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日銀の黒田総裁。マイナス金利政策の威力は「バズーカ」ではなくて「紙鉄砲」?(撮影: 大隅智洋)
マイナス金利はバズーカではなく「紙鉄砲」だ 量的緩和ではもはや、個人も企業も踊らない
http://toyokeizai.net/articles/-/105952
2016年02月27日 リチャード・カッツ :本誌特約記者(在ニューヨーク) 東洋経済
原文はこちらhttp://toyokeizai.net/articles/-/104913
日本銀行がついに捨て身の賭けに出た。かねて掲げていた2%の物価上昇率目標の早期達成に暗雲が漂う中で、1月29日にマイナス金利導入へと踏み切ったのだ。
2014年秋以降の黒田東彦・日銀総裁の量的緩和の動きは、市場から「黒田バズーカ」ともてはやされた。しかしマイナス金利など最近の政策は、「バズーカ」でなく「紙鉄砲」とすら言いたくなる対処法だ。
マイナス金利政策は、金融機関が日銀の当座預金口座に預ける一部の資金の金利をマイナス0・1%として、その分の「手数料」を取る政策だ。金融機関は 「手数料」負担を避けるために、企業や個人への貸し出しを促され、企業側にも銀行からの借り入れを設備投資に回す効果が期待される。
黒田総裁はさらなる利下げも示唆しているが、狙いどおりに進むとは考えにくい。
■それでも借り手は増えず
2013年3月に黒田氏が総裁に就任して以来、日銀は219兆円を新たに市中に供給したが、この大半は日本国債の購入によるものだった。この額は驚くべきことに国内総生産(GDP)の40%に匹敵する。問題は、この資金が実質経済にほとんど寄与していない点だ。新規供給された資金の91%に当たる199兆円は、銀行支払準備金の形ですぐに日銀の元に戻ってきた。
貸し出しが伸びない要因は、企業や個人にとって資金を借りる動機が乏しいからだ。自社商品の売れ行きに不安を抱える企業は、生産能力を拡大しようとはしない。実際、多くの企業はここ数年、大胆な投資に踏み切っていない。
その結果、企業のキャッシュフローと投資との差額は、GDPの6%という記録的な数値を示している。企業は投資を決断しても、銀行に足を運ぶ必要はなく、金庫室に行けばいいだけだ。
マイナス金利導入の発表後、日本国債の利回りは右肩下がりとなった。これは金融機関が貸し出しを増やすのは難しく、ひとまず国債購入に走っているからだ。銀行の中には預金金利引き下げの動きも出ているが、マイナス金利が期待どおりの効果を生み出すのは難しいだろう。
■「三本の矢」を適切に放つしかない
では、どうすべきか。重要なのは安倍晋三首相と黒田総裁のチームが、従来の約束を実行すること、すなわち金融政策、財政政策、構造改革というアベノミクスの3本の矢を、適切に実施することしかない。
日銀は国債購入を継続すべきだろう。それが2本目の矢である財政政策の後押しになる。日本の財政政策をめぐっては、政府による地方向けの選挙対策だとの批判も根強いが、購買力の増大や生産能力の拡充につながるものも多々ある。その中で最優先されるべきは、高校教育の無償化だ。
ただ、2017年4月に予定されている消費税率の引き上げは、実質賃金の着実な増加などによって実体経済が上向く明確な兆しが見られるまでは先送りすべきだ。
金融政策、財政政策、そして生産性を向上させる構造改革の3つがそろわなければ、すべての施策は無に帰しかねない。
(週刊東洋経済2月27日号)
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