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シャープの本社(「Wikipedia」より/Otsu4)
シャープ、鴻海による救済頓挫か…経営陣、救済される側の感覚欠落で身勝手な要求列挙
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14048.html
2016.03.02 文=鷲尾香一/ジャーナリスト Business Journal
台湾企業・鴻海精密工業(ホンハイ)によるシャープの救済が、“ドタバタ劇”を演じている――。
2月25日、シャープは「第三者割当による新株式の発行並びに親会社、主要株主である筆頭株主及び主要株主の異動に関するお知らせ」を発表し、ホンハイにより救済が行われることを明らかにした。しかし、その日の夕方には、ホンハイ側が「シャープから新たな条件が提示された。この新たな条件を見極める必要があり、いかなる合意への調印も一時的に保留する」とのコメントを出し、交渉は暗礁へ乗り上げた。
第三者割当増資の発表までしておいて、交渉が暗礁に乗り上げるとはどのようなことなのか。通常では考えられないことだ。その内容として、シャープが将来発生するおそれのある債務約3000億円のリストを提示した、と伝えられている。
シャープの高橋興三社長は急遽、ホンハイの郭台銘会長と話し合いを持つため、台湾に向かった。その結果、ホンハイ側が債務リストについて、「大部分はこれまでの協議で明らかにされていないもの」としており、内容を精査する必要があるため交渉期限が延長されたようだ。
そもそも、ホンハイの今回の第三者割当増資における出資総額は、普通株とC種種類株をあわせて合計4890億円に上る。さらに、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が保有している総額2000億円の優先株を鴻海が1000億円で買い取ることになる。さらに、ホンハイがシャープに対して取り決めた額を支払わない場合、デポジット(前払い金)として1000億円を没収できるという内容。銀行保有の優先株買い取り資金まで入れれば、5890億円という巨額の資金になる。
当然、ホンハイ側にすれば、シャープの財務内容については慎重にならざるを得ないだろう。
■“不平等条約”の要求
加えて、第三者割当増資の内容を詳細に見ると、救済される側のシャープが、相当の経営上の条件を付けていることがわかる。たとえば、第三者割当増資の実行後におけるシャープの経営につき、力強いコミットメントが得られたとして以下内容が挙げられている。
(1)経営の独立性
当社およびその子会社の経営の独立性を維持・尊重すること
(2)一体性の維持
当社およびその子会社の各事業の一体的な運営を維持し、当社の希望する第三者との提携についても十分なサポートを提供すること
(3)従業員の雇用維持
既存の従業員の雇用維持という原則にコミットし、組織体制の最適化に関する当社の自律的判断を尊重すること
(4)ブランド価値の重要性
顧客サービスや供給製品への責任を含むブランド価値向上のための努力に関する相互理解のもと、「シャープ」ブランドの価値の維持・向上に資する方法により「シャープ」ブランドを継続使用すること
(5)当社の技術の保持
当社の日本における研究開発・製造機能を維持し、当社のコア技術の流出を防止するため相互に協力していくこと
特に、従業員の雇用維持については、以下について義務が規定される予定としている。
(1)当社の経営の独立性について、株式引受契約に定めるところに従い、法令および取引所規則において許容される限り、最大限尊重し維持すること
(2)上記の目的のため、当社およびその子会社の具体的なガバナンス体制、手続きおよびポリシーについて、当社との真摯な協議を継続すること
(3)当社およびその子会社の事業の一体性を維持し、当社およびその子会社に対し、その事業の処分を行わせるような議決権の行使その他の影響力の行使を行わないこと
(4)自然退職並びに定期的な異動および昇給の場合を除き、当社および当社子会社の従業員の雇用および雇用条件の維持の原則にコミットし、必要人員や組織体制の最適化について当社の経営陣に最大限の自律性を認めることを含め、既存従業員の雇用維持のためのプランを実行すること
(5)当社の技術を、当社およびそのグループ会社内かつ日本国内に保持するために当社と協力すること、また、当社およびその子会社からの技術流出や海外への技術流出を防止するための実効的な手段を構築すること
まるで、不平等条約のような内容だ。約6000億円という巨額の資金を投入しても、もしこれらの条件を真っ当に守ろうとすれば、シャープの経営をコントロールすることはほとんどできないだろう。
経営陣にも手を付けられず、リストラもできず、経営方針の決定もできない。その上、肝心の技術を手に入れることもできないとなれば、ホンハイ側にしてみればなんのためのシャープ救済なのかということにもなろう。ボランティアとしてシャープを救済するわけではあるまい。
となれば、この救済劇は「どうもうまくいかないのではないか」との予感がする。シャープの経営陣には、自らの引責辞任と引き換えに従業員の雇用維持を要求するぐらいの意識が必要だ。同社経営陣には、経営責任と救済される側としての意識が欠如しているのではないか。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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