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シャープ買収案を巡りメーンバンクが対立!みずほvs三菱東京UFJ「冷戦勃発」の可能性
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48035
2016年02月27日(土) 井上 久男「ニュースの深層」 現代ビジネス
■誰も責任を取らなくていいのか
経営危機に陥っているシャープは2月25日、世界最大の電子機器受託生産会社である台湾の鴻海精密機械工業から出資を受け入れると発表した。シャープが行う第三者割り当て増資に鴻海側が応じることでシャープの66%の株式を握り、傘下に収める。
しかし、この提携は問題だらけだ。これでシャープが再生するとはとても思えない。その理由は、経営陣、銀行、株主の誰もが「責任」を取っていないからだ。
倒産したり、あるいは倒産しかけたりしたダメな企業が再生するには、「前提条件」が一つあると筆者は常々考えている。それは「責任を取る」というけじめの問題だ。責任には、「経営者の責任」、「金融機関の貸し手責任」などがある。経営者は会社を去り、状況によっては株主代表訴訟の対象となるべきだ。
金融機関も自己責任でダメな会社に金を貸し続けたのだから、損害をかぶって当然だろう。投資という行為も自己責任だから、企業価値が毀損したら株主も自己責任で損害をかぶらなければならない。これが資本主義の大原則だと思う。
しかし、今回の鴻海によるシャープ買収のスキームを見ていると、誰も責任を取っていない。当面、シャープの経営陣はこのまま居座ることができるし、銀行側も債権放棄に応じなくて済む。これまで、再建に必要なリソースを逐次投入して小手先の改革に終始してきた経営陣と銀行は安泰というわけだ。
■「全会一致」は大嘘
実は、この「大甘スキーム」を描いたのは、シャープのメーンバンクの一つ、みずほ銀行だ。
「もう一つのメーンバンクである三菱東京UFJ銀行は、金融機関も一定の責任を負い、債権放棄に応じるべきとの考えから、経営者責任と貸し手責任を曖昧にしている鴻海との提携に反対で、産業革新機構主導による再建を支持していた」(経済産業省関係者)。
別のシャープ関係者はこう話す。
「取締役会の大勢は産業革新機構による支援に傾きかけていたのに、突如、みずほ銀行が鴻海の郭さんを連れてきました。みずほ銀行自体がすでに鴻海グループに多額の融資をするなど大きな取引実績があり、深い関係にあります。みずほ銀行にしてみれば、シャープが鴻海の傘下に入ることで、ビジネスがさらに拡大し、債権放棄にも応じなくてよいことになれば一石二鳥。だから鴻海を連れてきたのでしょう」
産業革新機構と鴻海の両方の提案を聞いたうえで、合理的な選択をしなければ、シャープの経営陣は善管注意義務違反に問われたり、株主代表訴訟のリスクを背負ったりする、との指摘もあるが、これは「建前」に過ぎない。鴻海によるシャープ救済の背後には、みずほ銀行の「我田引水的」な思惑もあるのだ。
さらに経産省幹部はこう指摘する。
「産業革新機構側にも問題があった。同省から革新機構に出向している担当役員はNPO支援や地域経済活性化政策の専門家で、製造業の再編に疎く、シャープや銀行の信頼を得られなかった。人選ミスの感も否めない。結局は、みずほ銀行さんから経済産業省と産業革新機構はなめられたうえ、メディアにも『革新機構では再生できない』とネガティブキャンペーンをはられてしまった」
経済産業省は、管轄下の産業革新機構がシャープの小型液晶事業をジャパンディスプレー(JDI)と経営統合した後に、鴻海との提携に持ち込む戦略だったが、今となってはそれも、みずほ銀行に阻止される形で水泡と帰した。
2月25日の臨時取締役会で鴻海の傘下入りを決議した後、シャープの高橋興三社長は記者団に「全会一致で決めた」と語ったが、これは「大嘘」だ。議事録に残る形式的な決議では全会一致だったかもしれないが、三菱東京UFJ銀行出身の取締役も一部の生え抜き取締役も腹の中では反対だったそうだ。
鴻海傘下になるとはいえ、シャープが再生するためには今後も銀行の理解と支援は欠かせないだろう。しかし、メーンバンク二行の足並みが揃わないようでは、果たして再建は潤滑かつ迅速に進むのだろうかとの疑念は拭えない。今後は、シャープ再生を巡ってみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の「冷戦」が勃発する可能性も秘められている。
■銀行との間で板挟みになるおそれ
そもそも、シャープの高橋社長は多くの社員から「無能の烙印」を押され、転職先のある有能な社員ほど会社に愛想を尽かして社を去った。
高橋社長に再建の手腕がないのは衆目の一致するところで、しかも自分が明確な経営哲学と再建戦略を持っていないためにその場しのぎ走って、常に銀行の顔色ばかりを窺い、その指示に従ってきた。今後、足並みの揃わない二行それぞれの思惑を忖度しなければならなくなるだろう。
鴻海を一代で築き上げた凄腕経営者の郭台銘会長が今後、シャープの現経営陣を一掃する可能性はあるが、今回の提携スキームでは当面は居座ることも可能だ。繰り返すが、経営責任を取らなくて、本当の再生なんてあり得ないのではないか。
筆者はこれまで、本コラムなどで、シャープ再生のために公的資金を使うことには反対だと述べてきた。半導体のエルピーダメモリの再建支援などの前例を見ても、グローバルに活動して、グローバルに顧客を抱える製造業で、国家主導の再生などうまくいくはずもないからだ。
だから、事実上国が差配している官民ファンド・産業革新機構によるシャープ救済にも反対だった。シャープとは大型液晶事業(堺工場)で合弁生産し、内実よく知る鴻海から支援を受けることがベターだと思っていた。
しかし、今回の鴻海とシャープの提携スキームを見る限り、シャープをここまで放置して破たん寸前にまで追い込んだ現経営陣と銀行の誰もが責任を取っていない。今回のスキームでは自己責任で投資した株主も株が紙屑同然になるわけでもなく、大きく損をしないわけだから、ひとまず安泰だろう。経営陣、貸し手の銀行、株主の誰もが泥をかぶらずに安泰な経営再建なんて聞いたことがない。
さらに言えば、シャープは第三者増資で得る4,890億円を成長戦略と有利子負債の返済に充てるとしているが、どこまで成長投資に用いられるかは不透明だ。偶発債務も3,000億円程度あると見られる中で、本当に4,890億円で足りるのかといった疑問符も付く。
企業再生ファンドの経営者の中には「シャープが負の遺産を断ち切り、成長分野に投資していくためには4,890億円では足りず、8,000億円から1兆円のニューマネーが必要ではないか」との見方もある。鴻海による今回の支援だけでは足りず、今後さらに追加支援が必要になることも想定される。
■旧陸軍と重なって見える
ここ何年かのシャープの動きを振り返ると、経営再建に当たっての課題の大きさや負担の重さについて、現実を直視せずに楽観視し、その処方箋を見誤った結果、リソースを逐次投入して小手先の改革に終始してきた。これは、太平洋戦争時の日本陸軍と似ている。
陸軍は米軍の力を甘く見て戦力を逐次投入したり、補給路を確保しなかったりした結果、多くの兵隊を犬死させてしまった。その象徴が「ガダルカナルの戦い」や「インパール作戦」だが、作戦を立案して責任を取るべき参謀や指揮官は言い訳に終始し、責任を取らなかった。シャープの動きはそれと一緒ではないか。
シャープはいっそのこと法的整理で倒産させた方が真の再生に向かったのではないか。会社更生法などによって事業を整理し、市場原理に委ねながら価値のある事業あるいは復活できそうな事業だけを救済していく方がよかったのではないか。
その方が法的に経営責任や貸し手責任(債権放棄等)を明確にでき、再生のプロセスにも司法の目が光る。そうすれば我田引水的な動きも防げ、誰もが責任を負わない摩訶不思議な再建策も回避できたはずだ。
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