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米シェール大手7社、昨年の赤字4兆円
産油量なお高水準 サウジなど調整滞る一因
【ヒューストン=稲井創一】地中のシェール層から原油や天然ガスを生産する米国のシェール企業の経営が一段と厳しくなっている。大手7社の最終損益は2015年12月期で計約370億ドル(約4兆円)の赤字に落ち込み、前年の約110億ドルの黒字から一転した。強気の経営は影を潜め、投資を大幅抑制して財務重視に姿勢を転換した。一方、産油量はなお高水準で、サウジアラビアやロシアなど米国外の産油国の生産調整が滞る一因になっている。
原油価格の指標の一つである北米産WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の価格は15年の1年間で約4割下落した。
「足元の1バレル32ドル台ではやっていけない」(デボン・エナジーのデビッド・ハーガー最高経営責任者=CEO)
「生き残るには50〜60ドルへの上昇が必要だ」(パイオニア・ナチュラル・リソーシズのスコット・シェフィールドCEO)
24日には米テキサス州ヒューストンで開催した米国最大の石油業界の会合でシェール企業幹部の悲鳴が相次いだ。デボンとパイオニアは優良鉱区を抱え、生産の効率向上でも主導する大手だ。
24日までに発表された両社を含む米主要シェール企業7社の15年12月期決算は売上高の急減と多額の減損処理で、大幅に悪化した。シェール各社はコスト削減を競い、生産・開発投資を大幅削減する構えだ。16年の投資の15年からの削減幅について、デボンが75%、ヘスは40%と計画する。
新規投資抑制で、原油掘削に使用する設備リグの稼働数は2月19日時点で413基とピーク時の約4分の1まで激減。ところが足元の米原油生産は日量約910万バレルで、直近の最高だった15年6月から約50万バレル減っただけだ。15年9月時点の米エネルギー情報局(EIA)は16年1〜3月期には日量884万バレルに減ると予測したが、節目の900万バレルをなかなか割り込まない。米原油の約半分とされるシェールの生産が高水準なためだ。
これはサウジアラビアとロシアを軸とする米国外の主要産油国の間で表面化した生産調整を滞らせる一因になっているようだ。サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は23日のヒューストンでの講演でシェール関係者を前に「政府と業界はリバランス(供給過剰の解消)を探るべきだ」と述べ、価格安定への協調を訴えた。石油輸出国機構(OPEC)の盟主であるサウジと米シェール企業は低価格にどこまで耐えられるか互いを試している。
採算悪化でも産油量がなかなか減らない理由の一つは技術革新による生産性の向上だ。大手でも信用力を裏付ける現金の確保に迫られているとの事情もある。安値でも高生産を維持して一定の収入を確保するためだ。シェール企業の多くは借入金で開発資金などを手当てしてきたが、業績悪化で返済能力への不安が高まり、負債の借り換えを迫られるケースもある。
さらにシェール開発に詳しい関係者は「掘っただけで生産に着手していない油井の在庫がある」と指摘する。各社は14年後半に油価の急落が始まる前、猛烈な勢いで掘削を進めたので、こうした「在庫」がなお多いとされる。目先の現金を得るため、在庫の油井で生産を始めるというわけだ。
シェール企業は単独での生き残り指向が強く、いまの時点では再編の動きは鈍い。一方、石油メジャーのエクソンモービルとシェブロンが米南部のパーミアン地区で、遅れていたシェール開発に力を入れる動きがある。
[日経新聞2月26日朝刊P.7]
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