果をもたらす。

 金利が上昇すれば、内外金利差が縮小し、円高をもたらす。「そうなれば、純輸出が減少して、総需要に与える影響はゼロになる」というのが、開放経済下の標準的なマクロモデルであるマンデル=フレミングモデルの結論だ。

 しかし、これについては、つぎの2つの注釈が必要だ。

 第1に、最近数年間の日本の輸出数量は、為替レートによっては動かされていない。

 第2に、財政拡大と並行して、日銀が国債を買い入れれば、金利上昇を抑えることができる。

 日本銀行は、現在年間80兆円規模での国債購入を進めている。だから、財政拡大の財源として少しばかり国債を増発しても、まったく問題ない。実際、2013年以降は、金融緩和の影響のほうが大きく、金利は低下した。

 第3に、現在は、世界的なリスクオフの動きが生じており、日本国債に対する需要が強まっている。だから、国債が増発されても、金利を上昇させることにはならない可能性が高い。

 ただし、以上は、中央銀行による財政ファイナンスである。それによって日銀に大量の国債が蓄積されることは、日本経済の将来にとって大きな問題だ。

国債を財源とすれば
財政再建目標が遠のく

 第2は、財政再建との関連だ。

 消費税増税を再延期したり、公共事業を増やしたりすれば、財政再建目標は遠のく。

 また、「税と社会保障の一体改革」によって、消費税の増税と社会保障費の増額がセットになっていたので、消費税増税を延期するのであれば、それとセットになっていた社会保障を見直すか、あるいは新しい財源を用意する必要がある。

 代替財源なしに消費税増税を延期することは、日本の財政の将来性に対する不安を増幅させ、金利の高騰を招く可能性がある。

 しかし、現在、このことは軽視されている。なぜなら、財政状況が好転しており、税収は増えているからだ。

 財政拡大に対する警戒感はかつてないほど低下している。したがって、財政再建は軽視されがちだ。しかし、本来、このことは、決して軽視してはならないことである。

消費税増税再延期と
公共事業増加のどちらがよいか?

 つぎに、マクロ的財政政策の手段として、消費税増税再延期と公共事業を比較しよう。

 まず、経済効果の確実性について。

 公共事業は、それ自体がGDPの構成要素であるため、増加させれば、少なくともその分だけGDPは増加する。

 実際、安倍内閣の成立以降の経済成長は、一般に考えられているように金融緩和によってもたらされたものではなく、公共事業の増加による面が大きい(なお、GDP増加のもう1つの要因は、消費税増税前の駆け込み需要である)。このことはすでにこの連載の第50回(「実質賃金低迷でマイナス成長 明白になったアベノミクスの破綻」)で指摘した。

 その図表4には、公共事業と政府消費支出の合計を示してある。このうち後者は医療の増加などに伴って傾向的に増加している。政策的に変わったのは前者である。

 図表1に示すように、民主党時代には公共事業が抑制されていたが、安倍政権の成立以降、公共事業が増え、GDPが成長したのだ。

◆図表1:公的固定資本形成(名目値)


(資料)内閣府
 公共事業の経済効果がこのように確実であるのに対して、増減税は、実質所得には影響を与えるが、それが実質消費にどのように影響するかは不確実である。

 消費性向が不変であれば、実質所得の増減によって実質消費が増減する。しかし、必ずそうなるとは限らない。消費税の増税によって実質所得は減るが、基礎的な消費は変わらない可能性もある。

 つぎに、政策変更の柔軟性について。

 円安や資源価格低下による法人所得の増加は一時的なものであるので、増税も一時的な措置とすることが必要だろう。将来元に戻すことを考えると、公共事業増加であれば、柔軟に対応できる。

 消費税の増税も、後述する法人税増税のとりやめと同時に行なえばよい。

 このように、どちらであっても、一時的な政策とすることができる。

公共事業の必要性は低下
建設労働者の制約も厳しい

 上述の点のみからすれば、効果が確実という意味で、公共事業増加に分があるといえるかもしれない。

 しかし、公共事業については、つぎのような問題がある。

 まず、実質公共事業費が実質GDPに占める比率を見ると、図表2に示すように長期的に顕著に低下している。

◆図表2:実質固定資本形成が実質GDPに占める比率


(資料)内閣府
 1994年にはこの比率は8.92%であったが、その後傾向的に低下し、2008年には3.87%となった。10〜13年の民主党内閣の時代には3%台であった。安倍内閣になって比率が上昇したとはいうものの、4%をわずかに上回るだけである。

 したがって、公共事業費を一定率変化させたとしても、それがGDPに与える影響は、1990年代に比べれば半分程度に低下しているわけである。

 これは、政策努力によって公共事業費を抑えた結果ではなく、社会資本の整備が進み、公共事業の必要性が低下してきたことの結果であると解釈できる。

 道路の整備率や、下水道の普及率を見ても、社会資本整備が進んだことは明らかだ。そうした状況を考えると、事業の進捗状況の時間的な調整はありうるだろうが、事業量そのものの大きな底上げを正当化する理由は乏しい。

 公共事業拡大の第2の問題は、労働力の制約が厳しいことだ。

 建設労働者の賃金の上昇率は製造業に比べて明らかに高い。

 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)によって、生産労働者(男)の「きまって支給する現金給与額」を見ると、2010年から2015年の間で、製造業では、0.4%の上昇にとどまっているのに対して、建設業では7.1%上昇している。

 建設労働者の賃金上昇は、図表3に示すGDP統計における需要項目別のデフレーターでも確かめることができる。

◆図表3:デフレーターの推移


(資料)内閣府
 図表に示す項目は、2つのグループにはっきりと分かれている。

 第1は、民間最終消費支出と民間企業設備のデフレーターで、13年以降若干の上昇が見られるが、長期的に見れば低下を続けている(13年からの上昇は、円安による輸入材価格の上昇によるものであろう)。

 それに対して、民間住宅と公的固定資本形成のデフレーターには低下傾向が見られず、12年半ば頃以降、顕著に上昇している。これは、建設関係労働者の逼迫による賃金上昇を反映したものと考えられる。

 以上のような事情があるので、景気対策として名目公共事業額を増やしても、実質値をあまり増やさない可能性が高い。

法人税増税を財源にすれば
経済へのマイナス効果はない

 いかなる内容の経済対策を取るかは、目的のいかんによって異なる。

 株価の短期的なテコ入れだけを目的とするのであれば、国債増発を財源として、消費税増税の再延期または公共事業の増加(あるいは、その両方)を行なえばよいであろう。現在の財政状況下では、それは実行可能である。

 しかし、それを行なったところで、日本経済のパフォーマンスが改善されるわけではない。

 経済的観点からすると、現在の日本で必要なのは、消費税増税の延期または所得税の減税を行なう一方で、法人税増税を行なうことである。

 本連載で述べたように、原油価格の下落によって、本来であれば、実質所得が増加し、消費税増税をはるかに上回る経済効果が実現できるはずである(「資源価格下落は日本への未曾有のボーナス」)。

 実際、原油価格下落は、消費者物価にはある程度の影響を及ぼしており、消費者物価の上昇率は低下した。この結果、2015年の夏ごろには実質賃金の伸びがそれまでのマイナスからプラスに上昇した。しかしその後は、再びマイナスに転じており、その結果、実質消費が減少して、10〜12月期の実質GDPがマイナスになった(「実質賃金低迷でマイナス成長 明白になったアベノミクスの破綻」)。

 このように原油価格下落の影響を完全に消費増加に反映できないのは、輸入価格の下落が原材料価格の下落を通じて企業の利益を増やし、そこで止まってしまっているからである(「資源価格下落の利益が企業の内部留保に吸収されている」)。

企業の内部留保を支出に回すには
法人税を増税するしかない

 つまり、マクロ経済的に見て本当の問題は、企業が利益を増大させ、それを内部留保という形で貯蓄していて、支出に回っていないことである。

 この状態を変えるには、法人税を増税して、他に回すしかない。だから、法人税を増税して消費税増税を延期すればよい(所得税を減税することでもよい)。

 こうすれば、社会保障支出増は、法人税の増税によって賄われることとなる。

 他方で、法人税の増税は内部留保を減少させるだけであるから、総需要を減少させる効果はないだろう(「法人税を減税しても企業は内部留保を増やすだけ」)。

 また、円安や資源価格低下による利益増は、企業の自己努力の結果ではないから、それを増税で吸収することは、公平の観点からも望ましいことだろう。

 上で述べたように、消費税増税の延期だけでは、財政再建努力の放棄と解釈され、日本の国債に対する信頼性を著しく失墜させるだろう。しかし、この方策によれば、こうした問題は生じない。

 ただし、問題は、自民党政権が法人税の増税を行なうとは、とても考えられないことである。

 したがって本来であれば、野党勢力がこのような政策を提言すべきだ。しかし、そうした野党は現れない。これこそが、日本の政治の大きな問題だ。
http://diamond.jp/articles/print/87272



山田厚史の「世界かわら版」
【第104回】 2016年3月3日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

消費増税見送りはもはや既定路線、その先は旧態依然の公共事業か

世界20ヵ国の財務相と中央銀行総裁が上海に集まった。声明が発表されたが、新味ある政策はなかった。確認されたのは、金融政策では不安な世界経済に対処できない、ということだった。

財政を含めた可能な限りの政策が必要とされた。自国通貨を安くして輸出を増やし、他国に負担を押し付けあう「通貨安競争は避けよう」と戒めがなされた。


増税を見送り、行き着く先は公共事業などの財政出動になってしまうのか(写真はイメージです)
声明は心構えを謳っただけ。何をするかの合意はない。具体策は各国の宿題になった。

財務省は頭を抱える。財政出動を求める声が噴き出すことは必至だからだ。首相官邸はほくそ笑んでいるという。「消費税10%見送り」は首相周辺で既定路線になっている。必要なのは、もっともらしい理屈と発信の場だ。動き出したのが国際金融経済分析会合。また首相の私的諮問機関である。

屋上屋の「国際金融経済分析会合」は
消費増税見送りへの露払い役

2016年度予算案が衆議院を通過した3月1日、安倍首相は国会内で番記者に語った。

「5月の伊勢志摩サミットに向け、国内外の経済専門家を集め世界経済を議論する国際金融経済分析会合を設置する」

ノーベル賞級の学者を呼んでご意見をいただくという。意味が分からない。

世界経済を議論する場はG7サミットではないのか。そのための準備は、首相が各国を回り首脳の意見を聞き、方向性を擦り合わせることだ。G7サミットは経済外交の場である。その前に世界から学者を呼んで世界経済を分析する会合を何回か開いて、どうするのか。屋上屋を重ねるとは、このことだ。

「伊勢志摩サミットへの準備」は口実で、本当の狙いは「国内向け」だろう。いかにも役人が考えそうな会合である。

会議は企画された段階で結論はできている。それが霞が関の流儀である。会議で方向を決めるのではない。結論が先にあって、ふさわしい顔ぶれを選び、会合の器をつくる。識者は道具でしかない。

国際金融経済分析会合とやらの結論は「世界経済は厳しい、各国は協調して対処しなければない。そんな時に消費税増税など景気を冷やす政策は取るべきではない」となるだろう。役人が提言書にそれを書き込み、記者会見して発表する。大事なのは、振り付けにそって議事進行できる「御用学者」の人選だ。その際、まともな意見をいう識者も混ぜる。役人言葉で「暴れ馬」。こういう人からも意見を聞きました、とアリバイを作るが、書き置くに留める。

段取りが出来上がったから首相の「立ち話」で書かせた。読売新聞は一日先にスクープしている。日ごろ首相に好意的な紙面づくりで協力している「ご褒美」、ネタ元は官邸番の記者を仕切る某秘書官、というのが取材関係者の見立てだ。

政権の世論操縦術が透けて見える。不人気な増税を下ろし、「安倍政権は経済再生に全力を挙げています」と印象付ける。視野にあるのは7月の参議院選挙だ。

日経新聞調査でアベノミクス
「評価しない」が50%の衝撃

本当のところは、経済再生どころか、経済政策の再建が迫られているのが安倍政権の実情である。

日経新聞が2月26〜28日に行った世論調査でアベノミクスを「評価しない」と答えた人が50%あり、「評価する」の31%を大きく上回った。

アベノミクスを評価してきた日経が調べた数字だけに、官邸もショックだったという。

メディアを使って笛や太鼓で囃しても、見込み違いの政策は、やがて化けの皮が剥げる。鬼面人を驚かした黒田緩和は、為替相場を円安に導き株価を上昇させたが、効果はそこまでだった。

日本経済の表層を温めはしたが、景気の原動力である個人消費も設備投資も伸びず、公約に掲げた物価上昇は果たせず、GDPも停滞したまま。

大企業が儲かれば恩恵は下々にも滴り落ちる、というトリクルダウンも起きなかった。

通貨発行を膨張させれば、インフレ期待が高まり、投資や消費が誘発されるという仮説も立証できなかった。安倍政権は3年やって分かったことだろう。

マイナス金利はどん詰まりになった経済運営の窮余の一策だった。日銀が銀行に注入した200兆円余の資金は、日銀にある金融機関の当座預金に眠ったままである。市場にカネは出回っていない。「ブタ積み」と呼ばれるマネーの滞留が起こるのは0・1%の金利を付けていることにも一因がある。というわけでマイナス金利にして追い出しにかかった、というのが真相だ。

さりとて資金需要がないところにカネは向かわない。マイナス金利は銀行の経営を圧迫するだけ、という見方から株式市場までネガティブに反応した。海外からも「日本のマイナス金利は通貨引き下げ競争を誘発しかねない」という批判が上がった。黒田緩和は完全に行き詰まった。

メディアが従順で、真っ当な批判記事を書かないからアベノミクスの神話は「株高」にすがり延命していた。だが市場の変調で状況は変わった。「支持しない」の増加は、世間の目が覚めたことの表れではないか。

ブレーンに本音を代弁させる異常な姿
消費増税見送りはもはや既定路線

第一の矢は的から外れた。第二の矢・機動的な財政運営に力点が移る。だから財務省は焦っている。

「2020年までに財政の基礎収支(プライマリーバランス)をゼロにする」を金科玉条にしてきた。安倍政権がスタートした時、公共事業をてんこ盛りにして協力したのは「短期決戦なら」という方針があったからだ。

裏には「増税路線の堅持」がある。第一次安倍政権で秘書官を務めた田中一穂(現事務次官)をパイプに首相に「財政節度」を説き「消費税8%増税」を実施させたまでは成功だった。ところが増税が景気を冷やし、官邸の恨みを買う結果となった。

「財務省に騙された」と首相は怒ったという。以来財務省を信用していないようだ。

2015年10月に予定していた「10%消費税」を、突然繰り延べしたことは財務省不信の表れである。

連載第99回「財務省完敗で消費再増税に暗雲、国債暴落危機が始まる」で書いたように、軽減税率を巡り党税調会長だった野田毅氏を「解任」した一連の出来事も、2017年に延期された「10%消費税」を再延期させる戦術と無関係でない。

http://diamond.jp/articles/-/83745/


2017年からの消費税増税は「リーマンショックや大震災のような事態が起きない限り、確実に実施する」というのが政権の公式見解だが、首相の本音は「再延長」だろう。

「財政をどうする」という国家経営の根幹で政府部内に亀裂が生じ、首相は本音と建前を使い分ける。

本音を代弁するのがブレーンの仕事だ。静岡大教授から政府参与に迎えられた本田悦郎氏は先日の産経新聞で「消費税再増税は絶対にすべきではない。26年4月の8%への引き上げは間違っていた」と語っている。

首相は「確実に実施する」と国会で繰り返しながら、側近は「絶対にすべきではない」と堂々と語る。世論操作のつもりだろうが、異常な姿である。政治家の言葉の軽さがあまりにも悲しい。

取りざたされる見送りの先は
古色蒼然とした財政出動か

株式市場は本音を見透かし、「増税見送り」の先が取りざたされている。

「2016年度予算が決まったら、すぐに5兆円規模の補正予算が組まれる」といったうわさが駆け回り建設株を押し上げた。

G20会合を受け、「政策の総動員」という見出しが各紙に躍るようになった。小渕内閣のころ頻繁に語られた懐かしい言葉だ。

あらゆる手段を使って不況脱出を目指すという方針は、財政出動に傾斜し、小渕さんは「史上最大の借金王」と自嘲気味に語った。

失敗したアベノミクスは、第二の矢である財政出動に頼ることになるのか。自民党からは公共事業の復活を望む声が上がっている。建設業界が頼みにする二階俊博総務会長は財政出動を叫び始めた。7月の参議院、同日選の予想さえある総選挙。政治日程に関心が集まる中で「地方経済」は目も当てられない惨状だ。手っ取り早いのが公共事業だ。

財政は大赤字だがマイナス金利のおかげで国債消化は楽にできる。日銀が買っているから市場による節度は働かない。

国内経済に元気がないから投資が起こらない。企業は海外で稼ぐ。円安にすれば海外で稼ぐ企業は儲かるが、儲けを国内に吐き出さない。労働コストを抑えようと非正規労働者を増やす。実質賃金は下がり消費は振るわない。内需が盛り上がらないから投資しない。

儲けている企業の設備投資も雇用も海外で起こる。これでは日本は衰退だ。人口も減っていく。

目先の景気を煽るなら公共事業の大量投入は即効性がある。札束を燃やして暖をとるようなものだ。覚せい剤中毒のような経済運営はやめよう、と公共事業頼みとは縁を切ったのが21世紀の経済運営だったのではないか。

出口がない黒田緩和の行く末は
財政・金融の同時破綻という恐怖のシナリオ

なにをすればいいのかは、安倍政権でも分かったきた。国内消費を活発にすること。それには国内で雇用を増やし、給与を上げる。長時間労働、労働者の使い捨てをやめる。将来が安心できるセーフティーネットを張る。

言うのは簡単だが、難しい課題ばかりだ。真面目に取り組むなら、政策立案のプロセスから変えなければならないだろう。

経済政策といえば法人税減税や派遣労働の拡大といった、強者の論理に沿った発想を改めることから始めなければならない。

政策の重点分野をどこに置くのか。子育て、介護、子供の貧困、母子家庭、女性の労働環境、高齢者市場……。課題解決を迫っている現場に次の時代の飯のタネが潜んでいる。北欧が安心社会として生産性を上げているのは人口が少ないからではない。若者が国を離れていく社会の危機がバネになって自らが改革に取り組んだからだ。

日本政府は、あれこれ理由を付けて財政を発散させてきた。締めることができないまま、ここまで来た。危機を叫びながら「まだ大丈夫と」政治家も国民も思っている。

放漫財政のお手伝いをしているのが黒田日銀だ。お札を刷って国債を買う機関になった。国債バブルで超低金利を誘い、国の借金コストは極限まで下げている。マイナス金利で借金すると儲けがでる。笑い話のような異常事態が起きている。

行き過ぎた高値が付く国債は、必ず下がる。それは、いつか。可能性が高いのは緩和を止めた時だろう。だからやめられない。

黒田緩和に出口がない。財政・金融の同時破綻というシナリオを我々は覚悟しなければならない。そんな状況が刻一刻と迫っている。

http://diamond.jp/articles/-/87270
http://diamond.jp/articles/-/83745/



田嶋智太郎の外国為替攻略法
2016年03月02日
当面は米・日の株価やドルが一定のリバウンドを試す展開か・・・
足下の市場は全体に少しずつ落ち着きを取り戻しつつあるように思われます。2月11日時点で30を超えていたVIX指数(恐怖指数)は足下で17台まで低下、2月12日時点で一時50を超えた日経平均ボラティリティ・インデックス(VI)も執筆時には31台まで低下しており、市場のリスク回避ムードは徐々に緩んできました。
気になるWTI原油先物価格は昨日(1日)、一時34.76ドル(4月限)まで上昇し、1月28日高値=34.82ドルに迫りました。同水準を上抜ければ、いわゆるダブルボトムの転換保ち合いフォーメーションが完成することとなり、一旦は40ドル台を回復するような展開となることが期待されるようになるでしょう。
一方で、NYダウ平均はすでにダブルボトムを完成しているものと見られます(下図・左参照)。ダブルボトム形成時の値幅が約1,000ドルであることから、同じ値幅をネックライン水準=16,500ドルより上方にとった水準=17,500ドルが当面の目標になると考えるのがセオリーです。米株価が戻り基調にあることを好感し、日経平均株価も重要な節目である25日移動平均線を超える動きとなってきました。
東京証券取引所が先週24日に発表した19日時点の「裁定取引に伴う現物株の買い残高(期近・期先合計)」は、1兆8,380億円と3年4カ月ぶりの低水準になりました(26日時点の状況は本日午後3時30分ごろに発表されます)。振り返れば、昨年12月初旬に日経平均株価が2万円超の戻り高値をつけた当時の買い残高は、一時3兆6,306億円(2015年12月4日時点)という膨大な水準にまで積み上がっていました。
それが、足下では2兆円割れの水準まで減少しているわけですから、そこには「昨年12月初旬以降の株価下落に伴って、投資家が持ち高の整理を相当に進めた」という事実がクッキリと浮かび上がります。結果、むしろ今後は一定の期間に渡って裁定取引に伴う現物株の買い残高が積み上がって行く時間帯になると見通されることになります。
こうした外部環境の下で、ドル/円も再び戻りを試す展開となってきており、目先は21日移動平均線を明確に上抜けるかどうかが大いに注目されます。同水準を上抜けた場合、まずは115円前後の水準が試されることとなるでしょう。115円前後の水準には2月16日高値=114.87円や、1月29日高値から2月11日安値までの下げに対する38.2%戻し=115.06円の節目があり、仮にそうした水準をも上抜ければ次に50%戻し=116.33円が試されるものと思われます(下図・右参照)。

その一方でユーロ/ドルは、前回更新分の本欄で想定したとおり、足下で89日移動平均線を下抜け、昨日(1日)は一目均衡表の日足「雲」上限を一旦下抜ける動きとなりました。日足のRSI(14)が10%を下回るほどの急激な下落となっており、さすがに一旦は下げ渋るものと見られますが、なおも一段の下値リスクに対する警戒は解けません。
このように足下では原油価格や米・日の株価、ドルなどが其々に一定の戻りを試す展開となっています。これは、あくまで当面のリバウンドの域を出ないものと考えられ、4月下旬あたりまでは続く可能性があると見られるものの5月、6月あたりには再び調整含みの展開になってくる可能性もあるのではないかと思われます。昨年8月、9月に市場を混乱させたチャイナ・ショックが年末にかけて一旦引き潮となり、今年の年初から再び押し寄せてきたという事実は今後も念頭に置いておきたいものです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役
前の記事:ユーロ/ドルに一段の下押し圧力がかかる可能性... −2016年02月24日
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2016/03/02.html 

ユーロ/ドルに一段の下押し圧力がかかる可能性...
なおも市場では、原油価格が戻りを試す展開になるとややリスクオン、原油価格が再び軟調になると一気にリスクオフに傾くといった不安定な展開が続いています。今週末に上海で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議において市場安定化に向けた国際協調的な方向性が示されるのではないかとの期待も市場にはありますが、そうした期待が膨らむほど失望の反応が大きく出る可能性もあり、その点は要警戒と言わざるを得ません。
市場を覆うリスクオフの霧が晴れないなか、依然としてドルは円に対して弱含みで推移している状況ですが、そんなドルに対して足下のユーロは一段と弱気に傾いてきており、ユーロ/ドルは今週22日以降、一つの重要な節目である1.1100ドルの水準を明確に割り込みました。前回更新分の本欄で「1.1100ドルを下抜けてくるような展開となれば、そうした流れにつくのも一手」と述べましたが、実際に目下のユーロ/ドルは次の節目である1.1000ドルを試す動きとなってきています。
目下のユーロの弱気材料は、まず3月10日に控える欧州中央銀行(ECB)理事会で追加緩和実施の決定が下されるとの期待が根強くあることで、それに足下のユーロ圏における域内経済の悪化懸念や英国の欧州連合(EU)離脱に対する警戒などが相まって、どうにも積極的な買いは手控えられざるを得ないといった状況を引きずっています。
下図でも確認できるように、昨年10月22日に行われたECB理事会で追加緩和実施の方向性が示されてからユーロ/ドルは大幅に下値を切り下げる展開となりました。しかしながら、昨年12月3日に行われたECB理事会で決定された追加緩和の内容が市場の期待していた内容に遠く及ばなかったことから、それ以降、ユーロ/ドルが大きく値を戻す展開となったことは記憶に新しいところです。

昨年12月のECB理事会後にユーロ/ドルは一旦、重要な節目である1.1000ドル台の水準まで値を戻しましたが、以降は2月初旬まで長らく200日移動平均線(200日線)や一目均衡表の日足「雲」上限、89日移動平均線(89日線)などに上値を押さえられる展開を続けました。それら複数の上値抵抗を一気に上抜けることとなったのは2月3日で、この日は米1月ISM非製造業景況指数の弱い結果やダドリーNY連銀総裁の超ハト派発言などに市場が過剰に反応し、一気にドル安が進んだ結果としてユーロを大きく押し上げるムードが一旦強まりました。
ユーロ/ドルは2月11日に一時1.1376ドルまで上昇して反落。これは昨年3月半ばあたりから10月下旬まで中期的に形成されていた上昇チャネルの下辺(サポートライン)の延長線に到達したことも一因と考えられます。やはり、こうした重要な節目はときに上値抵抗や下値支持として立派に機能するものであり、その意味では目下のユーロ/ドルが再び200日線を下抜ける動きとなってきたことも大いに注目すべきでしょう。
その時々の節目、節目を試しながら展開する相場は、次に89日線や日足「雲」を強く意識することとなる可能性もあります。1月21日に行われたECB理事会後の会見でドラギ総裁が「3月の理事会で政策を再評価する」と述べたことで、当然、市場はECBの大胆な意思決定に期待しています。少なくとも3月のECB理事会が行われるまでは、ユーロ/ドルに一段の下押し圧力がかかる可能性もあり、その点は注目しておきたいところです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役
前の記事:ドル/円は一定の戻りを試すも依然上値は重い・・・ −2016年02月17日
次の記事:当面は米・日の株価やドルが一定のリバウンドを試す展開か・・・ −2016年03月02日
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2016/02/24.html 


米SF連銀総裁、引き続き米経済を楽観
By ALEJANDRO LAZO and MICHAEL S. DERBY
2016 年 3 月 3 日 06:05 JST

 米サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は2日、このところ市場が混乱したが、米経済の根本的な見通しは変わりないとの見方を示した。

 FRBが3月の連邦公開市場委員会(FOMC)でどうすべきかについての考えは明かさなかったが、年内に追加利上げする条件はまだあるとし、「景気過熱を続けすぎたくない」と述べた。景気過熱が長すぎればインフレ水準が高まりすぎたり資産バブルを生んだりする可能性があるため、「パーティーが盛り上がってきたときに(お酒の入った)パンチボウルを片付ける必要がある」と話した。

 ウィリアムズ総裁はカリフォルニア州サンラモンでの講演で、金融市場の勢いが衰えて見通しの懸念が強まった今も楽観的な見方を変えておらず、「全体的な構図は根本から変わっていない」と語った。直近の情勢で「利上げするかしないか、その時期がいまかどうかがずれる」かもしれないが、「大本の質的な動向は変わっていない」と述べた。

 最近の情報を考慮したが、「12月にわたしが示した経済成長および失業率の見通しとは0.1ポイント以内の違いで、基本的に同じ見通しになった」と話した。

 ウィリアムズ総裁は講演終了後に記者団に対し、15・16日のFOMCでFRBが下すべき判断については発言せず、「単独の会合をその他の会合より重視することはしていない」とした上で、「わたしが重視しているのは、どのような決定をしようとも、それが(経済指標主導の政策判断という)基本戦略に矛盾しないようにすることだ」と述べた。



米地区連銀景況報告:経済活動は大半の地区で拡大

米アーカンソー州ベントンビルのウォルマート店舗の様子(昨年6月)。米FRBが公表した最新の地区連銀景況報告(ベージュブック)では、全米12地区のうち過半の地区で景気拡大が確認された PHOTO: DANNY JOHNSON/ASSOCIATED PRESS

By ANNA LOUIE SUSSMAN and BEN LEUBSDORF
2016 年 3 月 3 日 04:35 JST

 【ワシントン】米連邦準備制度理事会(FRB)が2日公表した地区連銀景況報告(ベージュブック)によると、個人消費の増加と雇用市場の引き締まり、そして力強さを増す住宅部門が支えとなり、米経済は大半の地区で拡大した。

 地区別の経済情勢をまとめたこの報告では、全米12地区のうち過半の地区で景気拡大が確認された。

 今回の報告は1月初旬から2月22日にかけての経済活動について事例報告をまとめたもの。前回報告より景気拡大が加速した地区は少なかったものの、全国の調査対象者が「将来の経済成長におおむね楽観的」な見方を示した。

 米国内総生産(GDP)の3分の2を占める個人消費は大半の地区で増加し、フィラデルフィア、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコの各地区ではまずまずの伸びとなった。ただ、いくつかの地区では消費者が「支出に消極的」と見られ、金融市場の変動や景気の不透明感、借り入れ拡大への消極姿勢が要因として考えられると指摘した。

 2015年に過去最高となった自動車販売はさらに上向いたが、状況は地区によりまちまちだった。

 雇用市場は過半数の地区で緩やかに拡大した。人材派遣の需要が高まり、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランドの各地区で一段と活発になった。7つの地区は熟練労働者を捜すのが困難と報告した。

 地区により、賃金の伸びは横ばいないし強いと分かれた。セントルイス地区では賃金水準が1年前の水準を上回ったと答えた調査対象者が56%に達し、その割合は過去2年で最高となった。大半の地区で賃金は横ばいだった。

 住宅不動産の販売は、通常の季節変動による弱さを反映したニューヨークとカンザスシティーを除き、全地区で増加した。住宅在庫は大半の地区で少なくなっているが、住宅建設は前述の2地区を除く全地区で増加した。

 観光産業は大半の地区で堅調さを増したが、ニューヨーク地区ではホテルの客室稼働率が1年前の水準を下回った。

 商用不動産の販売・賃貸は総じて横ばいもしくは拡大した。

 借入需要は12地区のうち9地区で拡大し、ニューヨークとカンザスシティーの両地区はまちまちもしくは横ばいだった。信用の質は安定的で、与信基準も大半の地区で横ばいを維持した。

 内需部門は安定していたが、海外事業比率が高い部門の一部は資源安と海外景気の減速、ドル高の影響を被った。

 資源安が農家の収入を圧迫し、農業部門は横ばいもしくはやや減速した。ドル高で農産品輸出も減速した。

 エネルギー部門の活動は大半の地区で一段と縮小した。石炭生産の減少と石油・ガス業界のさらなる低迷が要因。

 製造業の情勢はまちまちだった。8つの地区はエネルギー部門の需要の弱さが響き、製造業部門に「著しい逆風」になったと指摘した一方、4地区は製造業の成長に明るい見通しを示した。

 FRBは3月15・16日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。FRB当局者は経済指標が早ければ3月にも追加利上げに踏み切る裏付けとなるかどうかで見方が割れており、一部の当局者はこれまで発表されたまちまちな国内指標と海外経済の問題を受けて慎重を期すべきと主張する一方、利上げを長く待ち過ぎることを警戒する向きもある。
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金融規制強化に反発するトランプ氏
By JACOB M. SCHLESINGER
2016 年 3 月 3 日 05:29 JST

 「スーパーチューズデー」に7州で勝利し、共和党の大統領候補指名争いをリードする実業家のドナルド・トランプ氏だが、曖昧な政策の穴を埋めるための努力が急ピッチで進められている。 

 金融規制について言えば、直近数カ月のインタビューから明確な姿勢がうかがえる。つまりは金融規制を嫌っているのだ。大統領に就任すれば、金融危機後から導入されたさまざまな枠組みを巻き戻す意向を示している。

 トランプ氏は昨年10月、米テレビ局フォックス・ビジネスのキャスター、スチュアート・バーニー氏に対し「ドッド・フランク法(米金融規制改革法)を撤回しなければならない」と語った。「銀行が人々に必要な金を貸していない。(中略)規制当局が銀行を動かしている」との見方だ。

 トランプ氏は大衆迎合主義的なキャンペーンを展開し、既得権益層の破壊や、金融危機後の緩やかな景気回復から取り残された労働者階級に活力を与えることを強調してきた。こうした中で、金融業界に好意的な立場はあまり注目されてこなかった。同氏のウェブサイトで触れられている経済問題は対中貿易と税制改革の二つだけで、金融規制への言及はない。

 金融業界のバッシングで候補者が競い合う民主党とは対照的に、共和党でこの問題が争点になることはほとんどない。フォックス・ビジネスとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が昨年11月に共催したテレビ討論会では、共和党でも金融をめぐる話題が注目された。他の候補者が意見を交わす一方、この時のトランプ氏はいつもと違って静かだった。

 トランプ氏自身は金融規制の話題を避けてきたものの、立候補してから何度か質問を受けたことはある。その回答は一貫している。8月には米誌タイムに「ドッド・フランク法はビジネスを窒息させる。完全に息の根を止める」と話した。

 米紙ザ・ヒルに対しては10月、ドッド・フランク法を「ひどい」と形容し、「銀行員が規制当局を前に身をすくませている」と述べた。

 フォックス・ニュースのブレット・バイアー氏は今年1月、「政府が今していることの中で、そもそもなすべきではないことを一つ」挙げるようトランプ氏に求めた。トランプ氏はこれに対し「銀行の規制で行き過ぎている。(中略)ドッド・フランク法は多くの面で災難だ」と答えた。

 同じような立場に立つ共和党候補者は他にもいる。マルコ・ルビオ上院議員やテッド・クルーズ上院議員もウェブサイト上で反対を表明しており、クルーズ議員は「ドッド・フランク法を撤回する必要がある」としている。

 金融規制をめぐるトランプ氏の見解で、銀行業界からの支持を取り付けられるとも限らない。中国やメキシコとの貿易戦争も辞さない構えや移民排斥など、別の分野での突拍子もない発言や政策姿勢で同業界でも怒りを買っている。

 ただ金融規制に関する発言が示す通り、トランプ氏が実際に意図するところは、演説で使う言葉ほど共和党の主流と違わないのかもしれない。
http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MW056_galsto_M_20160301144221.jpg

経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
【第201回】 2016年3月3日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
「タンス預金」急増はマイナス金利のせい?
国民の不安な深層心理を読む
熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

筆者の試算では、足もとの銀行券発行残高92.5兆円のうち44%がタンス預金になっている。マイナス金利への不安がタンス預金に流れているのか
 タンス預金が急増している。2016年1月末時点での銀行券発行残高は92.5兆円。筆者の試算ではその中の44%に相当する41.7兆円がタンス預金になっていると推定する(図表1、2参照)。

 タンス預金とは、家計などが金融機関には預けずに、自分で保管している現金のことである。タンスに入れて保蔵するから「タンス預金」なのだ。実際は、金庫の中にしまっていることが多く、最近は家庭用金庫の販売が活況を呈しているらしい。盗難リスクに備えて、ざわざわ高額の金庫を買ってまで、利息のつかない現金を抱え込む行動は奇異に見える。


(注)タンス預金の推計は、1995年以降、千円札の伸び率を上回って、1万円札の伸び率が高まった分を残高で累積させて計算した 拡大画像表示
相続税強化とマイナンバーに続き
マイナス金利への不安も影響か?

 過去、タンス預金が急増したのは1997年から2003年頃までの時期であった。金融不安によって、自分の預貯金がどうなるかわからないという不安の時代に、タンス預金が増えた。2000年代後半のタンス預金残高は、平均26.6兆円だった。

 その後しばらくは、タンス預金は増えずに横ばいだった。それが2015年初くらいから目立って伸びている。現在の41.7兆円は、金融不安時の1.5倍以上に膨らんでいる計算だ。今は金融不安でもないのに、なぜ人々はタンス預金に走るのだろうか。

 1つの理由は、相続税強化に対する反応だろう。2015年1月から相続税課税が強化された。基礎控除が一気に4割も縮小されて、今まで課題対象ではなかった人が不安になった。すると、自分の資産が将来の課税対象になるのではないかと感じる人が多くなり、その中で資産の一部を現金で持とうとする人が増えたということだろう。

 さらに、2016年1月からマイナンバー制度が運用開始となる。前年に相続税が強化され、すぐにマイナンバーが始まったことは、大口の資産家に警戒心を与えたのだろう。現金保有の増加は、自分で資産を管理したいという気持ちを抱く人が急増したことを反映している。

 巷では、マイナス金利を日本銀行が導入したことで、一段とタンス預金が増えるのではないかという観測がある。まだ、銀行券の統計データで十分な裏付けは行われていないが、銀行券発行残高(平均残高)の前年比は、2016年1月は6.2%、そして2月は6.6%と若干ながら伸び率を高めている。マイナス金利の導入が1月29日だったので、2月の伸び率の高まりには、マイナス金利を意識した現金保有増加がいくらか確認されるという見方もできる。

マイナス金利が現金の保有動機を
高めている主因ではない

 一方、筆者は、日銀のマイナス金利政策が、現金の保有動機を高めることを合理的には説明できないと思う。教科書的な説明をすると、個人の預貯金金利がマイナスになることは考えにくいからだ。そもそも、預貯金には基本的に元本保証がある。手数料はともかく、1年ごとにマイナスの利息が預金元本に適用されて、元本まで目減りするのは、元本保証に反するように思える。

 筆者は、仮にマイナス金利導入が多くの国民に不安を与えたと考えるのならば、それが掟破りだったところにあるのではないかと思う。今までゼロ%よりも下がらないと信じられていた金利水準が、マイナスにされてしまうというのは、多くの国民には奇想天外に見えただろう。日銀自身がサプライズを演出しているので、驚きが不安心理に結び付いたとしてもおかしくない。

 深く考えると、マイナス金利は、資金運用をする側から、資金調達をする側への所得移転である。わが国の財政再建は厳しい状態にあるから、国債の利回りをマイナスに変えてまで、債務膨張の勢いに歯止めをかけなくてはいけない。財政再建が厳しくなると、金融機関にダメージがあるかもしれないマイナス金利政策を、唐突に採用するような出来事も起こるという不安が想起された。筆者は、裏側にわが国の財政不安があるから、先の読めない金融政策が行われると、国民の間にある防衛意識を刺激するのではないかと考える。

財政再建に霧がかかっていることの
裏返しとしてのタンス預金

 日銀のマイナス金利は、安全資産の代表格である国債の立場を脅かすものである。国債の利回りがマイナスになることは、国債で運用する金融機関の収益にもダメージを与える。間接的に、預貯金の安全性にも悪影響を与えかねない。

 問題は、国債の利回りをマイナスにするほど、財政再建が厳しくなっていることである。最近まで景気拡大が進んで税収が増えたことが、財政再建の展望を明るくしていたはずなのに、ここにきて2017年4月の消費税率10%を予定通りに実行するかどうかを、条件付きで吟味しようという話題が出てきている。これは、財政再建への信頼感を揺さぶる話である。

 結局、消費税を増税しないで、巨大な政府債務を支払うことになるのは誰なのだろうかと考えるときに、最も不安を感じるのが大口の資産家なのである。さらに、相続税のような資産課税が強化されるのではないかとか、マイナス金利政策以外にも想定外の施策が実施されてその影響を受けるのではないか、と心配する。

 むろん、自分自身で金庫に現金を入れて、タンス預金をすることが、資産の安全性を万全にするわけではない。ただ、自分自身で資産を管理できることが、不安の緩和になると思っている人は少なからずいるのであろう。

 従来は、財政再建が行き詰ると、インフレが来るとか、長期金利が上昇するといった危機説が唱えられてきた。しかし、今は物価上昇率は2%にはほど遠く、長期金利は日銀ががっちりとコントロールしている。ただし、想定された危機シナリオを封印する対処が行われても、やはり完璧な危機管理はできないのではないか、という不安心理を拭い去ることはできない。

「地道に消費税率を上げて、歳出抑制を我慢強くするしかない」という真っ当な財政再建のシナリオへの信認が揺らいでいることが、多くの人に不安を感じさせ、タンス預金に走る人が増えているという深層心理があるのではないか。
http://diamond.jp/articles/-/87203


コリア・ITが暮らしと経済をつくる国
【第5回】 2016年3月3日 趙 章恩 [ITジャーナリスト]
北朝鮮情勢に揺れる韓国のIT産業
“地政学の影響力は日本以上”の経済事情
韓国と北朝鮮の歩み寄りの象徴として、2000年初頭の合意以来、両国によって共同運営されてきた「開城工業地区」が突然閉鎖された。アパレル産業中心、かつ生産量もわずかなこの工業地区の閉鎖が、実は韓国のIT産業全体の大きなダメージにつながるという。それはなぜなのか。

北朝鮮との共同運営
工場地区が突然閉鎖


北朝鮮との関係は、韓国のIT産業にも大きく影響する ©PIXTA_6121186
 2月7日、北朝鮮が行った「人工衛星打ち上げ」は、事実上のミサイル発射だとして、韓国政府はもちろん、日本やアメリカ、中国の各国政府も、同国に対する非難声明を出したことが報じられた。

 年初に行った核実験に間髪を入れないタイミングでもあっただけに、北朝鮮に対する国際社会の批判が高まるのも当然である。

 だが、韓国の国民の間に衝撃が走ったのはむしろ、この出来事を契機に、2月10日をもって、開城(ケソン)工業地区が無期限で閉鎖されてしまったことだった。ミサイル発射直後の2月第2週、韓国のツイッター上では、「開城工業地区」というキーワードが最も多くツイートされた(2月16日付中央日報)ことからも、その関心の高さがうかがえる。

 開城工業地区は、韓国と北朝鮮の境にある北朝鮮の特区・開城に設けられた工業団地であり、2000年6月に南北首脳会談で合意され、両国の歩み寄りの象徴として建設が進み、2016年2月の時点でアパレルを中心とする韓国企業124社が参画。北朝鮮の労働者が98%を占めていた。

 2004年から14年までの10年ほどで、同工業地区で韓国が得た経済効果は累計で32億6400万ドルといわれる。韓国の14年の名目GDPはおよそ1兆4000億ドルなので、表向きの数字を見る限り、同工業地区の国の経済への影響は、決して大きくないように見える。

 しかし、韓国人が本当に懸念しているのは、開城工業地区の閉鎖が、韓国が国を挙げて育てようとしているIT産業の成長を妨げてしまうことになりかねない、ということだ。アパレル中心、経済効果も大きくない工業団地の閉鎖が、なぜ、IT産業全体に影響を及ぼすというのか。

 それは、韓国人が無意識のうちに持ち合わせているある認識が、今回の工業地区閉鎖で覆されたことと、現在の韓国IT産業の構造を併せて考えると明確になってくる。

北朝鮮情勢が韓国IT産業
に与えるシビアな影響

 韓国の主たる敵国は北朝鮮だ。敵と陸続きで隣り合わせである以上、停戦中とはいえ韓国は常に軍事的緊張から解放されない。ところがその一方で、開城工業地区のような南北経済協力事業が10年以上継続していたということが、国民に、「まさか、北朝鮮は韓国に直接危害を加えることはないだろう」という認識を与えていたのも事実だ。

 それが、開城工業地区に工場を持つ124社に、多大な損失が発生することが分かっているにも関わらず閉鎖が断行されたことで、国民の間には「いよいよ……」という安全への懸念と同時に、「世界からの国家信用に大きなダメージを受ける」という不安が広がって行ったのだった。

 韓国のIT産業は、大半が海外マーケット向けの製品・サービスだ。また、アジア初のベンチャーインキュベーションセンターをソウルにオープンしたグーグルや、韓国スタートアップ企業への投資計画を発表したクアルコムのように、ウェアラブル、ヘルスケアなど、韓国の新しいIT事業分野に投資する海外の企業も多い。

 北朝鮮との関係における地政学的リスクは、韓国IT企業の輸出先や海外の大口投資家(企業)に大きな不安を与える要因だ。国際信用評価機関のムーディーズは2月15日、「南北の和解の象徴であった開城工業地区の稼働中断は、韓国の国家信用に否定的条件」という趣旨の分析を行った。

 このことで、直ちに韓国の国家信用等級が下がることはないと見られているにしても、1月18日、未来創造科学省が「2016年度国家情報化施行計画」を発表し、今年は、8105件の事業に、前年比3.3%増の総額5兆3804億ウォン(2016年2月29日時点で、約4826億円)を投資すると発表した矢先のことだけに、国際的な信用が下がる事態は回避したいところだ。

 韓国は、1970年代から情報化で世界の先端を行く国家の建設を目指し、1996年からは、5年区切りで「情報化促進基本計画」を実施してきた。5年というのは大統領の任期に相当し、政権が変わるたびに基本計画も変わる。

 今年は、2013年から始まった「第5次情報化促進基本計画」の途上であり、「IoT(物のインターネット)」「クラウド」「ビッグデータ」「既存産業とICT融合」の4分野に集中した投資が行われている。

地政学的リスクが少ない
日本はもっとITを世界に

 私が日本に住んでいて思うことの一つは、「日本は、韓国に比べて直接的な地政学的リスクが少ない」ということだ。さらに、日本の人口は、韓国の人口(5029万人)の2倍以上であるため、韓国に比べて内需も断然大きい。

 よって、韓国企業が、常に海外からの評価や海外市場の動向に左右されながらビジネスを回しているのと比べると、より長期的に安定した計画が立てられているように感じる。これはとても羨ましいことだ。

 加えて、韓国では、大統領の任期である5年で全ての政策が変わる。IT産業政策もしかりであることは、さきほどの「情報化促進基本計画」が象徴している。国家主導でIT産業が推進される反面、政権ごとに成果を出そうとすることから、国内で「すぐに結果が出るITサービスの実証実験ばかりが繰り返されている」という批判も起こっている。

 北朝鮮との融和策の裏には、実は産業発展の長期計画を立てるために国防費を減らし、その分をIT産業に投資して経済を活性化するという狙いもあったが、開城工業地区の閉鎖によって、それがこれからどうなるかが分からなくなった。

 今後国防費が増え、IT産業への投資が減っていくのでは、という懸念も国民の間に高まりつつある。

 私は、日本は、世界的に見ても安全面では相対的に安定した国だと思う。少なくとも、韓国のような形で地政学的リスクによってIT産業が揺れることは、ほぼないと考えられるだろう。

 その利点を生かして、日本だからこそ実現できる長期のITプロジェクトや、独自のおもしろいアイデアが生きるIT関連サービスやデジタルコンテンツを積極的に生み出し、海外にも広げていってほしいと思うのだ。

http://diamond.jp/articles/-/87104


米国株式市場は続伸、エネルギー株と銀行株が上昇
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米国株式市場は続伸した。エネルギー株と銀行株が買われて相場をけん引した。市場予想より強い内容だったADPの全米雇用報告を受けて米経済の健全性をめぐる懸念が和らぎ、株価を下支えした。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 16899.32 +34.24 +0.20 16851.17 16900.17 16766.32 .DJI

前営業日終値 16865.08

ナスダック総合 4703.42 +13.83 +0.29 4683.80 4703.58 4665.93 .IXIC

前営業日終値 4689.60

S&P総合500種 1986.45 +8.10 +0.41 1976.60 1986.51 1968.80 .SPX

前営業日終値 1978.35
http://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN0W42SI

ドル弱含み、金融政策の不透明感などで利食い売り=NY市場
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 終盤のニューヨーク外為市場では、ドルは対円で下落し、対ユーロではほぼ横ばいとなった。朝方発表された2月の米ADP民間雇用者数が予想を上回る増加でドルが買われたが、米国と海外の金融政策の違いが継続するかについて懐疑的な見方もあり、ドルは上昇分を削った。

原油価格が経済や金融政策に及ぼす影響を計りかねる中、4日発表の米雇用統計を控え、利益確定のドル売りを指摘する声もあった。

ドル/円 NY時間終値 113.37/113.40

前営業日終値 113.90

ユーロ/ドル NY時間終値 1.0861/1.0867

前営業日終値 1.0868
http://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN0W42SO


米国株:上昇、銀行株やエネルギー株の堅調続く−景気先行きを楽観
2016/03/03 06:26 JST

    (ブルームバーグ):2日の米国株は上昇。銀行やエネルギー株は続伸した。経済統計の発表を受けて景気に対する楽観が強まった。
ニューヨーク時間午後4時過ぎの暫定値では、S&P500種株価指数は前日比0.4%高の1986.36 。ダウ工業株30種平均は34.24ドル(0.2%)上げて16899.32ドル。
シェーファーズ・インベストメント・リサーチのシニア株式アナリ スト、ジョー・ベル氏は「前日で短期的な抵抗線を大きく抜けた」と述べ、「今後も経済統計の内容が改善されると仮定して、それが金融政策当局の決断にどのように影響を及ぼすのかを見るのは興味深い。投資家は追加利上げのペース加速を口にし始めている」と続けた。
原題:U.S. Stocks Fluctuate Near 8-Week Highs as Banks Continue Rally(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Joseph Ciolli jciolli@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Jeremy Herron jherron8@bloomberg.net Anna-Louise Jackson, Camila Russo
更新日時: 2016/03/03 06:26 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3FK2DSYF01X01.html

米経済の拡大は総じて続く、状況はまだら模様=地区連銀経済報告

[ワシントン 2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が公表した地区連銀経済報告(ベージュ・ブック)では、1月初旬から2月下旬にかけて米経済活動は大半の地区で引き続き拡大したものの、地域やセクター内で状況には著しい開きが見られたとの認識が示された。

今月15、16の両日には今後の金利動向を決める連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれるが、報告で描かれた米経済の姿は決定的にまちまちで、政策当局者の頭を悩ませることになりそうだ。

報告によると、消費支出は過半数の地区で増加した。ドル高やエネルギー分野の需要の弱さ、悪化する世界経済の見通しが重しとなる中、製造業の活動は横ばいだった。

昨年12月の利上げに踏み切った後、FRBはこれまで追加の金利引き上げを見送っている。世界経済の減速や金融環境のひっ迫、インフレ期待の低下が米経済に及ぼす影響を見極めるため、FRBは今月も利上げをしない可能性が高い。

報告によると、労働市場の状況は改善を続けたが、賃金の伸びには地区によって「大きな差があった」とされた。自動車販売も水準は高かったものの、その内容には「著しい違いがあった」とされた。消費者物価は総じて横ばいだった。

FRBは昨年12月の段階で、2%の物価目標達成に向けた明らかな前進があることを、追加利上げの条件の一つとしていた。

クリーブランドやボストン、シカゴの各地区の調査先は、市場の乱高下を警戒した消費者が支出を手控えるようになったと報告。ボストンとシカゴの両地区は、ガソリン安の恩恵を受けているにもかかわらず消費支出が伸びないことに「失望」を表明した。

シカゴ連銀は「世界経済の減速に対する懸念は株価の下落や資産担保証券のスプレット拡大、金融市場の不透明感の増大を招いた」とも指摘した。ダラス連銀も市場と金融政策に関する先行き不透明感が「2016年の経済成長の見通しに対する懸念をもたらした」とした。

融資基準は大半の地区で変化がなかったとされた。フィラデルフィア連銀は基準が若干引き締まったと報告。特にエネルギー関連産業に対して、そうした変化がみられたとした。

賃金が総じて上昇したことは、FRBにとって明るい兆しといえる。セントルイス連銀は過去2年で最も大幅な賃金の伸びだと報告した。ただ、他のいくつかの地区は賃金上昇圧力が弱まっているとした。

今回のベージュブックはカンザスシティー連銀が2月22日より前の情報を基にまとめた。

http://jp.reuters.com/article/usa-economy-beigebook-idJPKCN0W42I6sp=true


米地区連銀経済報告:景気は拡大−賃金の伸びはばらつき見られる (1)
2016/03/03 05:59 JST

  (ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)が2日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によれば、米国では大部分の地域で景気の拡大が続いた。一方で賃金の伸びは「横ばいから力強い」とされ、地域によってばらつきが見られた。
ベージュブックによれば12地区のうち7地区が景気は「緩やかに」、「緩慢なペースで」もしくは「若干」拡大したと説明した。
製造業はまちまち。ドル高や「世界の見通し悪化」が海外の売上高に大きな悪影響を及ぼしており、厳しい状況が続いていることが示された。
賃金については全般的には年初以降に増加したものの、ペースは地域ごとにばらつきが見られた。
カンザスシティー、リッチモンド、アトランタの各地区は「賃金の伸びは横ばい」と説明。一方でセントルイス地区は、調査先全体の56%が賃金の増加を報告した。これはここ2年で最も高い水準。
また賃金の伸びは労働者の技能によっても大きな違いが出た。7地区では、高い技能を持つ労働者について賃金の伸びが明確に示された。一方で5地区では技能のより低い、もしくは入門者レベルの労働者で賃金の伸びが認められた。
ベージュブックでは、大部分の地区で「労働市場は緩慢に拡大」とされた。東海岸や中西部を中心に7地区では高い技能を持つ労働者を見つけるのが困難だったと報告。クリーブランドとリッチモンドの両地区では、低いレベルの職種でさえ「採用がますます困難になりつつある」と説明した。
個人消費は過半数の地区で増加した。自動車販売は「高い水準」を維持。融資需要は大部分の地区で増え、信用の質や信用基準は引き続き安定していたとされた。
今回のベージュブックは、1月初めから2月22日までに集めた調査結果を基にまとめられた。
原題:U.S. Economy Expands With Wide Range of Wage Growth, Fed Says(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3FF3OSYF01T01.html


米国債:続落、予想上回る民間雇用者数の増加で利上げ観測強まる
2016/03/03 05:41 JST

    (ブルームバーグ):2日の米国債相場は続落。10年債利回りは約3週間ぶりの高水準を付けた。2月の民間雇用者数の伸びが予想を上回ったことから、年内利上げの観測が強まった。
金融政策見通しに特に敏感に反応する2年債利回りは、約1カ月ぶりの水準に上昇。市場でのインフレ期待指標である10年物ブレークイーブンレートは9営業日連続で上昇し、ほぼ2カ月ぶりの高水準に達した。
前日には製造業の景況指数が市場予想を上回り、米経済が下向くとの不安が和らいだことを背景に、10年債は今年最大の下げとなった。この日はADP民間雇用統計で予想以上の雇用者増が示され、市場では年内の追加利上げを見込んだ取引が活発になった。米連邦公開市場委員会(FOMC)の定例会合は15−16日に開かれる。
RWプレスプリッチの政府債取引担当マネジングディレクター、ラリー・ミルスタイン氏(ニューヨーク在勤)は「かなり大きく動いた」と話す。ADP民間雇用統計を受けて「雇用面での改善が今後も続くとの楽観が広がった。米金融当局の動きとインフレについての織り込み具合を見直す動きがあった」と述べた。
ブルームバーグ・ボンド・トレーダーのデータによればニューヨーク時間午後2時13分現在、10年債利回りは前日比1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の1.84%。日中ベースで2月5日以来の高水準を付ける場面もあった。同年債(表面利率1.625%、2026年2月償還)価格は1/8安い98 2/32。
原題:Treasuries Decline as Jobs Gains Boost Wagers on Fed Rate Move(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3FGO06VDKHT01.html


今年の米利上げ回数、自身の見通し変えず=SF連銀総裁

[サンラモン(米カリフォルニア州) 2日 ロイター] - 米サンフランシスコ(SF)地区連銀のウィリアムズ総裁は2日、米経済見通し、および連邦準備理事会(FRB)が行うべき利上げの回数について、自身の見解を大きく変えていないとの立場を示した。

同総裁は講演後、FRBが年内に実施すべき利上げの適切な回数をめぐる記者団からの質問に対し、「(利上げの回数を)これまで通りとするべきか、1回少なくするべきか、見解を表明するつもりはない」と述べた。その上で「今年は何回の利上げを行うかということは単なる戦術に過ぎない」とし、自身の考えはほとんど変わっていないと話した。

総裁はまた、世界経済の減速や年初からの株式・原油相場の急落により、米景気の腰が折れる、またはリセッション(景気後退)に陥るとは懸念していないとし、米経済に対して明るい見方を示した。サービス部門が製造業部門の落ち込みを補う格好で、米経済は海外経済の弱含みを乗り切るだろうとした。

FRBは1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、経済見通しに対するリスク評価を示す前に、世界経済の動向、およびそれが米経済に与える影響を見極める一段の時間が必要との立場を示した。

ウィリアムズ総裁は「われわれはリスク評価を行なう上で、優秀なエコノミストでも予測専門家でもない」とし、FOMC声明でリスクバランスについて言及しないことが個人的には望ましいとの考えを示した。
http://jp.reuters.com/article/williamz-fed-sf-idJPKCN0W42GE



米原油在庫、3週連続で過去最高 輸入増加=EIA
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が2日発表した週間石油在庫統計(2月26日終了週)によると、原油在庫が増加し、3週連続で過去最高を更新した。

原油在庫USOILC=ECIは1040万バレル増加し5億1800万バレルとなった。増加幅はアナリスト予想の360万バレルの約3倍となり、米石油協会(API)が前日に発表した週間統計の990万バレルも上回った。

原油先物・指標原油の受け渡し地点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫USOICC=ECIは120万バレル増の6630万バレルとなり、過去最高を更新した。

このほか、東海岸の在庫は約12年ぶりの高水準、メキシコ湾岸地域の在庫は2008年8月以来の大幅増となった。

製油所の処理量USOICR=ECIは日量16万7000バレル増。稼働率USOIRU=ECIは1%ポイント上昇した。

ガソリン在庫USOILG=ECIは150万バレル減。予想の110万バレル減を超えて減少した。

留出油在庫USOILD=ECIは290万バレル増の1億6360万バレルとなり、この季節としては2011年以来の高水準となった。予想は120万バレル減だった。

原油輸入USOICI=ECIは日量50万2000バレル増加した。


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