【第51回】 2016年2月25日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] 仮想通貨技術の応用が急展開 金融変革は社会をどう変えるか
日本の金融機関もブロックチェーン技術の導入に動き始めた 仮想通貨の基礎技術である「ブロックチェーン技術」に対する関心が、にわかに高まっている。三菱UFJフィナンシャル・グループは、独自の仮想通貨を開発中と報道された。みずほフィナンシャルグループも、ブロックチェーン技術の実証実験を開始すると発表した。日本取引所グループは、ブロックチェーン技術を利用する実証実験を3月に開始する。 「ブロックチェーン」を銀行業務や証券取引に応用することによって、金融取引の形が大きく変わる可能性がある。また、マイナス金利の導入が、こうした動きを加速する可能性もある。
邦銀もいよいよ取り組みを開始 急展開する銀行の仮想通貨導入実験 銀行が独自の仮想通貨の導入を目指している。 シティバンクの取り組みについては、本連載第27回で紹介した(なお、第18回も参照)。 ドイツ最大のメガバンク、ドイツ銀行は、ブロックチェーンが金融取引のあらゆる分野に大きな影響を与えるとして、導入に向けた検討を行なっている(ウォール・ストリート・ジャーナル・オンライン参照)。 日本でも、この数ヵ月で、ブロックチェーン導入に向けての動きが急速に展開している。 住信SBIネット銀行は、2015年12月16日、野村総合研究所の協力を得て、ブロックチェーン技術を活用した将来の基幹・業務システム構築を目的とした実証実験を行なうと発表した(「ブロックチェーン技術の利活用に向けた実証実験について」)。この実験によってブロックチェーン技術を活用し、基幹システムや業務システムへの適用に向けた検証事項を洗い出す。また、検証用プロトタイプシステムを構築し、銀行業務への適用における成果や課題を検証するという。 2月1日の朝日新聞は、三菱UFJフィナンシャル・グループが独自の仮想通貨を開発中と報道した。 2月16日、みずほフィナンシャルグループも、電通国際情報サービス(ISID)、カレンシーポート、日本マイクロソフトと、16年2月からブロックチェーン技術の実証実験に取り組むと発表した。なお、カレンシーポートは、取引記録や決済手続き、監査機能をシステムに組み込むための基盤技術を開発するスタートアップ企業。4社は、ブロックチェーン技術は高速・安全・廉価なシステム構築実現の可能性があるとしている。ただし、業務分野ごとのルール策定、既存システムとの融合といった、本格展開に向けての課題が多く残っているとも指摘する。そのため、まずはシンジケートローン業務を対象として、適用の可能性を探るという。 2月22日、オリックス、オリックス銀行、静岡銀行、NTTデータ、NTTドコモ・ベンチャーズの5社は、ブロックチェーン技術を金融サービスに応用する共同研究を始めることで合意した。 証券取引所での導入が日本にも波及 デファクトスタンダードを狙う動きも 東京証券取引所などを含む日本取引所グループと日本IBMは、ブロックチェーン技術を利用する実証実験を2016年3月に開始する。 今後の技術標準化動向や複雑な業務への適用を考慮して、The Linux Foundationが主導して開発を進めるオープンソースの分散台帳フレームワーク「Hyperledger」を利用する予定という(@IT参照)。この実証実験は、ブロックチェーン技術の評価と低コストでの運営可能性を検証するものだ。ここで対象とされているのは、取引そのものでなく、未公開株の取引記録である。 同様の実験をナスダックが進めていることを、本連載の第27回「ビットコインの技術応用で変わる米金融界と、後れを取る日本」で紹介した。これと同じようなことが、日本にも及んできたわけだ。 なお、ロンドン証券取引所グループもブロックチェーン導入を検討している。また、オーストラリア証券取引所もブロックチェーンを16年中に導入するという。 上で述べた「Hyperledger」とは、The Linux Foundationが、ブロックチェーンの標準化を目的に、2月10日に設立したプロジェクトである。Hyperledger Projectは、技術検証をグローバルレベルで共同して実施し、デファクトスタンダードとなるようなブロックチェーン基盤の技術開発を目指す。 ブロックチェーン技術のスタートアップ企業であるR3を含む大手ITベンダーと、シスコシステムズ、IBM、インテル、ドイツ証券取引所、JPモルガン、ウェルズ・ファーゴといった大手の金融機関や決済機関、SWIFTなど金融インフラ系のメンバーが主要パートナーとして参加している。日本からは、富士通や日立製作所、NEC、NTTデータなどが参加している。 R3コンソーシアムとは、ブロックチェーンから派生した暗号アプリケーション、分散型元帳プロトコルによる金融市場の効率化に取り組む世界最大級のワーキンググループだ。 R3が主導し、クレディ・スイス、JPモルガン、UBSなど世界トップの金融機関から始まったコンソーシアム・グループは、直近ではINGやウェルズ・ファーゴ、BNPパリバなども加わり、30行のグループとなった。邦銀からは、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が参加している。R3コンソーシアムの計画は、既存システムとの統合ができるブロックチェーンを2年以内につくり上げることだ。 マイクロソフトも、ブロックチェーン技術に関する新たなサービスを、Microsoft Azure上に展開しようとしている。Microsoft Azureは、グローバルなデータセンターのネットワークを通じて、アプリケーションのビルド(実行プログラムの生成)、デプロイ(利用可能にすること)、管理などのサービスを提供しているクラウド・コンピューティング・プラットフォームだ(コインテレグラフ参照)。 ブロックチェーンとは何か 導入はいかなる影響をもたらすのか ブロックチェーンとは、ビットコインなど仮想通貨の基本にある仕組みである。「分散型台帳」とか「公開型台帳」とも呼ばれる。その詳しい仕組みは、拙著『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社、2014年)の第2章を参照。 これによる取引対象は、通貨に限らない。コンピュータが理解できる取引(スマートコントラクト)であればよい。そして、すでにさまざまな試みが行なわれていた(同書第5章)。 金融取引は数字で表されるので、その他のサービスのように品質や主観的評価などが入り込みにくい。したがって、スマートコントラクトの方式になじみやすいのである。今後、通貨や証券の取引だけでなく、さまざまな金融取引に導入され、金融取引の姿を大きく変えていくことが予想される。 また金融だけではなく、IoTにも応用されるだろう。なぜなら、本連載でもすでに述べたように、これまでのクラウドシステムではコストが高くなりすぎるからだ(第28回「IoTの普及には、ビットコイン技術の応用が不可欠だ」)。 ブロックチェーンの金融業務への導入は、金融取引のコストを大幅に低下させるだろう。とくに、国際送金のコストを著しく低下させることが可能になるだろう。それによって新しい経済活動が生まれる可能性もある。 ただし、半面においては、現在、金融機関で働く人々や金融取引に従事する人々の職を奪う可能性も十分ある。 金融機関の業務の中には、ルーチン的で格別の判断を要しないものも多い。そうしたものは、スマートコントラクトの形に書き換えられて、ブロックチェーンで運営される自動取引に変わっていく可能性が強い。 マイナス金利の導入は ブロックチェーンの採用を加速する ブロックチェーンを用いれば、劇的なコスト削減が可能となるため、マイナス金利によって収益が悪化する銀行が、コスト削減の手段として導入する可能性が高い。また、預金金利が引き下げられたり、マイナスになった場合に、預金者に現金保有の代替手段を与える可能性もある。 こうして、マイナス金利の導入は、銀行によるブロックチェーンの採用を加速する可能性があるわけだ。 ただし、中央銀行自身がブロックチェーンを導入し、独自の仮想通貨を運営して、キャッシュの保有を禁止するというアイディアもある。 イングランド銀行は、2015年の初めに刊行された報告の中で、中央銀行自身が仮想通貨を発行する可能性について述べている。また、国際決済銀行(BIS)が15年11月に出した報告書Digital currenciesigital currenciesも、中央銀行が自らデジタル通貨を発行する可能性について言及している。 ブロックチェーンを用いた決済手段を提供する主体が誰になるのか、つぎの3つの可能性がありうる。 (1)ビットコインのような仮想通貨。これは、P2Pというコンピュータのネットワークで運営され、中央集権的な管理主体は存在しない。 (2)銀行が運営する仮想通貨。クローズドなコンピュータのネットワークで運営される。ただし、中央銀行の決済システムの外に存在する。 (3)中央銀行が運営する仮想通貨。これによって、紙幣を代替する。 現実がこれらのどの方向に向かうのか、現時点では予測しがたい。また、マイナス金利がどの程度の強さでどの程度の期間にわたって適用されるかによっても、結果は異なるものとなるだろう。ただし、金融システムの基礎が大きく変化しつつあることは間違いない。 http://diamond.jp/articles/-/86887 三橋貴明346回 OECD、財政再建再考を提唱(1/3) 2016/02/23 (火) 13:01 案の定と言うべきか、予想通りと言うべきか、安倍政権は「新たな財政出動論」を封印するようだ。当面、安倍政権は新たな財政出動論を封印するとの報道が流れている。 安倍総理は2月15日の国会で、最近の株価下落について、 『1カ月、1カ月半の値動きにとらわれるべきではない。日々の株価に一喜一憂するべきではない』 と、株価上昇をほとんど唯一の成果として誇っていた政権とは思えないほど、素晴らしい正論を語った。その通りである。国民の所得(フロー)を拡大することが目的の経済政策が、資産(ストック)価格に過ぎない株価に振り回されるのは奇妙な話だ。総理には、首相官邸の執務室に置いてある株価チャートについても、是非とも倉庫に片付けて頂きたい。 また、今後、株価が上昇した際に、「1カ月、1カ月半の値動き」にとらわれ、 「日経平均が2万円を突破した! これは政権の成果だ!」 などとダブルスタンダードな主張をするのを、控えて欲しいわけである。 それはともかく、総理は続けて、 『中国の景気減速懸念や原油価格の下落、米国の利上げなど海外要因が背景』 と、現在の景気失速の原因を「外」に押し付ける解説をした上で、 『日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は確かなもの』 と、例により「ファンダメンタルズ」という抽象用語で、日本経済の「堅調」を訴えたのであった。 具体的に、何なのだろうか、ファンダメンタルズとは? そもそも、10−12月期の経済成長率がマイナスになってしまったのは、民間最終消費支出の落ち込みが原因である。別に、外国の経済失速のせいではない。 2015年の民間最終消費支出は実質GDPベースで306.5兆円と、安倍晋三内閣が発足した12年の308.0兆円から1.5兆円縮小してしまった。 13年は313.2兆円と増えていた(消費増税前の駆け込み消費の影響もあったのだろうが)民間最終消費支出が、14年は310.4兆円に落ち込み、15年は306.5兆円と、野田政権期を下回ってしまったのだ。日本国民は13年から15年にかけ、6.7兆円、実質的に消費を減らしたことになる。 日本国民の実質賃金の落ち込みや、実質消費の激減の「最大の原因」は、もちろん消費税の増税である。つまりは、安倍政権の失政なのだ。 日本経済新聞の報道によると、財政拡大路線に舵を切り直すと、 「アベノミクスの失敗」 と受け取られかねないと経済官庁の幹部が恐れているという。 呆れた話だ。アベノミクスは「失敗」したのである。 失敗を素直に認め、金融政策に「加えて」財政政策を講じるというならばともかく、失敗とみられることを恐れ、正しい政策に踏み出せないとは、もはや末期症状だ。大東亜戦争末期の大本営と、何が違うというのだろうか。 しかも、経済財政諮問会議の民間議員が、 「必要と判断される場合は機動的に対応すべきだ」 との提言したことを受け、内閣府幹部が、 「財政出動を連想させる、と批判はあったが『緊急時にはあらゆる対策をとる』というメッセージも必要だ」 と、語ったという。 いつの間にか我が国において、「財政出動」がタブー化してしまっているわけだ。(ほとんど)唯一の正しい政策を「封印」「タブー化」してしまっては、日本経済がデフレから脱却し、堅調な経済成長路線を歩み始める日はやってこない。
『2016年2月18日 ロイター通信「OECD、日本の16年成長率見通しを引き下げ 財政再建再考を提唱」 http://jp.reuters.com/article/oecd-outlook-idJPKCN0VR157?sp=true 経済協力開発機構(OECD)は18日に世界経済見通しを公表し、その中で日本の2016年の実質成長率を昨年11月時点の前年比1.0%から0.8%に引き下げた。 また、株価の急落や新興国の資本流出・債務問題など金融システムに相応の不安があるとして、世界的な「政策協調が急務」だが、「金融政策のみでは不十分で、財政・成長戦略も重要」と総括している。 日本については、17年を0.1%引き上げ0.6%とした。「対GDP比での債務残高を安定化させるため、日本は財政再建を進めているが、名目成長率が期待外れななかで、新たな戦略を必要としている」と指摘した。 また、2016年の世界経済成長率予測を3.0%に下方修正した。昨年11月時点の予測は3.3%だった。 米国、欧州、ブラジルの成長率予測を下方修正した。 2015年の世界の経済成長率は3.0%と、5年ぶりの低水準だった。 OECDは貿易・投資・賃金の伸びが依然として低過ぎると指摘。 「金融政策だけでは限界がある」とし、「需要の拡大には、共同の政策対応を強化する必要がある」と主張した。財政出動の余地がある国はインフラへの公共投資を拡大すべきだとしている。(後略)』 日本が「プライマリーバランス黒字化目標」という愚か極まりない目標に足を採られ、財政出動を「封印」「タブー化」している間に、世界の方が変わりつつある。 「金融政策だけでは限界がある」 「インフラへの公共投資を拡大するべきだ」 OECDの提言は、当然すぎるほど、当然だ。 第346回 OECD、財政再建再考を提唱(2/3) 2016/02/24 (水) 13:50 特に、我が国は日銀副総裁の岩田規久男教授の「学説」である、 「日本銀行がインフレ目標をコミットメント(責任を伴う約束)し、量的緩和を継続することで、期待インフレ率を引き上げ、実質金利を引き下げ、デフレ脱却する」 という社会実験を三年間近くも続け、未だにインフレ率は0.1%。「二年間で2%のインフレ目標を達成する」というコミットメントは雲散霧消し、2013年3月5日の国会所信聴取において、 「日銀は2%を必ず達成する、この達成責任を全面的に負う必要がある」 「遅くとも2年では達成できるのではないか、またしなければならない」 「(2年以内に目標が達成できなければ)責任は自分たちにあると思う。最高の責任の取り方は辞職するということだと認識している」 と、啖呵を切った岩田教授も、目標未達成であるにも関わらず、相変わらず日銀副総裁の地位にとどまっている。どれだけ量的緩和を継続してもインフレ目標を達成できないことを受け、ついに「日銀当座預金にマイナス金利をかける」政策を採用。期待インフレ率ではなく、名目金利の引き下げに走った日本銀行を見ていれば、誰でも、 「金融政策だけでは限界がある」 「インフラへの公共投資を拡大するべきだ」 が正しい解であると理解できるはずだ。 インフレ率とは、モノやサービスの価格の変動率のことである。モノやサービスの価格が上昇するのは、モノやサービスが沢山買われたときになる。当たり前の話だ。 日本銀行の量的緩和とは、モノやサービスではなく(主に)国債を購入する形で新たな日本円が発行される。国債は、モノでもサービスでもない。 というわけで、銀行の流動性(貸し出し余力)が拡大し、金利が下がったとしても、「誰か」がおカネを借り入れ、国内市場でモノやサービスの購入のための支出をしなければ、インフレ率は上がりようがないのだ。無論、そんなことは岩田教授も分かっており、だからこその「期待インフレ率上昇による実質金利の低下」だったわけである。 とはいえ、現実の経済において、経営者は「実質金利」を見て投資判断をするわけではない。投資利益である。投資して、儲かるかどうかが全てなのだ。経営者なら100人中、100人が同意してくれると思う。 あるいは、消費者は「インフレ期待」に基づき、消費を増やすわけではない。無論、所得が十分で、消費の拡大が可能な状況であれば、 「将来、物価が上がるならば、今、消費を増やそう」 と、考える人もいるかも知れない。ところが、現実の日本では実質賃金が下がり続けているわけだ。 しかも、消費税増税で強制的に物価が引き上げられ、先述の通り、日本の実質的な民間最終消費支出は13年の313.2兆円から、15年(速報値)には306.5兆円と、6兆円超も減ってしまった。つまりは、需要縮小だ。 結局、長くデフレが続く国で、しかも政府が緊縮財政という需要縮小策をやるような愚かな国で、「期待インフレ率を高めて」という岩田教授の学説は通用しなかった。社会実験は、失敗したのだ。 というわけで、岩田教授に学者としての良心があるならば、以前、批判していた財務省の御用学者たち(いわゆる「デフレ派」)と「自分」は違うと考えるならば、「政府の緊縮財政」の批判に回って欲しいわけである。 「期待インフレ率理論は理論としては正しいが、政府が緊縮財政という需要縮小策を推進するのでは、金融緩和のみでデフレ脱却はできない」 と、責任を政府に押し付けてしまえばいい。実際、安倍政権の責任である。 結局、OECDが提言する通り、 「金融政策だけでは限界がある」 「インフラへの公共投資を拡大するべきだ」 こそが、現在の日本にとって正しい道なのである。 上記、OECDの提言を受け、石原経済再生担当大臣が「反論」をしていた。石原伸晃経済再生相は2月19日の閣議後会見で、OECDが日本に緊縮的な財政政策の見直しを提唱したことを受け、 「アベノミクスは経済のパイを増やしており、緊縮との指摘は当たらない。(中略)民主党政権時代よりも公共投資は伸びている」 と、主張したのである。 とりあえず「経済のパイ」というのは、普通はGDPを意味する。2015年10−12月期は実質GDP、名目GDP共に減少してしまった。石原大臣が語った「経済のパイ」とは、一体何を意味しているのか、意味不明である。
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2016/02/23/025306.php 第346回 OECD、財政再建再考を提唱(3/3)
2016/02/25 (木) 14:02 さらに問題なのは、 「民主党政権時代よりも公共投資は伸びている」 というレトリックだ。 公共投資には「用地費」など、GDPにカウントされないものが含まれている。というわけで、公共投資から用地費等を控除したものを「公的固定資本形成」と呼ぶ。 公的固定資本形成の推移は、どうなっているだろうか。 【図 日本の公共投資(左軸、単位:十億円)と対GDP比率】 出典:内閣府「国民経済計算」 ※93年までは平成12年基準、94年以降は平成17年基準、2015年は速報値 図の通り、確かに安倍政権は民主党政権期よりも公的固定資本形成を増やした。とはいえ、そもそも日本の公的固定資本形成は1996年には45兆円弱もあったのだ。 そこから、「自民党政権」が公的固定資本形成の削減を始め、民主党政権下の2011年には20兆円にまで絞られてしまう。 2013年、2014年と安倍政権は公的固定資本形成を増額し始めたが、それでも24兆円弱に過ぎず、ピークには遠く及ばない。 そして、2015年に、安倍政権は公的固定資本形成を3000億円強、減らした。 確かに、民主党政権時代よりは公的固定資本形成が増えている。とはいえ、ピークから20兆円も少ないままで、かつ2015年に減額。これが「緊縮財政」でなくて、一体、何だというのだろうか。 我が国は、そもそも公的固定資本形成を減らして構わないような国ではない。何しろ、世界屈指の自然災害大国なのだ。 しかも、高度成長期に建設したインフラが老朽化し、メンテナンスが必要な時期に入っている。加えて、地方には高速道路や高速鉄道などの交通インフラが未整備のままだ。 上記が「事実」であるにも関わらず、政府の経済担当大臣が「日本は公共投資を伸ばしている」といった印象操作を図るのは、極めて問題がある。例えば、 「安倍政権は民主党政権期よりも公共投資を増やしているが、未だ96年比で見ると半分未満である」 と、事実を正確に語るならともかく、「民主党政権時代よりも公共投資は伸びている」「緊縮との指摘は当たらない」などと発言されてしまうと、またもや、 「日本は公共投資をやりすぎている」 という嘘の情報が国民に蔓延し、かつ政府自らも過去の発言に足を縛られ、公共投資を増やすという「普通の政策」が取れなくなっていってしまう。 石原大臣の発言を見る限り、現在の安倍政権は余程「財政出動」「公共投資」をやりたくないようだ。いまさらだが、安倍政権は「財務省の政権」に落ちぶれてしまった。 http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2016/02/25/025308.php Business | 2016年 02月 25日 12:33 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 中国の財政赤字、対GDP比4%以上も可能=人民銀幹部 [上海 25日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)調査統計局の盛松成局長は24日遅くに公表した文章の中で、中国は成長支援のため、財政赤字の対国内総生産(GDP)比を4%以上にすることが理論的に可能との見方を示した。 中国メディアに掲載された文章によると、盛局長は「将来の一定の時期において、中国の財政赤字比率を4%、もしくはそれ以上に引き上げることは可能」と指摘した。 1年にわたる金融緩和でも思うような効果が得られなかったことを受け、中国指導部は景気鈍化に対処するため、財政出動の拡大を容認するとみられている。 構造改革に伴う経済への衝撃を和らげるため、今年の財政赤字比率は3%を上回るとみられている。昨年の赤字比率目標は2.3%だった。 盛局長はまた、「政府の債務・赤字がその水準(対GDP比3%)を超えるのは危険だとの指摘もある」と指摘。「(しかし、財政赤字を対GDP比で3%以内とする)マーストリヒト条約のような規律基準は中国の実情にふさわしくない」と指摘した。 http://jp.reuters.com/article/china-cenbank-debt-idJPKCN0VY0AJ Business | 2016年 02月 25日 11:40 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 中国の輸出と人民元、世界経済からの圧力に直面=工業情報省 [北京 25日 ロイター] - 中国工業情報省は25日、中国の輸出と人民元は国際経済環境の複雑さから強い圧力を受けている、との見方を示した上で、中国経済への下振れ圧力は増していると表明した。会見で配布した声明で明らかにした。
2016年の鉱工業生産については、6%程度増加するとの見通しを示した。鉱工業生産が今年安定すると予想する一方で、地域や産業間の格差は広がる可能性がある、としている。 中国鉱工業生産は2015年通年では、前年比6.1%増加した。 http://jp.reuters.com/article/china-m-idJPKCN0VY063 Business | 2016年 02月 25日 12:05 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス マイナス金利、金融引き締めにつながるおそれ=木内・日銀委員 [鹿児島市 25日 ロイター] - 日銀の木内登英審議委員は、25日午前に鹿児島市内で講演し、日銀のマイナス金利政策がかえって金融機関の手数料の引き上げなど金融引き締めにつながるおそれがあり、日銀が国債購入で希望額を買えなくなる可能性があると指摘した。金融市場が危機的な状況に陥った場合には、円・外貨資金の「一時的大量供給」が望ましいと提案した。 <金融機関の日銀への国債売却インセンティブ低下も> 木内委員は、2014年10月以降、日銀の金融政策に反対し、国債買い入れの減額を主張している。今回もマイナス金利により「金融機関が収益の悪化を補うため、貸出金利の引き上げや手数料の引き上げなど、コストを転嫁する可能性があり、逆に金融引き締めにつながるおそれもある」と批判した。 また、マイナス金利の導入により、保有国債の利回りよりも付利水準が低下すれば、「地銀をはじめ金融機関の多くは、保有国債を日銀に売却するインセンティブが低下する」とし、日銀が現在進めている年間80兆円(残高ベース)の国債を買い入れの「持続性・安定性を損なう可能性を懸念している」と述べた。 国債買い入れの限界が市場で意識されれば、長期金利上昇など「金融市場は不安定化し、実体経済に悪影響を及ぼす可能性もある」と指摘。マイナス金利導入には、国債買い入れ減額によって買い入れの持続性・安定性を高める手法が必要だと述べた。
その上で「金融経済情勢が著しく悪化するような危機的状況でのみ、妥当な政策手段」と述べた。 <危機には、円・外貨資金供給> 株式市場などでは、金融市場の振幅が大きくなっている中でも、国債買い入れ減額などを提案する木内委員を批判する声もある。しかし、木内委員は「減額提案しているからといって、金融経済環境が著しく悪化する場合、追加的な政策対応を行う術がないと考えているわけでない」と説明。危機的状況ならば「マネタリーベースの年間増加目標額にこだわらず、一時的に潤沢な円資金・外貨資金を供給を行うべき」と提案した。 <日銀のみで予想物価上昇率引き上げ難しい> 年初からの急激な金融市場の動きは「企業や家計の経済活動を慎重化させる可能性に留意したい」とし、「海外経済と金融情勢が日本経済の主要な下振れリスク」とした。 消費者物価指数で生鮮食品とエネルギーを除いた日銀版コアコア指数など、物価の基調を示す各種指標は、円安効果の一巡などにより「一段と高まる余地は大きくない」とし「4─6月頃に前年比で幾分下振れするリスク」も指摘した。 2%の物価目標は日銀が物価見通しを公表している「2017年度までを視野に入れても達する可能性は低い」「日本経済の実力をかなり上回っている」とした。人々の物価感である中長期的な予想物価上昇率は「日銀の政策のみで押し上げていくことは困難」と強調した。 (竹本能文 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/boj-kiuchi-idJPKCN0VY08D?sp=true
|